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アシノ領主のお仕事
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「本気かゼン?」
ゼンの申し出に信じられないのだろう。
まだ若き王であり兄であるブジン・ヤマダルは、大きい目をより大きくしながら玉座から今にも落ちそうな位に前屈みになり、ゼンに向かい顔を近づけきた。
「はい、確かに私は王族の血があれど平民の血を引いてもいる穢れた者です。このまま兄上の近くにいては奴等の恰好の餌になります。そうなれば兄上の王としての資質が疑われ国が立ち行かなくなります」
「だが、そうだとしても、何故アシノ領なのだ?もっといい場所でも良いだろ?」
「いいえ、アシノ領が好条件が揃っているです」
「何故だ?辺鄙で何も無い、お前の生活が苦しくなるだけだろ?」
「だからこそなのです。兄上、奴等は兄上を王から降ろそうと画策しているのはご存知の筈。その際に私の存在は国民の信を得る為には足枷にしかなりません。奴等は必ずそこへ漬け込んできます、それだけは避けたい。それならば私を辺鄙な地に命じ、追いやったっという実績を兄上がもてば奴等の思い通りにはそう簡単になりません」
「だが、お前はどうする?あの辺鄙な土地で大人しくしているつもりなのか?」
ブジンの問いに自然とゼンは笑みを零してしまった。
「まさか、兄上、俺ですよ?」
その応えと表情にブジンもまた少しだけ笑を零してしまいそうになった。
「あの土地は、色々あるんですよ。辺鄙な土地なってしまったのは歴史と聖霊獣の存在が原因でしょ、だがそれ以外は宝の山な土地なのです」
ゼンがそう応えるとブジンは顎を擦りながら険しい表情を浮かべ床を睨みつけていた。
「今私に無いのは、実績です。確かに王族で魔術の才は、あれどそれ以外に実績は無い。ならば実績を持ったら国民の目はどうでしょうか?」
ゼンの問いにブジンは押し黙る事しながらジッとこちらの顔を見ていた。
昔から変わらぬ優しい御方だ。
家族思いで心配性で誰よりも人を思いやる事が出来る。
そんな人物だからこそ王に相応しいのだとゼンは思っていた。
だが、それと同時に冷静と厳格も身につけなければならない。
その為にゼンの僻地送りは、彼にとってひとつの試練だと思っていた。
窓から差し込む陽光がゼンとブジンをスポットライトの様に照らしている。
ゼンはただ静かにその応えを聞く為にその顔を見つめた。
獣の唸り声の様な鼾で目が覚めた。
ゼンは、ベッドから体を起こすと隣のベッドで豪快な鼾を上げながら中年の男、イワンが眠っていた。
「よぅ大将、お目覚めかい?」
その声に反対側を見るとベッドに座りパイプタバコを吹かしながらクリフが眠気まなこでこちらを見ていた。
「今何時だ?」
「さっき朝日が登ったころだ」
クリフにそう言われ、目を擦りながらベッドから降りると木の窓を開け、陽光を部屋へ招き入れた。
木造と積み石の壁の部屋に朝の光と春の冷たい空気が入り込み、ゼンは寒さで肩を竦ませながら大きな欠伸をひとつすると部屋の様子を眺めながらパイプタバコを咥え火を灯した。
焚き火の後と崩れた木造の家、まるで戦地の朝の様な景色を眺めながらゼンは紫煙をゆっくりと吐いた。
「やっぱりお前さんだけでも、館で眠れば良かったんじゃないか?」
「だな、まさかイワンがこんな鼾がうるさいっては、正直予想外だった」
そう言いながらゼンとクリフは、イワンの顔を見ながら苦笑いを零した。
前夜のバルディッシュ襲撃の攻防戦後、大事をとって村人達は洋館に寝泊まりさせ、ゼンとクリフは、一応の用心の為に村長の家で寝泊まりをする事に決めたのだが、何故かイワンも「お助けします」っと言って村長の家に泊まる事になった。
結果は何も来ることは、なかったが予想外の敵は味方に居た。
イワンの鼾だ。
恐らくその前の夜からしっかりと眠れなかったのだろう、ベッドに入るや否や豪快な鼾が部屋全体に響き渡り、戦闘でヘトヘトの筈のゼンとクリフの方が眠りずらくなったのだ。
しかし、やはり疲労には、勝てなかったのもあり気づくとゼンとクリフは、眠りについたのだが、朝まで続いたその鼾に再び目を覚ます事となった。
「それで今日からどうする?」
「どうするって?」
クリフの唐突な問いにゼンが返事をするとクリフは、両手を広げて首を横に傾けた。
「このまま廃村するのか?」
「まさか、建て直すさ、それに今日からが本番だ」
ゼンは何を言っているんだっと言う様に肩を竦めると部屋を後にした。
ゼンが泊まった部屋は、2階で昨日ウルテアが怪我で眠っていた部屋の隣である。ゼンは階段を降りて村長の家を出ると洋館へと足向けた。
洋館の門扉前では、セリーナが箒を片手に立ち尽くしていた。
「おはよう、どうした?」
ゼンがそう声をかけるとセリーナはゆっくりと振り返りゼンに向かい頭を深々と下げた。
「おはようございます。いや、掃除をしようと思ったのですが…正直どうすればいいのかと思いまして」
ゼンの申し出に信じられないのだろう。
まだ若き王であり兄であるブジン・ヤマダルは、大きい目をより大きくしながら玉座から今にも落ちそうな位に前屈みになり、ゼンに向かい顔を近づけきた。
「はい、確かに私は王族の血があれど平民の血を引いてもいる穢れた者です。このまま兄上の近くにいては奴等の恰好の餌になります。そうなれば兄上の王としての資質が疑われ国が立ち行かなくなります」
「だが、そうだとしても、何故アシノ領なのだ?もっといい場所でも良いだろ?」
「いいえ、アシノ領が好条件が揃っているです」
「何故だ?辺鄙で何も無い、お前の生活が苦しくなるだけだろ?」
「だからこそなのです。兄上、奴等は兄上を王から降ろそうと画策しているのはご存知の筈。その際に私の存在は国民の信を得る為には足枷にしかなりません。奴等は必ずそこへ漬け込んできます、それだけは避けたい。それならば私を辺鄙な地に命じ、追いやったっという実績を兄上がもてば奴等の思い通りにはそう簡単になりません」
「だが、お前はどうする?あの辺鄙な土地で大人しくしているつもりなのか?」
ブジンの問いに自然とゼンは笑みを零してしまった。
「まさか、兄上、俺ですよ?」
その応えと表情にブジンもまた少しだけ笑を零してしまいそうになった。
「あの土地は、色々あるんですよ。辺鄙な土地なってしまったのは歴史と聖霊獣の存在が原因でしょ、だがそれ以外は宝の山な土地なのです」
ゼンがそう応えるとブジンは顎を擦りながら険しい表情を浮かべ床を睨みつけていた。
「今私に無いのは、実績です。確かに王族で魔術の才は、あれどそれ以外に実績は無い。ならば実績を持ったら国民の目はどうでしょうか?」
ゼンの問いにブジンは押し黙る事しながらジッとこちらの顔を見ていた。
昔から変わらぬ優しい御方だ。
家族思いで心配性で誰よりも人を思いやる事が出来る。
そんな人物だからこそ王に相応しいのだとゼンは思っていた。
だが、それと同時に冷静と厳格も身につけなければならない。
その為にゼンの僻地送りは、彼にとってひとつの試練だと思っていた。
窓から差し込む陽光がゼンとブジンをスポットライトの様に照らしている。
ゼンはただ静かにその応えを聞く為にその顔を見つめた。
獣の唸り声の様な鼾で目が覚めた。
ゼンは、ベッドから体を起こすと隣のベッドで豪快な鼾を上げながら中年の男、イワンが眠っていた。
「よぅ大将、お目覚めかい?」
その声に反対側を見るとベッドに座りパイプタバコを吹かしながらクリフが眠気まなこでこちらを見ていた。
「今何時だ?」
「さっき朝日が登ったころだ」
クリフにそう言われ、目を擦りながらベッドから降りると木の窓を開け、陽光を部屋へ招き入れた。
木造と積み石の壁の部屋に朝の光と春の冷たい空気が入り込み、ゼンは寒さで肩を竦ませながら大きな欠伸をひとつすると部屋の様子を眺めながらパイプタバコを咥え火を灯した。
焚き火の後と崩れた木造の家、まるで戦地の朝の様な景色を眺めながらゼンは紫煙をゆっくりと吐いた。
「やっぱりお前さんだけでも、館で眠れば良かったんじゃないか?」
「だな、まさかイワンがこんな鼾がうるさいっては、正直予想外だった」
そう言いながらゼンとクリフは、イワンの顔を見ながら苦笑いを零した。
前夜のバルディッシュ襲撃の攻防戦後、大事をとって村人達は洋館に寝泊まりさせ、ゼンとクリフは、一応の用心の為に村長の家で寝泊まりをする事に決めたのだが、何故かイワンも「お助けします」っと言って村長の家に泊まる事になった。
結果は何も来ることは、なかったが予想外の敵は味方に居た。
イワンの鼾だ。
恐らくその前の夜からしっかりと眠れなかったのだろう、ベッドに入るや否や豪快な鼾が部屋全体に響き渡り、戦闘でヘトヘトの筈のゼンとクリフの方が眠りずらくなったのだ。
しかし、やはり疲労には、勝てなかったのもあり気づくとゼンとクリフは、眠りについたのだが、朝まで続いたその鼾に再び目を覚ます事となった。
「それで今日からどうする?」
「どうするって?」
クリフの唐突な問いにゼンが返事をするとクリフは、両手を広げて首を横に傾けた。
「このまま廃村するのか?」
「まさか、建て直すさ、それに今日からが本番だ」
ゼンは何を言っているんだっと言う様に肩を竦めると部屋を後にした。
ゼンが泊まった部屋は、2階で昨日ウルテアが怪我で眠っていた部屋の隣である。ゼンは階段を降りて村長の家を出ると洋館へと足向けた。
洋館の門扉前では、セリーナが箒を片手に立ち尽くしていた。
「おはよう、どうした?」
ゼンがそう声をかけるとセリーナはゆっくりと振り返りゼンに向かい頭を深々と下げた。
「おはようございます。いや、掃除をしようと思ったのですが…正直どうすればいいのかと思いまして」
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