シンミトロア物語【異世界転生ビルダーの紀行】

山月 春舞《やまづき はるま》

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アシノ領主のお仕事

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   そういうセリーナの視線の先には、前日に集めさせた木材の山が門扉から柵の前を占拠していた。

「あぁ~それは今日村人達に退かしてもらうから掃除はしなくていいぞ、それよりも皆の朝飯を作ってくれ、何人か起こして手伝わせろよ、あっそれと火聖石と鍋をひとつ持ってきてくれ」

   ゼンがそう言うとセリーナは、ゼンに向かい頭を下げ踵を返して洋館の中へと入って行った。

   ゼンは、その背中を見送ると木在の山から適当な長さの木材を数本取り出すと村の井戸の前に向かい井戸から水を汲み上げた。

   水ひとつにこんな作業が必要になる事は、想定内だったが改めて自分が恵まれた世界に生まれたのだと実感した。

   木材を焚き火用に組み上げた頃合にセリーナが鍋とタオルそして30cmの丸く黒い鍔の着いた棒の火聖石を持って戻ってきた。

   鍔を中心に先端は10cm、柄が20cmとアンバランスな棒だがゼンは、それを受け取ると鍋に水を入れ、柄を握りルンを流し込み先端に熱を持たせると焚き火用の木材の中へ放出させた。
   木材は一気に燃え上がりその上に鍋を置くと火聖石をセリーナへ返した。

「ありがとう、朝ご飯を頼むな」

   ゼンがそう言うとセリーナは、タオルをゼンに渡し、頭を下げて洋館へと戻って行った。

「おっ、湯浴びか?」

   そんな2人のやり取りが終わったのを計ったかの様にクリフが後ろから現れゼンは、少しだけ振り返るとクリフの顔をマジマジと見た。

「お前、もうちょい上手く隠れな、あと火加減宜しく」

   ゼンがそう言うとクリフは、怪訝な表情を浮かべながら首を横に傾ける。ゼンはやれやれと言う様に《タオルの1枚》をクリフの顔に向けて投げつけた。
   クリフは、そのタオルを慌てて受け取ると驚いた様子でゼンの顔を見ていたがゼンはそんなのをお構い無しに再び井戸の水を汲み上げた。

   湯が沸騰し、それを水と併せてぬるま湯にしながらゼンとクリフは、顔を洗いついでに体も拭いた。

「流石に浴場設備は、作った方がいいな」

   ゼンは、ぬるま湯で体を拭き時折吹く冷たい風に身を震わせながら言うとクリフもそれに全力に同意する様に首を縦に降っていた。

   ジグモ王都や街などには、多少の浴場施設があるがやはり辺鄙な村になるとそこは期待できず水道設備も村にある井戸のみである。
   幸いにも井戸は、村の中に数箇所ありそれを村人達は汲み上げ、それを生活や農業に使っている。

   さぁここからどう村を発展させていくか…
   ゼンは、頭の中でいくつものプランを決めながら湯浴びを終えると服を着替える為に洋館の3階にある自室へと向かった。
   着替えを終えた辺りで下の階から村人たちの声が聞こえ、スープの匂いも漂い始める。

   その匂いに吊られる様に降りていくと食事の準備をする村の女性達に挨拶をされ、それに返しながら村の男達は、何をしているのかと様子を見に行くと村の男達は、井戸を囲みながら悲鳴を上げつつ顔や体を拭いていた。

「何してんだ?まだ寒いだろ?」

   ゼンが声をかけると全員がゼンに向かい跪き挨拶をした。

「おはようございます。領主様…確かに寒いのですが…こればかりはどうする事も…」

   そう答えたのは、村長のウズロだった。

「さっき俺が焚いた焚き火は、どうした?そこで湯にしてそれで少しは温度は、変わるだろう?」

   そう聞きながら焚き火を見ると火は、見事に消されていた。

「あっ悪い、消しちった」

   そう応えのは、村長ウズロの家の玄関で悠々とパイプタバコを吸っているクリフだった。

「お前…」

   ゼンは、呆れながらため息を漏らした。
   これは、早急に浴場施設を作る必要があるな、それも出来るだけ使い易い設備を…

   ゼンはそう思いながら再び焚き火に火を灯すと男達は、焚き火を囲みながら水でまた体を拭き始めた。

   ゼンは村全体を見渡しながら思案をしていると洋館からセリーナに呼ばれ稽古場に向かうと朝食の準備が整ったらしく、もう既に村人達には、それぞれスープの入った木の椀が配られていた。
   しかし、誰一人それに手をつけることなくゼンをじっと見ている。
   ゼンは、セリーナから木の椀を受け取ると高々とお椀を掲げた。

「いただきます!」

   ゼンがそう告げると村人達はスープを食べ始め、ゼンもまたスープを食べ始めた。

「ゼン様」

   ゼンは、村人と同じ様に床に座りスープを食べているとウズロが恐る恐る声をかけてきた。
   なんだ?っと言う様にゼンが首を傾げるとウズロが言いにくそうに頬を少し掻きながら困った様に言った。

「領主様は、領主様の部屋で食べられてはどうでしょ?私達の様な汚い平民と同じ場所で食されても美味しくないでしょ?」

「いや、一人の方が美味くないが?ダメか?」

   ゼンがそう聞くとウズロは、慌てて首を横に振り困った笑顔をうかべた。

「いや、前の領主様も他の貴族の方々も我々と食う気には、ないっと言われておりましたので…」

「それは、そいつらだ、俺じゃない。それにウズロさん、貴方に話があったんだ」
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