シンミトロア物語【異世界転生ビルダーの紀行】

山月 春舞《やまづき はるま》

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アシノ領主のお仕事【サザレ村へ】

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   天辺を通り過ぎ、太陽がゆっくりと西の方向へ落ちていこうと準備を始めているが、その光はまだ強く世界を照らしていた。

   ウルテアは、馬に騎乗しながら周りに目を向けその後ろに乗るサウラは気持ちよく鼻歌を鳴らしながら天を仰ぎ。 
   ガルダンは、馬車を運転しながら前を真っ直ぐ見ている。
   ガルダンの隣に乗るバトカンは、どこか不安そうにしながら周りや馬に乗りながら春の陽気を楽しんでいるゼンを見ていた。

「穏やかだなぁ~」

  ゼンの口から漏れた言葉にガルダンは鼻をひとつ鳴らしながら応えた。

「何が穏やかだよ?大荒れの間違いだろう」

   そう言うと今度は、呆れたため息と共にガルダンはサウラを見たがサウラは何処吹く風の如く、鼻歌を鳴らし続けている。
   本当にコイツのこういうところは、良い点でもあるが悪い点でもあるな。

   ゼンは、そう思いながら鞄からパイプタバコを取り出して火をつけた。

   ガルダンの言う通り、ゼンがサザレ村行を決めてから準備の間は、大荒れになった。

   まずそれをサウラ、ウィンドル、クリフ等に告げた時が本当に大変だった。
   クリフは、まず、護衛騎士として自分を連れてけと言ってきたがそれではテンロンでの食糧調達が危険な事になるのでそれを最優先に考える様に説得し、ウィンドルはとりあえず村復興の為の基礎工事の再度の確認を求めてきたのでそれの確認で済んだ。

   問題はサウラだった。
   サザレ村に行くと告げた時にサウラが同行したいと目を輝かせながら言い出したのだ。

   ゼンは、正直危険だと思って連れていきたくないっと説得したのだがサウラは頑なに頷くこと無く「行きたい」の一点張りだった。
   終いには、目に涙を貯めて始め、どうしたものかと困っている所に自分が彼女の護衛になるから連れて行ってあげてくれないかと助け舟を出してくれたのがウズロの娘で村出身で唯一の戦士のウルテアだった。

   正直まだ病み上がりで不安だったのだが手斧の一撃で木を真っ二つにしたのを見せられた時には、全員無言で頷く事しか出来なかった。

「あの、ゼン様?」

   ウルテアがフト、ゼンに声をかけた。

「なんだ?」

「いつも吸われているんですがそれはそんなに美味しいのですか?」

   そう言うとゼンの持つパイプタバコを指さした。

「ん~美味いとはちと違うかなぁ~」

   ゼンは、そう応えるとウルテアは、首を横に傾けた。

「コイツは、ハーブや薬草を乾燥させたのを燻した煙を吸っているんだが、簡単に言うと煙と香りを愉しむものなんだ」

「香りと煙をですか」

「そう、まぁ気を張らずにリラックスさせてくれるみたいな?」

「はぁ…」

   やはり通じないか…
   ゼンは、百聞は、一見にしかずと思い試させ様かと考えたが多分、それでも分からない可能性がある為、止めておいた。

「止めておけ、多分お前さんにはわからんよ」

  そんなゼンとウルテアの間に割って入ったのは、ガルダンだった。

「正直、俺もあれを試したが、わからんかったしな」

   あれは、親方が勢い良く吸い過ぎて噎せただけなのだがそれは、あえて何もいうまいっと思いゼンは、口を閉ざしてただ肩を竦めて煙をゆったりと吐いた。

「でも、ゼン様って本当に不思議ですよね~」

   鼻歌が飽きたのかサウラがゆったりと混ざってきた。

「唐突になんだよ?」

「いや、だって、薬草や野草、名前も何も知らないはずなのにそれの効能は言い当てるんですもん、なんで分かるんですか?」

「あっ、それなら俺も聞きたいわ、お前どうやってらあんなカラクリを思いつくんだよ」

   サウラの言葉に乗っかりガルダンも混ざりゼンの方へ全員の視線が向いた。

「あのさ、藪から棒にそんなこと言われても俺もなんて答えたら良いのかわからんよ?サウラのもそうだけど、親方のも何となく思いついてやってるだけだからな」

   ゼンは、煙を吐きながら応えて肩を竦めながら首を傾げた。
   しかし、ウルテアとバトカンはそんな2人の言ってる事が理解できないのか明らかに戸惑いで視線を泳がせていた。

「ゴメンなさい、何がどうなのか、正直分からないのですが…」

   ウルテアがそう言うとガルダンがバンバンと馬車をたたき出した。

「例えばこの馬車だ、本来この今この荷台にかなりの重さの食糧が置かれているのはわかるよな?」

   ガルダンの言葉にそっとウルテアは頷いて返した。

「そして、オッサンが2人乗ってるって事は、この馬車はかなりの重さだって事は、わかるよな?だがこの馬を見てみろよ」

   全員の視線が馬車の馬へ向けられるが馬は、何処吹く風の様に揚々とその歩みを続けた。

「これがどうしたんですか?」

   ウルテアは、ガルダンが何を言いたいのか分からず聞き返すとガルダンは、顎髭を触りながら口をへの字にした。

「本来ならこの馬一頭で運べる重さじゃないんだよ、例え運べたとしてももうちょい遅いし、苦しそうに息を切らすもんだ、だがコイツはそんな重さをほとんど感じちゃいない、なんでと思う?」

   ガルダンは、次に車輪に向かい指を刺した。

「車輪とこの荷台の繋がる場所に風の聖草を織り交ぜた布を一枚挟んでるからなんだよ、そうする事で聖草の力でこの荷台自体を持ち上げて重さを軽減させてるんだよ」

   それでもウルテアは、ガルダンの言葉の意味がわかってないのだろう、明らかな驚いた振りをしながらの声を上げた。
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