シンミトロア物語【異世界転生ビルダーの紀行】

山月 春舞《やまづき はるま》

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アシノ領主のお仕事【サザレ村へ】

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   そんな話をしていると風景は、草原から徐々に木々に覆われる森へと変わっていた。

「あっなんか見えてきましたね~」

  サウラの間の抜けた声と共に指差し。その先には高さ6mぐらいの石の壁が道を閉じる様に立ちはだかっていた。

「あれか?」

  ゼンは、そう聞くとバトカンは、大きく頷いた。

   平たい石で積まれた壁は、堂々とした風格で佇み、中央に大きな観音開きの木の門が閉ざされていた。

   バトカンは馬車を降りると木の門の立てかけていた片手用の木の鎚を手に取ると豪快に門を叩き始めた。

「帰ったぞ!!!」

   その言葉と共に何回か叩くと門の片方が歪な音を鳴らしながら開き、そこに屈強な男二人がひょっこりと顔を出した。

「村長!…その…食糧は?」

   剃髪の男が見た目に似つかわしくない声と表情で尋ね、バトカンは馬車を指差した。

「あの馬車の中にある。それとあの方々は領主様一行だ、中に入って頂く為に門を早く開けよ!」

   バトカンがそう告げると男達は慌てて門を力一杯引っ張り出した。
   地鳴りの様な低音を森の中に響かせながら門が開き、ゼン達はゆっくりとサザレ村の中へ入っていった。

    積み石の家が何棟も並び、その奥には岩壁開けられた巨大な洞窟が口を大きく開けている。
    洞窟の周りには、発掘した石の山が幾つも出来ていて、ゼンはそれを見ながら声を上げてしまった。

   方解石に石英、それに石炭に山砂、それに量も大量にある。

   ゼンが欲しかった資材が所狭しと並び放置されているのだ。

    ゼンは、馬を降りるとおもちゃ屋ではしゃぐ子供の様に石の山へと駆け寄り、一つ一つ手に取り石と石をぶつけながら確認して始めた。

「おい、ゼン。はしゃぐなよ」

   そんなゼンに呆れた声をかけたのは、ガルダんだがゼンは、そんなガルダンに大してニヤケながら振り向くとひとつの石を掲げた。

   断面が翡翠色に光るその石を見るとガルダンも目の色をかけてゼンに向かい駆け出した。

「おいおいおい!こりゃミスリル鉱石じゃねぇか!それも翡翠ってお前!」

「ヤバいでしょ親方!これはヤバイよ!!」

   いつの間にか2人て子供の様にはしゃぎながら石の山を漁り始めたがそれを諌めたのは、ウルテアの大きな咳払いだった。

「あの、お二方?ここに何をしに来たんでしたっけ?」

   そう言われてゼンの手が止まり、そっと振り返ると腕を組んで仁王立ちをするウルテアとそんな2人を見ながら何かを理解した様に頷くサウラ、そしてどうしたものかと戸惑うバトカンとサザレ村の一行達の視線が注がれていた。

「すまん、とりあえず…話をしようか、村の被害とか色々…」

   ゼンがそう言うとバトカンの家へとゼン案内された。
   ガルダンは、そんな様子など気にもかけることなかったので石の山に置いていった。

「それで、まずはあの石の山について聞きたいのだが」

   積み石の平屋、広さは10畳程度の広間に同じぐらいのサイズの寝室が二つある家だった。

   広間の中央には囲炉裏が置かれ、それを囲む様に皆が座るとゼンは早速口火を切った。

「あれは、使えない石ですので、もし宜しければお持ち帰り下さい」

   バトカンのその応えにゼンは立ち上がり「よし!!」っと大声を張り上げると再びウルテアの咳払いが入った。

「ゼン様、今はそれよりも熊の話だと思うのですが?」

   ゼンはそう言われると肩を竦めてそっと周りを見渡した。
   目に止まったのは壁に掛けられた鉄のツルハシにハンマーだった。

「ここに溶鉱炉何かもあるのか?」

「溶鉱炉?」

「鉄を溶かす窯と言うべきかな?」

「あぁ、ありますよ。鉄あっても使えないと生きていけないので…」

「だが製鉄技術は、無さそうだな。あのツルハシ結構脆いだろ?」

   そう言われるとバトカンは苦笑いを零しながら肩を落とした。

「ゼン様?」

   ウルテアがキッと睨みつけゼンは少しだけ背筋を伸ばした。
   もしかしたらセリーナよりウルテアの方が怖いかも…


「いや、多分ここに2、3日は、滞在するだろうからその間に親方に少しだけでも製鉄の方法を教わった方が良いと思ってな」

   ゼンがそう言うとウルテアの片眉が上がる。

「なんの為にですか?それは本当に必要ですか?」

「そりゃ勿論、ここからは取引の話にもなるからな」

   ゼンがそう言うとウルテアとバトカンの表情が変わった。

「バトカン、お前の村の蓄えたあの石の山と我々の食糧で物々交換しないか?」

「何故、急にそんな事を…我々にしては嬉しいお話なのですが…」

   唐突のゼンの申し出にバトカンは戸惑いながら聞くとゼンはゆっくりとバトカンを見つめた。

「お前達は、潤沢な食糧が欲しい、俺達は、石材の資源が欲しいっとなればそれを物々交換すればいい、いずれはお前達にも商売というものを覚えてもらうが今はそっちの方が楽だろう」

「しかし、それでは我々の食糧が枯渇してしまいます」

   ウルテアがそっと口を挟む。
   その言葉にゼンはゆっくりと肩を竦める。

「そこは、金で解決する。今もセリーナ達がテンロンへ食糧の買い出しをしている。暫くはそれで補うがあの村は、いずれ食糧には困らない村になる」

「なぜそう言い切れるのです?」

「お前達は、あの村やこの村以外を知らんかもしれんがあの村はかなりの肥沃な大地で出来ている、それにあの森、あそこには沢山の食糧の種が眠っているし、それに水だ。農作物や酪農なんかの元もなる水もまた素晴らしくいい」

「確かにあの村は多少他の村より食糧は、取れるでしょう、ですがそれにも限界があります」

「いんや、その限界は本当の限界じゃない」

「どういう意味ですか?」

「言葉の通りさ、農地はこれから拡大するし、イワンと約束した牛舎の建築も待っている。それらを揃えたら以前より何倍もの作物が取れる」

   ゼンのその言葉にウルテアは困惑の表情を浮かべたまま黙ってしまった。
   多分想像がつかないのだろう。
   だが、ゼンのこの1ヶ月の働きがその言葉を無下に否定出来ないものだと言うことも何処かで理解しているのだろうとゼンは、読み取っていた。
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