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アシノ領主のお仕事【サザレ村へ】
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どこまで高い木々が並び、何処までも続いている。
春とはいえ、日が傾くにつれて気温は下がっていく。
青々しい葉が日を遮り零れる木漏れ日も徐々に弱くなっていく。
そんな風景を見ながらゼンは周囲に目とマナの感覚を巡らせた。
やはり、おかしい。
もし、人を襲う程の熊が居るならもう少しマナが揺らいでいる筈だ。
なのにその感覚はなかった。
村長が嘘をついている?
そんな雰囲気も感覚もなかった。だからこそゼンは、物々交換の話を持って行った。だが話を聞く程の揺らぎはない。
これは、一体どういうことなのか?
「ちっ…」
これで何度目だろうか?
まだ剃髪された屈強な男が木にもたれながら腕を組み小さな舌打ちをしていた。
近くではウルテアが草花の中に今にも潜りそうになりながら見ているサウラの護衛に着いていた。
「気に食わないなら帰っていいんだぞ?どうせ俺達も直ぐに村に戻るからな」
ゼンがそう言うと剃髪の男は、慌てた表情を見せると木から離れて直立不動になった。
名はダハランっと言ったか、ゼン達が村を出る際に護衛として是非連れて行ってくれと紹介された。
本人も唐突な申し出に何か戸惑いながら半ば無理やり付き合わされているのだ面白くないのも分かるがそれをそんなにアリアリと出されてはこちらも集中できない、そう思ったゼンによる最大の配慮のつもりだったが本人はそうとは思えなかったのだろう、明らかに先程までの表情とは一変していた。
多分、隠し事ができないタイプだと判断しながらゼンは、再び森に目を向けた。
「なぁダハラン、お前は熊を見たのか?」
「へっ?あっ…はい…」
突然のゼンからの問にダラハン戸惑いながら返事をした。
「じゃあ、3人の遺体も見たのか?」
「えっ?……はい…遠目にですが…」
徐々にダラハンの表情がより曇っていく。
「村長は、見たのか?」
「はい…あれは酷いものでしたけど…村長はしっかりと目に焼き付けておりました…」
「酷い?遺体はどんなだったんだ?」
そう聞くとダラハンの表情が徐々に青ざめていく。
「全身切り裂かれ…顔などはグチャグチャで……」
「それでその遺体は、今どこに?燃やしたのか?」
そう聞くとダラハンは、首を大きく横に振った。
「ならば何処に?」
「村はずれの墓場に埋めました…」
「祈りを捧げたい、案内してくれるか?」
ゼンがそう言うとダラハンは、トボトボと歩き出し、ゼンはウルテアに声を掛けて合図を出すとウルテアは、サウラの体をヒョイっと持ち上げると肩に担ぎ着いてきた。
途中サウラが恨み言をボヤいていたが墓場に近づくにつれて真新しい何かを発見したのか再び草の中へ潜り始めた。
幾つもの無骨な石が規則的に並ぶそこは、確かに墓場なのだがゼンの知るモノとは違い、何とも質素に見えた。
「3人の墓はどれだ?」
ゼンがそうダラハンに聞くとダラハンは、ゆっくりと歩き出し、3つならんだ墓場の前に立った。
ゼンは、そこで妙なマナの動きを察知した。
1箇所の墓の前だけに妙な歪みがある。
エレメントは、恐らく同じなのだがそこだけ妙に加工された様に感じる。
「この真ん中の墓は、誰のだ?」
「そこが村長の娘のロベルさんの墓です…」
それを聞いたゼンは、そうかと言いながらゆっくりと墓の前に跪くと胸に拳を当てて祈った。
「ロベルの恋人は、確かダラントっと言うの名だったが、もしかして?」
「俺の弟です…」
そう言うとダラハンは、ゼンの横の墓に跪くと同じ仕草で祈りを捧げた。
「何とも、だらしない弟でしたよ」
ダラハンは、ボソリと呟くとゆっくりと立ち上がった。
「それでも大事な家族だったんだろ?」
その言葉にダラハンは、苦笑を漏らしながら肩を竦める。
「どうなんでしょ?正直俺はコイツが死んだ時に何処かホッとしてましたよ。俺には兄弟が10人います。ダラハンはその中で手の付けられない奴でした」
「だが、村長の娘と恋人だったんだろ?」
「アイツは嘘が上手かった。村の大人や強い奴らには、尻尾振るのが上手くてね、みんなアイツを好青年だとか言ってたが俺はもしコイツが次の村長になるならこの村を出ようと思ってましたよ」
ゼンは、ダラハンのそんな言葉に驚きながらも、もしもっという考えの辻褄があう様に感じていた。
「なんか、すいません…変な話しちまって…」
ダラハンは、そう言いながらゼンに向かい頭を深々と下げた。
「別に変な話じゃないさ、俺なんて腹違いの兄貴に小さい頃から何度も殺されかけてきたからな、家族だから必ず悲しいってのも絶対じゃないよな」
ゼンは、そう言いながらダラハンを見るとダラハンは、口をへの字に曲げながら何度か頷くだけだった。
暫くしてサウラが満足したのかゼン達の元へ駆け寄ってくるとゼンは、村に帰る事にした。
その夜、ゼン達は村長の家で一夜を明かすと次の日からガルダンは、村人達に製鉄方法を教えさせ、サウラは近場で取れた薬草などの煎じ方と効果を教えさせた。
ゼンは、そんな2人を他所に再び村の外に出ると近くの草花を見回っていた。
勿論その後ろには、周りを警戒するウルテアが離れずに立っていた。
ゼンのやる行動になんの意味があるのか分からないままだが、ウルテアは無言でその背中を守る様に立っていたがゼンは、本当はその必要性が無い事を分かり始めていた。
「ウルテア、お前に兄弟はいるか?」
終始無言なの少しだけ窮屈になってきたゼンが口を開くとウルテアは、首を横に振った。
「母は、私が産まれた時に亡くなり、父は母以外愛せなかったらしいので…」
「なるほど、ウズロらしい、一本筋の通った考え方だ、じゃあ恋人は?」
その問いには、ウルテアは苦笑を漏らしながら肩を竦めるだけだった。
男勝りな性格に屈強な体。嫁の貰い手は居ないとばかりに言う様だった。
ゼンは、そんなウルテアの反応に額をひとつ叩きながら。
「すまん、変なことを聞いたな」
そう謝罪しながらいくつかの草花をウェストポーチに仕舞うとウルテアの方を見た。
「少し足伸ばして滝壺の方へ行ってみたいんだがいいか?」
「私は、お止めしませんので、でも場所を知っているのですか?この深い森迷えば大変ですよ?」
ウルテアがそう聞くとゼンは、微かに笑いながら。
「大丈夫、そうだ道中暇だから魔術について少し話をしようと思うが、聞くか?」
そう言い、ウルテアは大きく頷いた。
春とはいえ、日が傾くにつれて気温は下がっていく。
青々しい葉が日を遮り零れる木漏れ日も徐々に弱くなっていく。
そんな風景を見ながらゼンは周囲に目とマナの感覚を巡らせた。
やはり、おかしい。
もし、人を襲う程の熊が居るならもう少しマナが揺らいでいる筈だ。
なのにその感覚はなかった。
村長が嘘をついている?
そんな雰囲気も感覚もなかった。だからこそゼンは、物々交換の話を持って行った。だが話を聞く程の揺らぎはない。
これは、一体どういうことなのか?
「ちっ…」
これで何度目だろうか?
まだ剃髪された屈強な男が木にもたれながら腕を組み小さな舌打ちをしていた。
近くではウルテアが草花の中に今にも潜りそうになりながら見ているサウラの護衛に着いていた。
「気に食わないなら帰っていいんだぞ?どうせ俺達も直ぐに村に戻るからな」
ゼンがそう言うと剃髪の男は、慌てた表情を見せると木から離れて直立不動になった。
名はダハランっと言ったか、ゼン達が村を出る際に護衛として是非連れて行ってくれと紹介された。
本人も唐突な申し出に何か戸惑いながら半ば無理やり付き合わされているのだ面白くないのも分かるがそれをそんなにアリアリと出されてはこちらも集中できない、そう思ったゼンによる最大の配慮のつもりだったが本人はそうとは思えなかったのだろう、明らかに先程までの表情とは一変していた。
多分、隠し事ができないタイプだと判断しながらゼンは、再び森に目を向けた。
「なぁダハラン、お前は熊を見たのか?」
「へっ?あっ…はい…」
突然のゼンからの問にダラハン戸惑いながら返事をした。
「じゃあ、3人の遺体も見たのか?」
「えっ?……はい…遠目にですが…」
徐々にダラハンの表情がより曇っていく。
「村長は、見たのか?」
「はい…あれは酷いものでしたけど…村長はしっかりと目に焼き付けておりました…」
「酷い?遺体はどんなだったんだ?」
そう聞くとダラハンの表情が徐々に青ざめていく。
「全身切り裂かれ…顔などはグチャグチャで……」
「それでその遺体は、今どこに?燃やしたのか?」
そう聞くとダラハンは、首を大きく横に振った。
「ならば何処に?」
「村はずれの墓場に埋めました…」
「祈りを捧げたい、案内してくれるか?」
ゼンがそう言うとダラハンは、トボトボと歩き出し、ゼンはウルテアに声を掛けて合図を出すとウルテアは、サウラの体をヒョイっと持ち上げると肩に担ぎ着いてきた。
途中サウラが恨み言をボヤいていたが墓場に近づくにつれて真新しい何かを発見したのか再び草の中へ潜り始めた。
幾つもの無骨な石が規則的に並ぶそこは、確かに墓場なのだがゼンの知るモノとは違い、何とも質素に見えた。
「3人の墓はどれだ?」
ゼンがそうダラハンに聞くとダラハンは、ゆっくりと歩き出し、3つならんだ墓場の前に立った。
ゼンは、そこで妙なマナの動きを察知した。
1箇所の墓の前だけに妙な歪みがある。
エレメントは、恐らく同じなのだがそこだけ妙に加工された様に感じる。
「この真ん中の墓は、誰のだ?」
「そこが村長の娘のロベルさんの墓です…」
それを聞いたゼンは、そうかと言いながらゆっくりと墓の前に跪くと胸に拳を当てて祈った。
「ロベルの恋人は、確かダラントっと言うの名だったが、もしかして?」
「俺の弟です…」
そう言うとダラハンは、ゼンの横の墓に跪くと同じ仕草で祈りを捧げた。
「何とも、だらしない弟でしたよ」
ダラハンは、ボソリと呟くとゆっくりと立ち上がった。
「それでも大事な家族だったんだろ?」
その言葉にダラハンは、苦笑を漏らしながら肩を竦める。
「どうなんでしょ?正直俺はコイツが死んだ時に何処かホッとしてましたよ。俺には兄弟が10人います。ダラハンはその中で手の付けられない奴でした」
「だが、村長の娘と恋人だったんだろ?」
「アイツは嘘が上手かった。村の大人や強い奴らには、尻尾振るのが上手くてね、みんなアイツを好青年だとか言ってたが俺はもしコイツが次の村長になるならこの村を出ようと思ってましたよ」
ゼンは、ダラハンのそんな言葉に驚きながらも、もしもっという考えの辻褄があう様に感じていた。
「なんか、すいません…変な話しちまって…」
ダラハンは、そう言いながらゼンに向かい頭を深々と下げた。
「別に変な話じゃないさ、俺なんて腹違いの兄貴に小さい頃から何度も殺されかけてきたからな、家族だから必ず悲しいってのも絶対じゃないよな」
ゼンは、そう言いながらダラハンを見るとダラハンは、口をへの字に曲げながら何度か頷くだけだった。
暫くしてサウラが満足したのかゼン達の元へ駆け寄ってくるとゼンは、村に帰る事にした。
その夜、ゼン達は村長の家で一夜を明かすと次の日からガルダンは、村人達に製鉄方法を教えさせ、サウラは近場で取れた薬草などの煎じ方と効果を教えさせた。
ゼンは、そんな2人を他所に再び村の外に出ると近くの草花を見回っていた。
勿論その後ろには、周りを警戒するウルテアが離れずに立っていた。
ゼンのやる行動になんの意味があるのか分からないままだが、ウルテアは無言でその背中を守る様に立っていたがゼンは、本当はその必要性が無い事を分かり始めていた。
「ウルテア、お前に兄弟はいるか?」
終始無言なの少しだけ窮屈になってきたゼンが口を開くとウルテアは、首を横に振った。
「母は、私が産まれた時に亡くなり、父は母以外愛せなかったらしいので…」
「なるほど、ウズロらしい、一本筋の通った考え方だ、じゃあ恋人は?」
その問いには、ウルテアは苦笑を漏らしながら肩を竦めるだけだった。
男勝りな性格に屈強な体。嫁の貰い手は居ないとばかりに言う様だった。
ゼンは、そんなウルテアの反応に額をひとつ叩きながら。
「すまん、変なことを聞いたな」
そう謝罪しながらいくつかの草花をウェストポーチに仕舞うとウルテアの方を見た。
「少し足伸ばして滝壺の方へ行ってみたいんだがいいか?」
「私は、お止めしませんので、でも場所を知っているのですか?この深い森迷えば大変ですよ?」
ウルテアがそう聞くとゼンは、微かに笑いながら。
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そう言い、ウルテアは大きく頷いた。
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