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アシノ領主のお仕事【サザレ村へ】
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村に戻る頃には、日が傾いていた。
ある程度の教え終わったのか、ガルダン達はひと足早くバトカンの家でくつろいでいた。
「おう、お帰り、馬車に鉱石や頼まれてた物は、積み込んでもらっておいたぞ」
ゼンが家に入ると同時に目の合ったガルダンが言った。
「ありがとう、親方。とりあえず明日の朝一でこの村を出るつもりだから準備しておいて」
「熊の件どうなったんだよ?」
「大体の事は、分かったかな」
「退治できそうか?」
そう聞かれるとゼンは、首を傾けて黙ってしまった。
「多分無理じゃないかな?」
「おい、じゃあ、この村はどうするんだよ?」
ガルダンは、慌てた声を上げたがゼンは冷静に肩を竦めた。
「退治の必要が無いってことさ、多分この村に熊は、現れなくなると思うから」
ゼンは、そう言うと部屋の奥へ向かった。そんなゼンの様子を変に思いながらもガルダンはこれ以上話す気が無いのも察したのだろう、それ以降何も言うことは、なかった。
ゼンはその後、湯浴びを済ませるとバトカンが準備してくれた食事を済ませ、寝床に着いた。
時刻は、深夜。
静寂と虫の音が鳴り響く真夜中。
ゼンは、目を開けると静かにバトカンの家を後にした。
村の出入口付近に到着した時だった。
妙な気配に振り返ると暗闇に2つの人影が立っていた。
ゼンは、ため息を漏らしながら腰元にあった火聖石の火打ち棒を取り出し灯すと2つの人影を照らした。
「こんな真夜中にどうしたんですか?ゼン様?」
「1人の出歩きは、危ないですよ」
のんびりとした声を上げるサウラと相変わずの硬い表情をしたウルテアがそこに立っていた。
「お前らこそ、人をわざわざつけてくるってのは、どういうつもりだ?」
ゼンは、そう言いながら火打ち棒の灯りを消すと2人に問いかけた。
「だってこんな真夜中に静かに出かけるなんて絶対悪い事をしそうだなぁ~って好奇心でついてきました」
サウラは清々しい程の無邪気な返答をしウルテアは、少し険しい表情を浮かべていた。
「昼間の様子が気になったので、どうしても…」
正直、今からゼンがすること、そして熊の件を暴く事は気持ちのいいものでは、ない。
きっと逆に気分の悪い嫌な残り方をする事だとゼンは、踏んでいた。
だからこそ他の誰も巻き込みたくなかったのだがこの2人の表情を見る限り、きっと何を言っても譲らないだろうと悟ったゼンは、ため息だけを漏らして村の門の前に立った。
ゼンは、門の片方に手を触れると風のエレメントを使い、門を静かにゆっくりと少しだけ開けた。
「付いてくるなら好きにしろ」
ゼンは、それだけ告げると門近くにあった木のスコップ持って門を出た。
後からサウラとウルテアがゼンに習う様に静かに着いてくる。
夜の森は、昼とは違い暗く不気味で鬱蒼とした草花がより深い影を落とし何処か重い雰囲気を出していた。
「足元に気をつけろよ」
ゼンは、後ろから着いてくる2人を気にかけながら前を歩く。
「どこに向かうんですかぁ~」
サウラは、相変わらずの緩い声を漏らし、ウルテアはその逆で何時よりも重い緊迫感を出していた。
「墓場だよ」
ゼンがサラリと応えると短い悲鳴と驚きの声が2つ聞こえてきた。
悲鳴の正体はウルテアで驚きの声を上げたのは、サウラだった。
「なっ…なんの、為に…そんな恐ろしいことを!?」
声を震わせながらウルテアが聞いた。少しキーを上げたら悲鳴にも似た声にゼンは苦笑しながら首を傾げた。
「証拠が欲しいのさ、もし俺が思っている通りなら、あれは偽物だからな」
「にっ…偽物って…なんですか?」
「それが何かを確かめたいのさ」
ゼンは、そう言いながら木々を分けながら進んで行った。
程なくして墓場の辺りに着くと火付け棒に火を灯し、周りを見て墓場を見つけると火付け棒をウルテアに渡した。
「そのまま、持っていれば火は、消えないから大丈夫だ」
ゼンがそう言いながら渡すとウルテアは恐る恐る火付け棒を手に取った。
「そこで照らしておいてくれ」
ゼンは、そう告げるとスコップを持ち1つの墓の前を掘り始めた。
「誰のお墓ですか?」
サウラは、ウルテアの隣に腰を曲げて座りながら聞いてきた。
「ロベルだ」
ゼンは、短めに応えながら地面を掘る事に集中したがサウラはそんなゼンを見ながら首を横に傾けた。
「なんでロベルさんお墓なんですか?」
少し息を切らせながらゼンは、穴を掘り進めた。
「この地だけが異様なマナを発しているからだよ。お前だって気づいてたろ?」
ゼンにそう言われるとサウラは、少しだけ視線を空に泳がせながら、はて?っと言いたげな表情を浮かべた。
このやろー…ゼンはそう言いそうになりながら少し表情を歪めながら軽く睨むがサウラは何処吹く風かの様な表情でゼンを見返していた。
ガコン
話しても埒が明かないと思ったゼンは、そこから無言で掘り進め様とした矢先、スコップの先が硬い何かにぶつかった。
音からすると石などでは無い。
「灯りを照らしてくれ」
そう言うと慌てたウルテアが掘っていた穴を照らした。
ゼンは、スコップを使い周りの土を払うと木目が板が土の中から顔出した。
「少し離れてくれ」
ゼンは、それを見つけると地面に向かい手を翳した。
術具の石無しに呼び出すのは、久し振りだがらどうなるのか…
そんなことを考えながら大地に向かいルンを流した。
アルカナを通じて土のエレメントが共鳴するのを感じる。頭の中にその姿を想像しながら回路を繋げていく。
すると、周りの土がゆっくりと形作られていき、巨大な2本の腕が大地から伸びると同時に木の板の周りの土が抉られて行った。
ウルテアは、大地の動きに驚きながら、サウラに近づくと、見慣れている筈のサウラだがそれを見ながら呑気に「おぉ~」っという声を上げながら拍手をしていた。
大地から伸びた腕は、ゆっくりと起き上がる様に体を作り、足を作っていく。
「素で呼ぶのは、久し振りだなゴル」
巨大な2本の腕を持つ土の人形、ゴルはゆっくりとその場に座るとゼンの言葉に返事をする様に頷いた。
「さてと」
そして、ゼンの視線は、ゴルが出た時に出来た穴へと移動した。
そこには、木の棺がただ静かに横たわっている。
ある程度の教え終わったのか、ガルダン達はひと足早くバトカンの家でくつろいでいた。
「おう、お帰り、馬車に鉱石や頼まれてた物は、積み込んでもらっておいたぞ」
ゼンが家に入ると同時に目の合ったガルダンが言った。
「ありがとう、親方。とりあえず明日の朝一でこの村を出るつもりだから準備しておいて」
「熊の件どうなったんだよ?」
「大体の事は、分かったかな」
「退治できそうか?」
そう聞かれるとゼンは、首を傾けて黙ってしまった。
「多分無理じゃないかな?」
「おい、じゃあ、この村はどうするんだよ?」
ガルダンは、慌てた声を上げたがゼンは冷静に肩を竦めた。
「退治の必要が無いってことさ、多分この村に熊は、現れなくなると思うから」
ゼンは、そう言うと部屋の奥へ向かった。そんなゼンの様子を変に思いながらもガルダンはこれ以上話す気が無いのも察したのだろう、それ以降何も言うことは、なかった。
ゼンはその後、湯浴びを済ませるとバトカンが準備してくれた食事を済ませ、寝床に着いた。
時刻は、深夜。
静寂と虫の音が鳴り響く真夜中。
ゼンは、目を開けると静かにバトカンの家を後にした。
村の出入口付近に到着した時だった。
妙な気配に振り返ると暗闇に2つの人影が立っていた。
ゼンは、ため息を漏らしながら腰元にあった火聖石の火打ち棒を取り出し灯すと2つの人影を照らした。
「こんな真夜中にどうしたんですか?ゼン様?」
「1人の出歩きは、危ないですよ」
のんびりとした声を上げるサウラと相変わずの硬い表情をしたウルテアがそこに立っていた。
「お前らこそ、人をわざわざつけてくるってのは、どういうつもりだ?」
ゼンは、そう言いながら火打ち棒の灯りを消すと2人に問いかけた。
「だってこんな真夜中に静かに出かけるなんて絶対悪い事をしそうだなぁ~って好奇心でついてきました」
サウラは清々しい程の無邪気な返答をしウルテアは、少し険しい表情を浮かべていた。
「昼間の様子が気になったので、どうしても…」
正直、今からゼンがすること、そして熊の件を暴く事は気持ちのいいものでは、ない。
きっと逆に気分の悪い嫌な残り方をする事だとゼンは、踏んでいた。
だからこそ他の誰も巻き込みたくなかったのだがこの2人の表情を見る限り、きっと何を言っても譲らないだろうと悟ったゼンは、ため息だけを漏らして村の門の前に立った。
ゼンは、門の片方に手を触れると風のエレメントを使い、門を静かにゆっくりと少しだけ開けた。
「付いてくるなら好きにしろ」
ゼンは、それだけ告げると門近くにあった木のスコップ持って門を出た。
後からサウラとウルテアがゼンに習う様に静かに着いてくる。
夜の森は、昼とは違い暗く不気味で鬱蒼とした草花がより深い影を落とし何処か重い雰囲気を出していた。
「足元に気をつけろよ」
ゼンは、後ろから着いてくる2人を気にかけながら前を歩く。
「どこに向かうんですかぁ~」
サウラは、相変わらずの緩い声を漏らし、ウルテアはその逆で何時よりも重い緊迫感を出していた。
「墓場だよ」
ゼンがサラリと応えると短い悲鳴と驚きの声が2つ聞こえてきた。
悲鳴の正体はウルテアで驚きの声を上げたのは、サウラだった。
「なっ…なんの、為に…そんな恐ろしいことを!?」
声を震わせながらウルテアが聞いた。少しキーを上げたら悲鳴にも似た声にゼンは苦笑しながら首を傾げた。
「証拠が欲しいのさ、もし俺が思っている通りなら、あれは偽物だからな」
「にっ…偽物って…なんですか?」
「それが何かを確かめたいのさ」
ゼンは、そう言いながら木々を分けながら進んで行った。
程なくして墓場の辺りに着くと火付け棒に火を灯し、周りを見て墓場を見つけると火付け棒をウルテアに渡した。
「そのまま、持っていれば火は、消えないから大丈夫だ」
ゼンがそう言いながら渡すとウルテアは恐る恐る火付け棒を手に取った。
「そこで照らしておいてくれ」
ゼンは、そう告げるとスコップを持ち1つの墓の前を掘り始めた。
「誰のお墓ですか?」
サウラは、ウルテアの隣に腰を曲げて座りながら聞いてきた。
「ロベルだ」
ゼンは、短めに応えながら地面を掘る事に集中したがサウラはそんなゼンを見ながら首を横に傾けた。
「なんでロベルさんお墓なんですか?」
少し息を切らせながらゼンは、穴を掘り進めた。
「この地だけが異様なマナを発しているからだよ。お前だって気づいてたろ?」
ゼンにそう言われるとサウラは、少しだけ視線を空に泳がせながら、はて?っと言いたげな表情を浮かべた。
このやろー…ゼンはそう言いそうになりながら少し表情を歪めながら軽く睨むがサウラは何処吹く風かの様な表情でゼンを見返していた。
ガコン
話しても埒が明かないと思ったゼンは、そこから無言で掘り進め様とした矢先、スコップの先が硬い何かにぶつかった。
音からすると石などでは無い。
「灯りを照らしてくれ」
そう言うと慌てたウルテアが掘っていた穴を照らした。
ゼンは、スコップを使い周りの土を払うと木目が板が土の中から顔出した。
「少し離れてくれ」
ゼンは、それを見つけると地面に向かい手を翳した。
術具の石無しに呼び出すのは、久し振りだがらどうなるのか…
そんなことを考えながら大地に向かいルンを流した。
アルカナを通じて土のエレメントが共鳴するのを感じる。頭の中にその姿を想像しながら回路を繋げていく。
すると、周りの土がゆっくりと形作られていき、巨大な2本の腕が大地から伸びると同時に木の板の周りの土が抉られて行った。
ウルテアは、大地の動きに驚きながら、サウラに近づくと、見慣れている筈のサウラだがそれを見ながら呑気に「おぉ~」っという声を上げながら拍手をしていた。
大地から伸びた腕は、ゆっくりと起き上がる様に体を作り、足を作っていく。
「素で呼ぶのは、久し振りだなゴル」
巨大な2本の腕を持つ土の人形、ゴルはゆっくりとその場に座るとゼンの言葉に返事をする様に頷いた。
「さてと」
そして、ゼンの視線は、ゴルが出た時に出来た穴へと移動した。
そこには、木の棺がただ静かに横たわっている。
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