シンミトロア物語【異世界転生ビルダーの紀行】

山月 春舞《やまづき はるま》

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アシノ領主のお仕事【サザレ村へ】

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   ゼンは、ゆっくりと土を払いながら棺の蓋に手を掛けた。

「本当に…開けるんですか?」

   恐る恐る尋ねるウルテアに対してゼンは、笑いかけると勢いをつけて棺の蓋を開けた。

   留め具は、なかったが蓋には、重くなる様に細工をされていたがゼンは、時折休憩を挟みながら棺をずらす事が出来た。

「灯りを」

   棺をずらし、ゼンは息を整えながらウルテアの方に手を伸ばしたがウルテアは、ただ真っ直ぐゼンを見つめながら静止していた。

   ゼンは、ゆっくりと頷きながら再度手を伸ばしウルテアの手からゆっくりと火付き棒を受け取り、棺の中身を照らした。
   そこには、静かに眠る黒髪の少女がいた。
   出来るだけ生前の姿に戻そうと試みだろう、傷口を隠す様に糸が縫われていた。

   ゼンは、指先でその顔にそっと触れる。

「やっぱりな」

   そう言いながらゼンは、ウルテアとサウラを見た。

「この遺体は、偽物だ。土の魔術を使ってる」

   そう言いながらゼンは、サウラに向かい見る様に促すとサウラは、ゆっくりとした動作で棺の中を伺った。

「本当だ、腐ってない、それに多分防腐処理もされてませんね、これ」

   ゼンは、サウラの言葉に頷きながら腰元のナイフを抜くと遺体の喉元に突き立てた。

「ちょっ!何を!!」

   流れる様なゼンの作業にウルテアの非難の声はナイフを突き立てた後に発せられたが、ゼンはその声を気にする様子を見せること無く、そのままにナイフで縦に割くとゆっくりと横に倒して傷口の奥を見せた。

   ウルテアは、目を瞑りそうになるのを必死で堪えながら傷口を睨みつける様に見ると、そこには、木の板が見えた。
   流れる血はなく、そこににあったのは、暗い空道と1本の細長い木の板だった。

「木で人形作ったんですかね?」

   サウラがそれを見ながら呟き、ゼンは肩を竦めた。

「骨組みだけな」

「でも、それを数時間の間に3体も作ったんでしょうか?」

「いや、作られた遺体はこれ1体だろう、それに多分これは以前から作られててた可能性が高いしな」

「1体?じゃあ、2人の死体は?」

   ゼンの発言にウルテアが気づき聞くとゼンは、険しい表情をした。

「恐らく本物だ」

   そう言うと、ウルテアは絶句したままロベルの死体人形を凝視した。

   だから連れて来たくなかった。
   ゼンは、ウルテアの表情を見ながら少し後悔していた。
   正直これは、気持ちのいい話ではない。

   ゴルが何かに気づきゆっくりと動くと一方方向を向き、大きな手をゆっくりと持ち上げた。

「おいでなすったか」

   ゼンは、そう言いながら穴から出るとゴルの向く方向に火付け棒を向けた。

「出てこいよ、ロベル」

   ウルテアは、ゼンのその言葉に手斧抜き、ゆっくりとサウラを庇う様に立った。

「貴方は、誰?」

   何処までも続く暗闇の木々から女性の声が響いた。

「俺は、ゼン・ヤマダル、アシノ領の領主になった者だ。もしお前が出てこない、話さないと言うなら俺はこれを村で晒すだけだぞ?」

「脅すの?」

「お前の出方次第だ。こっちだって争いたいワケじゃない」

「なら放って置いて貰えない?」

「それは、都合良すぎだろ?熊の騒ぎだってお前らが起こした事だろう?それを放っておく事も出来ないんでな」

   沈黙が走る、しかしゼンは微動だにせず、一方を見ていると、木の影から2つの人影がゆっくりと現れてこちらに向かってきた。

   火の灯りが届き、そこには静かに眠る死体人形と同じ顔がゆっくりと現れた。
   違いがあるとすればその顔には傷が無く、生気が満ちている事だった。

   そしてもう1つ人影は、茶色の短髪の無骨な顔立ちの男が何処か怯えた様子でゼンを見ていたが何故脅えているのかは、その耳を見て直ぐにわかった。

   尖った耳、それはエルフの特徴だった。

「やはり、エルフか。お前がこの人形を作ったんだな」

   そう問うと無骨な顔のエルフの男は頷いた。

「名は?」

「ダスティン」

   エルフの男、ダスティンは、呟く様な声で応えた。

「熊の騒ぎが困るってどういうこと?」

   ダスティンを庇う様に前に出るロベルがゼンを睨み付けながら聞いてきた。

「言葉の通りさ、俺はアシノ領主だ、そしてサザレ村はアシノ領地だ、熊騒ぎで食糧不足に陥っているでな、そうだと下手したら村の壊滅も有り得る、それはこっちとしても避けたいんだよ」

「私達にどうしろっていうのよ?」

「正確に言えば用があるのは、ロベルお前じゃない、ダスティンお前だ」

   ゼンは、そう言いながらダスティンを見るとダスティンは、唾を飲むとゆっくりと口を開いた。

「私にどうしろと?」

「巨大熊の死体を作ってくれ、それを森の何処でもいい放置しておいて欲しい」

「何を言っているんですか!!?」

   ゼンの言葉に吠えたのは、ウルテアだった。
   しかし、ゼンはそんなウルテアの行動に一切驚く様子を見せる事無くゆっくりと振り返った。

「相変わらずねウルテア」

   そんなゼンより口を開いたのは、ロベルだった。

「ロベル、お前は何をしているのかわかっているのか?村人を殺したんだぞ?お前の父親が守ってきた大事な村人を!!」

「だから何?その為に私がどうしてこんな事をしたのかアンタに分かるの?」

「そんな事をわかるわけがない!」

「なら黙っててよ!他の村の事じゃない!アンタには、関係ない!」

「何を…」

   ウルテアの手斧持つ手に力が入るのを確認するとゼンが2人の問答を止める様に二人の間に割って入った。

「そこまでだ、ウルテア」

   ゼンがそう言うと一瞬ウルテアは、ゼンをきつく睨んだが口を真一文字に閉じながらゆっくりと一歩下がった。

「アンタは、どうなの?領主様?熊の死体あれば納得するなんて本当に言ってるの!?」

   怒りに狂った様に続けるロベルにゼンは、ため息をひとつ漏らした。

「本当に言ってるけど、信用出来ないならやらなくてもいいぞ?だが困るのは、お前やダスティンだが?」

   ロベルとは、対照的に冷静な口調でゼンは、語り。その温度差からロベルは何も返さず静かにゼンを睨んだ。

「このまま、熊の事が片付かないなら、冒険者や城の騎士に頼んでこの森を討伐隊が捜索するだけだ、そうなれば下手したら隠れて住むエルフの集落にその手は伸びるし下手したら壊滅に追い込まれる、それを覚悟で言ってるなら俺は止めないが?」

   これは、確実な脅しだった。
   だが、そこに嘘は無い。
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