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アシノ領主のお仕事【サザレ村へ】
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エルフという存在がこの大陸では、邪悪な存在として疎まれている。
これは、200年前の宗教団の対等が一番の遺恨になっていた。
ハリーホーンという男が起こした宗教団[イロスカー]という団体はこの地、アシノ領で生まれトライダムの大陸をゆっくりと支配していた。
そのハリーホーンこそエルフだったのだ。
幾つもの魔術を使い、その当時あったゼカン国の支配領地をその手中に収めて行った。
事態を重く見た、ゼカン国は討伐軍を設立し、イロスカーを攻め、滅ぼしたのだ。
その時に魔術で多くの兵士を失い、彼等もまた魔術を操る事で対抗し、勝つ事が出来たと歴史には、記されていた。
その歴史は200年経った今も語り継がれ、人間という種族はエルフに対して邪悪なイメージを持っていた。
しかし、ゼンは、それとは違う解釈もしていた。
「もし、熊の死体を作ったら見逃してもらえるんですか?」
ゼンの脅しに応えたのはロベルの後ろで静かに怯えながら此方を見ていたダスティンだった。
「それがあれば呼ぶ必要ないからな、だがこれ以上騒ぎになれば金になると踏んだ冒険者達が現れたら厄介だぞ?お前だって知ってるだろ?村に金がなくてもその山の鉱石は見る者が見れば金の山だ」
ゼンの返しにダスティンは、黙り込みゆっくりと振り返り、そびえ立つ山に目を向けた。
「ゼン様本気ですか?邪悪な種族ですよ!?」
ウルテアが再度吠え、ゼンは少しだけ振り返った。
「本当にエルフは、邪悪な種族か?」
その問いに、ウルテアは困惑の表情を浮かべた。
「確かに魔術、自然学、植物学、そこら辺の知識や力は俺達より優れた人種だ、しかし彼等は賢いからこそ、それを違えた使い方をしていないんじゃないかと俺は考えている」
「どういうことですか…?」
「もし、本当に邪悪な使い方をしているなら、シグモ国は、存在してないってことだよ」
それでもウルテアは、納得出来ないといった表情のまま、ゼンから視線を逸らした。
「何故貴方は、我々をそう見ているのですか?」
ダスティンがそっと問うとゼンは肩を竦めた。
「逆だ、俺は人間をそんなに良い者だと見てないだけだ、小さい頃から腹違いの兄弟に毒殺されかけて来たんだ、そう思うのも普通だろ?」
ゼンが苦笑いしながら応えるとダスティンは、悲しそうな目でゼンを見た。
「貴方は優しい人なんですね、彼女に何があったのか知っている。そして今回の事も大体わかっているですね、だから僕等を責めない、断罪しないですね」
「さぁな、だけどロベルが身体中傷を負っている事から察するにダラントから日常的に暴力を受けていたってのだけはわかった」
ゼンがそう言うとロベルが自分の体を守る様にその体を抱き締めた。
「な…なっなんでそんなこと分かるのよ!?」
ロベルの服装は全身を隠す様に長袖のシャツに長ズボンを履き、その上からローブを羽織っている。だがゼンは、ロベルの歩き方と風のルンの流れでそれを察知していた。
そんなロベルの肩に優しくダスティンの手が置かれた。
「彼は、魔術を使える、だから見えるんだよ」
そう諭す様に告げるとロベルの瞳に涙が溜まっていった。
「…どういう…事ですか?ゼン様…」
掠れる様な声でウルテアが口を開いた。
「ロベルは、恐らく日常的にダラントから暴力を受けていたんだろ、それも陰湿に服で傷が見えない部分、殴ったり蹴ったりか道具も使っていたのかもな、骨も幾つかヒビが入ってるし、骨折して変な繋がり方をしている部分もある」
「だけど、それが何故ダラントの仕業だと?」
「じゃなかったら殺されていない」
ゼンの言葉にダスティンとロベルの肩が揺れた。
「ゴメンなさい、話が見えないですが…」
ウルテアは、再度ゼンに応えを求め、ゼンはそんなウルテアを見ると次にダスティン達に目を向けた。
「間違えてたら教えてくれ、あくまで俺が現場見て想像した内容だからな」
その言葉にダスティンは、ゆっくりと頷いた。
「恐らく、ロベルは日常的にダラントから暴力を受けていた。そしてそんな時に逃げていたのがあの滝壺だった。そこでその場を訪れたダスティンと知り合った、多分ロベルの傷を癒していたんだろ、その内、2人は恋仲になった。だけどエルフと人間だ、結婚なんて認められない。なんならロベルには、便宜上とは言えダラントって恋人が居たんだからな、だから2人は考えたんだ2人だけで生きていこうと、だろ?」
ダスティンは、静かに頷き、ゼンは続けた。
「だから駆け落ちをしようとしたがただ消えただけじゃ森の捜索をされてエルフの集落が見つかるかもしれない、そうなってしまえば余計な所に被害が生まれてしまう。だからロベルの人形を作ったんだよ」
「何故、人形を作ったのです?」
ウルテアがそっと聞くとゼンはパイプたばこを取り出し咥えた。
「もし、駆け落ちした時、2人を探すのは人間だ。エルフは、そこまで大々的に捜索は出来ない。ましてや何処かを焼くと滅ぼすとかの行為はしないし出来ない」
「何故ですか?」
「彼等は追われる種族であって追う種族じゃない。もし下手に人間に手を出せば今度こそ絶滅まで追い込まれる可能性がある、それは避けたい筈だ、だからこそ彼等は大きな動きは出来ない」
その応えが理解ができたのかウルテアは黙り、ゼンは、パイプタバコに火を灯し紫煙を吐きながら続けた。
「そして、1か月前のあの日が決行日だったんだろ、2人は滝壺で落ち合う約束していた、だがそれを知ったダラントがそこに現れたんだ、仲間を連れてな」
ダスティンの肩が揺れた。
「恐らくダスティンは遅れて来たんだろ。彼が到着した時には先に来たダラント達に乱暴されるロベルを見てしまった、そして激昂し、魔術を使ったんだよな?」
ゼンの問いにダスティンは、深く目をつぶりながら頷いた。
「どんな魔術を使ったんですか?」
サウラがボヤっとした声で聞くとゼンは、落ちている枝を1本拾うとルンを流し込むとその枝を1本の木に突き立てた。
これは、200年前の宗教団の対等が一番の遺恨になっていた。
ハリーホーンという男が起こした宗教団[イロスカー]という団体はこの地、アシノ領で生まれトライダムの大陸をゆっくりと支配していた。
そのハリーホーンこそエルフだったのだ。
幾つもの魔術を使い、その当時あったゼカン国の支配領地をその手中に収めて行った。
事態を重く見た、ゼカン国は討伐軍を設立し、イロスカーを攻め、滅ぼしたのだ。
その時に魔術で多くの兵士を失い、彼等もまた魔術を操る事で対抗し、勝つ事が出来たと歴史には、記されていた。
その歴史は200年経った今も語り継がれ、人間という種族はエルフに対して邪悪なイメージを持っていた。
しかし、ゼンは、それとは違う解釈もしていた。
「もし、熊の死体を作ったら見逃してもらえるんですか?」
ゼンの脅しに応えたのはロベルの後ろで静かに怯えながら此方を見ていたダスティンだった。
「それがあれば呼ぶ必要ないからな、だがこれ以上騒ぎになれば金になると踏んだ冒険者達が現れたら厄介だぞ?お前だって知ってるだろ?村に金がなくてもその山の鉱石は見る者が見れば金の山だ」
ゼンの返しにダスティンは、黙り込みゆっくりと振り返り、そびえ立つ山に目を向けた。
「ゼン様本気ですか?邪悪な種族ですよ!?」
ウルテアが再度吠え、ゼンは少しだけ振り返った。
「本当にエルフは、邪悪な種族か?」
その問いに、ウルテアは困惑の表情を浮かべた。
「確かに魔術、自然学、植物学、そこら辺の知識や力は俺達より優れた人種だ、しかし彼等は賢いからこそ、それを違えた使い方をしていないんじゃないかと俺は考えている」
「どういうことですか…?」
「もし、本当に邪悪な使い方をしているなら、シグモ国は、存在してないってことだよ」
それでもウルテアは、納得出来ないといった表情のまま、ゼンから視線を逸らした。
「何故貴方は、我々をそう見ているのですか?」
ダスティンがそっと問うとゼンは肩を竦めた。
「逆だ、俺は人間をそんなに良い者だと見てないだけだ、小さい頃から腹違いの兄弟に毒殺されかけて来たんだ、そう思うのも普通だろ?」
ゼンが苦笑いしながら応えるとダスティンは、悲しそうな目でゼンを見た。
「貴方は優しい人なんですね、彼女に何があったのか知っている。そして今回の事も大体わかっているですね、だから僕等を責めない、断罪しないですね」
「さぁな、だけどロベルが身体中傷を負っている事から察するにダラントから日常的に暴力を受けていたってのだけはわかった」
ゼンがそう言うとロベルが自分の体を守る様にその体を抱き締めた。
「な…なっなんでそんなこと分かるのよ!?」
ロベルの服装は全身を隠す様に長袖のシャツに長ズボンを履き、その上からローブを羽織っている。だがゼンは、ロベルの歩き方と風のルンの流れでそれを察知していた。
そんなロベルの肩に優しくダスティンの手が置かれた。
「彼は、魔術を使える、だから見えるんだよ」
そう諭す様に告げるとロベルの瞳に涙が溜まっていった。
「…どういう…事ですか?ゼン様…」
掠れる様な声でウルテアが口を開いた。
「ロベルは、恐らく日常的にダラントから暴力を受けていたんだろ、それも陰湿に服で傷が見えない部分、殴ったり蹴ったりか道具も使っていたのかもな、骨も幾つかヒビが入ってるし、骨折して変な繋がり方をしている部分もある」
「だけど、それが何故ダラントの仕業だと?」
「じゃなかったら殺されていない」
ゼンの言葉にダスティンとロベルの肩が揺れた。
「ゴメンなさい、話が見えないですが…」
ウルテアは、再度ゼンに応えを求め、ゼンはそんなウルテアを見ると次にダスティン達に目を向けた。
「間違えてたら教えてくれ、あくまで俺が現場見て想像した内容だからな」
その言葉にダスティンは、ゆっくりと頷いた。
「恐らく、ロベルは日常的にダラントから暴力を受けていた。そしてそんな時に逃げていたのがあの滝壺だった。そこでその場を訪れたダスティンと知り合った、多分ロベルの傷を癒していたんだろ、その内、2人は恋仲になった。だけどエルフと人間だ、結婚なんて認められない。なんならロベルには、便宜上とは言えダラントって恋人が居たんだからな、だから2人は考えたんだ2人だけで生きていこうと、だろ?」
ダスティンは、静かに頷き、ゼンは続けた。
「だから駆け落ちをしようとしたがただ消えただけじゃ森の捜索をされてエルフの集落が見つかるかもしれない、そうなってしまえば余計な所に被害が生まれてしまう。だからロベルの人形を作ったんだよ」
「何故、人形を作ったのです?」
ウルテアがそっと聞くとゼンはパイプたばこを取り出し咥えた。
「もし、駆け落ちした時、2人を探すのは人間だ。エルフは、そこまで大々的に捜索は出来ない。ましてや何処かを焼くと滅ぼすとかの行為はしないし出来ない」
「何故ですか?」
「彼等は追われる種族であって追う種族じゃない。もし下手に人間に手を出せば今度こそ絶滅まで追い込まれる可能性がある、それは避けたい筈だ、だからこそ彼等は大きな動きは出来ない」
その応えが理解ができたのかウルテアは黙り、ゼンは、パイプタバコに火を灯し紫煙を吐きながら続けた。
「そして、1か月前のあの日が決行日だったんだろ、2人は滝壺で落ち合う約束していた、だがそれを知ったダラントがそこに現れたんだ、仲間を連れてな」
ダスティンの肩が揺れた。
「恐らくダスティンは遅れて来たんだろ。彼が到着した時には先に来たダラント達に乱暴されるロベルを見てしまった、そして激昂し、魔術を使ったんだよな?」
ゼンの問いにダスティンは、深く目をつぶりながら頷いた。
「どんな魔術を使ったんですか?」
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