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ジリジリと焼かれる感触が頬を襲い。
額を伝う汗がそっと地面に落ちてシミとなり消えていく。
ゼンは、自室のベランダの柵に身を預けながら頭上で燦々と輝く太陽を一瞥しため息を漏らした。
「暑い…ダメだ…進まない…」
そう呟きながらパイプタバコを咥えて紫煙を吐いた、そっと吹く風に多少涼んだものの思考は回らず呆然としていた。
仕事が進まない。
今日は外仕事じゃなく中の仕事で未だに終わりが見えない外壁の計画と牛舎の建築計画を練ろうとしていたが真夏の昼の自室は地獄の一歩手前だった。
遠くから子供と大人達のはしゃぐ声が聞こえる。
視線を少しだけ下げると村の中央の平屋の建物から聞こえてきた。
木の骨組みに漆喰の壁、基礎はサザレ村から手に入れた方解石などを粉して作ったコンクリートで作られた約300平米の広さを持つ浴場兼食堂である。
ゼンは、それを集会場と名付け、今では村人達の憩いの場へとなっていた。
外壁と牛舎の建築が遅々として進まない理由はわかっている。
資材不足、人材不足だからだ。
そして、何故不足しているのかという理由も明確で、先に集会場含め鍛冶場、民家などの施設の方へ持って行っているからだ。
何故それを優先としたか?
村人達のストレス緩和の為であった。
ストレスが溜まれば作業効率も人間関係も悪くなると思ったゼンは、まず村に暦を制定した。
制定したと言ってもシグモ国で使われている暦を合わせて使っているだけなのだがこれを機に月を決め、曜日を測定させる事により休日を作る事にしたのだ。
元々、何となくでの休みは、あったらしいのだがそれをしっかりと決める事により、今みたいに休日ともなると皆が皆、思い思いに過ごせる様になっていた。
次にゼンは、夏に向けてやはり浴場の存在が不可欠だと思い、それを作る為に必要な材料の加工の為に鍛冶場を作る事を先決にしてしまい、結果今に至っている。
後悔はないし、間違ってないとも思ってる。
だがこの暑さで頭が回らないのは予想外だった。
ゼンは、風を浴びながら空を見上げた。
熱帯びた体に汗が風に当てられその熱を吸収していくのを感じながらただ呆然と空を眺めている。
15回目の夏がゆっくりと過ぎていくのを感じながら、空っぽになればなるほどに気が緩んでいく。
「何をしてんだかな…本当に…」
そっと空に語りかける。
答えが返ってこないのは、わかってるのに、この癖は、いつまで経っても抜けないのだ。
セミの鳴き声と村人のはしゃぐ声。
そして、少しだけ強くなった風が頬を横切っていく。
ふと、ノック音が聞こえた。
部屋のドアから聞こえ、ゼンはサッシからドアに目を向けた。
「失礼します、お茶を…またはしたない格好して、暑いのはわかりますがもう少しシャキッとして下さい!」
部屋に入るなり、直ぐに飛んでくるセリーナの注意にゼンは、なんの反論もすること無く無言で首を横に振るだけだった。
ふと、ゼンの視線はセリーナの持つお盆、そしてその上に乗る木のジョッキに目が向いた。
その視線に気づいたセリーナは、ため息を吐きながらそう告げるとそのジョッキをゼンに渡した。
水で冷やしたのだろうか、冷えた紅茶がタップリと入っているのを確認しゼンは、一気にそれを飲み干した。
口から中に入る冷たい感触に熱が少し冷まされていく。
「うめぇーー!」
盛れる大きな声の本音。そんなゼンの本音にセリーナは、苦笑しながら空になったジョッキを受け取った。
「今日は土曜日ですよ。ゼン様もお休みになられたどうですか?」
「だから、計画を…」
「それも、仕事じゃないんですか?」
そう言われるとゼンは、何も言えず口を閉ざした。
「ここ数ヶ月、ゼン様は気を張ってられました。それこそ、休みを作ったのに本人が休んでないなんて本末転倒だと思いますが?」
尚もセリーナは続け、ゼンはその言葉に何も返せずに顰め面をしながら頭を搔くだけだった。
「外に散歩でもどうです?木陰で森の方も涼しいし、皆さんも思い思いに過ごしていられますよ?」
「みんな?」
「えぇ、クリスもサウラさんもウィンドルさんも」
「親方は?」
そう言われるとセリーナは、ニコニコ顔のまま黙った。
多分また、鍛冶場に篭って居るんだろう。
親方は何よりも鍛冶場が好きな人物だ。
多分、休日ともなれば道具の手入れやなにかの試作を作ってたりする。
「とりかく、ゼン様もお休みくださいませ、じゃないと私も休めませんので」
そう言うとセリーナは、踵を返して部屋を後にした。
セリーナには、本当に頭が上がらない。
こんなに暑いのに、いくら夏服用を着てるとはいえ、一切の隙を見せず、だらける様子も無い。
ゼンはそんなセリーナに感嘆としながら立ち上がると再び空を見上げた。
「とりあえず、気分転換でもするか…」
そう思いながら、自室を後にすると何処に行くか考えながら洋館を後にした。
洋館を出ると直ぐに集会場が見え、村人達が水を浴びながら楽しんでいるのが見えた。
こんな暑い日に水は、気持ちいいよなぁ~
特にあの水は、裏の滝壺から直接引っ張ってきた水を洋館横に建てた、貯水タンクを経由して地中管を通って集会場に向かっている。
経由している間に多少はぬるくなってるかもしれないけど、それがきっといい按配になっているのだろう。
気持ち良さそうだ。
ゼンは、集会場の方へ足を向けようとしたがふいに横切った風にその足を止めた。
風は、裏の森から吹いてきた。
ゼンは、振り返り森を見ると体を反転させ森の中へ入っていった。
額を伝う汗がそっと地面に落ちてシミとなり消えていく。
ゼンは、自室のベランダの柵に身を預けながら頭上で燦々と輝く太陽を一瞥しため息を漏らした。
「暑い…ダメだ…進まない…」
そう呟きながらパイプタバコを咥えて紫煙を吐いた、そっと吹く風に多少涼んだものの思考は回らず呆然としていた。
仕事が進まない。
今日は外仕事じゃなく中の仕事で未だに終わりが見えない外壁の計画と牛舎の建築計画を練ろうとしていたが真夏の昼の自室は地獄の一歩手前だった。
遠くから子供と大人達のはしゃぐ声が聞こえる。
視線を少しだけ下げると村の中央の平屋の建物から聞こえてきた。
木の骨組みに漆喰の壁、基礎はサザレ村から手に入れた方解石などを粉して作ったコンクリートで作られた約300平米の広さを持つ浴場兼食堂である。
ゼンは、それを集会場と名付け、今では村人達の憩いの場へとなっていた。
外壁と牛舎の建築が遅々として進まない理由はわかっている。
資材不足、人材不足だからだ。
そして、何故不足しているのかという理由も明確で、先に集会場含め鍛冶場、民家などの施設の方へ持って行っているからだ。
何故それを優先としたか?
村人達のストレス緩和の為であった。
ストレスが溜まれば作業効率も人間関係も悪くなると思ったゼンは、まず村に暦を制定した。
制定したと言ってもシグモ国で使われている暦を合わせて使っているだけなのだがこれを機に月を決め、曜日を測定させる事により休日を作る事にしたのだ。
元々、何となくでの休みは、あったらしいのだがそれをしっかりと決める事により、今みたいに休日ともなると皆が皆、思い思いに過ごせる様になっていた。
次にゼンは、夏に向けてやはり浴場の存在が不可欠だと思い、それを作る為に必要な材料の加工の為に鍛冶場を作る事を先決にしてしまい、結果今に至っている。
後悔はないし、間違ってないとも思ってる。
だがこの暑さで頭が回らないのは予想外だった。
ゼンは、風を浴びながら空を見上げた。
熱帯びた体に汗が風に当てられその熱を吸収していくのを感じながらただ呆然と空を眺めている。
15回目の夏がゆっくりと過ぎていくのを感じながら、空っぽになればなるほどに気が緩んでいく。
「何をしてんだかな…本当に…」
そっと空に語りかける。
答えが返ってこないのは、わかってるのに、この癖は、いつまで経っても抜けないのだ。
セミの鳴き声と村人のはしゃぐ声。
そして、少しだけ強くなった風が頬を横切っていく。
ふと、ノック音が聞こえた。
部屋のドアから聞こえ、ゼンはサッシからドアに目を向けた。
「失礼します、お茶を…またはしたない格好して、暑いのはわかりますがもう少しシャキッとして下さい!」
部屋に入るなり、直ぐに飛んでくるセリーナの注意にゼンは、なんの反論もすること無く無言で首を横に振るだけだった。
ふと、ゼンの視線はセリーナの持つお盆、そしてその上に乗る木のジョッキに目が向いた。
その視線に気づいたセリーナは、ため息を吐きながらそう告げるとそのジョッキをゼンに渡した。
水で冷やしたのだろうか、冷えた紅茶がタップリと入っているのを確認しゼンは、一気にそれを飲み干した。
口から中に入る冷たい感触に熱が少し冷まされていく。
「うめぇーー!」
盛れる大きな声の本音。そんなゼンの本音にセリーナは、苦笑しながら空になったジョッキを受け取った。
「今日は土曜日ですよ。ゼン様もお休みになられたどうですか?」
「だから、計画を…」
「それも、仕事じゃないんですか?」
そう言われるとゼンは、何も言えず口を閉ざした。
「ここ数ヶ月、ゼン様は気を張ってられました。それこそ、休みを作ったのに本人が休んでないなんて本末転倒だと思いますが?」
尚もセリーナは続け、ゼンはその言葉に何も返せずに顰め面をしながら頭を搔くだけだった。
「外に散歩でもどうです?木陰で森の方も涼しいし、皆さんも思い思いに過ごしていられますよ?」
「みんな?」
「えぇ、クリスもサウラさんもウィンドルさんも」
「親方は?」
そう言われるとセリーナは、ニコニコ顔のまま黙った。
多分また、鍛冶場に篭って居るんだろう。
親方は何よりも鍛冶場が好きな人物だ。
多分、休日ともなれば道具の手入れやなにかの試作を作ってたりする。
「とりかく、ゼン様もお休みくださいませ、じゃないと私も休めませんので」
そう言うとセリーナは、踵を返して部屋を後にした。
セリーナには、本当に頭が上がらない。
こんなに暑いのに、いくら夏服用を着てるとはいえ、一切の隙を見せず、だらける様子も無い。
ゼンはそんなセリーナに感嘆としながら立ち上がると再び空を見上げた。
「とりあえず、気分転換でもするか…」
そう思いながら、自室を後にすると何処に行くか考えながら洋館を後にした。
洋館を出ると直ぐに集会場が見え、村人達が水を浴びながら楽しんでいるのが見えた。
こんな暑い日に水は、気持ちいいよなぁ~
特にあの水は、裏の滝壺から直接引っ張ってきた水を洋館横に建てた、貯水タンクを経由して地中管を通って集会場に向かっている。
経由している間に多少はぬるくなってるかもしれないけど、それがきっといい按配になっているのだろう。
気持ち良さそうだ。
ゼンは、集会場の方へ足を向けようとしたがふいに横切った風にその足を止めた。
風は、裏の森から吹いてきた。
ゼンは、振り返り森を見ると体を反転させ森の中へ入っていった。
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