シンミトロア物語【異世界転生ビルダーの紀行】

山月 春舞《やまづき はるま》

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兆し

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   そうと決まれば迷う事は、なく。
   ゼンは、セリーナに黄色い豆をフライパンで軽く炒ってからすり鉢で粉状にして、黒糖と混ぜる様にお願いすると、自分は臙脂色の豆の煮付けに集中した。

   臙脂色の豆を潰しながら掻き混ぜるとペースト状になり、そこに砕いた黒糖と先程分けた煮汁を少しずつ足していく。

   多少緩くなれば軽く水分を飛ばし、固くなり過ぎればゆっくりと煮汁を足すを数回繰り返しながら、暫くするとゼンは、ヘラの端でそれを摘み味を確かめると数度頷きながら、それを火から離して、木の桶に水を貯め、鍋を中に水が入らない様にその中心に置き、そしてまた掻き混ぜた。

   ペースト状のそれがある程度固まるのを確認しながら、次に蒸していたもち米の鍋を開けると敷いていた布を引っ張り出すと木のテーブルに置き、包んでいた布を広げた、湯気を発する白い塊のもち米が顔出し、セリーナがその光景を物珍しげに見ている姿を横目にゼンは、一粒手に取る口に入れた。

   モッチリとした食感に微かな甘みが口に残った。
   芯は無く、しっかりと炊けている。
   それを確認するとゼンは、風のエレメントを手に纏わせると一口サイズのもち米の握り飯を作り、その上に臙脂色の豆から作ったペーストを乗せて、セリーナに差し出した。

「食べてみん」

   セリーナは、ゼンのその言葉に従い、恐る恐るそれを口の中に入れた。

「美味しい!!」

   口に入れ、少しだけ咀嚼するとセリーナは、目をキラキラと光らせながら声を上げた。

「上品な甘さに、後に残らない感じで…なんですかこれは?」

   セリーナは、改めてもち米と臙脂色のペーストをマジマジと見ながらゼン訪ね、ゼンは苦笑しながら肩を竦めた。

「おはぎって料理だ。これはアンコって甘味だ」

   そう言いながらゼンは臙脂色のペースト、アンコを指さした。

「なら、これは?」

   セリーナは、そう言いながら粉にした黄色い豆を指差した。

「それは、豆で言うなら大豆っていうもので、炒って粉にしたのをきな粉って呼ぶ物だ、試しに黒糖を少し混ぜて、漬けて食べてみるといい」

   ゼンは、そう言いながらもうひとつ一口サイズのもち米の握り飯を作るとセリーナに差し出し、それを受け取ったセリーナは直ぐに言われた通りに黒糖を混ぜたきな粉を乗せて食べた。

   セリーナの目が丸々と広がり、その瞳には驚きと喜びで光っていた。

「美味しい~」

   緩むセリーナの表情をみながらゼンはゆっくりと肩を竦めながら笑った。

   それからゼンは、もち米をひと握り分の大きさに分けてると10個の握り飯餅を作った。
   それぞれ5個ずつ餡子ときな粉のおはぎを作ると四角く平たい木製の桶に並べると頭らしい布を被せた。

「これを貯蔵庫に、これを取りに来る客が現れるからそれまで冷やしておいてくれ」

   そう言いながらセリーナに平たい桶を渡すとセリーナは、会釈をしながらそれを受け取り貯蔵庫へと姿を消した。

   ゼンは、一息つくと使った調理器具を洗い始める。

「いつまでもコソコソ見てるつもりだ?」

   水で鍋を洗いながらゼンが声をかけると台所の出入口にクリフがゆっくりと姿を現した。

「いつから気づいてた?」

「セリーナにおはぎの事を教えてる時からな」

   ゼンは、クリフに一切の視線を向ける事無く応え、そんなゼンの背中をクリフは、見つめながらため息をひとつ漏らした。

「そのおはぎは、ジャンバルにでもあったのか?」

「いんや、ない」

   ゼンは間髪入れずに応え、その応えにクリフの表情が険しいものになった。

「なら、なんでお前がそれを知ってる?」

   そう問われ、ゼンは洗う手を止めてゆっくりと振り返った。

「秘密だ、それは言えない」

   真っ直ぐにクリフを見つめながら応え、クリフもまたゼンを真っ直ぐ見つめた。

「そっか、ならいい」

   クリフは、そう言いながら肩を竦め肩を台所の壁に預けた。

「良いのかよ?」

   ゼンはそんなクリフの応えに肩透かしをくらい呆れた表情をするとクリフは、ゆっくりと口をへの字に曲げながら首を横に傾けた。

「お前はお前だ、俺が知ってるお前は信用出来る男だ、それだけでいいさ、言いたくない事、言えない事を聞いたところでそれが変わるとは思えないからな、だから別にいい」

「もしかしたら、物凄い策略家かもしれないぞ?」

「はっ?それはそうだろ?お前自分で自分をどう見てるかわからないが、結構ひねくれてるぞ?」

「嘘だ!?結構従順で素直だろ?」

   ゼンがそう言うとクリフは、盛大なため息を漏らした。

「あのな?従順で素直な奴なら、こんな村に来ないし、もっとワガママに育ってるぞ?いい例いるだろ?お前のひとつ上の兄貴なんてその最たるもんだろ?」

   そう言われ、傲慢な表情でマヌケた事を言う暑苦しい顔を思い出し、ゼンの表情が苦いものになった。

「上の兄貴に従順でそれ以外は自分に素直で、色々やってるから皆に嫌われる、だろ?」

「そうなのか?あれはただ何もわかってないマヌケってだけだろ?」

   ゼンがそう応えるとクリフは、人差し指を立てた。

「つまり、そういう事だ、従順で素直ってのは、単なるマヌケだ。お前は散々兄貴逆らうは、大人に喧嘩売るわ、従順なんて要素は、皆無だし。口車に乗せて兄貴達に恥ずかしい思いさせるわでやりたい放題やってたろ、それを人は従順で素直とは、言わないんだよ」

   また随分と乱暴な極論を言うもんだ。ゼンはそう思いながら肩を竦めると体を反転させて洗い物を再開した。

「それで、アイツらにはなんて説明するんだ?」

「そんなの発明したって言うしかないだろ?それ以外なんと言えと?」

「信用すると思うか?」

  クリフのその問いにハリートレイの真っ直ぐな瞳をゼンは、思い出した。
   何処までも真っ直ぐに見つめるその眼は、どこまでゼンを探ろうとしていた。
   アマステラが見せた記憶の彼とは違う、アマステラに見せていたあの眼は、純粋な尊敬の眼差しだった。
   その眼を知っているからこそゼンはハリートレイが自分に向けていたその視線が何を意味しているのか嫌という程に理解していた。

「俺ならしない、あのハリートレイもしないだろうな」

「それでも、渡すのかおはぎ」

「あぁ、製法と交換にもち米と小豆と大豆の種を貰ってウチでも生産したいからな、それに」

「それに?」

「相手の真意も知りたいのさ、どうして危険を犯してまで俺と接触してきのか、そしておはぎなのかもな」

   ゼンは、そう言いながらクリフを見るとクリフは呆れたため息を漏らしながら頭を掻いた。

「探究心も良いが程々にしろよ、お前は俺達の大将なんだ、どんなモノだろうとそれは変わらないだから」

   クリフのその言葉にゼンは肩を竦め。

「肝に銘じておきます」

   苦笑いしながらそう応えた。

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