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兆し
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クリフは、それだけ告げると台所を後にし、貯蔵庫から戻ってきたセリーナが慌てて台所の洗い物を代わると申し出たので、代わってもらうとゼンは、そのまま中庭に出た。
合図は、確かひと風吹かせろと言っていた。
ゼンは、ルンを使い、掌に風のマナを集めると森に向かい扇ぐ様に手を振った。
森の木々が吹いた風に揺れる。
しかし、それ以降なんの変化も見せぬまま、森は、静かに佇んでいた。
風も相変わらず穏やかで静かだった。
ゼンは、踵を返し洋館内へと戻ると3階の自室へと向かった。
自室へ入ると夏の熱気を閉じ込めた蒸せる暑さに不快感を感じながら、窓を開け、サッシを開け、部屋のドアを開けて、風の通り抜け道を作った。
相変わらずの暑さだが、吹き抜ける風が全身を覆う汗を冷やしていく。
それから昼時が過ぎるまで何も音沙汰なく、ゼンは、やり掛けの計画を描く為に机と向き合っていた。
しかし、ペンと思考は、一切進むこと無く暑さで椅子の上でダラける事しか出来なかった。
変化が起きたのは、昼時過ぎだった。
部屋を抜ける風に妙な気配が混ざっている。
ゼンは、その気配に惹かれる様に中庭に向かうと中庭の裏口に2つの人影がポツンと立っていた。
1人は、夏らしい半袖を着た青年ダスティンともう1人は、その姿を覆う程のローブを身にまとったハリートレイだった。
「風を吹かれた様ですが、何かありましたかな?」
ハリートレイは、ゼンに向かい会釈をすると直ぐにそう告げた。
「なに、物が出来たから味見をしてもらおうかと思ってな」
ゼンがそう応えると驚きの声を上げたのは、ダスティンだった。
「昨日の今日ですよ!?もう出来たんですか?」
そんなダスティンとは、対照的にハリートレイは、そんなゼンを見ながら柔和な表情を崩す事無く見つめていた。
「まぁな、こういうのは、ひらめきだからな」
ゼンは、そう言いながらゆっくりと洋館への出入口へと手を差し出した。
「中に入れてもらえるのですか?」
「客人だからな、だがハリートレイはそのローブを脱がない方がいいとオススメしておくよ」
「ほぅ、それは何故?」
「中は、外よりクソ暑い、そのローブを個人的には、早く作りたいものさ」
ゼンがそう応えるとハリートレイは声を出して笑いながらゆっくりと洋館へと歩み始め、出入口に着くと会釈をしながらゆっくりと奥へと進んで行った。
ダスティンもそんなハリートレイに付いて来る様に洋館内へ足を踏み入れた。
ゼンは、ダスティン達を3階の自室へ招く、途中リビングに居る、セリーナに声をかけ、冷たい紅茶を3つと貯蔵庫にしまったおはぎを持ってくる様に頼んだ。
ダスティンは、緊張からか視線を部屋の見渡し、ハリートレイは、案内された椅子に座ると対面に座るゼンを静かに見つめていた。
「今持ってきてもらってるから待っていてくれ」
「はい」
ゼンがそう言うとハリートレイは、静かに頷いき返事をした。
「ひとつ質問しても?」
ゼンがパイプタバコを取り出し火を灯すとその様子を眺めていたハリートレイがゆっくりと口を開いた。
「なんだ?」
「何故貴方は、今回の事を受け入れて下さったのでしょうか?」
その問いにゼンは、少しだけ考える素振りをしながら紫煙を吐き出した。
「好奇心かな」
「好奇心、それはあの食材に対してでしょうか?」
「それもあるが、どちからと言えばエルフという種族に対してかな」
ゼンがそう答えるとハリートレイの表情が柔和なモノから無に近いモノに変化した。
「それはどういう意味でしょうか?」
心做しか声の方にも微かな警戒心が乗っている様にも感じた。
ダスティンもそんなハリートレイの変化に気づいたのだろうか見渡していた目線をゼンとハリートレイに向けていた。
「ショグリンという国を知っているか?」
「はい、シグモ国を統治する主要国でございます」
「なら、そこ宰相であるレイメイ・ショリュと言う方は、知っているか?」
ゼンがそう聞くとハリートレイは、首を横に振った。
「いいえ、我々は自由の少ないものでそんな遥か遠いところにいる方の事は、存じ上げません」
「そうか、その方は、滅多に人に会われない方なのだがショグリンの政治や経済をしっかりと統治されている方なんだがな、その方はエルフなんだよ」
そう言うとハリートレイの目が丸々と大きく広がった。
「そして、その方の一族が統治しているゴダバラ国ってのは、エルフの国だ」
「本当…ですか?」
絞り出すかの様に出るハリートレイの言葉にゼンは、ゆっくりと頷いた。
「あぁ、そして俺の師匠でもある」
「貴方の…」
ゼンは、ハリートレイのその言葉にゆっくりと頷いた。
「俺は、そこで師匠から色んなことを教わったよ、ハリーホーンの事もその一つだ」
ハリーホーンの名前にハリートレイの表情が少しだけ強ばった。
「その名を知っているという事は、私が直系の子孫だと言う事も…」
ゆっくりとゼンは、頷き。ハリートレイは深いため息をついた。
「ならば余計に何故、私の事をお助けに?恐ろしくは無いのですか?」
ゼンは、そう聞かれると笑を零しながら背もたれに体を預けた。
「結局のところ、人もエルフもそれぞれだと思ってるんだ。良い奴も入れば最悪な奴もいる、それなら一人一人見極めていくしかないだろ?それにハリートレイには、そういうのを感じなかった、だからそれに乗ることにしたのさ」
ゼンの応えにハリートレイは、静かに頷くとセリーナがお盆に餡子ときな粉のおはぎが1つずつ置かれた皿と冷たい紅茶入った木のグラスを乗せて部屋に入っていきた。
ハリートレイとダスティンの顔を見て会釈をするとおはぎと冷たい紅茶を目の前に置き、再び会釈をすると部屋を後にした。
そんなゼン達からすると当たり前な行動にハリートレイとダスティンは、改めて驚きながら目の前に出されたモノをしっかりと見つめた。
「紅茶は違うが、その食べ物が昨日貰った素材から作ったものだ」
「まるで、石の様な大きな豆の様なモノですね」
ダスティンは、おはぎの置かれた皿を持ち上げマジマジと見ながら言うとハリートレイが咳払いを1つした。
「好奇心が旺盛は、良いが失礼な態度は、止めなさい」
ハリートレイの苦言に電気が走ったかの様に背筋を伸ばすとダスティンは、静かに皿を元の場所に置いた。
合図は、確かひと風吹かせろと言っていた。
ゼンは、ルンを使い、掌に風のマナを集めると森に向かい扇ぐ様に手を振った。
森の木々が吹いた風に揺れる。
しかし、それ以降なんの変化も見せぬまま、森は、静かに佇んでいた。
風も相変わらず穏やかで静かだった。
ゼンは、踵を返し洋館内へと戻ると3階の自室へと向かった。
自室へ入ると夏の熱気を閉じ込めた蒸せる暑さに不快感を感じながら、窓を開け、サッシを開け、部屋のドアを開けて、風の通り抜け道を作った。
相変わらずの暑さだが、吹き抜ける風が全身を覆う汗を冷やしていく。
それから昼時が過ぎるまで何も音沙汰なく、ゼンは、やり掛けの計画を描く為に机と向き合っていた。
しかし、ペンと思考は、一切進むこと無く暑さで椅子の上でダラける事しか出来なかった。
変化が起きたのは、昼時過ぎだった。
部屋を抜ける風に妙な気配が混ざっている。
ゼンは、その気配に惹かれる様に中庭に向かうと中庭の裏口に2つの人影がポツンと立っていた。
1人は、夏らしい半袖を着た青年ダスティンともう1人は、その姿を覆う程のローブを身にまとったハリートレイだった。
「風を吹かれた様ですが、何かありましたかな?」
ハリートレイは、ゼンに向かい会釈をすると直ぐにそう告げた。
「なに、物が出来たから味見をしてもらおうかと思ってな」
ゼンがそう応えると驚きの声を上げたのは、ダスティンだった。
「昨日の今日ですよ!?もう出来たんですか?」
そんなダスティンとは、対照的にハリートレイは、そんなゼンを見ながら柔和な表情を崩す事無く見つめていた。
「まぁな、こういうのは、ひらめきだからな」
ゼンは、そう言いながらゆっくりと洋館への出入口へと手を差し出した。
「中に入れてもらえるのですか?」
「客人だからな、だがハリートレイはそのローブを脱がない方がいいとオススメしておくよ」
「ほぅ、それは何故?」
「中は、外よりクソ暑い、そのローブを個人的には、早く作りたいものさ」
ゼンがそう応えるとハリートレイは声を出して笑いながらゆっくりと洋館へと歩み始め、出入口に着くと会釈をしながらゆっくりと奥へと進んで行った。
ダスティンもそんなハリートレイに付いて来る様に洋館内へ足を踏み入れた。
ゼンは、ダスティン達を3階の自室へ招く、途中リビングに居る、セリーナに声をかけ、冷たい紅茶を3つと貯蔵庫にしまったおはぎを持ってくる様に頼んだ。
ダスティンは、緊張からか視線を部屋の見渡し、ハリートレイは、案内された椅子に座ると対面に座るゼンを静かに見つめていた。
「今持ってきてもらってるから待っていてくれ」
「はい」
ゼンがそう言うとハリートレイは、静かに頷いき返事をした。
「ひとつ質問しても?」
ゼンがパイプタバコを取り出し火を灯すとその様子を眺めていたハリートレイがゆっくりと口を開いた。
「なんだ?」
「何故貴方は、今回の事を受け入れて下さったのでしょうか?」
その問いにゼンは、少しだけ考える素振りをしながら紫煙を吐き出した。
「好奇心かな」
「好奇心、それはあの食材に対してでしょうか?」
「それもあるが、どちからと言えばエルフという種族に対してかな」
ゼンがそう答えるとハリートレイの表情が柔和なモノから無に近いモノに変化した。
「それはどういう意味でしょうか?」
心做しか声の方にも微かな警戒心が乗っている様にも感じた。
ダスティンもそんなハリートレイの変化に気づいたのだろうか見渡していた目線をゼンとハリートレイに向けていた。
「ショグリンという国を知っているか?」
「はい、シグモ国を統治する主要国でございます」
「なら、そこ宰相であるレイメイ・ショリュと言う方は、知っているか?」
ゼンがそう聞くとハリートレイは、首を横に振った。
「いいえ、我々は自由の少ないものでそんな遥か遠いところにいる方の事は、存じ上げません」
「そうか、その方は、滅多に人に会われない方なのだがショグリンの政治や経済をしっかりと統治されている方なんだがな、その方はエルフなんだよ」
そう言うとハリートレイの目が丸々と大きく広がった。
「そして、その方の一族が統治しているゴダバラ国ってのは、エルフの国だ」
「本当…ですか?」
絞り出すかの様に出るハリートレイの言葉にゼンは、ゆっくりと頷いた。
「あぁ、そして俺の師匠でもある」
「貴方の…」
ゼンは、ハリートレイのその言葉にゆっくりと頷いた。
「俺は、そこで師匠から色んなことを教わったよ、ハリーホーンの事もその一つだ」
ハリーホーンの名前にハリートレイの表情が少しだけ強ばった。
「その名を知っているという事は、私が直系の子孫だと言う事も…」
ゆっくりとゼンは、頷き。ハリートレイは深いため息をついた。
「ならば余計に何故、私の事をお助けに?恐ろしくは無いのですか?」
ゼンは、そう聞かれると笑を零しながら背もたれに体を預けた。
「結局のところ、人もエルフもそれぞれだと思ってるんだ。良い奴も入れば最悪な奴もいる、それなら一人一人見極めていくしかないだろ?それにハリートレイには、そういうのを感じなかった、だからそれに乗ることにしたのさ」
ゼンの応えにハリートレイは、静かに頷くとセリーナがお盆に餡子ときな粉のおはぎが1つずつ置かれた皿と冷たい紅茶入った木のグラスを乗せて部屋に入っていきた。
ハリートレイとダスティンの顔を見て会釈をするとおはぎと冷たい紅茶を目の前に置き、再び会釈をすると部屋を後にした。
そんなゼン達からすると当たり前な行動にハリートレイとダスティンは、改めて驚きながら目の前に出されたモノをしっかりと見つめた。
「紅茶は違うが、その食べ物が昨日貰った素材から作ったものだ」
「まるで、石の様な大きな豆の様なモノですね」
ダスティンは、おはぎの置かれた皿を持ち上げマジマジと見ながら言うとハリートレイが咳払いを1つした。
「好奇心が旺盛は、良いが失礼な態度は、止めなさい」
ハリートレイの苦言に電気が走ったかの様に背筋を伸ばすとダスティンは、静かに皿を元の場所に置いた。
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