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兆し
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「まぁ相手が俺だから良いが、別の方の時には、気をつけろよ。ダスティン」
ゼンは、苦笑しながら言い、ダスティンはその言葉に恥ずかしそうに肩を竦めながら会釈した。
「それより、食べて味見してみてくれ」
ゼンがそう切り替えて言うとハリートレイはゆっくりと会釈をしておはぎを口にした。
目をつぶり咀嚼するハリートレイの顔をゼンも
ダスティンもマジマジと見つめる。
ハリートレイは暫くの咀嚼の後に目を見開きおはぎをマジマジと見つめていた。
「何とも不思議な味ですね…甘いのに甘過ぎず、気持ちを柔らかくしてくれる…何よりも美味しい」
ハリートレイは、そう言いながら黙々とおはぎを口にし、直ぐに食べ尽くしてしまい、隣のダスティンもまた食べ尽くし、冷たい紅茶を飲みながら一息ついていた。
「一応、幾つか作ってあるから、持って言ってくれ、夏場は足が早い、氷室の貯蔵庫に入れてあるが持ち運びの際にそこら辺も気をつけた方がいいだろう」
そんな2人を見て大丈夫だと踏んだゼンは、そう言いながら立ち上がるとドアを開け、セリーナを呼ぶと持ち帰りの支度を頼んだ。
「本当ですか?何から何まで…これはなんとお礼をしたら良いのか…」
ハリートレイは、そう言いながらゆっくりとゼンに向かい跪いた。
「礼か…本当ならいらんと言いたいが、多分それだと納得しないだろ?」
ゼンのその返しにハリートレイは、迷いのない眼で肯定を告げていた。
「なら、素材として貰った物の種が欲しい。あれはいい食料になる、この村でも栽培したいのでな」
ゼンがそう言うと、ハリートレイの眼が丸々と広がった。
「構いませんが、本当にそれで宜しいのですか?あれは唯の儀式用の供物でございます。それよりも風聖草などの方がよろしいのでは、無いのですか?」
「それもかなり魅力的だが、そんな物あっても道具を作れるだけだからな、それよりも村人達との生活を考えると食料の方が重要だ、そう考えるとあれは色々加工のしがいがありそうなんでな、それの方が良いな」
ゼンがそう応えるとハリートレイは、深々と頭を下げた。
暫くするとセリーナがおはぎを餡子ときな粉を2つずつ詰めた木箱を持ってきた。
ゼンは、ハリートレイの前にそれを置くとハリートレイは、両手でそれを大事そうに持ちながら再びゼンに頭を下げ、部屋を後にした。
ゼンもハリートレイ達を見送る為に中庭まで送りに行くと、中庭の裏口でハリートレイの足が止まりゆっくりと踵を返しゼンを静かに見つめた。
「どうした?」
ゼンは、ハリートレイが何かを言いたそうに表情を歪めているのに素直に質問するとハリートレイは一呼吸置いて意を決した様に口を開いた。
「我々のワガママ聞いて頂いた手前、こんな話をするのは、おこがましいのですが…もしお暇ならこのまま我々の村へ来て頂けませんか?」
突然のハリートレイの申し出にゼンは驚きの余り言葉を失ってしまった。
「この先のご予定があるのなら無理にとは、申しません。日を改めて招待させて頂きますので、素直に応えて頂ければとは、思いますが…」
「予定は無いが、良いのか?お前達の居場所は、出来るだけ人間に知られたくないものだろう?」
「はい、本来なら…だが貴方なら大丈夫では、無いのかと思っております、しかし不躾なお誘いです、気持ちの整理も必要でしょうから後日改めても大丈夫です」
ハリートレイにそう言われゼンは、暫く黙り考え込むとそっと左斜め後ろに控えるセリーナに目を向けた。
「一つ条件を付けたいのだが良いか?」
「なんなりと」
「従者を2人つけたいんだが良いか?」
ゼンのその言葉にハリートレイは静かに頷いき、ゼンは、ゆっくりと体をセリーナの方へ向けた。
「クリフに出かける支度をする様に言ってくれるか恐らく今日は帰らない事も付け加えてくれるか」
「はい、あともう1人は誰に声をかければ?」
ゼンの言葉にセリーナに頷くと、疑問を直ぐに口にするとゼンは口元をゆっくりと上げてセリーナを指差した。
「私ですか!?」
ゼンの行動にセリーナは目を丸まるとしながら悲鳴に近い声を上げた。
「たまには、出掛けようぜ、興味があるんだろ?顔に書いてあるぞ?」
ゼンのその言葉にセリーナは、自分の頬に手を当てた。
「という事で、今から支度するので暫くお待ちいただくが良いかな?」
ゼンがそう言うとハリートレイはゆっくりと頷いた。
鬱蒼と生い茂る木々に微かに見える獣道、地面には土から幾つもの石と岩が飛び出した上り坂。
ハリートレイとダスティンは、その上り坂を難無く登っている。
恐らく靴に何らかの魔術の要素を組み込んでいるのだろう。
ゼンは、それを観察しながらゆっくりと下の方へ目を向けた。
クリフが一息つきながらこちらを見上げ、その後ろを足元おぼつかない様子でセリーナが登っていた。
「大丈夫か?」
ゼンがそう声をかけるとセリーナは、疲れた顔を向けながらゆっくりと頷いた。
流石に強がりなのがアリアリと分かる表情だ。
「宜しければ私の力で持ち上げましょうか?」
ふと、すぐ後ろから声が聞こえて振り返るとハリートレイが戻ってきていた。
「いや、俺でもそう出来るんだが、何せ頑固者なんでね、恐らくそれをやったらあとが怖いんだよなぁ~」
ゼンが苦笑いしながらそう答えるとハリートレイは、不思議そうな顔でセリーナ達を見ていた。
「しかし、足がそろそろ痛いのでは無いのでしょうか?ここは石や岩がゴロゴロとしています、靴底がそろそろ破けても可笑しくないでしょう?」
ハリートレイにそう言われてゼンは、肩を竦めながらゆっくりと靴底を見せた。
「それなら、コイツと同じ靴を履いているから大丈夫だ」
ゼンはそう言いながら指で靴底を軽くノックすると硬い音を鳴らした。
「これは?木靴では無いですよね?しかし硬く柔らかい…」
「アダブルって南側の柔らかい木の板と樹脂を何層にも塗って作った靴底さ、皮の靴底より硬いがグネグネと曲がるからそこまで不便でも無いのさ」
「もしかして、これも貴方が?」
ハリートレイに言われゼンは人差し指を口元に当てた。
「あくまでショグリン国のヴァバリアって靴職人が作ったって事になってるがな」
ゼンの応えにハリートレイは、目を丸々としながら少し首を横に振りながら一つため息をついた。
「やはり貴方は…境界越えを…」
その言葉にゼンが首を横に傾けると荒い息のセリーナがゼンの肩を掴んできた。
「遅くなって…申し訳ありません…お願いが…あります…」
何事かと思い、セリーナに目を向けるとその目は、明らかに疲労に染まっていた。
「すこし休憩入れるか?」
ゼンのその問いにセリーナは、大きく頷いた。
ゼンは、苦笑しながら言い、ダスティンはその言葉に恥ずかしそうに肩を竦めながら会釈した。
「それより、食べて味見してみてくれ」
ゼンがそう切り替えて言うとハリートレイはゆっくりと会釈をしておはぎを口にした。
目をつぶり咀嚼するハリートレイの顔をゼンも
ダスティンもマジマジと見つめる。
ハリートレイは暫くの咀嚼の後に目を見開きおはぎをマジマジと見つめていた。
「何とも不思議な味ですね…甘いのに甘過ぎず、気持ちを柔らかくしてくれる…何よりも美味しい」
ハリートレイは、そう言いながら黙々とおはぎを口にし、直ぐに食べ尽くしてしまい、隣のダスティンもまた食べ尽くし、冷たい紅茶を飲みながら一息ついていた。
「一応、幾つか作ってあるから、持って言ってくれ、夏場は足が早い、氷室の貯蔵庫に入れてあるが持ち運びの際にそこら辺も気をつけた方がいいだろう」
そんな2人を見て大丈夫だと踏んだゼンは、そう言いながら立ち上がるとドアを開け、セリーナを呼ぶと持ち帰りの支度を頼んだ。
「本当ですか?何から何まで…これはなんとお礼をしたら良いのか…」
ハリートレイは、そう言いながらゆっくりとゼンに向かい跪いた。
「礼か…本当ならいらんと言いたいが、多分それだと納得しないだろ?」
ゼンのその返しにハリートレイは、迷いのない眼で肯定を告げていた。
「なら、素材として貰った物の種が欲しい。あれはいい食料になる、この村でも栽培したいのでな」
ゼンがそう言うと、ハリートレイの眼が丸々と広がった。
「構いませんが、本当にそれで宜しいのですか?あれは唯の儀式用の供物でございます。それよりも風聖草などの方がよろしいのでは、無いのですか?」
「それもかなり魅力的だが、そんな物あっても道具を作れるだけだからな、それよりも村人達との生活を考えると食料の方が重要だ、そう考えるとあれは色々加工のしがいがありそうなんでな、それの方が良いな」
ゼンがそう応えるとハリートレイは、深々と頭を下げた。
暫くするとセリーナがおはぎを餡子ときな粉を2つずつ詰めた木箱を持ってきた。
ゼンは、ハリートレイの前にそれを置くとハリートレイは、両手でそれを大事そうに持ちながら再びゼンに頭を下げ、部屋を後にした。
ゼンもハリートレイ達を見送る為に中庭まで送りに行くと、中庭の裏口でハリートレイの足が止まりゆっくりと踵を返しゼンを静かに見つめた。
「どうした?」
ゼンは、ハリートレイが何かを言いたそうに表情を歪めているのに素直に質問するとハリートレイは一呼吸置いて意を決した様に口を開いた。
「我々のワガママ聞いて頂いた手前、こんな話をするのは、おこがましいのですが…もしお暇ならこのまま我々の村へ来て頂けませんか?」
突然のハリートレイの申し出にゼンは驚きの余り言葉を失ってしまった。
「この先のご予定があるのなら無理にとは、申しません。日を改めて招待させて頂きますので、素直に応えて頂ければとは、思いますが…」
「予定は無いが、良いのか?お前達の居場所は、出来るだけ人間に知られたくないものだろう?」
「はい、本来なら…だが貴方なら大丈夫では、無いのかと思っております、しかし不躾なお誘いです、気持ちの整理も必要でしょうから後日改めても大丈夫です」
ハリートレイにそう言われゼンは、暫く黙り考え込むとそっと左斜め後ろに控えるセリーナに目を向けた。
「一つ条件を付けたいのだが良いか?」
「なんなりと」
「従者を2人つけたいんだが良いか?」
ゼンのその言葉にハリートレイは静かに頷いき、ゼンは、ゆっくりと体をセリーナの方へ向けた。
「クリフに出かける支度をする様に言ってくれるか恐らく今日は帰らない事も付け加えてくれるか」
「はい、あともう1人は誰に声をかければ?」
ゼンの言葉にセリーナに頷くと、疑問を直ぐに口にするとゼンは口元をゆっくりと上げてセリーナを指差した。
「私ですか!?」
ゼンの行動にセリーナは目を丸まるとしながら悲鳴に近い声を上げた。
「たまには、出掛けようぜ、興味があるんだろ?顔に書いてあるぞ?」
ゼンのその言葉にセリーナは、自分の頬に手を当てた。
「という事で、今から支度するので暫くお待ちいただくが良いかな?」
ゼンがそう言うとハリートレイはゆっくりと頷いた。
鬱蒼と生い茂る木々に微かに見える獣道、地面には土から幾つもの石と岩が飛び出した上り坂。
ハリートレイとダスティンは、その上り坂を難無く登っている。
恐らく靴に何らかの魔術の要素を組み込んでいるのだろう。
ゼンは、それを観察しながらゆっくりと下の方へ目を向けた。
クリフが一息つきながらこちらを見上げ、その後ろを足元おぼつかない様子でセリーナが登っていた。
「大丈夫か?」
ゼンがそう声をかけるとセリーナは、疲れた顔を向けながらゆっくりと頷いた。
流石に強がりなのがアリアリと分かる表情だ。
「宜しければ私の力で持ち上げましょうか?」
ふと、すぐ後ろから声が聞こえて振り返るとハリートレイが戻ってきていた。
「いや、俺でもそう出来るんだが、何せ頑固者なんでね、恐らくそれをやったらあとが怖いんだよなぁ~」
ゼンが苦笑いしながらそう答えるとハリートレイは、不思議そうな顔でセリーナ達を見ていた。
「しかし、足がそろそろ痛いのでは無いのでしょうか?ここは石や岩がゴロゴロとしています、靴底がそろそろ破けても可笑しくないでしょう?」
ハリートレイにそう言われてゼンは、肩を竦めながらゆっくりと靴底を見せた。
「それなら、コイツと同じ靴を履いているから大丈夫だ」
ゼンはそう言いながら指で靴底を軽くノックすると硬い音を鳴らした。
「これは?木靴では無いですよね?しかし硬く柔らかい…」
「アダブルって南側の柔らかい木の板と樹脂を何層にも塗って作った靴底さ、皮の靴底より硬いがグネグネと曲がるからそこまで不便でも無いのさ」
「もしかして、これも貴方が?」
ハリートレイに言われゼンは人差し指を口元に当てた。
「あくまでショグリン国のヴァバリアって靴職人が作ったって事になってるがな」
ゼンの応えにハリートレイは、目を丸々としながら少し首を横に振りながら一つため息をついた。
「やはり貴方は…境界越えを…」
その言葉にゼンが首を横に傾けると荒い息のセリーナがゼンの肩を掴んできた。
「遅くなって…申し訳ありません…お願いが…あります…」
何事かと思い、セリーナに目を向けるとその目は、明らかに疲労に染まっていた。
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