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才田晴人っという男
怨嗟の根源
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父親がわからない。
それを聞いた時に晴人は、自然と天を仰いでいた。
明穂が比奈を妊娠した時は、荒んでいた時期で、母親とも物理的な距離をとっていた所謂、家なき子時代だった。
最初は、友人宅を渡り歩き、そして道はエスカレートして落ちていく。
渡り所も無くし、金も使い果たせば次の行動は自ずと決まってしまう。
かつては、ウリと呼ばれ、現代では、援助交際と呼び、未来は、パパ活なんて名前に変わるそれだ。
名称がどんなに変化しようがやる事は同じで、結果はお金を貰ってその報酬は自らの体という因習。
その因習の結果、明穂は比奈を身ごもりそれをキッカケに母親との仲を取り戻したという。
その話を田臥からそして、後に比奈が寝た後に明穂自身にも電話で確認したので間違いない。
藁にもすがる思いで唯一の蜘蛛の糸は、援交待ちをしていた場所が池袋駅前の西口公園だと言うことだけだった。
こうなればダメ元だ。
それから2日後の金曜日の夕方には、西口公園に向かいハンバーガーを片手に周囲の人間達を見ていた。
まぁ初日からヒットするとは、思ってもいなかったが時刻が22時を差した時には、何をしているのか自嘲してしまった。
今帰るか、朝に帰るか、どちらにしようかと考えていると公園の隅が少しだけ騒がしくなる。
バス停の近くかと視線を向けると人集りが出来てるのがわかった次の瞬間、悲鳴と共に人集りを掻き分けて慌てた様子の若者が飛び出してきた。
それを後ろから追う体格の良い男、長身に太過ぎず細過ぎない、何よりもその動きに無駄な動作がない。
度胸試しなのか、誰かに噛まされたのか、自分があの若者と同じ立場なら絶対手を出さないその風貌。
晴人は、その様子を呆然と眺めていると若者は、こちらに向かって逃げてくる、あまつさえ周りにどけなどと偉そうに命令しながら。
周りは、突然の事に驚きながら道を開けるが晴人は、そこまで素直な性格をしておらず、よそ見をするとわざとぶつかり、若者をコケさせた。
「いってぇ!テメェどこ見てんだよ!」
若者は、倒れながら文句をいい、晴人はそれに応える様に興味のないカフェを無言で指差した。
そんな事言ってる暇があるならさっさと立ち上がればいいのに、なんて思いながら若者を見ていたが晴人の思い虚しく、後を追いかけてきた体格のいい男の拳を顔面で受け止めていた。
立ち上がったと同時の出来事だった。
鈍い音共に再びその体は、地面へと叩きつけられる。
死んだ?
晴人は、倒れたままビクビク動く若者を覗き込むと完全に白目を向いていたが気絶してだけだった。
「セーフ、まだ死んでない」
「当たり前だ、加減はしてる」
晴人の言葉に体格の良い男が冷静に応えた。
「加減してるからっていっても、お前の拳はキツイぞ?こいつ多分格闘技経験とか無さそうだし」
「だから、急所は外してるよ、それよりもお前がこんな所に居るなんてどんな風の吹き回しだ?」
そりゃそうだ。
体格の良い男、東堂 縁の問いに妙に納得をしながら晴人は、周囲を見渡した。
「とりあえず、その話はこの場を去ってからにしよ、恐らく数分内にデコ来る」
晴人の応えに縁は、鼻をひとつならしな、移動する事になった。
人混みは、嫌いだが、こういう時は大いに助かる。
真夜中とは、言え眠らない都市東京の一角を担う池袋は、終電が無くなるまでは、いつ帰るのかと疑問に思う程だ。
行先は、東口の雑居ビル、縁の事務所兼BARの入っている所だ。晴人は、道中、縁に事の顛末を話した。
「怨嗟の元ね…そういや、昔同じ様なのがいたよな?」
昔、という単語が当てはまるか微妙な事だが、確かにこれと同じ様な案件を請け負った事がある。
正確には、任務に着いていただが。
「あれは、怨嗟の根源と言うより、影響力を行使してるヤツが怨嗟に飲み込まれないのがおかしいって話になったやつの事だろ?」
晴人の指摘に縁は、少しだけ首を傾げた。
「そうだっけか?でも、結果そいつが怨嗟を別なモノに移していたって点では、同じじゃないか?」
そう言われて、自ずと晴人の足が止まった。
「似てる…か…」
縁の言葉にその時の事を思い出す。
不審死が続き、三本からある司令が晴人の居る部隊に下された。
それは、調査と処理。
それが本当に事故ならそれで良し、もし別な何かによる案件ならばそれを処理しろとの事だった。
あの時の調査対象は、与党の国会議員。
目立ったポジションには居ないが妙に党内で権威を振るっていた人物だったのは、記憶している。
確か後援会に所属していた宗教団体の票数によって党内で力を持っていた。との情報だったが調べて出てきたのは、周囲で事故死が頻発しているという事実だった。
事故事態に何らかの工作要因は、なかったが亡くなっているのは、どれもその議員に対して敵対を表明している人物ばかりだった。
それに対して、三本は、門または接続者が関わっていると踏んでいたが実際は全く違うものだった。
「あの時は、確か、道具が使われてたんだよな?」
記憶を辿りながら晴人が独り言を呟くと縁は、鼻をひとつ鳴らした。
「あぁ、それもかなりの貴重品だった筈だ」
貴重品、その単語に晴人は、その後にこっぴどく泰野に嫌味を言われたのを思い出し、から笑いが漏れてしまった。
そして、その出来事が今の晴人の生業になりつつある、それに繋がるのも思い出し、その場に溜息をつきながら蹲った。
突然の行動に縁は、眉間に皺を寄せながら晴人を見た。
「そうだ、あれが原因だ…」
「何が?」
「今の道具作りをする羽目になったのがだよ」
それを壊した事に泰野は、だいぶ御立腹だった、それをどうにか治める為に晴人は、道具作りをしてそれを三本に流す様にした。
壊した物、程では、ないが晴人が作る物もまた品位は高く、泰野の嫌味は、治ったのだが、今度は逆に催促が来る事になった。
そして、それは今のもなお続いている皮肉だった。
それから少し歩くとBARに着いて店に入ると店仕舞いをしていた小太りの店主があからさまに嫌そうな表情を浮かべた。
「もう閉店時間なんだが?しかもガキに酒なんて提供なんてしねぇぞ」
店主の言葉に縁は、煙草を咥えながら手を振った。
「いらん、客でもないしな」
縁は、いつもの様にカウンターに座り火をつけると晴人もその隣に座った。
「9年前に池袋を拠点にして、恨みを買いそうな事をやってる人物といえば誰かいない?」
座ると同時に晴人が店主に聞くと店主は、煙草に火をつけて燻らせながらコーラの入ったグラスを2つカウンターに置いた。
「知らん、っといいたいが、1人だけ心当たりがある」
本当、この人いい人だよな。
晴人は、改めてそう思いながら店主、八坂 耀太に手を合わせた。
「なんだそれ?」
「出来るだけ、詳しく教えてください、タダで」
晴人の言葉に八坂は、盛大な溜息と同時に煙を吐いた。
「俺は、あくまでもBARの店主なんだが?」
「いや、それは表向きじゃないっすか」
晴人のその返しに耀太は、呆れた様に縁に目を向けた。
縁は、肩を竦めると晴人の背中を叩いた。
「これは、世間話って事だ」
もうちょい、手加減しろよこの脳筋。
そう言いそうになる口をグッと堪えながら縁に対して笑顔を向け、次に耀太に対して先に話して貰える様に手を出して促した。
「とりあえず、9年前に池袋に拠点があって人に恨まれそうな人物だろ、国会議員の岩屋って知ってるか?」
岩屋、その苗字を聞くと晴人と縁は、自然とお互いに目を向けてしまった。
「確か、民自党の議員ですよね?」
「やっぱり、知ってたか」
「やっぱり?」
耀太の言葉に反応を示したのは、縁だった。
「多分、これお前らの方の案件だろ」
「どういうことですか?」
晴人の問いに耀太は、首を傾げるが深く詮索してこなかった。
「最近、その岩屋の周りで事故死が多くてな、それも敵対してる側の奴等が軒並み死んでってる、俺の方にも何か情報がないかって話が幾つが飛んできてるが…」
耀太は、そう言うと肩を竦める。
つまり、何も無いということだ。
晴人は、再び縁に目を向けると椅子から立ち上がり、電話してくると一言告げてBARの出入口から出て屋上へと向かった。
時刻は、間もなく23時を迎えようとしていた。
携帯電話で時間を確認しながら迷い無く泰野へとコールした。
『随分な時間にかけてきたな?』
数コールの後に溜息混じりの泰野が出た。
「まだ仕事中だろ?」
『そうでもだよ、それで何か?』
「岩屋の件ってどうなってる?」
晴人がそう聞くと、泰野は何も答えず鼻をひとつ鳴らした。
「そう警戒しなさんなよ、前回は俺が解決してやったろ?」
『その時、お前は何をした?』
「その代わり、お前はそれ以上の物を手に入れたろ?」
『最近サボり滞ってるけどな、それで岩屋で何が聞きたいんだ?』
「この前、輪生会の人間と揉めたんだけどそこら辺の話は、そっちに飛んできてないか?」
晴人は、泰野の溜息が受話器から漏れてきそうなので少しだけ耳から離した。
『お前…そういうのは、揉めた日に連絡入れろよ…』
「いやぁ~それより、案件の方が気になってて、そっちを優先しててさ」
下手に忘れてたなんて単語を使えばどんな逆鱗に触れるかわかったものでは、ないのであえて誤魔化した。
『忘れてた、だけだろ』
が、簡単にバレてしまうのも世の常かと晴人は、思った。
そこから、瀬野親子の件を含めて泰野に説明すると比奈の名前を聞いた時に泰野は、何かを考え込む様に押し黙った。
「何?」
晴人がそこに突っ込むと泰野は、少しだけ渋ったが黙っていてもしょうがないと思ったのか口を開いた。
『前の時の情報だが、岩屋に飛ばされていた邪念を請け負っていた隠し子がいた』
「その名前が比奈か?」
『あぁ』
つまり、輪生会の狙いは、明穂ではなく、比奈という事になる。
「にしては、早いな、アイツが目立つのは、10年以上先の話だろ?」
『それは、あくまでこっちが岩屋に気づいたのがその時だったてだけの話だ、あの当時は混乱期にあったし、人間も揃ってなかった』
泰野にそう言われて晴人は、納得すると同時に、かつての比奈は、どんな気持ちだったのか気になった。
「そういえば、母親の明穂については?」
『記憶が確かなら、記録になかった、ただ中学生の頃に岩屋が引き取ったとしかなかった』
比奈が中学生の時に何かあった、捨てたのか、自然死か…。
晴人は、頭を掻いて、頭を切り替えた。
「とりあえず、岩屋の事で何かわかったらヨロシク」
『こっち的には、今回は岩屋に関わって欲しくなかったが、仕方がない、下手な事はやめてくれよ』
泰野は、そう言うと電話を切った。
それは、出来ない約束だ。
前回もやったのなら、今回もやる可能性は、十分に高い。しかしそれを馬鹿正直に伝えたらこの先が滞るのであえて考えないでおこうと晴人は、決めた。
判明した事は、要調査中案件だが途中経過の報告は、怠るわけにはいかない。
しかし、土日はクリニックは、休みで田臥も休みだが用事の為に手が離せないという。
まぁこんな話を休日に聞かされても折角の和気藹々の空気を壊すのも忍びない。っということで報告は、平日の初日である月曜のクリニック閉院後となった。
学校を終えて、一旦自宅に帰ってからクリニックに向かった。
異変は直ぐに見つかった。
クリニックが入る雑居ビルの前に黒塗りの高級車が停まっていたのだ。
嫌な予感がする、晴人は一息入れるとクリニックへと入った。
ドアを開けるとすぐに場違いな3人組を見つけた。1人は作務衣姿の老人にスーツの老紳士、そして中性的な顔立ちのスーツ姿の青年の男性だった。
晴人は、3人の顔を知っていた、作務衣の老人はこの前の明穂を攫おうとしていた男で中性的な顔立ちの青年は、泰野だ。
そして、スーツの老紳士は、諸悪の根源である|単語《岩屋 兼続》だった。
この顔ぶれでここに揃うのを見て晴人は、ここまでの流れを凡そで察する事が出来た。
「君が才田君かな?なるほどお爺様にそっくりだ」
岩屋は、晴人の顔をゆったりと見ると柔和な笑顔を浮かべながら言った。
「地方の元県会議員の顔をよく知ってますね」
晴人は、ゆっくり会釈をしてから応えると岩屋は柔和な笑顔を崩さず首を傾げた。
「君は知らないのかな、県会議員の以前は厚生労働省の官僚だったんだよ」
「それは、知りませんでした、なんせ放蕩の孫として放り出された身なんで」
本当は知っている、しかしそれ以上先の話をされても花を咲かす気などない晴人は、話を先に進めたっかった。
「それにしても、国会議員の先生がなんたってわざわざこんなクリニックへ?体調が悪いならもっといい病院があるでしょ?」
「そうだね、だが、私のはちょっと特別でね、それに先週私の後援会の方がここの先生にお世話になったと聞いてね、藁にも縋る思いでお邪魔させて貰ったんだよ 」
晴人は、岩屋の言葉で泰野へと視線を向けた。
泰野は、晴人と目が合うものの直ぐに逸らした。
「君の後ろ盾である、三本柱は私の味方だよ、才田君」
その言葉に晴人は、泰野を睨みつけた。
「味方とは、少し違うと思いますが、我々としても今回の事はハッキリさせておかないと、と思っただけですので」
ハッキリね?何を?
そう訊こうとした矢先にクリニックのドアが開いた。
瀬野母娘が到着したのだ。明穂は、3人を呆然と見たかと思うと老人に目がいった時に少しだけ顔を引きつらせて晴人の顔を見た。
それよりも気になったのは比奈の表情だ、にこやかに母親の顔を見ていたかと思うと岩屋の顔を見てその表情が無に変わったのだ。
「やぁ久しぶりだね」
岩屋は、にこやかに明穂に話かけるが肝心な明穂は、岩屋が誰なのかわかっていないのか少しだけ怯えた様子を見せた。
「覚えてないか?君とはそれなりの時を過ごしたっと思っていたのだがね」
何も答えない明穂を無視して岩屋は続けた。
まぁ明穂は生きていく為に体を売っていただけだからわざわざ記憶していないだろう。
多くの中の1人でしかない。しかし岩屋にとってそれは気に食わないのだろ、無表情を気取っているが微かに目じりがピクリっと動いたのを晴人は見逃さなかった。
「本日は、どのようなご用件でしょうか?」
沈黙の空気を割いたのは、仕事を終えた、田臥が奥から現れると岩屋達に言った。
「初めまして、私は岩屋っというものです、こちらの|単語《臣雁》が先週失礼を働いた様でそのお詫びと…」
岩屋は、そういいながら振り返り明穂へ目を向けた。
「娘を引き取りに来たんだ」
岩屋のその言葉に田臥と明穂の息を飲んだ。
「本当なのかい?」
田臥が晴人に確認の言葉と視線を向ける。
「さっきまであくまで可能性でしたけど本人が言うならそうなんでしょ?」
素直応えに田臥は戸惑いながら明穂に視線を向けた、明穂は力強く比奈を抱き締めていた。
そんな明穂に目を向けながら不気味な笑顔を浮かべる岩屋。
「何も今すぐの話じゃない、彼女が病気だと聞いてね、助ける為の選択肢がここにあるっと知っておいて欲しくてね、今日は挨拶に来ただけだよ」
「でも、原因は貴方なんですよね?」
明穂の言葉に岩屋の目尻がピクリと動き、晴人に視線を向けた。
「君が教えたのかな?」
「あくまで可能性の話をしただけだよ」
「知らない方が幸せっと言う事もあるのを知らないのかい?」
「時と場合に寄るだろ?」
晴人の言葉に岩屋は肩を竦めると溜息を一つ吐いた。
「今は、接続者っといったかな、多少は別次元の存在だから話が分かると思ったが。泰野君彼はどうやら事態をわかってないとみえるな」
岩屋の言葉に泰野は、苦笑しながら頭を下げた。
「良いかい?この世には不治の病の様にどうしようも出来ない事があるんだ、今回のこれもそれに該当する案件だ、私だってこんな事はごめんだが、私の祖先が行った業による事象だ、どうにも出来ないのだよ」
「本当に祖先の業だけか?」
「無論、私も関わっているだろう、それも否定しない、だがそれを恐れていて国会議員という職を全うできない、惜しむらくはその業が私ではなく、子に繋がれてしまった事だよ、例え過ちでできた子でもね」
殴りたい、晴人はそんな衝動に駆られたがそれを察している泰野が岩屋との間に立ち阻止していた。
「だからこそ、償いの為に私はここにいる、その子を私が引き取り不自由ない生活を提供しよう思っている」
「別に引き取る必要なんてないんじゃないか?」
「失礼だが、彼女に社会的信頼があるとは思えないが?」
その一言に田臥が前に出ようとするのを晴人が片手を上げて制止した。
「それは、建前だろ、本音を言えよ?」
晴人の一言に岩屋の柔和な仮面が徐々に崩れていく。
これが鬼なのだろうか、醜悪に歪む顔に晴人は妙に冷静になっていく自分を感じた。
「本当に君は、無知なのかな?他の接続者はもっと利口だったのだがね」
「他の接続者がどうかなんて知らねぇよ」
晴人のその返しに岩屋が手を上げると臣雁が手で印を組み、何かを呟いた。
次の瞬間、激しい耳鳴りが響いたかと思うと全身に電気が走り、晴人はその場で跪いてしまった。
「これで少しは自分の立場を理解できたかな?良いかい?いくら君が想念の力を使えたとしてもそれは、どこまで行っても井の中の蛙なんだよ、私はこれ以上の力持っているんだ、そしてこの呪縛はそれ以上の存在だ、それをどうにか出来るっと思っているのかい?」
晴人は、表情を歪めながら泰野に視線を向けるっと泰野はゆっくりと首を横に振った。
「1週間やろう、それまでにいい返事を期待しているよ」
無言でも反抗的な晴人の視線に岩屋は、そう告げると臣雁と泰野を連れてクリニックを後にした。
慈悲を与えたつもりなのだろう、交渉で優位に立つ時に使う手法だ。
正直、晴人にっとってそれは助かった、もしこれ以上続くのであればどうなっていたのかわからない。
岩屋が帰ってから、クリニック内は、重い沈黙に支配された。
「渡さない…」
そんな沈黙を破ったのは、明穂のか細い呟きだった。
目に涙を溜めても尚、その目は諦めを知らなかった。
しかし、それに対して比奈の表情は、完全に絶望に支配されていた。
それはまるでこの先の未来を見てきたかの様に、顔は青く見ているだけで痛々しく感じる程に。
それを聞いた時に晴人は、自然と天を仰いでいた。
明穂が比奈を妊娠した時は、荒んでいた時期で、母親とも物理的な距離をとっていた所謂、家なき子時代だった。
最初は、友人宅を渡り歩き、そして道はエスカレートして落ちていく。
渡り所も無くし、金も使い果たせば次の行動は自ずと決まってしまう。
かつては、ウリと呼ばれ、現代では、援助交際と呼び、未来は、パパ活なんて名前に変わるそれだ。
名称がどんなに変化しようがやる事は同じで、結果はお金を貰ってその報酬は自らの体という因習。
その因習の結果、明穂は比奈を身ごもりそれをキッカケに母親との仲を取り戻したという。
その話を田臥からそして、後に比奈が寝た後に明穂自身にも電話で確認したので間違いない。
藁にもすがる思いで唯一の蜘蛛の糸は、援交待ちをしていた場所が池袋駅前の西口公園だと言うことだけだった。
こうなればダメ元だ。
それから2日後の金曜日の夕方には、西口公園に向かいハンバーガーを片手に周囲の人間達を見ていた。
まぁ初日からヒットするとは、思ってもいなかったが時刻が22時を差した時には、何をしているのか自嘲してしまった。
今帰るか、朝に帰るか、どちらにしようかと考えていると公園の隅が少しだけ騒がしくなる。
バス停の近くかと視線を向けると人集りが出来てるのがわかった次の瞬間、悲鳴と共に人集りを掻き分けて慌てた様子の若者が飛び出してきた。
それを後ろから追う体格の良い男、長身に太過ぎず細過ぎない、何よりもその動きに無駄な動作がない。
度胸試しなのか、誰かに噛まされたのか、自分があの若者と同じ立場なら絶対手を出さないその風貌。
晴人は、その様子を呆然と眺めていると若者は、こちらに向かって逃げてくる、あまつさえ周りにどけなどと偉そうに命令しながら。
周りは、突然の事に驚きながら道を開けるが晴人は、そこまで素直な性格をしておらず、よそ見をするとわざとぶつかり、若者をコケさせた。
「いってぇ!テメェどこ見てんだよ!」
若者は、倒れながら文句をいい、晴人はそれに応える様に興味のないカフェを無言で指差した。
そんな事言ってる暇があるならさっさと立ち上がればいいのに、なんて思いながら若者を見ていたが晴人の思い虚しく、後を追いかけてきた体格のいい男の拳を顔面で受け止めていた。
立ち上がったと同時の出来事だった。
鈍い音共に再びその体は、地面へと叩きつけられる。
死んだ?
晴人は、倒れたままビクビク動く若者を覗き込むと完全に白目を向いていたが気絶してだけだった。
「セーフ、まだ死んでない」
「当たり前だ、加減はしてる」
晴人の言葉に体格の良い男が冷静に応えた。
「加減してるからっていっても、お前の拳はキツイぞ?こいつ多分格闘技経験とか無さそうだし」
「だから、急所は外してるよ、それよりもお前がこんな所に居るなんてどんな風の吹き回しだ?」
そりゃそうだ。
体格の良い男、東堂 縁の問いに妙に納得をしながら晴人は、周囲を見渡した。
「とりあえず、その話はこの場を去ってからにしよ、恐らく数分内にデコ来る」
晴人の応えに縁は、鼻をひとつならしな、移動する事になった。
人混みは、嫌いだが、こういう時は大いに助かる。
真夜中とは、言え眠らない都市東京の一角を担う池袋は、終電が無くなるまでは、いつ帰るのかと疑問に思う程だ。
行先は、東口の雑居ビル、縁の事務所兼BARの入っている所だ。晴人は、道中、縁に事の顛末を話した。
「怨嗟の元ね…そういや、昔同じ様なのがいたよな?」
昔、という単語が当てはまるか微妙な事だが、確かにこれと同じ様な案件を請け負った事がある。
正確には、任務に着いていただが。
「あれは、怨嗟の根源と言うより、影響力を行使してるヤツが怨嗟に飲み込まれないのがおかしいって話になったやつの事だろ?」
晴人の指摘に縁は、少しだけ首を傾げた。
「そうだっけか?でも、結果そいつが怨嗟を別なモノに移していたって点では、同じじゃないか?」
そう言われて、自ずと晴人の足が止まった。
「似てる…か…」
縁の言葉にその時の事を思い出す。
不審死が続き、三本からある司令が晴人の居る部隊に下された。
それは、調査と処理。
それが本当に事故ならそれで良し、もし別な何かによる案件ならばそれを処理しろとの事だった。
あの時の調査対象は、与党の国会議員。
目立ったポジションには居ないが妙に党内で権威を振るっていた人物だったのは、記憶している。
確か後援会に所属していた宗教団体の票数によって党内で力を持っていた。との情報だったが調べて出てきたのは、周囲で事故死が頻発しているという事実だった。
事故事態に何らかの工作要因は、なかったが亡くなっているのは、どれもその議員に対して敵対を表明している人物ばかりだった。
それに対して、三本は、門または接続者が関わっていると踏んでいたが実際は全く違うものだった。
「あの時は、確か、道具が使われてたんだよな?」
記憶を辿りながら晴人が独り言を呟くと縁は、鼻をひとつ鳴らした。
「あぁ、それもかなりの貴重品だった筈だ」
貴重品、その単語に晴人は、その後にこっぴどく泰野に嫌味を言われたのを思い出し、から笑いが漏れてしまった。
そして、その出来事が今の晴人の生業になりつつある、それに繋がるのも思い出し、その場に溜息をつきながら蹲った。
突然の行動に縁は、眉間に皺を寄せながら晴人を見た。
「そうだ、あれが原因だ…」
「何が?」
「今の道具作りをする羽目になったのがだよ」
それを壊した事に泰野は、だいぶ御立腹だった、それをどうにか治める為に晴人は、道具作りをしてそれを三本に流す様にした。
壊した物、程では、ないが晴人が作る物もまた品位は高く、泰野の嫌味は、治ったのだが、今度は逆に催促が来る事になった。
そして、それは今のもなお続いている皮肉だった。
それから少し歩くとBARに着いて店に入ると店仕舞いをしていた小太りの店主があからさまに嫌そうな表情を浮かべた。
「もう閉店時間なんだが?しかもガキに酒なんて提供なんてしねぇぞ」
店主の言葉に縁は、煙草を咥えながら手を振った。
「いらん、客でもないしな」
縁は、いつもの様にカウンターに座り火をつけると晴人もその隣に座った。
「9年前に池袋を拠点にして、恨みを買いそうな事をやってる人物といえば誰かいない?」
座ると同時に晴人が店主に聞くと店主は、煙草に火をつけて燻らせながらコーラの入ったグラスを2つカウンターに置いた。
「知らん、っといいたいが、1人だけ心当たりがある」
本当、この人いい人だよな。
晴人は、改めてそう思いながら店主、八坂 耀太に手を合わせた。
「なんだそれ?」
「出来るだけ、詳しく教えてください、タダで」
晴人の言葉に八坂は、盛大な溜息と同時に煙を吐いた。
「俺は、あくまでもBARの店主なんだが?」
「いや、それは表向きじゃないっすか」
晴人のその返しに耀太は、呆れた様に縁に目を向けた。
縁は、肩を竦めると晴人の背中を叩いた。
「これは、世間話って事だ」
もうちょい、手加減しろよこの脳筋。
そう言いそうになる口をグッと堪えながら縁に対して笑顔を向け、次に耀太に対して先に話して貰える様に手を出して促した。
「とりあえず、9年前に池袋に拠点があって人に恨まれそうな人物だろ、国会議員の岩屋って知ってるか?」
岩屋、その苗字を聞くと晴人と縁は、自然とお互いに目を向けてしまった。
「確か、民自党の議員ですよね?」
「やっぱり、知ってたか」
「やっぱり?」
耀太の言葉に反応を示したのは、縁だった。
「多分、これお前らの方の案件だろ」
「どういうことですか?」
晴人の問いに耀太は、首を傾げるが深く詮索してこなかった。
「最近、その岩屋の周りで事故死が多くてな、それも敵対してる側の奴等が軒並み死んでってる、俺の方にも何か情報がないかって話が幾つが飛んできてるが…」
耀太は、そう言うと肩を竦める。
つまり、何も無いということだ。
晴人は、再び縁に目を向けると椅子から立ち上がり、電話してくると一言告げてBARの出入口から出て屋上へと向かった。
時刻は、間もなく23時を迎えようとしていた。
携帯電話で時間を確認しながら迷い無く泰野へとコールした。
『随分な時間にかけてきたな?』
数コールの後に溜息混じりの泰野が出た。
「まだ仕事中だろ?」
『そうでもだよ、それで何か?』
「岩屋の件ってどうなってる?」
晴人がそう聞くと、泰野は何も答えず鼻をひとつ鳴らした。
「そう警戒しなさんなよ、前回は俺が解決してやったろ?」
『その時、お前は何をした?』
「その代わり、お前はそれ以上の物を手に入れたろ?」
『最近サボり滞ってるけどな、それで岩屋で何が聞きたいんだ?』
「この前、輪生会の人間と揉めたんだけどそこら辺の話は、そっちに飛んできてないか?」
晴人は、泰野の溜息が受話器から漏れてきそうなので少しだけ耳から離した。
『お前…そういうのは、揉めた日に連絡入れろよ…』
「いやぁ~それより、案件の方が気になってて、そっちを優先しててさ」
下手に忘れてたなんて単語を使えばどんな逆鱗に触れるかわかったものでは、ないのであえて誤魔化した。
『忘れてた、だけだろ』
が、簡単にバレてしまうのも世の常かと晴人は、思った。
そこから、瀬野親子の件を含めて泰野に説明すると比奈の名前を聞いた時に泰野は、何かを考え込む様に押し黙った。
「何?」
晴人がそこに突っ込むと泰野は、少しだけ渋ったが黙っていてもしょうがないと思ったのか口を開いた。
『前の時の情報だが、岩屋に飛ばされていた邪念を請け負っていた隠し子がいた』
「その名前が比奈か?」
『あぁ』
つまり、輪生会の狙いは、明穂ではなく、比奈という事になる。
「にしては、早いな、アイツが目立つのは、10年以上先の話だろ?」
『それは、あくまでこっちが岩屋に気づいたのがその時だったてだけの話だ、あの当時は混乱期にあったし、人間も揃ってなかった』
泰野にそう言われて晴人は、納得すると同時に、かつての比奈は、どんな気持ちだったのか気になった。
「そういえば、母親の明穂については?」
『記憶が確かなら、記録になかった、ただ中学生の頃に岩屋が引き取ったとしかなかった』
比奈が中学生の時に何かあった、捨てたのか、自然死か…。
晴人は、頭を掻いて、頭を切り替えた。
「とりあえず、岩屋の事で何かわかったらヨロシク」
『こっち的には、今回は岩屋に関わって欲しくなかったが、仕方がない、下手な事はやめてくれよ』
泰野は、そう言うと電話を切った。
それは、出来ない約束だ。
前回もやったのなら、今回もやる可能性は、十分に高い。しかしそれを馬鹿正直に伝えたらこの先が滞るのであえて考えないでおこうと晴人は、決めた。
判明した事は、要調査中案件だが途中経過の報告は、怠るわけにはいかない。
しかし、土日はクリニックは、休みで田臥も休みだが用事の為に手が離せないという。
まぁこんな話を休日に聞かされても折角の和気藹々の空気を壊すのも忍びない。っということで報告は、平日の初日である月曜のクリニック閉院後となった。
学校を終えて、一旦自宅に帰ってからクリニックに向かった。
異変は直ぐに見つかった。
クリニックが入る雑居ビルの前に黒塗りの高級車が停まっていたのだ。
嫌な予感がする、晴人は一息入れるとクリニックへと入った。
ドアを開けるとすぐに場違いな3人組を見つけた。1人は作務衣姿の老人にスーツの老紳士、そして中性的な顔立ちのスーツ姿の青年の男性だった。
晴人は、3人の顔を知っていた、作務衣の老人はこの前の明穂を攫おうとしていた男で中性的な顔立ちの青年は、泰野だ。
そして、スーツの老紳士は、諸悪の根源である|単語《岩屋 兼続》だった。
この顔ぶれでここに揃うのを見て晴人は、ここまでの流れを凡そで察する事が出来た。
「君が才田君かな?なるほどお爺様にそっくりだ」
岩屋は、晴人の顔をゆったりと見ると柔和な笑顔を浮かべながら言った。
「地方の元県会議員の顔をよく知ってますね」
晴人は、ゆっくり会釈をしてから応えると岩屋は柔和な笑顔を崩さず首を傾げた。
「君は知らないのかな、県会議員の以前は厚生労働省の官僚だったんだよ」
「それは、知りませんでした、なんせ放蕩の孫として放り出された身なんで」
本当は知っている、しかしそれ以上先の話をされても花を咲かす気などない晴人は、話を先に進めたっかった。
「それにしても、国会議員の先生がなんたってわざわざこんなクリニックへ?体調が悪いならもっといい病院があるでしょ?」
「そうだね、だが、私のはちょっと特別でね、それに先週私の後援会の方がここの先生にお世話になったと聞いてね、藁にも縋る思いでお邪魔させて貰ったんだよ 」
晴人は、岩屋の言葉で泰野へと視線を向けた。
泰野は、晴人と目が合うものの直ぐに逸らした。
「君の後ろ盾である、三本柱は私の味方だよ、才田君」
その言葉に晴人は、泰野を睨みつけた。
「味方とは、少し違うと思いますが、我々としても今回の事はハッキリさせておかないと、と思っただけですので」
ハッキリね?何を?
そう訊こうとした矢先にクリニックのドアが開いた。
瀬野母娘が到着したのだ。明穂は、3人を呆然と見たかと思うと老人に目がいった時に少しだけ顔を引きつらせて晴人の顔を見た。
それよりも気になったのは比奈の表情だ、にこやかに母親の顔を見ていたかと思うと岩屋の顔を見てその表情が無に変わったのだ。
「やぁ久しぶりだね」
岩屋は、にこやかに明穂に話かけるが肝心な明穂は、岩屋が誰なのかわかっていないのか少しだけ怯えた様子を見せた。
「覚えてないか?君とはそれなりの時を過ごしたっと思っていたのだがね」
何も答えない明穂を無視して岩屋は続けた。
まぁ明穂は生きていく為に体を売っていただけだからわざわざ記憶していないだろう。
多くの中の1人でしかない。しかし岩屋にとってそれは気に食わないのだろ、無表情を気取っているが微かに目じりがピクリっと動いたのを晴人は見逃さなかった。
「本日は、どのようなご用件でしょうか?」
沈黙の空気を割いたのは、仕事を終えた、田臥が奥から現れると岩屋達に言った。
「初めまして、私は岩屋っというものです、こちらの|単語《臣雁》が先週失礼を働いた様でそのお詫びと…」
岩屋は、そういいながら振り返り明穂へ目を向けた。
「娘を引き取りに来たんだ」
岩屋のその言葉に田臥と明穂の息を飲んだ。
「本当なのかい?」
田臥が晴人に確認の言葉と視線を向ける。
「さっきまであくまで可能性でしたけど本人が言うならそうなんでしょ?」
素直応えに田臥は戸惑いながら明穂に視線を向けた、明穂は力強く比奈を抱き締めていた。
そんな明穂に目を向けながら不気味な笑顔を浮かべる岩屋。
「何も今すぐの話じゃない、彼女が病気だと聞いてね、助ける為の選択肢がここにあるっと知っておいて欲しくてね、今日は挨拶に来ただけだよ」
「でも、原因は貴方なんですよね?」
明穂の言葉に岩屋の目尻がピクリと動き、晴人に視線を向けた。
「君が教えたのかな?」
「あくまで可能性の話をしただけだよ」
「知らない方が幸せっと言う事もあるのを知らないのかい?」
「時と場合に寄るだろ?」
晴人の言葉に岩屋は肩を竦めると溜息を一つ吐いた。
「今は、接続者っといったかな、多少は別次元の存在だから話が分かると思ったが。泰野君彼はどうやら事態をわかってないとみえるな」
岩屋の言葉に泰野は、苦笑しながら頭を下げた。
「良いかい?この世には不治の病の様にどうしようも出来ない事があるんだ、今回のこれもそれに該当する案件だ、私だってこんな事はごめんだが、私の祖先が行った業による事象だ、どうにも出来ないのだよ」
「本当に祖先の業だけか?」
「無論、私も関わっているだろう、それも否定しない、だがそれを恐れていて国会議員という職を全うできない、惜しむらくはその業が私ではなく、子に繋がれてしまった事だよ、例え過ちでできた子でもね」
殴りたい、晴人はそんな衝動に駆られたがそれを察している泰野が岩屋との間に立ち阻止していた。
「だからこそ、償いの為に私はここにいる、その子を私が引き取り不自由ない生活を提供しよう思っている」
「別に引き取る必要なんてないんじゃないか?」
「失礼だが、彼女に社会的信頼があるとは思えないが?」
その一言に田臥が前に出ようとするのを晴人が片手を上げて制止した。
「それは、建前だろ、本音を言えよ?」
晴人の一言に岩屋の柔和な仮面が徐々に崩れていく。
これが鬼なのだろうか、醜悪に歪む顔に晴人は妙に冷静になっていく自分を感じた。
「本当に君は、無知なのかな?他の接続者はもっと利口だったのだがね」
「他の接続者がどうかなんて知らねぇよ」
晴人のその返しに岩屋が手を上げると臣雁が手で印を組み、何かを呟いた。
次の瞬間、激しい耳鳴りが響いたかと思うと全身に電気が走り、晴人はその場で跪いてしまった。
「これで少しは自分の立場を理解できたかな?良いかい?いくら君が想念の力を使えたとしてもそれは、どこまで行っても井の中の蛙なんだよ、私はこれ以上の力持っているんだ、そしてこの呪縛はそれ以上の存在だ、それをどうにか出来るっと思っているのかい?」
晴人は、表情を歪めながら泰野に視線を向けるっと泰野はゆっくりと首を横に振った。
「1週間やろう、それまでにいい返事を期待しているよ」
無言でも反抗的な晴人の視線に岩屋は、そう告げると臣雁と泰野を連れてクリニックを後にした。
慈悲を与えたつもりなのだろう、交渉で優位に立つ時に使う手法だ。
正直、晴人にっとってそれは助かった、もしこれ以上続くのであればどうなっていたのかわからない。
岩屋が帰ってから、クリニック内は、重い沈黙に支配された。
「渡さない…」
そんな沈黙を破ったのは、明穂のか細い呟きだった。
目に涙を溜めても尚、その目は諦めを知らなかった。
しかし、それに対して比奈の表情は、完全に絶望に支配されていた。
それはまるでこの先の未来を見てきたかの様に、顔は青く見ているだけで痛々しく感じる程に。
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