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才田晴人っという男
怨嗟の憤怒
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それは、雄叫びにも似ていた。
「どうして、こんな目に遭わないといけないのよ!!」
普段の優しい声からは、想像できない程の苦悶の声に酷く衝撃を感じたのを覚えている。
あぁ、これは全部私のせいなんだ。
それだけは、わかる。
だからこそ、比奈は何も言えずその場を去る事しか出来なかった。
中学2年の修学旅行まであと1週間って時の出来事だ。
それまでは、調子が良かったのにその日以降、見る見る体調を崩し、修学旅行には行けず、代わりに入院をする事になってしまった。
「比奈、なんか欲しいものはある?」
明穂は、1週間前の雄叫びが嘘の様にいつも通りに優しく穏やかな笑顔で接してきた。
比奈にとって、それはもういつもと同じ様に見れなくなっていた。
この笑顔の裏には、自分を忌々しく思っている本性がある。
そう思えば思う程に徐々に明穂に対して素っ気なくなってしまっていた。
「比奈?」
優しいその声にいつも癒されていた筈なのにその時からその声に不信感しか抱けなくなっていた。
大好きだったそのぬくもりも信じられなくなっていた。
だから、つい口に出してしまった。
「ママは、私が居ない方が幸せだよね」
その時の明穂がどんな顔をしていたか比奈は、知らない。
安堵されているかもしれない、そうじゃないかもしれない。
どちらにしろ、選んだ事への決意が揺らぐのだけは怖くて見れなかった。
そして、それが明穂と最後の会話になった。
岩屋から引き取りたいと連絡があったのは、発症して間もなくだった。
明穂は、頑なに断り、祖母もまた岩屋に対して軽蔑する様な視線をいつも向けていたのを覚えている。
小学生高学年に差し掛かった時に出会ったが丁寧な口調の中に人を馬鹿にした様な言葉と態度に比奈自身も岩屋に対して良い印象はなかったが自分の事が家計を逼迫させている事も知っていた。
祖母は、スナックの経営をしているが所詮はベッドタウンの場末のスナックだ、収入だってたかが知れている。
明穂も昼のパートやスナックの手伝いなどしながら支えていたが比奈の体調のせいで安定的に働けず、クビになったりする為に収入は、安定しなかった。
それでも2人は比奈への笑顔は決して忘れなかった。
悪い事をしたら怒れるが理不尽な八つ当たり等は、一切してこなかった。
だから、比奈も最初は岩屋のところに行こうとは思っていなかった。
だが、時が進むにつれ、悪くなる身体は、心も蝕んでいった。
どうして私だけ、買えないの?
どうして私だけ、何も出来ないの?
どうして私だけ、こんな目に遭わないといけないの?
黒い言葉が心の中を蝕み、縛り付けてく。
そんな時、いつも明穂の暖かい手と優しい笑み、解いてくれた。
「どうして、こんな目に遭わないといけないのよ!」
だからか明穂が叫んだその言葉が比奈の心をより暗い世界へと落としていった。
「比奈、大丈夫?」
心配する明穂の声に比奈は、現実の世界へと引き戻された。
小学生の体の比奈に若い明穂が心配そうにコチラを覗き込んでいた。
比奈は、苦笑をしながら首を横に振った。
「やっぱり、行かなくてもいいんじゃないかい?」
比奈の逆隣を歩く祖母の明奈が心配そうに言うが比奈は祖母に向かって大丈夫っと答えた。
1週間が過ぎるのはあっという間だった。
結局、田臥も才田も明穂を説得は、おろかその話すら出来ずに今日を迎えてしまったのだ。
田臥が話が出来ないのは最初からわかっていた、かつての世界でも彼は明穂に惚れてその事を彼女が亡くなるその日まで言えずにいた程の奥手な男だった。
いい人なんだが肝心なところで役に立たないがその気持ちは、行動で示し信頼はしていた。
願わくばこの先2人が結ばれるのが比奈の願いでもあった。
問題は才田だ、彼は最後まで比奈の言葉を否定していた、確かに彼の作る首飾りは鎖の蝕みを止める事が出来た、だがそれだけだった。かつての世界でも才田の様な男に会った事も話を聞いた事がないが首飾りの力から期待もしていた。
でも、結果は岩屋の前で跪いたあの姿が全てを物語っていた。
どうしようも出来ない、少なくともあの力では。
それならどうするか、それはもう決まっている。
「あら」
明奈の妙な声を上げたのは、田臥のクリニックに到着した時だった。そこにはワンボックスの高級車と4人の人影見掛けた時だった。
田臥に晴人、そして東堂 縁っと名乗った強面の男ともう1人は比奈は初対面だった。
しかし、明穂と明奈はその男を知って居たのか小さく会釈をするとその男は何処か申し訳なさそうに頭を2人に下げた。
以前からの知り合いなのか3人は懐かしそうに話だし、才田、東堂、田臥、そして比奈は何処か置いてけぼりをくらってしまった。
それから7人は、ワンボックスに乗り込むと岩屋の元へ向かった。
行先は、岩屋が用意した所沢の個人経営のフレンチレストランだ。
運転席には、東堂が助手席に才田が座っている、明奈は強面の男と明穂は田臥っとなんかの相談をしているらしく比奈だけ1人で流れる景色を眺めていた。
心境とは、裏腹に澄んだ空を少しだけ忌々しく感じて溜息が漏れる。
「心中穏やかってわけじゃないわな」
助手席の才田がポツリと呟く、もしかしたら独り言だったのかもしれない、だけど比奈は自然と言葉を返していた。
「穏やかなわけないじゃない」
その一言に才田は、小さく肩を竦めると窓を開けて煙草に火をつけた。
運転席の東堂が小さく注意をするが、「俺は客人の方だ」っと言って煙草を燻らせた。
「本気で悪夢をもう一度見る気なのかい?」
その一言に比奈は、ただ黙るだけだった。
余計な事は、言えない。これは悟られてはならないのだ。
「ねぇ、才田さん、私達の力って霊能力なの?」
その言葉を躱すには、内容をすり替えるしかなかった。
「霊能力?誰がんなことを?」
「アイツよ」
比奈の返しに才田は、少しだけ唸る。
「正確に言うなら、それらの源泉って言うべきなのかな」
「源泉?」
「そう、それを元に色んな構築をしていく、例えば経文や真言とかに影響の力を与えるのが想念の力で霊能力ってのも間違っては、いないけど、それで片付けるのは少し杜撰かな」
そういうと才田は運転席の東堂に目を向けたが肝心な東堂は、首を横に傾けた。
「俺にそれが出来るっと思うなよ」
そう答える東堂に才田は苦笑いをした。
ワンボックスは程なくして一件の邸宅の中へと入っていく。
四方を2m程の壁に囲まれたそれは、レストランというより金持ちの豪邸に見えた。
使用人だろうか駐車場に近づくと宅内から小走りで出てくると駐車スペースに案内してくれた。
車を止めて、店内に入ると豪華な飾りに数名の従業員が出迎えをしてくれた。
明穂、明奈、沼田は何となく入っているが才田と東堂は、何かに気付いたのか店に入った瞬間にお互いを見合ったかと思うと才田は小さな溜息を漏らして田臥に何かを渡していた。
田臥は不思議そうに受け取るりながらに店に入っていく。
豪華な飾りにシックな店内は、どこか浮世絵離れしていった。
比奈は、吐き気を催しそうになった。
この店を知っていた、そこはかつての岩屋もよく利用していた店だ。主に政策の話し合いや談合などがこの店で行われていた。
そんな特徴を知って居るからこそ比奈は、岩屋が本気で比奈を手に入れようとしているのがわかった。
使用人に案内されたのは2階の広いフロアの部屋だった。庭園を見下ろす様に設置された大きな窓に4人座りのテーブル席が3つ、部屋の真ん中にポツリっと置いてあった。
1席に岩屋と臣雁の姿があった、比奈達の到着を確認すると立ち上がり笑顔で会釈をした。
「お待ちしておりました、どうぞ此方へ」
岩屋が仰々しい仕草で席に案内するがそれを否定の行動をしたのは明奈だった。
「今日は、ここで、お断りの申し出をさせて貰ったらお暇させて頂きますので」
そうキッパリと答えるが岩屋の笑顔は一切崩れる事はなかった。
「残念ながらそれは、認められないんですよ。明奈さん」
「認めない?貴方にそんな権限はないわよ?岩屋さん」
明奈のその言葉に岩屋は、片手を上げると部屋の出入り口に黒服の男達が立ちはだかった。
「貴方達に許されてるのは、ここでイエスっと言って最後の母娘の晩餐を済ませる事だけですよ」
「それは、話が違うな、岩屋さん」
岩屋の言葉に待ったをかけたのは強面の男だった。
「強硬手段を取らないって約束だった筈だが?」
強面の男がそう言いながら前に出ると東堂がそっとその横に着いた。
「それは、あくまで君をここに呼ぶ為の方便だよ、沼田君」
沼田、その苗字に覚えがある比奈は、どうしてこの人がここに居るのか理解できた。
岩屋の一言に明奈が小さな溜息を漏らして首を横に振る。
「まだ昔の事を…」
明奈のそのセリフに岩屋の表情が歪む。
「今更昔の事なんて気にしてませんよ、明奈さん」
嘘だ、比奈は叫びたくなる気持ちをグッと堪えた。
岩屋の本当の目的は、明奈に対する嫌がらせだった、明穂が明奈の娘と知っていた、知ったうえで孕ませたのだ。
それもこれもかつて自分が明奈に歯牙にもかけられなかった事を根に持った末での行動だった。
こんな馬鹿げた話を病室の中で聞かされた時は、反吐が出るという言葉をより理解出来た気がしてた。
その日の岩屋は酒に酔い、夜中にフラりと比奈の部屋へと立ち寄った。
その頃の比奈は高校生になり、学校も休みながら通わせてもらい、何不自由のない生活を送っていた為に岩屋に対して遠慮がちに接していた。
その日の岩屋は、相当酔っていたから自分をかつての明奈と勘違いして話していた。
「お前は選択を間違えたんだ、あの時に鋼野なんて選ぶから、こんな事になったんだ
」
そう言うと狂ったように笑い出す岩屋に恐怖すら感じた。
「お前の孫は、ちゃんと可愛がってやるよ、なんせ身代わりの女神様なんだからな!」
最初は、なにかの比喩と思っていたが実際は違った。
「その子は、私にとって大事な存在だ、君達には任せられない」
今の岩屋の表情はあの頃と同じで嫌らしく笑う、その顔は、正に鬼と呼ぶにふさわしい程に歪んでいる。
「アンタさっきから何を…」
沼田のその言葉を遮る様に岩屋が片手を上げると臣雁が印を組み何かを呟く。
それと同時に部屋の中に黄色い靄の線が何本も蜘蛛の巣の様に張り巡らさ数名の悲鳴が上がる。
悲鳴を上げているのは、明穂、明奈、沼田だった。
「なっ…だ、こ…」
沼田が苦しみながら呟き、岩屋は笑いながらそれを見下す。
「呪術、本来は悪霊や妖怪を縛る為の術だ」
岩屋のその言葉に沼田は、何かを返そうとするが苦しくて上手く返せないでいると田臥が慌てて3人に近づき何かを渡して、苦しみから解放されたのか悲鳴を上げなくなった。
その状態に岩屋の視線が才田へと向く。
「流石は、道具師、君のは特別製らしいね、才田君」
才田は、面倒そうに頭を搔くと煙草に火をつけてを燻らせた。
「んな事ないですよ、それが弱いんでしょ?」
才田は、そう言いながら臣雁を指差し、再び煙草を燻らせる。
「だが、これはどうだろうか?」
岩屋は、そう言うと胸ポケットから何かを取り出した。
数珠に繋がれた2つの板が繋がれている。
それは、まるで口を開けた鬼の面の様でそこから禍々しい赤黒い靄が漏れ出ていた。
「鬼面の口」
比奈が思わず呟くと岩屋の表情が歪んだ。
気づかれた、咄嗟に比奈は気づいたが遅かった。岩屋は、そうかと呟くと鬼の面から漏れる赤黒い靄が鎖状に変化すると比奈以外の全員に向かって走り、それぞれの首に刺さってしまった。
「これは、鬼面の口と言ってな、使用者が望む対象者に呪詛を与える道具だ、これを使えば対象者は、こちらの望まま、殺す事も可能になる」
再び、明穂達は、悲鳴をあげながらその場に蹲ってしまった。
今度は、田臥や東堂、才田も巻き込まれている。
しかし、東堂と才田は、その苦しみに耐える様にたったまま静かに岩屋を睨みつけていた。
「しかし、これにはデメリットがあってなそれは使用者にも、同じ様にその鎖が刺さってしまう、だから」
そう言うと、岩屋は首元を緩めて首に巻いた青白いスカーフを見せた。
「この宵比礼が身代わりの元に移してくれる、そしてその身代わりこそ」
岩屋のその言葉と共に比奈の首元から現れた赤黒い靄が鎖状になり鬼面の口と繋がる。
「これで理解して貰えたかな?私がなぜその子が必要なのか?その重用性を?」
「ふざけないで!!!」
明穂が叫び、岩屋が手を翳した。
明穂を縛る鎖がより濃い赤黒い靄を吐き、明穂は呻き声を上げながらその場に伏せてしまった。
しかし、明穂はそれでも諦めずに顔を上げ、比奈を見た。
微かに動く口は、逃げて、確かにそう告げている。
「やめて…」
それを見た比奈の目に自然と涙が溢れる。
「口の利き方がなってないな、比奈」
岩屋の言葉に苛立ちを感じながら比奈は、再び口を開いた。
「やめて、下さい…」
比奈の返しに岩屋は満足した様に笑みを零すと鬼面の口から洩れる赤黒い靄の量が目に見えて減った。
「さぁ比奈こっちへ来なさい」
比奈はその言葉に静かに頷くと岩屋の方に向かい歩き出した。
「なぁ、訊いていいか?」
そこに口を挟んだのは、才田だった。
相当余裕があるのだろう岩屋は少しだけうんざりしながらも頷いた。
「随分、強引なやり方だけどよくこれをやろうと思ったな、いくら三本を黙らせたとは言え、これだと別方面が黙ってないだろ?」
「そうか、君はこちらの事情に明るいんだったな才田君」
確かに比奈もそれは感じていた、かつての岩屋は金はちらつかせてもここまで強引な手段は、取らなかった。
「君ならわかるだろ、今この現状は、私を縛るものは、無くなった。三本はこれで私に手出しは出来ない、目の上のたん瘤だった彼等は統率者を失いもはや空中分解を始めている、手に入れるなら今しかないだろ、そして嬉しい誤算もあったし余計に比奈は私の手元に置いて置きたくなったんだよ、いや置いておかなければいけない」
「宵比礼に飼い主が居なくなったから好き勝手に暴れられると、本当にあんたって単純なんだな、だけど嬉しい誤算ってなんだ?」
才田の皮肉に岩屋は手を上げ、赤黒い靄の鎖が才田の全身を縛りつけるが才田は微かに表情を歪めるだけで堂々っと立ち続けていた。
岩屋は、崩れない才田を呆れた様に見ながら微かに頷いた。
「クソガキでもその根性は見上げたものだな、嬉しい誤算は比奈が見識者だとわかった事だよ」
見識者その言葉に才田は、納得した様に比奈に目を向けた。
それで話が終わったっと思ったのか岩屋は手を一つ鳴らすと比奈に手を差し伸べた。
「さぁここまでで良いだろ、来なさい」
岩屋のその言葉に比奈は、ふと今も伏せてる明奈を見てしまった。
明奈は、必死で首を横に振っている、そしてまだ逃げてっと呟いている。
その顔を見てあの時の明奈の言葉を思い出した。
「どうして、こんな目に遭わないといけないのよ!」
その一言に比奈自身を絶望へと落としたその言葉は、今でも頭の中に残っている。
だけど、これにはその先がある。それは比奈が社会人になった時の話だ。
携帯電話に届いたそれは、明穂の訃報だった。相手は主治医だった田臥でそこであの言葉の真意を知る事になった。
彼女の死因は、過労死で最後まで比奈を取り戻す為に最後まで働き、そしてある日、眠る様に亡くなったっとの話だった。
最初は単なる罪滅ぼしで自己満足の為に行っていたのだと思っていた。
「彼女のは、最後まで君の心配をしていた、岩屋さんに引き取られてからも君の体調を気にかけていた、結果岩屋さんが緩和処置しかしないで治療をしていない事を知って、君を引き取ろうっとしていた、だけどそれは最後まで叶わなかった」
秋の風が吹く、オープンカフェのデッキ席で疲れ果てた顔をした田臥は虚ろな目で言っていた。
テーブルには、2つのカップに一枚の写真が置かれていた。
生前の最後の写真だった、そこに写る明穂は比奈の知る明穂とは、別人と呼べる程に違っていた。
老いとも違うその姿に何も言えなかったのを覚えている。
「彼女は、いつもいっていたよ…」
きっと伝えたかったんじゃない、でも、押し止めて置く事も出来なかった。
田臥は、比奈の反応等、お構い無しに壊れた様に続けて話した。
「いつもあの子だけが、どうして、こんな目に遭わないといけないの」
その言葉を聞いた時に比奈は、より深い穴の中へ落ちていった。
同時に、その日から毎日、世界を呪っていた。
自分にこんな枷を与えた世界をどこまでも呪った。
そんな祈りが届いたのがあの日だ。
天を衝く様に伸びる翡翠の巨大樹が世界の飲み込んだあの日。
これで世界が終わるのだと比奈は、歓喜して両手を広げた。
次に意識が戻った時そこには懐かしい顔が眠る比奈の頬を優しく撫でていてくれた。
あぁ幸せが帰ってきた、そう思っていた。
しかし直ぐに絶望もまた比奈の背後に手を回し再び深い穴へ落とそうとしていた。
絶望を与えるなら、なんでこの幸せなんてくれたのよ。
気づけば涙が頬をつたい、明穂にそれを見せるまいと顔を背けると視線の先には、才田が比奈を見つめていた。
誰でもよかった、言わなくてもよかった。
言っても何も変わらないのは、わかっているから。
だけど、言わずには、いられなかった。
「助けてよ…」
返事は、期待していない。
無論、何もされないのは、わかっている。
だけど、言わずには、いられなかった。
「わかった、任せろ」
だから、そんな返事が聞こえた時は、何が起きたのかわからず、頭が真っ白になった。
わかったのは、才田が腰元に手を当てて腕を振るったかと思うと白銀の線が部屋中を駆け巡り、
それまで部屋を支配していた赤黒い鎖がガラスの様に砕け散っていた。
当の才田は、煙草を燻らせながら岩屋と比奈の間に立ちふさがった。
その手には先程まで持っていなかった白銀の刀身の刀が握られていた。
「何が…起きた…?」
岩屋が誰に言うでもなく呟き、才田はそんな岩屋に向かい煙草を投げつけた。
突然の出来事に慌てた岩屋の視線が才田に向き、才田はそんな岩屋に向かい切っ先を向けた。
「さぁ終わりにしようか」
才田は、そう言いながら再度煙草に火を点けた。
「どうして、こんな目に遭わないといけないのよ!!」
普段の優しい声からは、想像できない程の苦悶の声に酷く衝撃を感じたのを覚えている。
あぁ、これは全部私のせいなんだ。
それだけは、わかる。
だからこそ、比奈は何も言えずその場を去る事しか出来なかった。
中学2年の修学旅行まであと1週間って時の出来事だ。
それまでは、調子が良かったのにその日以降、見る見る体調を崩し、修学旅行には行けず、代わりに入院をする事になってしまった。
「比奈、なんか欲しいものはある?」
明穂は、1週間前の雄叫びが嘘の様にいつも通りに優しく穏やかな笑顔で接してきた。
比奈にとって、それはもういつもと同じ様に見れなくなっていた。
この笑顔の裏には、自分を忌々しく思っている本性がある。
そう思えば思う程に徐々に明穂に対して素っ気なくなってしまっていた。
「比奈?」
優しいその声にいつも癒されていた筈なのにその時からその声に不信感しか抱けなくなっていた。
大好きだったそのぬくもりも信じられなくなっていた。
だから、つい口に出してしまった。
「ママは、私が居ない方が幸せだよね」
その時の明穂がどんな顔をしていたか比奈は、知らない。
安堵されているかもしれない、そうじゃないかもしれない。
どちらにしろ、選んだ事への決意が揺らぐのだけは怖くて見れなかった。
そして、それが明穂と最後の会話になった。
岩屋から引き取りたいと連絡があったのは、発症して間もなくだった。
明穂は、頑なに断り、祖母もまた岩屋に対して軽蔑する様な視線をいつも向けていたのを覚えている。
小学生高学年に差し掛かった時に出会ったが丁寧な口調の中に人を馬鹿にした様な言葉と態度に比奈自身も岩屋に対して良い印象はなかったが自分の事が家計を逼迫させている事も知っていた。
祖母は、スナックの経営をしているが所詮はベッドタウンの場末のスナックだ、収入だってたかが知れている。
明穂も昼のパートやスナックの手伝いなどしながら支えていたが比奈の体調のせいで安定的に働けず、クビになったりする為に収入は、安定しなかった。
それでも2人は比奈への笑顔は決して忘れなかった。
悪い事をしたら怒れるが理不尽な八つ当たり等は、一切してこなかった。
だから、比奈も最初は岩屋のところに行こうとは思っていなかった。
だが、時が進むにつれ、悪くなる身体は、心も蝕んでいった。
どうして私だけ、買えないの?
どうして私だけ、何も出来ないの?
どうして私だけ、こんな目に遭わないといけないの?
黒い言葉が心の中を蝕み、縛り付けてく。
そんな時、いつも明穂の暖かい手と優しい笑み、解いてくれた。
「どうして、こんな目に遭わないといけないのよ!」
だからか明穂が叫んだその言葉が比奈の心をより暗い世界へと落としていった。
「比奈、大丈夫?」
心配する明穂の声に比奈は、現実の世界へと引き戻された。
小学生の体の比奈に若い明穂が心配そうにコチラを覗き込んでいた。
比奈は、苦笑をしながら首を横に振った。
「やっぱり、行かなくてもいいんじゃないかい?」
比奈の逆隣を歩く祖母の明奈が心配そうに言うが比奈は祖母に向かって大丈夫っと答えた。
1週間が過ぎるのはあっという間だった。
結局、田臥も才田も明穂を説得は、おろかその話すら出来ずに今日を迎えてしまったのだ。
田臥が話が出来ないのは最初からわかっていた、かつての世界でも彼は明穂に惚れてその事を彼女が亡くなるその日まで言えずにいた程の奥手な男だった。
いい人なんだが肝心なところで役に立たないがその気持ちは、行動で示し信頼はしていた。
願わくばこの先2人が結ばれるのが比奈の願いでもあった。
問題は才田だ、彼は最後まで比奈の言葉を否定していた、確かに彼の作る首飾りは鎖の蝕みを止める事が出来た、だがそれだけだった。かつての世界でも才田の様な男に会った事も話を聞いた事がないが首飾りの力から期待もしていた。
でも、結果は岩屋の前で跪いたあの姿が全てを物語っていた。
どうしようも出来ない、少なくともあの力では。
それならどうするか、それはもう決まっている。
「あら」
明奈の妙な声を上げたのは、田臥のクリニックに到着した時だった。そこにはワンボックスの高級車と4人の人影見掛けた時だった。
田臥に晴人、そして東堂 縁っと名乗った強面の男ともう1人は比奈は初対面だった。
しかし、明穂と明奈はその男を知って居たのか小さく会釈をするとその男は何処か申し訳なさそうに頭を2人に下げた。
以前からの知り合いなのか3人は懐かしそうに話だし、才田、東堂、田臥、そして比奈は何処か置いてけぼりをくらってしまった。
それから7人は、ワンボックスに乗り込むと岩屋の元へ向かった。
行先は、岩屋が用意した所沢の個人経営のフレンチレストランだ。
運転席には、東堂が助手席に才田が座っている、明奈は強面の男と明穂は田臥っとなんかの相談をしているらしく比奈だけ1人で流れる景色を眺めていた。
心境とは、裏腹に澄んだ空を少しだけ忌々しく感じて溜息が漏れる。
「心中穏やかってわけじゃないわな」
助手席の才田がポツリと呟く、もしかしたら独り言だったのかもしれない、だけど比奈は自然と言葉を返していた。
「穏やかなわけないじゃない」
その一言に才田は、小さく肩を竦めると窓を開けて煙草に火をつけた。
運転席の東堂が小さく注意をするが、「俺は客人の方だ」っと言って煙草を燻らせた。
「本気で悪夢をもう一度見る気なのかい?」
その一言に比奈は、ただ黙るだけだった。
余計な事は、言えない。これは悟られてはならないのだ。
「ねぇ、才田さん、私達の力って霊能力なの?」
その言葉を躱すには、内容をすり替えるしかなかった。
「霊能力?誰がんなことを?」
「アイツよ」
比奈の返しに才田は、少しだけ唸る。
「正確に言うなら、それらの源泉って言うべきなのかな」
「源泉?」
「そう、それを元に色んな構築をしていく、例えば経文や真言とかに影響の力を与えるのが想念の力で霊能力ってのも間違っては、いないけど、それで片付けるのは少し杜撰かな」
そういうと才田は運転席の東堂に目を向けたが肝心な東堂は、首を横に傾けた。
「俺にそれが出来るっと思うなよ」
そう答える東堂に才田は苦笑いをした。
ワンボックスは程なくして一件の邸宅の中へと入っていく。
四方を2m程の壁に囲まれたそれは、レストランというより金持ちの豪邸に見えた。
使用人だろうか駐車場に近づくと宅内から小走りで出てくると駐車スペースに案内してくれた。
車を止めて、店内に入ると豪華な飾りに数名の従業員が出迎えをしてくれた。
明穂、明奈、沼田は何となく入っているが才田と東堂は、何かに気付いたのか店に入った瞬間にお互いを見合ったかと思うと才田は小さな溜息を漏らして田臥に何かを渡していた。
田臥は不思議そうに受け取るりながらに店に入っていく。
豪華な飾りにシックな店内は、どこか浮世絵離れしていった。
比奈は、吐き気を催しそうになった。
この店を知っていた、そこはかつての岩屋もよく利用していた店だ。主に政策の話し合いや談合などがこの店で行われていた。
そんな特徴を知って居るからこそ比奈は、岩屋が本気で比奈を手に入れようとしているのがわかった。
使用人に案内されたのは2階の広いフロアの部屋だった。庭園を見下ろす様に設置された大きな窓に4人座りのテーブル席が3つ、部屋の真ん中にポツリっと置いてあった。
1席に岩屋と臣雁の姿があった、比奈達の到着を確認すると立ち上がり笑顔で会釈をした。
「お待ちしておりました、どうぞ此方へ」
岩屋が仰々しい仕草で席に案内するがそれを否定の行動をしたのは明奈だった。
「今日は、ここで、お断りの申し出をさせて貰ったらお暇させて頂きますので」
そうキッパリと答えるが岩屋の笑顔は一切崩れる事はなかった。
「残念ながらそれは、認められないんですよ。明奈さん」
「認めない?貴方にそんな権限はないわよ?岩屋さん」
明奈のその言葉に岩屋は、片手を上げると部屋の出入り口に黒服の男達が立ちはだかった。
「貴方達に許されてるのは、ここでイエスっと言って最後の母娘の晩餐を済ませる事だけですよ」
「それは、話が違うな、岩屋さん」
岩屋の言葉に待ったをかけたのは強面の男だった。
「強硬手段を取らないって約束だった筈だが?」
強面の男がそう言いながら前に出ると東堂がそっとその横に着いた。
「それは、あくまで君をここに呼ぶ為の方便だよ、沼田君」
沼田、その苗字に覚えがある比奈は、どうしてこの人がここに居るのか理解できた。
岩屋の一言に明奈が小さな溜息を漏らして首を横に振る。
「まだ昔の事を…」
明奈のそのセリフに岩屋の表情が歪む。
「今更昔の事なんて気にしてませんよ、明奈さん」
嘘だ、比奈は叫びたくなる気持ちをグッと堪えた。
岩屋の本当の目的は、明奈に対する嫌がらせだった、明穂が明奈の娘と知っていた、知ったうえで孕ませたのだ。
それもこれもかつて自分が明奈に歯牙にもかけられなかった事を根に持った末での行動だった。
こんな馬鹿げた話を病室の中で聞かされた時は、反吐が出るという言葉をより理解出来た気がしてた。
その日の岩屋は酒に酔い、夜中にフラりと比奈の部屋へと立ち寄った。
その頃の比奈は高校生になり、学校も休みながら通わせてもらい、何不自由のない生活を送っていた為に岩屋に対して遠慮がちに接していた。
その日の岩屋は、相当酔っていたから自分をかつての明奈と勘違いして話していた。
「お前は選択を間違えたんだ、あの時に鋼野なんて選ぶから、こんな事になったんだ
」
そう言うと狂ったように笑い出す岩屋に恐怖すら感じた。
「お前の孫は、ちゃんと可愛がってやるよ、なんせ身代わりの女神様なんだからな!」
最初は、なにかの比喩と思っていたが実際は違った。
「その子は、私にとって大事な存在だ、君達には任せられない」
今の岩屋の表情はあの頃と同じで嫌らしく笑う、その顔は、正に鬼と呼ぶにふさわしい程に歪んでいる。
「アンタさっきから何を…」
沼田のその言葉を遮る様に岩屋が片手を上げると臣雁が印を組み何かを呟く。
それと同時に部屋の中に黄色い靄の線が何本も蜘蛛の巣の様に張り巡らさ数名の悲鳴が上がる。
悲鳴を上げているのは、明穂、明奈、沼田だった。
「なっ…だ、こ…」
沼田が苦しみながら呟き、岩屋は笑いながらそれを見下す。
「呪術、本来は悪霊や妖怪を縛る為の術だ」
岩屋のその言葉に沼田は、何かを返そうとするが苦しくて上手く返せないでいると田臥が慌てて3人に近づき何かを渡して、苦しみから解放されたのか悲鳴を上げなくなった。
その状態に岩屋の視線が才田へと向く。
「流石は、道具師、君のは特別製らしいね、才田君」
才田は、面倒そうに頭を搔くと煙草に火をつけてを燻らせた。
「んな事ないですよ、それが弱いんでしょ?」
才田は、そう言いながら臣雁を指差し、再び煙草を燻らせる。
「だが、これはどうだろうか?」
岩屋は、そう言うと胸ポケットから何かを取り出した。
数珠に繋がれた2つの板が繋がれている。
それは、まるで口を開けた鬼の面の様でそこから禍々しい赤黒い靄が漏れ出ていた。
「鬼面の口」
比奈が思わず呟くと岩屋の表情が歪んだ。
気づかれた、咄嗟に比奈は気づいたが遅かった。岩屋は、そうかと呟くと鬼の面から漏れる赤黒い靄が鎖状に変化すると比奈以外の全員に向かって走り、それぞれの首に刺さってしまった。
「これは、鬼面の口と言ってな、使用者が望む対象者に呪詛を与える道具だ、これを使えば対象者は、こちらの望まま、殺す事も可能になる」
再び、明穂達は、悲鳴をあげながらその場に蹲ってしまった。
今度は、田臥や東堂、才田も巻き込まれている。
しかし、東堂と才田は、その苦しみに耐える様にたったまま静かに岩屋を睨みつけていた。
「しかし、これにはデメリットがあってなそれは使用者にも、同じ様にその鎖が刺さってしまう、だから」
そう言うと、岩屋は首元を緩めて首に巻いた青白いスカーフを見せた。
「この宵比礼が身代わりの元に移してくれる、そしてその身代わりこそ」
岩屋のその言葉と共に比奈の首元から現れた赤黒い靄が鎖状になり鬼面の口と繋がる。
「これで理解して貰えたかな?私がなぜその子が必要なのか?その重用性を?」
「ふざけないで!!!」
明穂が叫び、岩屋が手を翳した。
明穂を縛る鎖がより濃い赤黒い靄を吐き、明穂は呻き声を上げながらその場に伏せてしまった。
しかし、明穂はそれでも諦めずに顔を上げ、比奈を見た。
微かに動く口は、逃げて、確かにそう告げている。
「やめて…」
それを見た比奈の目に自然と涙が溢れる。
「口の利き方がなってないな、比奈」
岩屋の言葉に苛立ちを感じながら比奈は、再び口を開いた。
「やめて、下さい…」
比奈の返しに岩屋は満足した様に笑みを零すと鬼面の口から洩れる赤黒い靄の量が目に見えて減った。
「さぁ比奈こっちへ来なさい」
比奈はその言葉に静かに頷くと岩屋の方に向かい歩き出した。
「なぁ、訊いていいか?」
そこに口を挟んだのは、才田だった。
相当余裕があるのだろう岩屋は少しだけうんざりしながらも頷いた。
「随分、強引なやり方だけどよくこれをやろうと思ったな、いくら三本を黙らせたとは言え、これだと別方面が黙ってないだろ?」
「そうか、君はこちらの事情に明るいんだったな才田君」
確かに比奈もそれは感じていた、かつての岩屋は金はちらつかせてもここまで強引な手段は、取らなかった。
「君ならわかるだろ、今この現状は、私を縛るものは、無くなった。三本はこれで私に手出しは出来ない、目の上のたん瘤だった彼等は統率者を失いもはや空中分解を始めている、手に入れるなら今しかないだろ、そして嬉しい誤算もあったし余計に比奈は私の手元に置いて置きたくなったんだよ、いや置いておかなければいけない」
「宵比礼に飼い主が居なくなったから好き勝手に暴れられると、本当にあんたって単純なんだな、だけど嬉しい誤算ってなんだ?」
才田の皮肉に岩屋は手を上げ、赤黒い靄の鎖が才田の全身を縛りつけるが才田は微かに表情を歪めるだけで堂々っと立ち続けていた。
岩屋は、崩れない才田を呆れた様に見ながら微かに頷いた。
「クソガキでもその根性は見上げたものだな、嬉しい誤算は比奈が見識者だとわかった事だよ」
見識者その言葉に才田は、納得した様に比奈に目を向けた。
それで話が終わったっと思ったのか岩屋は手を一つ鳴らすと比奈に手を差し伸べた。
「さぁここまでで良いだろ、来なさい」
岩屋のその言葉に比奈は、ふと今も伏せてる明奈を見てしまった。
明奈は、必死で首を横に振っている、そしてまだ逃げてっと呟いている。
その顔を見てあの時の明奈の言葉を思い出した。
「どうして、こんな目に遭わないといけないのよ!」
その一言に比奈自身を絶望へと落としたその言葉は、今でも頭の中に残っている。
だけど、これにはその先がある。それは比奈が社会人になった時の話だ。
携帯電話に届いたそれは、明穂の訃報だった。相手は主治医だった田臥でそこであの言葉の真意を知る事になった。
彼女の死因は、過労死で最後まで比奈を取り戻す為に最後まで働き、そしてある日、眠る様に亡くなったっとの話だった。
最初は単なる罪滅ぼしで自己満足の為に行っていたのだと思っていた。
「彼女のは、最後まで君の心配をしていた、岩屋さんに引き取られてからも君の体調を気にかけていた、結果岩屋さんが緩和処置しかしないで治療をしていない事を知って、君を引き取ろうっとしていた、だけどそれは最後まで叶わなかった」
秋の風が吹く、オープンカフェのデッキ席で疲れ果てた顔をした田臥は虚ろな目で言っていた。
テーブルには、2つのカップに一枚の写真が置かれていた。
生前の最後の写真だった、そこに写る明穂は比奈の知る明穂とは、別人と呼べる程に違っていた。
老いとも違うその姿に何も言えなかったのを覚えている。
「彼女は、いつもいっていたよ…」
きっと伝えたかったんじゃない、でも、押し止めて置く事も出来なかった。
田臥は、比奈の反応等、お構い無しに壊れた様に続けて話した。
「いつもあの子だけが、どうして、こんな目に遭わないといけないの」
その言葉を聞いた時に比奈は、より深い穴の中へ落ちていった。
同時に、その日から毎日、世界を呪っていた。
自分にこんな枷を与えた世界をどこまでも呪った。
そんな祈りが届いたのがあの日だ。
天を衝く様に伸びる翡翠の巨大樹が世界の飲み込んだあの日。
これで世界が終わるのだと比奈は、歓喜して両手を広げた。
次に意識が戻った時そこには懐かしい顔が眠る比奈の頬を優しく撫でていてくれた。
あぁ幸せが帰ってきた、そう思っていた。
しかし直ぐに絶望もまた比奈の背後に手を回し再び深い穴へ落とそうとしていた。
絶望を与えるなら、なんでこの幸せなんてくれたのよ。
気づけば涙が頬をつたい、明穂にそれを見せるまいと顔を背けると視線の先には、才田が比奈を見つめていた。
誰でもよかった、言わなくてもよかった。
言っても何も変わらないのは、わかっているから。
だけど、言わずには、いられなかった。
「助けてよ…」
返事は、期待していない。
無論、何もされないのは、わかっている。
だけど、言わずには、いられなかった。
「わかった、任せろ」
だから、そんな返事が聞こえた時は、何が起きたのかわからず、頭が真っ白になった。
わかったのは、才田が腰元に手を当てて腕を振るったかと思うと白銀の線が部屋中を駆け巡り、
それまで部屋を支配していた赤黒い鎖がガラスの様に砕け散っていた。
当の才田は、煙草を燻らせながら岩屋と比奈の間に立ちふさがった。
その手には先程まで持っていなかった白銀の刀身の刀が握られていた。
「何が…起きた…?」
岩屋が誰に言うでもなく呟き、才田はそんな岩屋に向かい煙草を投げつけた。
突然の出来事に慌てた岩屋の視線が才田に向き、才田はそんな岩屋に向かい切っ先を向けた。
「さぁ終わりにしようか」
才田は、そう言いながら再度煙草に火を点けた。
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