異世界に連れ去られたおっさん! ~女神に押し付けられたスキルは強力だけど、ともかくお金が掛かります!

悪代官と越後屋

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モンスターがきたぞ♪

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「ミツル様、ミツル様、大丈夫ですか!」
「うわぁぁぁっ!」

 夢から覚めた私は、飛び起きると思わず声を上げる。慌てて辺りを見回すと、憂色を浮かべたセレーヌが私を見つめていた。あれは、夢だったのだろうか……。

 サリュとの約束。サリュやフィレネの顔もはっきりと覚えている。そして、フィレネとのエッチの途中に、サリュに蹴り落された事も鮮烈に脳裏に浮かび上がってくる。夢とは思えない程の生々しい感触が、身体の至る所に残っているのであった。

「セレーヌさん、心配かけてごめんね! ちょっと、変な夢を見たものだから……」
「そ、そうですか……私が目覚めたら、随分うなされていたので心配しました」

 私は、よろよろと立ち上がる。目覚めたばかりで身体がついてこない。何となく倦怠感を感じるが、身体の一部分は元気だ。見事にテントを張っている。それを見たセレーヌが、顔を赤らめて恥ずかしそうに目を逸らす。サリュやフィレネとの出来事が、夢か現実かはまだ分からない。だが、愛らしいセレーヌの為に出来る限りの事をしようと、私は心に誓うのであった。



「ミツル様、前方から魔物が接近しています。戦闘準備をお願いします」

 今日のセレーヌは絶好調であった。道中で、次々と手強そうな魔物を葬っていく。深沈とした表情の裏で、内に秘めた熱い想いがヒシヒシと伝わってくる。そんな彼女を見て、私もセレーヌと共に自身を鍛える事を決意したのだ。しかし、戦闘慣れしていない私は、サーチのスキルを使いこなせずに魔物の接近を許してしまった。セレーヌの働きで、不意打ちこそ防げたが、魔物は凄まじい勢いで突進してくるのであった。




【レア度】   R
【レベル】   7
【種族】    イノッシー
【脅威度】         C
【総合戦闘力】   D            
【スキル】   猪突猛進 鼻汁ブシャー 

※硬い表皮と鋭い牙を備えた、イノシシ型の魔物。攻撃力が3倍になる猪突猛進と相手をマヒさせる毒の鼻汁は脅威である。反面、攻撃は単調であり、攻撃パターンを把握すれば比較的簡単に倒す事ができる。肉は美味で貴族にも大人気である。




 
 鑑定のスキルで相手の能力を把握したが、砂埃を上げて直進してくる魔物は目前に迫っている。紙一重で猛進を躱すと、凄まじい轟音と共に後ろにあった大木の幹が大きく抉れ、木片が辺りに飛び散る。

「ブオオッ――――――!」

 攻撃を外されたのに苛立ったのか、イノッシーが雄叫びを上げた。衝突のダメージは皆無のようだが、大きな隙ができる。

「いくぞ!」

 抜刀すると同時に駆け出し、イノッシーに向かって大きく跳躍する。この刀はセレーヌから渡されたもので、数十年前にファラ様の使徒が愛用していた業物である。飾り気の無い質素な刀でずっしりと重く――広刃で重ねも厚い反りの少ない剛刀であった。

「ハッ!」 

 斬り下げた刀はイノッシーを叩き切り、あっけなく頭蓋を割った。断末魔の声と共に、イノッシーの巨体がゆっくりと地面に倒れる。切り口からは滔々と血が流れ、地を朱に染めていくのであった。

「ふうっ~」

 溜息をつきながら、イノッシーをアイテムボックスに収納する。魔物を倒せたのは良いが、魔物の接近を許したのは痛恨のミスであった。セレーヌのフォローが無かったら窮地に立たされていただろう――私は戦闘経験の不足を思い知るのであった。





「やった! 今度はサーチに反応した」

 試行錯誤の末に、ようやく敵を捉える事が出来た。迫って来る魔物との距離は約100mで、数は一匹のようだ。



【レア度】   R+
【レベル】   12
【種族】    シャバ象
【脅威度】         C
【総合戦闘力】   C          
【スキル】   意気がり

※普段から意気がっている象型の魔物。自分より弱いと思った相手の時は攻撃力が50%アップするが、窮地に立たされると攻撃力が80%ダウンするシャバイ象である。肉は不味いが、象牙は高値で取引されているレアな魔物である。



 セレーヌを想い真剣に闘っているのに、現れたのは、またもやふざけきった名前の魔物であった。怒りでワナワナと震えていると――私がビビッていると勘違いしたのだろう。意気がったシャバ象は、嬉々として攻撃を加えてくるのであった。

 白刃のように輝く長い牙が、私を突き刺そうと迫ってくる。私は抜いた刀で攻撃を受け流すと、素早く左に旋回する。

「駆逐してやる……!」

 喚声を放つと、激しく刀身を斬り下げる。刀が一閃すると、シャバ象の牙は大きな音を立てて地面に転がり落ちるのであった。

「パ、パオッ?」

 事態が理解出来ていないのか、シャバ象は茫然としている。チャンスは最大限に生かす主義の私は、残りの牙も容赦なく斬り落としていった。

「パ、パオ――――ンッ!」

 自分の立場に気付いたシャバ象は、悲痛な叫び声を上げる。そして、完全にヘタレたシャバ象は一目散に逃げ出していくのであった。


「ミツル様、お見事で御座いました。しかし、あの魔物を見逃してよろしかったのでしょうか?」

 シャバ象の逃走を見届けると、スッと近づいてきたセレーヌが腕を絡めてくる。腕に感じる柔らかい感触だけで、疲れが吹き飛びテンションが高くなっていく。

「ハハッ! 大丈夫だよセレーヌさん。アイツは基本ヘタレだから、二度と近づかないと思うよ。それに、肉は不味いようだから、高価な象牙だけ回収すれば用は無いよ」
「ミツル様! ひょっとして、あの魔物の牙が伸びたら再び回収しようと考えていませんか?」
「え――っ? それは、思いつかなかったな! セレーヌさんて、以外としたたかなんだね」
「ええ、女は強かな生き物なんです。特に好きな人の為なら……」
「セ、セレーヌさん」
「ふふっ!」

 屈託のない笑みを浮かべるセレーヌ。昨夜と比べると、少しだけ元気を取り戻したように見える。彼女は名残惜しそうに絡めていた腕を放すと、照れを隠すように話し掛けてくる。 

「さあ、行きましょうミツル様! 次は、私が魔物を倒しますから見てて下さいね」

 そんなセレーヌの笑顔に見惚れながらも、私たちは再び湖を目指して歩き始めるのであった。

 
 先頭に立ったセレーヌは、現れた魔物を冷静に刈り取っていく。スキルと武器に頼った私とは違い、華麗な剣舞のような動きだ。魔物を倒しながら歩を進めていくと、川のせせらぎの音が聞こえてくる。頬にあたる風も爽やかで、心なしか涼しさを帯びているようだ。やがて、私たちの目の前にキラキラと輝く清流と、大きな滝が姿を現した。高い岩壁から流れ落ちる滝は幾筋にも分かれており、滔々と水を湛える滝壺には、白い水飛沫が霧のように舞い上がっている。

「やったー! これで、やっと汗が流せるよ」

 異世界に来てからは風呂に入れず、味気ない生活魔法で誤魔化していた私は、大はしゃぎで滝壺に近づく。しかし、サーチのスキルが、突如敵を捕捉したのだ。

「ミツル様、危ない!」

 庇うように前に出たセレーヌは、鋭い斬撃を放つ。迫っていた黒い物体と、セレーヌの剣がぶつかった瞬間、おどろおどろしい絶叫が辺りに響く。斬られた物体は、憎悪と怨嗟に満ちた顔が幾つも浮かぶ瘴気となり、呪詛の言葉を吐きながら霧散していった。




【レア度】   SR
【レベル】   50
【種族】    エコエコアザラシ
【脅威度】         A
【総合戦闘力】   A         
【スキル】   黒魔術 召喚術

※高等黒魔術を駆使する闇のアザラシ。何故か通称はミサ。黒魔術の使い手で、神や聖職者の祝福を受けた武器や聖魔法以外での効果は薄い。耐魔法に優れた皮と、宝石並みの美しさを誇る魔石は国宝級である。特に魔石は王侯貴族の間でも垂涎の的で、小国が買えるぐらいの高値で取引されている。


 鑑定のスキルと同時に、滝壺の水が大きくうねり始める。そして、水面が大きく盛り上がると――禍々しい気を放つ、ずんぐりむっくりの魔物が水中から姿を現す。三度ふざけた名前だが、只ならぬ相手のようだ。私とセレーヌは武器を構えると、エコエコアザラシに戦いを挑むのであった。

 

 
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