異文化の愛の旅

黎頑貴子

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真夜中の密会(1)

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杏奈が滞在しているグランオリエンタルホテルは、マルベリアの首都ベリル発祥の世界的に有名な高級ホテルである。


ホテルグループの創設者が、マルベリア大学の卒業生ということもあり、事前に大学側へ予約申請を行えば、無料で利用できる宿泊施設となっている。


杏奈が利用している部屋は、50㎡(約30畳)と広々とした空間で、白と濃紺の配色が洗練された雰囲気を醸し出している。

部屋の中央にはキングサイズのベッドがあり、その横には、長方形に伸びた高級感のある化粧台が置かれ、縦に伸びる鏡は90度に動かすことができる。部屋の奥には、L字型のソファとテーブルが配置され、床から天井まで広がる大きな窓からは、50階からの景色を楽しむことができる。




5003号室のドアが開くと、紺色のシルクのキャミソールにショートパンツ姿の杏奈が、ルーカスを迎え入れた。

お風呂上りのせいか、杏奈は石鹸の心地よい香りに包まれ、両頬にはほのかな赤みが広がっている。

バスタオルを肩にかけ、胸下まである長い黒髪が服に水滴を残さないよう気を配りながら、ルーカスが部屋に入った後に、杏奈はドアを施錠した。

部屋は眠る前の静けさが漂い、すでに薄暗くなっている。




「遅くに連絡してごめん。」


「全然大丈夫よ。そんなことより、シャワー災難だったわね。」


「杏奈が起きててくれて助かったよ。」


そう言って、ルーカスはバスルームに入って行った。


杏奈は、待っている間、まだ湿っている髪を束ね、ベッドにうつ伏せになりながら携帯をいじる。


しばらくしてシャワー音が消えると、黒のスウェットパンツに、白の半袖姿でルーカスが出てきた。




「杏奈。シャワーありがとう。」


「どういたしまして。必要だったら、いつでも使いに来て大丈夫よ。」


「助かるよ!さっきコンシェルジュからメッセージが来て、明日の昼過ぎに修理してくれるって。」


「それなら良かったわね。もし明日直らなかったら、遠慮なく連絡してね。」


「ありがとう。助かるよ。」




うつ伏せのまま話す杏奈のそばにルーカスが座ると、


「杏奈の髪、まだ濡れてるな。ドライヤー貸して。」


シャワーのお礼に、と言って、ルーカスはドライヤーを手に取ると、


「ほら、ここに座って。」


そう声をかけ、ドレッサーに取り付けられた動く鏡をベッドに寄せると、うつ伏せの杏奈をベッドの上に座らせた。


鏡には、ベッドに座る杏奈と、その背後に、ルーカスが両膝立ちでドライヤーを手に持つ姿が映っている。




「ふふっ(笑)」


「なに?」


「真剣に私の髪を乾かしてて、その姿が可愛いなと思って。」


鏡越しに杏奈を見て微笑むルーカス。
大きな指で、優しく杏奈の髪を撫でる。




「絹のような綺麗な黒髪だね。」


「えっ?綺麗なのは髪だけ?」
そう言ってわざとらしく杏奈が尋ねると、


「いや、杏奈自身も素敵だよ。実を言うと、今日実際に会う前から、美佳に写真を見せてもらってたんだ。
写真の杏奈も綺麗だと思ったけど、実物はもっと美人で驚いたよ。」


「ふふっ(笑)実は、私も、美佳からあなたの写真を見せてもらっていたの。」


「どう思った?」


「ファッションモデルみたいで、とても魅力的な人だと思ったわ。外見からは、寡黙な印象を受けたけれど、実際に話してみると、優しさや温かさが溢れる人柄が伝わってきたし。あのジョークも面白かったわ!」


「今日の、嫌じゃなかった?」


「ううん。とっても楽しかったわ。」




その返事を聞いて微笑を見せるルーカス。

杏奈の肩にかかっていたバスタオルをどかし、艶やかな長い黒髪を左肩にまとめながら、ルーカスが訊いた。






「ねぇ、まだ続けていい?」




「えっ?どういうこ……。あぁっ。」

杏奈が質問の意図を尋ねようとすると、ルーカスはゆっくりと右肩にキスを落とした。

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