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第八話:そわそわシュークリーム
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夜八時の、繁華街の中心の大きなショッピングビル。その裏側は、『ビル裏』と呼ばれ、行き場のない未成年達がたむろする、特に治安の悪い一帯だ。
藤堂美優。動画配信に入れ込み、家に帰らなくなった最後の問題児はそこにいる。
そう言われて、冥は勝手知ったる街に赴いた。
いつ来ても、ビル裏は異様だ。
薄汚い地面に座り込んだ少女達の目は淀んでいた。きっと、何日も家に帰っていないのであろう。リストカットの跡が痛々しい。散らばった薬のシート。ポイ捨てされた吸い殻。
全体的に負に沈んだ空気の中、コンビニ前の一角だけが騒がしい。一人の少女がスマートフォンに向かって甲高い声でネット配信をしている。
おそらくあれが、ターゲットだろう。
一応本人確認しておくか。
しかし、明らかに配信中なので、割って入るのに躊躇う。しばらくコンビニの中から見守るが、中々終わらない。一時間。そして更に一時間。少しずつ場所を移動しながら、美優は画面に向かって喋り続ける。
仕方ない。日を改めるか。
何なら雪村に報告して、本人確認も任せてしまおう。
そのまま雪村の家に戻ると、彼はまだ帰宅していなかった。今の電気をつけ、長居するのに気まずくなって買ったコンビニスイーツを冷蔵庫に入れる。
炬燵机の上に、写真が一枚落ちていた。
そこには二人の男性が、居酒屋のような場所で鍋を囲み、笑顔でピースをしていた。一人はきっと、若き日の雪村だろう。今よりも血色が良く、表情も生き生きとしている。
もう一人は背が高く、日に焼けた肌と爽やかな風貌。まるで体育教師のような雰囲気だ。
ただ、友人同士で映った普通の写真。そのはずなのに、見てはいけないものを、見てしまった気がする。
見なかったことにしよう。
冥はそっと、その写真を側にあった書類の山に紛れ込ませた。
その後、ガチャ、と玄関で鍵の音がした。後ろめたくなって、背中がびくりと震える。
「ただいま」
何も知らない家主が疲れた表情で現れた。
「お、おかえり。冷蔵庫にシュークリーム入ってるから、良かったら食って」
「おー、ありがとう。夕飯はどうする?」
「食ってきた」
そっか、と雪村はガサゴソとカップ麺を出して、湯を沸かし始めた。
写真を見てしまったことは、当然バレていない。
あくまで自然体を装いながら、冥は話を切り出した。
「藤堂美優。普通にビル裏にいた」
「ずっと配信してただろ」
「三時間ずっと。だから、諦めて帰ってきた」
「おつかれさん。しかし困ったな。校長の意向で、高校名がバレるから教師は絶対に映るな、と言われてるんだ。常に配信に張り付いて見てる訳にもいかないし……」
参ったな、と雪村は腕を組んだ。
本来ならバトンタッチしてもいいが、せっかく三時間粘ったのだから、なんとかして成果を上げたい。
「分かった。どうせ暇だし、明日もう少し張ってみて、撮影が途切れる時間帯を探ってみる」
どうせと言いつつも、やはり心のどこかで申し訳なさを感じ、雪村にそう申し出た。
藤堂美優。動画配信に入れ込み、家に帰らなくなった最後の問題児はそこにいる。
そう言われて、冥は勝手知ったる街に赴いた。
いつ来ても、ビル裏は異様だ。
薄汚い地面に座り込んだ少女達の目は淀んでいた。きっと、何日も家に帰っていないのであろう。リストカットの跡が痛々しい。散らばった薬のシート。ポイ捨てされた吸い殻。
全体的に負に沈んだ空気の中、コンビニ前の一角だけが騒がしい。一人の少女がスマートフォンに向かって甲高い声でネット配信をしている。
おそらくあれが、ターゲットだろう。
一応本人確認しておくか。
しかし、明らかに配信中なので、割って入るのに躊躇う。しばらくコンビニの中から見守るが、中々終わらない。一時間。そして更に一時間。少しずつ場所を移動しながら、美優は画面に向かって喋り続ける。
仕方ない。日を改めるか。
何なら雪村に報告して、本人確認も任せてしまおう。
そのまま雪村の家に戻ると、彼はまだ帰宅していなかった。今の電気をつけ、長居するのに気まずくなって買ったコンビニスイーツを冷蔵庫に入れる。
炬燵机の上に、写真が一枚落ちていた。
そこには二人の男性が、居酒屋のような場所で鍋を囲み、笑顔でピースをしていた。一人はきっと、若き日の雪村だろう。今よりも血色が良く、表情も生き生きとしている。
もう一人は背が高く、日に焼けた肌と爽やかな風貌。まるで体育教師のような雰囲気だ。
ただ、友人同士で映った普通の写真。そのはずなのに、見てはいけないものを、見てしまった気がする。
見なかったことにしよう。
冥はそっと、その写真を側にあった書類の山に紛れ込ませた。
その後、ガチャ、と玄関で鍵の音がした。後ろめたくなって、背中がびくりと震える。
「ただいま」
何も知らない家主が疲れた表情で現れた。
「お、おかえり。冷蔵庫にシュークリーム入ってるから、良かったら食って」
「おー、ありがとう。夕飯はどうする?」
「食ってきた」
そっか、と雪村はガサゴソとカップ麺を出して、湯を沸かし始めた。
写真を見てしまったことは、当然バレていない。
あくまで自然体を装いながら、冥は話を切り出した。
「藤堂美優。普通にビル裏にいた」
「ずっと配信してただろ」
「三時間ずっと。だから、諦めて帰ってきた」
「おつかれさん。しかし困ったな。校長の意向で、高校名がバレるから教師は絶対に映るな、と言われてるんだ。常に配信に張り付いて見てる訳にもいかないし……」
参ったな、と雪村は腕を組んだ。
本来ならバトンタッチしてもいいが、せっかく三時間粘ったのだから、なんとかして成果を上げたい。
「分かった。どうせ暇だし、明日もう少し張ってみて、撮影が途切れる時間帯を探ってみる」
どうせと言いつつも、やはり心のどこかで申し訳なさを感じ、雪村にそう申し出た。
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