異世界転移した俺は大賢者様に食われる運命らしい

蓮見

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6.夢*

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 やめてくれ。まって。どうして。

 俺はちゃんとそう叫べているだろうか。

 大賢者を相手にしていると思っていたのに、ヴィルヘルムだなんて。
 いったいどうしてこんなことに。

 止めなければと思うのに、頭はどうしてもふわふわとしているし、身体は覚えたての快楽をどうしようもなく求め始めている。薄布を羽織った男の引き締まった身体に、血管の浮いた腕の力強さに、俺はわかりやすく欲情していた。

「……どうした? 君はいつものように、楽にしていればいい」
「あ……ッ」

 微笑むヴィルヘルムの大きな手のひらに肌をそっとなでられ、甘い声があがる。

 いつもってなんだ。したことないだろこんなこと……!

「アンリ。私の可愛い君……」

 美しい騎士はとけるような甘い笑みを浮かべ、俺の頬を長い指で捕らえた。ゆっくりと、その長いまつげがふせられる。

 まって、待ってくれ、ヴィルヘルムはそんなこと言わ……いや、言うのだろうか?

 混乱しきった俺の唇は、騎士のそれに塞がれた。

「ん……ぅ」

 粘膜から伝わるあたたかさ。ヴィルヘルムの熱で、俺の頭はさらにふわふわと溶けていく。

 きもちいい。

 キスって、こんなふうに感じるものなんだ。

 ヴィルヘルムは俺の唇をくすぐるように、そして食むように、やさしくやわらかく刺激をくりかえした。ふれあう唇から魔力が流れていく感覚にも、性感は煽られていく。

 キスひとつで、俺の身体はすっかりヴィルヘルムに囚われた。もしかしたら、これが魔力を喰われるということなのかもしれない。俺の中の、ナカの、中身すべてを。俺を抱くこの男に明け渡して、貪り尽くされたい。

 熱に染められた意識はもう、それだけを求めていた。

「そうだ、アンリ。君をそのまますべて、どうか私に……」

 ヴィルヘルムは熱い吐息でささやくと、その猛った半身で俺を穿つため、腰を落とした。魔法と薬液で丁寧に溶かされた後孔はひくひくと震えながら、はちきれんばかりの質量を持ったその熱のかたまりを待っている。

 ほしい。はやく。はやく奥まで挿入いれてほしい。

 あれが俺をどれだけ気持ちよくしてくれるか、この身はとっくに思い知っているのだから。

「……っ、う、っ」

 だけど。

 あくまで夢だとしても、俺を抱くこの身体はヴィルヘルムだ。
 姿形も声すらもよくわからない大賢者ではなく、この世界でいちばん見知った、いつもそばにいてくれる相手だ。

 身体はただあさましく、目の前の熱を求め続けている。けど、それでも。

「ど、して……ヴィル、なん……」

 俺の目からは熱い涙があふれて、視界までもふわふわとぼやけていく。
 困ったようなヴィルヘルムの声が、耳に届いた。

「蠱惑の魔法が足りていないのか? いつもの君は、あられもなく濡れて溶けて、切なげに私を求めて啼いてくれるのに……」

「ヴィル……ヴィル……」

 こめかみに、唇の感触がした。

「君にひどいことをしたりしない。さあ、力を抜いて」
「やだ……やだ、ヴィル」

 いやいやと頭を振る俺を両腕でやんわりと包んで、ヴィルヘルムは俺をあやすように、まぶたに、頬にと、たくさんのキスを落とす。

 お互いの腰が触れて、その熱さにめまいがした。張りつめた性器がこすれて、先端からこぼれだす欲望が止められない。

「さあ、私を君の中に入れて」

 熱い吐息を感じた瞬間、くちゅ、と、濡れた音がした。

「あっ、あ……!」
「んッ……」

 強い力で抱き込まれて逃げ場を失った俺のナカに、ついに熱い楔が穿たれた。その凶暴な杭はずぶずぶと内壁を拡げながらこすり上げ、俺の弱いところをあますところなく灼いていく。

「あ、ああ、あ……!」

 がくがくと全身を震わせて、俺はあっけなく吐精した。目の前に火花が散るような、強烈な快感。
 続いて胎の奥に叩き込まれた衝撃に、呼吸がとまる。

 ヴィルヘルムの長大な雄は、絡みつく俺の襞を丁寧になぶりながら、さらなる最奥を拓いた。なにかを突き抜けた感覚は、痛みのような未知の官能を俺にもたらす。

「……ッ、ァ、……! ……ッ!」

 強すぎる快楽は、ただの暴力だ。

 そして、あつくてかたくておおきい悪魔のようなその灼けた棒は、俺の奥で暴れることをやめない。
 獲物を逃すまいと俺の腰に食い込むヴィルヘルムの指の痛みすら、もはや快楽でしかなかった。

 がんがんと腹に響くほど奥は執拗に蹂躙され、俺の上体は力を失ってシーツの波に揺られるまま。

「――ッは、あ、や、だめ、ヴィル、だめ……やだぁ……!」

 なんとか呼吸を取り戻した俺は、震える声をしぼり出す。

「……ッ、あまり拒否されると、さすがに傷つくんだが……?」
「ヴィル、やだ、やだ、やめ、ヴィ、あ、ああ、あう……っあ……!」

 どれだけ悲鳴をあげても、この男は俺の身体を揺らすのをやめるつもりがないようだった。涙の膜の向こうで、剣呑な光を宿した碧い目が眇められる。

「わかった。これ以上の魔法は重ねない。君が素直になるまで、このまま奥の奥まで私の精ですべて舐め尽くし、喰らうとしよう」

 肉食獣の目だと思った。

「いいな、アンリ」

 いいわけがない。
 でももうなにもわからない。
 こんなヴィルヘルムは知らない。

 胎の奥を穿つ音が、またひとつおおきく、ごぽりと鳴った。
 


 
 そして、新しい朝が来た。

「……最ッ悪だろ……これ……」

 ひどくざらざらの声で、格段に動きのにぶい身体で。俺は寝台の中、頭を抱える。下半身は麻痺したようになにも感じられなくて、それがよけいに怖かった。いろいろと確かめる勇気が、まず湧かない。

 ひどすぎる。

 大賢者と交わった記憶はない。それは確かにない。だけども……!

 ひゅう、と、うまく息を吸えない喉が引きつった。
 強く強くつむったまぶたの裏には、ヴィルヘルムが焼き付いている。


 
 夢を操れる魔法はあるだろうか。
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