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24.偽らざる想い*
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もしかして睡眠をちゃんととれていないのでは、と気付いたのは、それから数日後だった。
家事をこなしたり薪を集めたりご近所の手伝いをしたりと昼間によく動いているせいか、夜はすぐ頭がふわふわとなり気持ちよく眠りに落ちているのに、どうにもすっきりしない。
目覚めてすぐは眼前のイケメンに心拍数を上げてしまうのだが、ひとりになって落ち着くと、就寝中に何度か目覚めたような、眠りが足りていないような、疲労感を伴う違和感がある。
けれど、夜中に俺に何かあったら、ヴィルヘルムが気付かないわけがない。
まだ魔力の何かが不調なのかもしれない、と結論付けて、俺は洗濯をしようとドアを開けた。
「あれっアンリくん、大丈夫ですか?」
「おはようございます、司祭さん」
桶を手に外に出たところで、村の祭事を司っている男性に会った。持ち物から、買い出し帰りのようだ。
反射的に笑顔で挨拶をしてから、首を傾げる。
大丈夫、とは。
「……なんか、変ですか。俺」
「はい、変ですよ」
即答。
「アンリくん、塔にいたんですよね。あなたの魔力のそれ、自分で気付かないですか?」
「俺、魔法のこと習ってないんです」
せっかく、リコが教えてくれようとしてくれてたのにな、と思い出す。
「学ぶ機会はあったんですけど、ヴィルが止めて」
「あ、それ、伴侶の判断なんですか。いや、でも……」
変わった趣味だなあ、と呟くのを、俺は聞き逃さなかった。
「すみません、教えてください。俺、なんか調子がおかしいなって思ってて……」
司祭は顎に手をやり、うーん、とうなった。
「個人の嗜好の話なので、他人が口を出すべきではありませんが――……」
「セックスは普通にしたほうがいいですよ、って、言われた……!」
羞恥に耐えきれずテーブルに突っ伏した俺に、ヴィルヘルムは天井を仰いだようだった。
「司祭……確かに彼は魔力が高いようだったな」
見えたか。そうひとりごちて、ヴィルヘルムがダイニングテーブルから離れる気配がする。俺が赤い顔を上げると、キッチンの棚の最上段に手を伸ばしているところだった。俺が届かないので何も置かれていないはずのスペースだ。
そこで何かを手にしたヴィルヘルムは、俺の傍らでおもむろに膝を折った。
「君に、謝罪と提案がある」
真摯に見上げてくる瞳に、涙目の俺の心がぐらつく。かっこいい。
「君への治療を、独断で無許可のまま行っていた。すまない」
「治療、って……」
ヴィルヘルムは少しだけ、言葉を選ぶように瞳を揺らした。
「行われた事実だけを言えば、君の性欲処理だ」
「せ……! え、は? なん……!?」
動揺する俺の前に差し出された手には、白い錠剤が入った小瓶があった。
「夕食後の紅茶に、感覚を麻痺させ酩酊状態になる薬剤を入れていた。そうして君が眠っている間に、少量ずつ魔力を吸い出している」
確かに、食後の紅茶はヴィルヘルムの担当だ。
毎晩、頭がふわふわしてたのはそれか……。
「なんで、そんなこと……」
床にひざまずくヴィルヘルムに、とりあえず立ち上がってもらう。説明を求められた騎士は、ひとつ息をついてから口を開いた。
「塔で日常的に魔力を搾取されていた君は、その繰り返しにより体内に留め置く魔力量が膨れ上がっていた。魔力相性がまるで合わなかったため次席に奪われることはなかったが、あの時に、魔力が流れるための君の身体の経路は損傷を受けた。それ以降、うまく回らない君の魔力は身体に溜まり続け、結果、ひどく凝ってしまったんだ」
その状態の魔力を放置することは、下手をすれば命に関わるらしい。
「……それは、確かに……」
治療だ。
たとえその手段が性欲処理になってしまったとしても、純然たる人命救助だ。
助けてくれてありがとう、と、俺は頭を下げる。が。
こわくて、下げた頭を戻せない。
「ヴィルは、俺に……」
何をしたというのだろう。
ヴィルヘルムは、少し黙った。
「……言葉で説明して誤解を与えるのは本意ではない。君の身体のためにも続けるべき処置だ。できれば理解と許可がほしい。そのためにも、実際にやって見せてもいいだろうか」
「えっ……うん」
静かな声の中に焦りを感じて、俺は顔を上げる。ヴィルヘルムはどこまでも真剣な目をしていた。
それが余計に、俺のいまの状態はそれなりに良くないのだろうな、と思わせた。
「じゃあ、お願いします……」
といっても、俺とヴィルヘルムはこれまで性的な接触をしたことは一切ない。夢の中ではそれはもう大変なことになっていたが、あくまで現実のヴィルヘルムとは、護衛対象と護衛騎士の関係でしかなかった。
その状態で、いったい何をされるのか。
ごくりと唾を飲み込んだ俺に、ヴィルヘルムの腕が伸びる。そのまま、長い指が俺のシャツのボタンをひとつずつ外していく。
「え、わ……」
椅子に座ったまま、思わず後ずさりそうになるのを我慢する。だってこれは治療だ。
俺の胸をはだけさせると、ヴィルヘルムの手は俺の肌を這う。
「……っ」
首、鎖骨、胸を、ゆるゆるとなでていく大きな手のひら。その動きにいちいち反応してしまう自分が恥ずかしい。
「感じてくれていい。それが目的だ」
俺に覆いかぶさるように屈むヴィルヘルムの低い声が、耳をくすぐる。
「や……ぅんんッ!」
べろり、と首筋を舐められて、高い声が出た。
な、舐められただけなのにこんな……。
俺はもうすっかり涙目で、呼吸は浅く、顔が熱くて仕方ない。
何の薬も盛られていないのに……!
「大丈夫だ。怖くはない。力を抜いて」
ヴィルヘルムが唇を這わせた場所から、魔力が流れていくのを感じる。
怖いんじゃない。
「あ、あ……んっ」
信じられないくらい気持ちがいい。
びくびくと震える身体はどんどん昂っていく。ヴィルヘルムがくれる刺激すべてに翻弄されていた。
痛いくらい張りつめている半身に気付かれていないとは、とても思えない。
恥ずかしい……!
こんな、こんな……っ――
「そのまま、君を喰わせてくれ。アンリ」
「――――ッ!」
名を呼ばれて、俺は達した。
「こうして少しずつ吸い出した。どうしても性感が伴ってしまうのと、魔法生物に害されたことを思い出す可能性があったのとで、君に記憶が残らないほうが良いと判断した」
「あ、りがとう、ございます……」
椅子にすがりつき荒い息を繰り返す俺に、ヴィルヘルムは一連の説明を終えたようだ。
大賢者との夜の記憶を残さないことを選んだ俺だ。そう判断されるのも仕方ないことだろう。
俺にストレスを与えないように大事に大事に扱われた結果がこれなのだ。
「……あのさ、ヴィル」
「ん? そうだな、湯を使おうか」
「いやあの……いままでも俺、こんなふうに出して……?」
まさか毎晩ヴィルヘルムに始末をさせていたのだろうか、と青くなる俺。
「いいや。射精は身体に負担だろうと、至らない程度にしていたんだ。そのため処置が足らずに魔力の不自然さを勘付かれてしまったわけだが」
手心を加えすぎたか、とヴィルヘルムが首をひねる。
俺は、あっと声を上げた。
「もしかして俺たち、司祭さんに、おかしな焦らしプレイしてるって思われてるのか……?」
「そうなるな」
ひどい。あんまりだ。
うなだれる俺の頭を、ヴィルヘルムはぽんぽんと叩いた。
「いまのように上手に吐き出してくれるのならば、これからは問題ないだろう」
まるでなにかのトレーニングの話をしているかのように、ヴィルヘルムの声は涼やかだ。頭も身体もみっともなくぐちゃぐちゃになっている俺は、余計にみじめになる。
「つらい……」
ヴィルヘルムはそんな俺を見下ろして、首を傾げていた。
その夜、久しぶりの夢を見た。
場所は大賢者のあの部屋ではなかったけど、俺もヴィルヘルムも裸だったので、これはいつもの夢だ。
塔を出ても、大賢者としなくても見れるのか、と感動した俺は、確かめるように目の前の身体に抱きついた。
「アンリ」
その逞しい腕で俺を包んで、嬉しそうにキスをくれるヴィルヘルム。髪に、額に、瞼に、そして唇に。
確定だ。これはいかがわしい夢。
「ん……」
熱い舌を口内に迎えていっぱいに甘やかしてもらうと、頭がどんどんふわふわしてくる。俺も積極的に舌を絡めた。
「今宵の君はいつにも増して愛らしいな」
微笑むヴィルヘルムにすり寄って、その熱にしがみつく。
夢でくらい甘えても、伝えてもいいだろうか。
「ヴィル、俺、ヴィルのことがすごく好きなんだ」
「ああ、私もだ。アンリ」
なんて、都合のいい夢。
想い人をどれだけ求めても、ここでだけは許されるんだ。
「――あ、あ、ん、ッあ……」
剛直が抜き差しされるたびに、ぐずぐずになった後孔からヴィルヘルムの精液が溢れる。以前は恥ずかしくてたまらなかったその感覚も、もはや愛おしくてたまらない。
「もっ、と、たくさん……」
抽挿に合わせるようにきゅっきゅっとナカを締めると、ヴィルヘルムが甘い息を漏らす。
「ん……ッ」
その色気だけで俺はイってしまいそうになって、笑う。
「おれ……っそ、の、ヴィルの声、も、好き」
鍛えられた身体の上で跳ねる俺に、ヴィルヘルムは目を細める。
「な……いっぱい、くれ、よ」
汗みずくで笑う俺の唇は、すぐに塞がれた。
背中には、冷えたシーツの感触。
そして俺の腰に、熱い手のひらが食い込んだ。
「君はいつも、加減などさせてくれないものな」
目の前の碧が、獰猛に笑った。
翌朝、俺はヴィルヘルムの胸にしっかりと固定された状態で目を覚ました。
いつからこんながちがちに抱きしめられていたのだろう。身動ぐと関節や諸々が痛い。うぐぐ、と力を込めて逃れようとしたら、柔らかな笑い声が降りてきた。
「おはよう、アンリ」
その笑顔を直視するには少し照れくさくて、俺はどうしても赤面してしまう。
「おはよう、ヴィル」
自分勝手なストレス解消をしたお陰で頭はとてもすっきりしていたけれど、騎士の腕から解放されてからもしばらく俺の全身は痺れたように鈍かった。
家事をこなしたり薪を集めたりご近所の手伝いをしたりと昼間によく動いているせいか、夜はすぐ頭がふわふわとなり気持ちよく眠りに落ちているのに、どうにもすっきりしない。
目覚めてすぐは眼前のイケメンに心拍数を上げてしまうのだが、ひとりになって落ち着くと、就寝中に何度か目覚めたような、眠りが足りていないような、疲労感を伴う違和感がある。
けれど、夜中に俺に何かあったら、ヴィルヘルムが気付かないわけがない。
まだ魔力の何かが不調なのかもしれない、と結論付けて、俺は洗濯をしようとドアを開けた。
「あれっアンリくん、大丈夫ですか?」
「おはようございます、司祭さん」
桶を手に外に出たところで、村の祭事を司っている男性に会った。持ち物から、買い出し帰りのようだ。
反射的に笑顔で挨拶をしてから、首を傾げる。
大丈夫、とは。
「……なんか、変ですか。俺」
「はい、変ですよ」
即答。
「アンリくん、塔にいたんですよね。あなたの魔力のそれ、自分で気付かないですか?」
「俺、魔法のこと習ってないんです」
せっかく、リコが教えてくれようとしてくれてたのにな、と思い出す。
「学ぶ機会はあったんですけど、ヴィルが止めて」
「あ、それ、伴侶の判断なんですか。いや、でも……」
変わった趣味だなあ、と呟くのを、俺は聞き逃さなかった。
「すみません、教えてください。俺、なんか調子がおかしいなって思ってて……」
司祭は顎に手をやり、うーん、とうなった。
「個人の嗜好の話なので、他人が口を出すべきではありませんが――……」
「セックスは普通にしたほうがいいですよ、って、言われた……!」
羞恥に耐えきれずテーブルに突っ伏した俺に、ヴィルヘルムは天井を仰いだようだった。
「司祭……確かに彼は魔力が高いようだったな」
見えたか。そうひとりごちて、ヴィルヘルムがダイニングテーブルから離れる気配がする。俺が赤い顔を上げると、キッチンの棚の最上段に手を伸ばしているところだった。俺が届かないので何も置かれていないはずのスペースだ。
そこで何かを手にしたヴィルヘルムは、俺の傍らでおもむろに膝を折った。
「君に、謝罪と提案がある」
真摯に見上げてくる瞳に、涙目の俺の心がぐらつく。かっこいい。
「君への治療を、独断で無許可のまま行っていた。すまない」
「治療、って……」
ヴィルヘルムは少しだけ、言葉を選ぶように瞳を揺らした。
「行われた事実だけを言えば、君の性欲処理だ」
「せ……! え、は? なん……!?」
動揺する俺の前に差し出された手には、白い錠剤が入った小瓶があった。
「夕食後の紅茶に、感覚を麻痺させ酩酊状態になる薬剤を入れていた。そうして君が眠っている間に、少量ずつ魔力を吸い出している」
確かに、食後の紅茶はヴィルヘルムの担当だ。
毎晩、頭がふわふわしてたのはそれか……。
「なんで、そんなこと……」
床にひざまずくヴィルヘルムに、とりあえず立ち上がってもらう。説明を求められた騎士は、ひとつ息をついてから口を開いた。
「塔で日常的に魔力を搾取されていた君は、その繰り返しにより体内に留め置く魔力量が膨れ上がっていた。魔力相性がまるで合わなかったため次席に奪われることはなかったが、あの時に、魔力が流れるための君の身体の経路は損傷を受けた。それ以降、うまく回らない君の魔力は身体に溜まり続け、結果、ひどく凝ってしまったんだ」
その状態の魔力を放置することは、下手をすれば命に関わるらしい。
「……それは、確かに……」
治療だ。
たとえその手段が性欲処理になってしまったとしても、純然たる人命救助だ。
助けてくれてありがとう、と、俺は頭を下げる。が。
こわくて、下げた頭を戻せない。
「ヴィルは、俺に……」
何をしたというのだろう。
ヴィルヘルムは、少し黙った。
「……言葉で説明して誤解を与えるのは本意ではない。君の身体のためにも続けるべき処置だ。できれば理解と許可がほしい。そのためにも、実際にやって見せてもいいだろうか」
「えっ……うん」
静かな声の中に焦りを感じて、俺は顔を上げる。ヴィルヘルムはどこまでも真剣な目をしていた。
それが余計に、俺のいまの状態はそれなりに良くないのだろうな、と思わせた。
「じゃあ、お願いします……」
といっても、俺とヴィルヘルムはこれまで性的な接触をしたことは一切ない。夢の中ではそれはもう大変なことになっていたが、あくまで現実のヴィルヘルムとは、護衛対象と護衛騎士の関係でしかなかった。
その状態で、いったい何をされるのか。
ごくりと唾を飲み込んだ俺に、ヴィルヘルムの腕が伸びる。そのまま、長い指が俺のシャツのボタンをひとつずつ外していく。
「え、わ……」
椅子に座ったまま、思わず後ずさりそうになるのを我慢する。だってこれは治療だ。
俺の胸をはだけさせると、ヴィルヘルムの手は俺の肌を這う。
「……っ」
首、鎖骨、胸を、ゆるゆるとなでていく大きな手のひら。その動きにいちいち反応してしまう自分が恥ずかしい。
「感じてくれていい。それが目的だ」
俺に覆いかぶさるように屈むヴィルヘルムの低い声が、耳をくすぐる。
「や……ぅんんッ!」
べろり、と首筋を舐められて、高い声が出た。
な、舐められただけなのにこんな……。
俺はもうすっかり涙目で、呼吸は浅く、顔が熱くて仕方ない。
何の薬も盛られていないのに……!
「大丈夫だ。怖くはない。力を抜いて」
ヴィルヘルムが唇を這わせた場所から、魔力が流れていくのを感じる。
怖いんじゃない。
「あ、あ……んっ」
信じられないくらい気持ちがいい。
びくびくと震える身体はどんどん昂っていく。ヴィルヘルムがくれる刺激すべてに翻弄されていた。
痛いくらい張りつめている半身に気付かれていないとは、とても思えない。
恥ずかしい……!
こんな、こんな……っ――
「そのまま、君を喰わせてくれ。アンリ」
「――――ッ!」
名を呼ばれて、俺は達した。
「こうして少しずつ吸い出した。どうしても性感が伴ってしまうのと、魔法生物に害されたことを思い出す可能性があったのとで、君に記憶が残らないほうが良いと判断した」
「あ、りがとう、ございます……」
椅子にすがりつき荒い息を繰り返す俺に、ヴィルヘルムは一連の説明を終えたようだ。
大賢者との夜の記憶を残さないことを選んだ俺だ。そう判断されるのも仕方ないことだろう。
俺にストレスを与えないように大事に大事に扱われた結果がこれなのだ。
「……あのさ、ヴィル」
「ん? そうだな、湯を使おうか」
「いやあの……いままでも俺、こんなふうに出して……?」
まさか毎晩ヴィルヘルムに始末をさせていたのだろうか、と青くなる俺。
「いいや。射精は身体に負担だろうと、至らない程度にしていたんだ。そのため処置が足らずに魔力の不自然さを勘付かれてしまったわけだが」
手心を加えすぎたか、とヴィルヘルムが首をひねる。
俺は、あっと声を上げた。
「もしかして俺たち、司祭さんに、おかしな焦らしプレイしてるって思われてるのか……?」
「そうなるな」
ひどい。あんまりだ。
うなだれる俺の頭を、ヴィルヘルムはぽんぽんと叩いた。
「いまのように上手に吐き出してくれるのならば、これからは問題ないだろう」
まるでなにかのトレーニングの話をしているかのように、ヴィルヘルムの声は涼やかだ。頭も身体もみっともなくぐちゃぐちゃになっている俺は、余計にみじめになる。
「つらい……」
ヴィルヘルムはそんな俺を見下ろして、首を傾げていた。
その夜、久しぶりの夢を見た。
場所は大賢者のあの部屋ではなかったけど、俺もヴィルヘルムも裸だったので、これはいつもの夢だ。
塔を出ても、大賢者としなくても見れるのか、と感動した俺は、確かめるように目の前の身体に抱きついた。
「アンリ」
その逞しい腕で俺を包んで、嬉しそうにキスをくれるヴィルヘルム。髪に、額に、瞼に、そして唇に。
確定だ。これはいかがわしい夢。
「ん……」
熱い舌を口内に迎えていっぱいに甘やかしてもらうと、頭がどんどんふわふわしてくる。俺も積極的に舌を絡めた。
「今宵の君はいつにも増して愛らしいな」
微笑むヴィルヘルムにすり寄って、その熱にしがみつく。
夢でくらい甘えても、伝えてもいいだろうか。
「ヴィル、俺、ヴィルのことがすごく好きなんだ」
「ああ、私もだ。アンリ」
なんて、都合のいい夢。
想い人をどれだけ求めても、ここでだけは許されるんだ。
「――あ、あ、ん、ッあ……」
剛直が抜き差しされるたびに、ぐずぐずになった後孔からヴィルヘルムの精液が溢れる。以前は恥ずかしくてたまらなかったその感覚も、もはや愛おしくてたまらない。
「もっ、と、たくさん……」
抽挿に合わせるようにきゅっきゅっとナカを締めると、ヴィルヘルムが甘い息を漏らす。
「ん……ッ」
その色気だけで俺はイってしまいそうになって、笑う。
「おれ……っそ、の、ヴィルの声、も、好き」
鍛えられた身体の上で跳ねる俺に、ヴィルヘルムは目を細める。
「な……いっぱい、くれ、よ」
汗みずくで笑う俺の唇は、すぐに塞がれた。
背中には、冷えたシーツの感触。
そして俺の腰に、熱い手のひらが食い込んだ。
「君はいつも、加減などさせてくれないものな」
目の前の碧が、獰猛に笑った。
翌朝、俺はヴィルヘルムの胸にしっかりと固定された状態で目を覚ました。
いつからこんながちがちに抱きしめられていたのだろう。身動ぐと関節や諸々が痛い。うぐぐ、と力を込めて逃れようとしたら、柔らかな笑い声が降りてきた。
「おはよう、アンリ」
その笑顔を直視するには少し照れくさくて、俺はどうしても赤面してしまう。
「おはよう、ヴィル」
自分勝手なストレス解消をしたお陰で頭はとてもすっきりしていたけれど、騎士の腕から解放されてからもしばらく俺の全身は痺れたように鈍かった。
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