雨のふる星、遠い星

依久

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8話 堂々巡り

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アスランの家を出てしばらくすると携帯が鳴った。


「アロウ、アスラン」
「ちゃんと帰り着いたか?」
「ええ、もうすぐ着くわ」



アフランて意外と過保護……と思いながら、おやすみと電話を切った。



なんだろう、この感覚。



あたしは家の鍵を開けながら、中から「おかえり」と出迎えてくれるアスランがいるような錯覚に陥りぶんぶんと首を振った。



ありえない!



室内履きに履き替えると、白のローファーをまじまじと見つめた。



「綺麗な靴…」



履かせてもらった時はよく見れなかったけれど、よく見ると靴先にスワロフスキーのビーズがつき蛍光灯の下でキラリと輝いていた。



まるで、式典用の靴…みたいな…。
白いローファーは結婚式の靴を連想させた。




でも、結婚式のドレスの時に履く靴ならば、もっと華奢なデザインのものではなかろうか…。




このローファーは踵が低いし、足を長く見せたり背をスラリと見せたいのならばこの踵の低さは目的が違うように思えた。



アスランは、これを酔っ払っていたから間違えて買ったと言ったけれども、こんな特注みたいな靴が普通に店に置いてあるのかしら……。



百歩譲ってアスランが酔っ払って買ったとしても、お店の人が気がつくと思うのだけど。
アスランの酒癖が悪くて店の人に、女ものの靴を男ものだと押し切って買ったのならば話は別だけど…。




それなら笑い話になるだけだから罪はない。




問題は、アスランが間違えて買ったと話を作っていたとしたら厄介だ。




あたしに嘘をつくような状況て?




アスランにも何かしら人に知られたくない過去があるのだろうか…。あたしのように。





エルダが彼の特別な女性だ、というのは明白だ。



そして、今は彼の側にいない。



けれど喧嘩別れをしたわけではない。
喧嘩別れなら、エルダの写真を部屋に置かないはず……。



では、残る選択肢は、アスランとエルダは本人達の気持ちには関係なく別れる羽目になったか、誰かに別れさせられたか、どちらかだとして…



前者ならまたよりを戻す可能性がある。
もし後者なら、生き別れか死に別れ…。




死に別れ……。




あたしは額に嫌な汗をかいていた。



なんだろう、この足元から這い上ってくる嫌な感覚は…



白のローファー。



アスランがエルダのためにわざわざ用意したけれど、なにかの理由で使わなかったとしたら?



その理由は?



白の靴を大事にとっておいたアスラン……。
フレームの中で柔らかく笑うエルダ。
エリートコースを捨てて辺境の星にやって来たアスラン。


ああ、考えはじめたらキリが無い。



青いフレームの中のエルダ。
あたしにはそれ以上の事もそれ以下の事もわからない。



わかりたいと思うし、わからないままでいたいとも思う。



少し頭を冷まそう。
あたしは冷蔵庫の中からエビアン水を出すとコクコクと喉を潤した。



つづく

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