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72話 変化と噂
しおりを挟む「………………ハルミ様。わたくしはぁ本当に幸せでございます」
シュエルはニコリと微笑んでそう言う。一粒キラリと涙が落ちた。それをハルミは唇で優しく拭う。
「………………もっともっと幸せになりましょうね」
そう告げるとシュエルは頬を染めた。
「……………これ以上を願っても良いのでしょうか?……………ハルミ様。………キスを………しては頂けませんか?………………貴女様がお嫌でなければしたいです」
少しだけ不安そうなシュエル。
(……………シュエルさん。)
胸がキュンとしてそっと優しく唇を重ね合わせる。また一粒キラリと涙が落ちた。
▷▷▷▷▷▷
「シュエルさん、かなり血行良くなってきてますね!!!最初は固くて冷えてましたけど血色良くて温かいです。わあ良かったぁ!!!こんな短期間でもマッサージの効果出ましたね!!これからも毎日やりましょうね!!!」
そっと腕や足に手を這わすと微々たる物だが変化がわかる。青白い肌は赤みが差しているし顔色も良い。肌はハルミ汁(オイル)効果でしっとりモチモチだ♡
「ええ……。ここに来てからと言う物とても体の調子が良いですぅ。夜もしっかりと眠れますし………、座りっぱなしで前は時折軋むように体が痛んでおりましたが、今はその様な事は殆どございません。専属の使用人様まで付けて頂いて………。夜もきちんと寝返りを打たせてもらえますし……………。これ程の高待遇は本来奴隷にされる様な物ではございませんよ。本当に…………感謝しております。マッサージも大変で御座いましょう?」
申し訳無さそうに言うシュエル、それを見てハルミの方こそ申し訳なくなる。
「確かに毎日のマッサージは少し大変だけど楽しいし全然気にしないでください。それにシュエルさんが居ないと私だって生きていけないんですから持ちつ持たれつですよ」
(……………そっかぁ。動かなくても感覚は有るんだし座りっぱなしだと痛いよね?そっかぁ……。…………辛かったんだろうなぁ……。やっぱり私の所に来てくれて良かった。大切にしよう……………)
シュエルから聞いた話では今思えば数年前から時折手が震えたり、物を落としたり何も無いのに躓いたりとなんとなく体の調子が悪いなぁ。最近手足も冷えるしと前兆は有ったらしい。ソレでも気のせいかなと放っておいたら突然全く首から下が動かなくなったと。
先月の話だ。
そして一応婚姻を結んでいた相手と前のご主人様はその日の内に即座に離縁手続きをしてシュエルを色んな奴隷館への買取査定に出したらしい。ゴミ同然の値段でも処分するよりはマシなんだそうだ。丁度その話を聞いたあのクソ奴隷館の店員が先日買い取ったそうだ。
(なるほどなー。………………ちっ、あの店員ムカつくけどまあ今回は良い仕事したじゃん)
内心で褒めておく。多分ハルミと紅葉の様子を街で見て信頼してくれたんだと思いたい。それか売れると踏んだのか、まあどっちにしろ結果オーライだ。
「……………何処からも買い取って頂けなければ……ダンジョンで処分すると前のご主人様達は横たわるわたくしの前で話されていて………、本当に…とても恐ろしかったです。こうなったのが解放前で良かったと言われた時は心が凍る思いでした……」
シュエルはぎゅうっと瞳を閉じる。本当に怖かったのだろう、顔が青いし唇が震えている。処分とはダンジョンでモンスターをおびき寄せる生き餌にするとか囮としてモンスターに投げつけるとかだと聞いてハルミまで顔が青ざめる。
「…………………大丈夫。シュエルさん。もうそんな酷い人達忘れましょう?ね?…………これから沢山幸せになりましょ?」
おっぱい好きなシュエルの顔を胸で押し潰すように抱きかかえるとシュエルは嬉しそうに鼻息を荒くしている。
「んっ♡ハルミ様ぁ♡……………………今はとても幸せでございます。病気になれて良かった……………」
そう呟くシュエルにまたハルミは複雑な気持ちになるのだった。
▷▷▷▷▷▷
「……………すみません、あの果物を見たいです」
傍らの犬耳使用人さんに頼むとすぐに頷いて店主と話をしてくれる。
「ハルミ様?果物をこんなに。………何にお使いになられるのですか?」
車椅子に乗ったシュエルは不思議そうにそう言う。シュエルの膝の上にはこれまでに買った色んな果物が置いてある。
「…………ケーキ。タルトを作ろうかと思って」
ニコリと笑って告げるとシュエルは瞳を輝かせていた。
「ハルミ様は凄いですね。
……………ケーキまでお作りになれるとは」
そう言うシュエルに少しだけ照れる。
(……………ベル、喜んでくれるかな?)
使用人さんから頼んだ果物を受け取ってハルミは胸をドキドキと高鳴らせる。
(……………ベル)
ベルへのサプライズケーキの材料を揃えるのと後はシュエルの気分転換がてらお出掛けだ。少しだけこの間の紅葉との事が頭をよぎるがローブをしっかりとかぶっているしシュエルからはセクハラなんて絶対に出来っこないので安心だ。シュエル専属の使用人さんも愛想が良くて良い人だし、問題無く買い物は終わる。最後の果物を受け取ると店主のおじさんはシュエルを見て気の毒そうにしている。それからシュエルに話かけてきた。
「あんた………その体アレだろ?
石化病………。……………まだ猶予はあるんかいな?」
その目からは本当に心配だと言う感情が伺える、だからハルミは止めないでそれを眺める。
「ええ。後………一年か……ニ年は」
ニコリと答えるシュエルに店主は少しだけ顔色を良くした。
「あーそうなんか!!!それなら、もしかしたらアンタ治るかもしれんでなぁ。………………此処だけの話やけど最近王族の……多分第三王子様かなぁ?同じ病気になったらしくてなぁ。王女様は王子様を溺愛しとる、……………やから治せる聖女様を召喚するかも知れへん言うてなぁ。あ、これはまだ噂だけど結構信憑性あるから!!!!だから、聖女様が来られたらもしかしたらアンタも治してもらえるかもな?………………ほら聖女様ってーのはあちこち訪問しよるやろ?」
ニコニコと話す店主の言葉にハルミはポカンと口を開けた。
(聖女召喚?………………それって。もしかしたら同じ日本人が来たりするのかな?………………もしそうなら………シュエルさん、助かるの?本当に…?…………………………あれ?何で…?なんか………)
もしそうなら嬉しい。なのに何故だが嫌な予感がした。
(気のせいかな?…………………………同じ日本人だったら仲良くなれるかな?)
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