異世界召喚されたけど定番のチートも逆ハーレムも番も溺愛もエロもありませんでした。 無ければ自分で作れば良いのでは? よし、私頑張ります!!

福富長寿

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78話 揺れる心

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アーノルドの言葉と瞳。そこには甘さが含まれている。真剣な顔のアーノルド、アーノルドの言葉に嘘は無い。それに気づいて、ハルミの心臓はドクンと音を立てた。

(は………アーノルドさん?側に………居たい……?責任感……じゃない………なんで、そんな瞳で見るの?)

ドクンドクンと鼓動を早める心臓。それにじわじわと上がる体温。ハルミは自身の変化に泣きそうだった。

(っ…………失恋……したばかり……なのに………どうして…………)

ベルに対しての悲しい、辛い、好き。その気持ちは本当。なのに今目の前のアーノルドに対して、胸が高鳴り頬が赤く染まる

(………………なんで私って、こうなの………………)

驚きに止まった筈の涙がポロリと流れてアーノルドの手を濡らした。

「………………泣くな。ハルミ……………………」

そう言って迫ってくるアーノルドの顔を避けることもせず、瞳を閉じて受け入れてしまう自分にハルミは呆れる。

(………………………最低)

そう思うのに、唇に触れた柔らかな感触に喜んでいるのだから。本当にどうしようもない。



▷▷▷▷▷▷



「アーノルド……さん」

唇が離れて、近くなったアーノルドの瞳を見つめて名前を呼ぶと、アーノルドの瞳は揺れた。複雑な色だ。

「…………………ハルミ。君が今、色々と混乱しているのは良くわかるぞぉ。………拙者にこんな事を言われて困っているだろう?…………………だが拙者なら………………ずっと側に居てやれる。それこそ君が死ぬまで………、拙者は寿命が長い。…………寂しくなんてさせない、……泣かせたりもしない………。………愛してやれる……、……………………君が……好きだ」

またドクンと心臓は高鳴る。冷えていた手足に熱が戻り、ハルミの青褪めていた顔は赤く色づいているだろう。

「アーノルドさん。…………………わ、私。…………駄目です………。そんな…………だって……………、そんな…………好きなんて………そんなの…………駄目」

「………………何故?ハルミ……………。そんな顔で………そんな声で……、駄目だと言っても…説得力が無いなぁ」

そっとまた、唇にキスをされてハルミは泣きたくなる。

(っ……なんでこんなに……………嬉しいの?
私…………ベルを好きで、あんなに苦しかったのに………。ううん、今も、今だって苦しいのに…………。なのに………………嬉しい。心臓…また………ぎゅってなる………)

アーノルドに対してずっと感じていたモヤモヤした感じ。それの名前にあともう少しで気づきそうになって、ハルミはぎゅっと目を瞑る。

「……………ハルミ、好きだ………好きなんだ………。……………ベルを諦めるのなら、拙者を…………。代わりだと思えば良い………。君は何も悪くない……。弱った君に付け込む拙者が全て悪い……………。ハルミ………………」

アーノルドは甘い声でそう言う。

「…………………アーノルドさん。…………私、そんな風に言ってもらえない……。そんな価値無いです……、だって………男の人とえっちしたくなります。それも不特定多数と…………、変態でどうしようもない女なんです…………」

(…………そうだよ。だからベルだって……私を好きになってくれる筈が無かったんだ…………。……私…………この世界じゃ変態だしそれに普通に……駄目でしょ………、……………クソビッチだもん)

言ってて本当に呆れてくる。ベルの事を思いながらも、色んな男に抱かれて喜んでいた。今も思い出すとあそこがキュッと締り愛液がじゅわりと湧いてくる。精液を取らないと死ぬ。それは仕方無い、それでも、抱かれたりあそこまで乱れる必要はない筈だ。それこそ最初にシュエルにした様に事務的にすれば良い。

なのに………えっちな気分になると、自分を止められない。男が欲しくて欲しくてたまらなくなる。気持ち良くなりたい。

そんな女を好きだなんてそんなの駄目だ。ハルミが視線を彷徨わせていると、アーノルドはハルミの内心を見抜いたかの様に言う。

「…………………拙者は子を作れない。………………精液を沢山出してやれる訳でもない。…………………欠陥品だぁ。どうしようもない君にお似合いだろう?……………拙者は構わない、君が子を欲しいと言うのなら他の男と作っても良い。………君が他の男に抱かれても、どれだけ乱れても拙者は構わない。…………ただ最後まで、拙者の側に居てくれ。……君に望むのは……それだけだ」

そう言い切るアーノルドに体が熱くなる。

「っ………そんなの……、違っ……アーノルドさんは欠陥品なんかじゃ……っ……」

その言葉はキスで口を塞がれて最後まで言わせて貰えなかった。

「…………ハルミ、君の優しい気持ちはわかる……。だが現実に………拙者は子を作れない。…………………欠陥が有るのはどうしようもない事実なんだ………。…………それは医者として……既にもう受け入れている。…………………………………ハルミ、………今すぐ、答えを出さなくても良い。まだベルが退院するまで2ヶ月も有る。その間に君に少しでも想ってもらえるように……努力する、………まだ時間は有る。焦らなくて良い」

そう言ってアーノルドは笑う。さわさわと、いやらしく頬から首筋を撫でられて体が熱くなる。

「っ…………んっ……………」

ピクンと反応する体にハルミが泣きそうになって居ると、アーノルドも泣きそうな顔をしていた。

「ハルミ………………、悲しんでいる君に……欲情している拙者も………どうしようもない男だろう?子も作れないのに君を抱きたくて仕方無い。………………なあ?ほうらお似合いだなぁ」

そう言うアーノルドの瞳は、やはり何かに迷う様に揺れていた。 





▷▷▷▷▷▷





ぐしゃりと潰れた箱を膝に乗せて馬車に揺られる。

行きとは違い会話は無い。

ハルミは、ただじっと窓の外を流れる景色を眺めていた。

(…………………はあ。……落ち着いたら……色々と最低すぎるでしょ。私…………)

とりあえず今日は帰ろうとアーノルドに手を引かれて大人しく従った。ハルミも今はベルと会いたくなかった。

(諦める………か。でも………好き…………)

やっぱりどうしたって好きなのだ。今後もその気持ちは変わらない。ただ、時の流れに身を任せて、いずれその想いが風化するのを待つしか無い。
チラリと見るとアーノルドは瞳を閉じて足を組んでいる。眠ってしまったのかも知れない、アーノルドは疲れている。それなのに困らせてしまった。迷惑を掛けてしまった。その事にハルミはしゅんとする、それから胸が甘く締め付けられる。

(……………………好きって、側に居たいって………、居てほしいって言ってくれた。アーノルドさん…………。………………本当に…?………どうして好きになってくれたの?)

アーノルドの言葉がめちゃくちゃ嬉しかった。抱きたいと言われて胸が高鳴った。

(…………………アーノルドさん。本当なの?本当に私を好き?……………………私もアーノルドさんを好きになったら、ベルを………好きなこの気持ちも忘れられるのかなぁ……?そしたら、ベルとは……良い友達になれる?)

考えてしゅんとする。

(……………そんな利用するみたいなの駄目………。優しいアーノルドさんを利用したくない。……………………やっぱりグレンさんの所に行こうかなぁ………。そうしたら……………もう傷付かなくて済む。割り切った関係、専属の娼婦…………。お互いに、性欲処理の相手……、そこに………気持ちが無くても生きては行けるもんね。……そうなったらもうベルとは会えないなぁ………。………でもそれが一番ベスト?)

そんな風に考えて自嘲する、やっぱり自分は可愛げがない女だ。泣き喚いてスッキリして、そしたらこんな風に現実的に物事を考えてしまうのだから。

(…………………でも本当、スッキリした。…………………全部吐き出せて。アーノルドさんもそれを受け止めてくれた…………。………………私はこれからどうしたいんだろう?どう足掻いてもこの世界で生きていくしかないんだし…………、お金に困らないのだけは救いかな。………でも仕事はしたいなぁ……)

また窓の外に視線を戻す。行きとそう変わらない風景だ。結局すぐにとんぼ帰りになってしまった。日もまだ高い。

帰ったらシュエルのマッサージしないとなぁ、なんて考えまで浮かんでくるくらい気分は晴れていた。


(…………………アーノルドさん。最後まで一緒って……言ってくれた。……言われると嬉しいものだなぁ……、シュエルさんも同じ気持ちになったのかな?……………きっとそうかな?だから、あんなに好意を向けてくれる………。やっぱり、あれは恋愛感情じゃ無い)

ぼんやりとそんな風に思う。

(…………………タイムリミットは2ヶ月、それまでにちゃんと答えを出さなくちゃ。…………………それまでは……今まで通り……過ごそう)

そう決めてハルミも瞳を閉じる。




▷▷▷▷▷▷






すうすうと眠ってしまったハルミをアーノルドは眺めていた。ハルミは容姿が特別良い訳じゃないのにアーノルドには、凄く可愛く見える。恋とは凄いなとアーノルドは苦笑した。

(………………ハルミ。………ベル、…………………すまない) 

そう二人に謝り、アーノルドは手をぎゅうっと握りしめた。

「時間はまだ有る。…………焦るな……か、………………はあ」

自分へ言い聞かせていた様な物だ。

(……………………ハルミは誤解をしている。
妾……愛人…恋人…………。……………異世界とこちらの常識の違いか、それか翻訳に齟齬が出たか……。それはわからんなぁ………。だが確実に勘違いしているなぁ。……………拙者は一体どうしたい?ベルを裏切って………ハルミまで騙して…………、気持ちまで…伝えては……もう後戻りなど……出来ない…)

そう思うのだが、まだ心は揺れている。

(…………………2ヶ月。…………ベルが戻るまでに
ハルミに………愛されなければ……全てを話そう……。ベルにも…………ハルミにも)

時間はまだ有るのだ、焦らずに行けば良い。





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