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92話 紅葉
しおりを挟む「…………前の主様と共に居たのは、たったの三日間だけだった………」
「え?………じゃあすぐに怪我したんだね?」
そう尋ねると紅葉は頷く。今は隣同士普通に座っているので、ハルミは紅葉の手をそっと握った。
「……………前の主様は二人だった。二人でお金を出し合い、自分を買われた。冒険者をこれから始めると話していた。若い女性二人だった………。女性の冒険者は珍しいが、二人共、魔力が強かったらしく護衛の奴隷を買う事を条件に、冒険者になる事を二人の親は許したと、そう聞いた」
「………冒険者。そうだよね……。ダンジョンに行ったんだもんね?……………女の人は珍しいんだ?」
「珍しい。…………こちらの世界では冒険者と言うのは基本的には男の職業。………稀に女性も居るが、その殆どは冒険者の娘だとか妻。家族でパーティーを組むのならあり得る。後は恋人同士とか……、なので女性だけ二人と言うのはかなり珍しい。それも二人は姉妹でも血縁者でも無い、赤の他人だった…………かなり珍しい。それに………余り良くは思われない。女性が魔法を使い戦闘をするのは、はしたないとされている。だから男の奴隷を買うと、自分を選んだ。そうすれば多少は周囲の目も緩む」
(………………へえ。じゃあ、その女性二人が紅葉君の目を気持ち悪いって言ったの?酷い…………)
「……………そうなんだ。それですぐにダンジョンに行ったの?」
「……………いや。まずはお互いの自己紹介と…………………後は……味見をすると、唇を奪われた…………」
「え………?」
紅葉の言葉にハルミはポカンとした。
(え?……今なんて言ったの?)
ハルミが困惑していると、紅葉はハルミの手をぎゅうっと握る。
「………………冒険者になるような女性達だ。……………少し……、いや、かなり変わっていた。………うっ……ハルミぃ…………」
紅葉はぎゅうっと抱きついてくる。
「え……?紅葉君?」
紅葉は震えている。
「紅葉君…………大丈夫?………唇って……キスされたの?」
そう尋ねると紅葉はコクリと頷く。
「……………二人からキスをされた。尻も服の上から触られた。余り悪くは言いたくは無いが、ハルミとは違って気持ち悪かった……。流石に尻とキスくらいで、自分も騒いだりはしなかったが…………。冒険者に憧れてたし
それくらいは我慢出来た。ただ、奴隷館を出る時に店員様から生ぬるい目を向けられた理由がそこで分かった。…………店員様は気付いていたようだ。その、元主様達が……少し変わっていると。…………その後は…………特にそれ以上はされなかった。だから普通にダンジョンに潜る準備をして………、そして買われた次の日にダンジョンへと潜った」
「……………そっか。あー、キスは初めてじゃないって、そう言う事だったんだね………」
前に、キスが初めてか聞いた時に紅葉は初めてじゃないと言っていた。てっきり奴隷館とかで、奴隷同士恋愛でもしてたのかと思ったが、まさか買われた相手にされていたとは。要するに紅葉の前の主人達は、こちらの世界の変態さんって事だ。
(……………まあ、私も人の事を言えないか、寧ろやってる事は、私の方がやばいくらいだし……。同意とは言えかなり酷い事してるもんね…………。紅葉君ってば……つくづく運がないよね。2連続変態に買われるなんて………)
しかも貞操帯まで着けられて、運がないなんてレベルじゃない。不憫だ。
(……………なんかごめんね紅葉君)
「………紅葉君、だから最初にあんなに怖がってたの?……………知らなかったとはいえ、ごめんね。」
そう言って頭を撫でると紅葉の耳はしゅんと垂れた。
「…………………いや。多少はそれも有るが、前もって店員様からは変態だと聞いていたし、性行為もすると聞いていた。心構えは有ったつもりだったが。………目が見えなくて……、やはり何をされるのかと色々と考えていると………恐怖が湧き上がって来た……。………それで……少し怖かったのだと思う………。でも、ハルミは優しく声を掛けてくれた。嫌な事はしないと言ってくれたし……、優しく触れてくれて、何度も声を掛けてくれて、目の見えない自分にも、何をするのか、ちゃんと分かるようにしてくれた。………おちんぽを舐めると言った時はかなり……驚いたが、気持ちよかったし♡~っ!!!!痛い……」
思い出して勃起したのか紅葉は股間を抑えた。
「………………なんかごめんね」
「………………申し訳ない。………ハルミぃ………」
紅葉は、またぎゅうっと抱きついてくる。
「紅葉君。この話やめておく?」
そう尋ねると紅葉は首を振る。
「ううん。聞いて欲しい。話を…戻す……。…………………ダンジョンに潜った次の日、バジリスクが出た。こちらが構える間もなく、片方の主様に襲いかかり毒を吐いた。だから自分が咄嗟に庇って、毒を顔に浴びた。その間にバジリスクは他の冒険者が倒してくれたようだが……、目が……痛くて……見えなくて……痛みに蹲る自分に主様達は………、面倒くさそうに傷を見せろと仰った…………。それから酷い傷だ。気持ち悪い……と言った」
そう言って紅葉はしゅんとしている。
(っ……庇って貰っておいて酷い)
「紅葉君………気持ち悪くなんて無いよ。人を助けた傷だもん……、格好良いよ………名誉の負傷、私は好きだよ」
ちゅっとキスをすると紅葉はぎゅうぎゅう抱きついてくる。
「…………その場に治癒魔法を使える者がたまたま居た。だがこの傷は治せないと……、治すのには大金がかかるとそう言われて、そうしたら主様は……どちらもが大きなため息を吐いた。折角瞳が綺麗だから買ったのに、潰れたのなら、もう要らない、最悪だ、気持ち悪いと……仰った……。そして……奴隷館にまた売られた。新しい奴隷を買うのに少しでもお金が欲しいと話していた。………どんな理由であれ、そのまま捨置かれなかっただけマシだ…………。殆どの場合は欠損した時点でランク無しになる、だからその点は本当に感謝している。お陰でハルミに生きて会えた……」
「紅葉君……………」
(っ………もう。何なのこの世界っ!!!奴隷の人権あるんじゃないのっ!!!怪我したら人間じゃなくなるって事?……………酷い)
ハルミまでしょんぼりとする。ベルから聞いていた話とは大分色々と違う。いや、ベルはそう言う部分をわざと隠していたのかも知れない。最初に欠損奴隷やランク無しのことも隠していた。汚い部分を見せないようにハルミに配慮してくれたんだろう。
(っ…………どこまで優しいの?ベルの…………ばかぁ……)
こうしてベルの優しさに時間差で気づいては胸が甘く痛む。ベルの事を忘れるのは、まだ暫く掛かりそうだ。
▷▷▷▷▷▷
「ハルミ………申し訳ない……。嫌な話だったか?気分を害したか?…………でも自分は、もう全然平気だ。…………目を怪我したお陰でハルミに会えた♡それに前の主様が女性の変態だったからこそ、店員様は自分に話を持って来てくれた。………………一度変態に買われたのだから、もう一度変態の相手を出来るだろうとそう言われた。出来なければ、どの道近い内に………餌として売られたか処分されていたか、そのどちらかだった。だから引き受けた。我慢出来ると思ったから。………………変態とは……キスとか、お尻を触られるくらいだと思ったし………、性行為は習っていたし、少し我慢すればすぐに終わると思っていた。だから自分の意思で引き受けた。無理矢理では無い」
「え?」
(…………え?そう言う事だったの?)
なのに蓋を開けてみれば、ズボンを脱がせておちんちんを触ったり舐めたり、近くでオナニーしたり。
(うう……本当にごめんね紅葉君)
自分のした事に頭を抱えそうになる。
「ごめんね。紅葉君……………、本当にごめんね。紅葉君の事……もっと、ちゃんと聞いておけば良かったね………ごめんね」
「……………謝らないで欲しい………。勘違いしないで欲しい。責めているんじゃない。………違うんだ。ハルミとの行為はどれも気持ちいい♡……………されて嫌だったことなんて無い……♡ハルミは優しく手も引いてくれる♡
食事も、何をするのも、自分を気遣ってくれる♡ハルミぃ♡…………ハルミが自分を買ってくれて嬉しい♡自分を気に入ってくれて、嬉しい♡目が治らなくても、良いくらいだ♡………でも、ちゃんと見たいから、早く治したい」
(…………あ。そうだよね。早く治したいよね…………。何も見えないのは辛いよね)
その言葉にハッとする。
「紅葉君は目が治ったら、どんな仕事がしたいの?……………その、冒険者は、もう、やだよね?そんな目に遭ったんだし、……………なにか、他にしたい事は有るの?」
尋ねると紅葉は耳をピルピルさせている、なんだか嬉しそうだ。
「したい事?自分が決めて良いのか?……………本当に?」
紅葉は首をかしげている。
「うん。勿論良いに決まってるよ。紅葉君がしたい事を出来るように、ちゃんとアーノルドさんにも頼むし……………遠慮しないで紅葉君。本音で話して良いんだよ?」
そう告げると紅葉の頬が赤く染まった。かなり興奮しているようだ。
「あ。それじゃあ………、冒険者に…………なりたい………。危険は冒険者には付き物だ。だから平気だ。その代わり、冒険者は夢が有る。普通に働くよりも沢山稼げる!!!今度はちゃんと、頑張る!!!ヘマはしない!!!頑張ればお金も沢山稼げる……、そうしたら………子供を沢山作っても、ちゃんと食べさせて行ける…………。………………………ハルミはどう思う?」
不安そうに聞いてくる紅葉、耳がピクピクしている。
(冒険者。…………そっか、トラウマとかには、なって無いのかな?意外と図太いね。嬉しそう。…………憧れだって言ってたもんね。……………子供?ああ、そっかぁ。紅葉君、将来誰かと結婚して子供を沢山欲しいんだ?へー、本当に子供好きなんだなぁ。………………そっか、なんか少しだけ寂しいけど、でも紅葉君には幸せになって欲しいし……、………うん。アーノルドさんに頼んで、ちゃんとした冒険者のご主人様を見つけて貰おう)
「凄く良いと思うよ!!!紅葉君が冒険者かぁ。戦う姿とか、きっと格好良いね、ふふ。…………………紅葉君。頑張ってね」
そう告げると紅葉はぎゅうぎゅう抱きついて来て、嬉しそうにゴロゴロ喉を鳴らしている。
「ああ!!!頑張るっ♡…………沢山稼ぐ♡ハルミぃ♡………楽しみだなぁ……♡」
「ふふふ。………………うん、頑張ってね、紅葉君。……………………………応援してるよ」
(……………きっと紅葉君なら大丈夫。……会えなくはなるけど、それでも陰ながら、応援してるからね)
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