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フラグス編

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「こんばんは、トゥルフ様」
「ご機嫌ようパラディ様、皇太子殿下」
「楽しくお話なさっているようでしたので、混ぜていただきたくて来ちゃいました」

 私たちはその言葉に思わず呆然としてしまいます。
 あまりにも素直と言えばいいのか、考え無しと言えばいいのかわかりかねてしまいます。

「それはもちろん楽しく会話をしていましたが、パラディ様が混ざっても楽しいかはわかりかねてしまいますね」
「ええ、そんなこと言わないでくださいよ」
「……トゥルフ様、私はこれで失礼いたしますわ。私もお友達のところに行かなくてはいけませんので」
「ええ、貴女を譲らなくてはいけないのは残念ですが、お友達によろしく言っておいてください」
「かしこまりましたわ」

 私はその場から離れます。後ろをちらりと振り向きましたら、パラディ様がトゥルフ様に何やら笑顔で話しかけているようで、少しだけ胸が痛みました。
 私のお友達は男女ともに多いのですが、今回接近するのは男性のお友達でございます。
 私を妖精姫などと恥ずかしい名前で呼ぶ信者とでも申しますか、とにかくそういった類の方々でいらっしゃいます。
 このことを逆ハーレムなどとおっしゃるご令嬢は確かに居りますし、私自身そのことを否定する気はございませんけれども、これは今後のために必要な人脈作りなので見逃していただきたく思いますわ。

「皆様ご機嫌よう、楽しんでいらっしゃいますか?」
「フラグス様ご機嫌よう」
「やあやあ妖精姫様、ご機嫌麗しく」
「いつも可憐でいらっしゃいますね妖精姫様」
「皆様口がお上手でいらっしゃいますのね」

 私は手にしていた扇子を口元に持っていってふんわりとほほ笑みます。
 取り巻きの話しによりますと、この仕草だけで男性は私のとりこになるのだそうです。
 よくわかりませんけれども、そういうものなのでございましょう。

「皇太子殿下は毛色の変わったご令嬢に夢中だとか聞きますが、大丈夫でいらっしゃいますか?」
「まあ、お耳が早くていらっしゃいますのね。両陛下にも確認いたしましたが、私が次期皇太子妃になることに変更がないとお約束してくださいましたので大丈夫でございますわ。それに、もしそれすらも乗り越えられるというのであれば、私は皇太子妃の座を譲ってもいいと思っているのでございましてよ」
「そうなのですか。確かに長年の努力を越えてでも真実の愛を貫けるのであればいいのですけれども、まあ、所詮は男爵令嬢、皇太子妃の教育になど耐えうるはずもないでしょう」
「まぁ、皆様は意地悪でいらっしゃいますのね」

 出来るはずがないと、皆様思っているのでございます。
 私自身も、私が幼少より詰め込まれてきた皇妃教育をたった数年で出来るとは思えませんし、やる気があるのかも不明ですものね。
 今まで自由に暮らしていたのに、24時間それこそすべてを監視される生活など、慣れるはずもないでしょうね。
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