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私は10歳になった。のびのび育ってしまった私を今更ながら心配したお母様が、それはそれは厳しく淑女教育を施した。
わんわん泣いた。特にマナー担当のマレーゼ先生が厳しくて、私は毎日のように泣いていた。でも私のそんな姿を見てお母様も泣いていた。だから頑張った。お母様を泣かせちゃいけない。
お母様は侯爵家のお姫様だった。社交界ではその美しさと立ち居振る舞いから妖精姫と呼ばれていたらしい。
私の淑女教育の先生は、そんなお母様が自ら選んだ先生達。私がいつどこに出ても困らないように最高峰の先生を呼んでくれたそうだ。
泣かないと決めた日から少しずつ先生達にも褒められるようになった。でも相変わらずマレーゼ先生は厳しい。いつか絶対、先生に最高の淑女と言わせてやる。
魔法学の先生は変わらずリヴァン先生。温風魔法事件から1年程は先生に基礎をしっかりと教えてもらい、最近はずっと2人で融合魔法の研究をしている。
現在、魔法の融合は、ほとんどの魔法士には出来ないそうだ。
魔法士には生まれ持った属性の強弱が存在し、成長とともにその強弱がはっきりしてくる。大抵の魔法士は自らが持つ強い属性をさらに強化することに力を入れ、弱い属性を強めるようなことは殆どしない。そのため、バランスよく複数の属性を扱う融合魔法は難しいそうだ。
私は今のところ全属性に偏りがない稀なタイプらしい。今後成長とともに変わる可能性もあるけれど、感覚を忘れないように日々先生と新しい融合魔法を作っている。
「お父様、お呼びですか?」
朝からお父様の執務室に呼ばれた。執務室に入ると、私はお父様を窺い見る。
我が子爵家は、領地は広くないものの、代々続く大商会を抱えている。
最近のお父様は、私とリヴァン先生が生み出した融合魔法を元に魔道具を作成、販売している。更に他国とも取引を進めているので忙しそうだ。今日も久しぶりにお父様にお会いした。
「リル、朝早くからごめんね。君に学院から推薦状が来たんだ。」
そう言ってお父様は私に手紙を見せた。
アルグリア学院
アルグリア学院の入学に必要なものは、全てにおいて実力のみ。
10歳から18歳までの子が通うことが出来る学校で、身分は問わない。
貴族社会の我が国では、珍しい方針の学校だ。二代前の女王陛下が貴重な人材確保のために作った学校だった。他国の生徒も受け入れているため、受験倍率は毎年すごいことになっているらしい。恐れ多くもそんな学校への推薦状。
「お父様。私をどなたが推薦してくださったのですか?」
私は誰かに褒められるような事をした覚えがない。
「この推薦状はね。リヴァンの育ての親が書いてくれたんだよ。」
「先生の?」
「うん。その方はリヴァン先生の魔法の先生でもあるんだ。リルをぜひ魔法科にって推薦してくれたんだよ。」
リヴァン先生の魔法の先生、いったいどんな方なんだろう。
色々と疑問に思いつつも、私の興味は魔法科の方に行ってしまった。
「お父様、私、アルグリア学院に行きたいです。」
魔法をもっと知りたい、そして触れたい。私はせっかく与えられたこの機会を逃したくない。
「うん。リルならそう言うと思ってたよ。行っておいで。でも長期休暇はちゃんとこっちに帰ってくるんだよ。王都の邸には専属の侍女たちも連れて行きなさい。」
「はい。ありがとうございます、お父様。私がんばります。」
私は推薦状を胸に抱いて、学院生活に思いを馳せた。
「お父様、お仕事あまり無理しないでくださいね。」
「うん。ありがとうリル。お母様にはきちんとリルから話しなさい。」
お父様に頭を下げて部屋を出た。
今よりもっと魔法が学べる。
嬉しすぎて部屋まで走ってしまったのは仕方がないと思う。
わんわん泣いた。特にマナー担当のマレーゼ先生が厳しくて、私は毎日のように泣いていた。でも私のそんな姿を見てお母様も泣いていた。だから頑張った。お母様を泣かせちゃいけない。
お母様は侯爵家のお姫様だった。社交界ではその美しさと立ち居振る舞いから妖精姫と呼ばれていたらしい。
私の淑女教育の先生は、そんなお母様が自ら選んだ先生達。私がいつどこに出ても困らないように最高峰の先生を呼んでくれたそうだ。
泣かないと決めた日から少しずつ先生達にも褒められるようになった。でも相変わらずマレーゼ先生は厳しい。いつか絶対、先生に最高の淑女と言わせてやる。
魔法学の先生は変わらずリヴァン先生。温風魔法事件から1年程は先生に基礎をしっかりと教えてもらい、最近はずっと2人で融合魔法の研究をしている。
現在、魔法の融合は、ほとんどの魔法士には出来ないそうだ。
魔法士には生まれ持った属性の強弱が存在し、成長とともにその強弱がはっきりしてくる。大抵の魔法士は自らが持つ強い属性をさらに強化することに力を入れ、弱い属性を強めるようなことは殆どしない。そのため、バランスよく複数の属性を扱う融合魔法は難しいそうだ。
私は今のところ全属性に偏りがない稀なタイプらしい。今後成長とともに変わる可能性もあるけれど、感覚を忘れないように日々先生と新しい融合魔法を作っている。
「お父様、お呼びですか?」
朝からお父様の執務室に呼ばれた。執務室に入ると、私はお父様を窺い見る。
我が子爵家は、領地は広くないものの、代々続く大商会を抱えている。
最近のお父様は、私とリヴァン先生が生み出した融合魔法を元に魔道具を作成、販売している。更に他国とも取引を進めているので忙しそうだ。今日も久しぶりにお父様にお会いした。
「リル、朝早くからごめんね。君に学院から推薦状が来たんだ。」
そう言ってお父様は私に手紙を見せた。
アルグリア学院
アルグリア学院の入学に必要なものは、全てにおいて実力のみ。
10歳から18歳までの子が通うことが出来る学校で、身分は問わない。
貴族社会の我が国では、珍しい方針の学校だ。二代前の女王陛下が貴重な人材確保のために作った学校だった。他国の生徒も受け入れているため、受験倍率は毎年すごいことになっているらしい。恐れ多くもそんな学校への推薦状。
「お父様。私をどなたが推薦してくださったのですか?」
私は誰かに褒められるような事をした覚えがない。
「この推薦状はね。リヴァンの育ての親が書いてくれたんだよ。」
「先生の?」
「うん。その方はリヴァン先生の魔法の先生でもあるんだ。リルをぜひ魔法科にって推薦してくれたんだよ。」
リヴァン先生の魔法の先生、いったいどんな方なんだろう。
色々と疑問に思いつつも、私の興味は魔法科の方に行ってしまった。
「お父様、私、アルグリア学院に行きたいです。」
魔法をもっと知りたい、そして触れたい。私はせっかく与えられたこの機会を逃したくない。
「うん。リルならそう言うと思ってたよ。行っておいで。でも長期休暇はちゃんとこっちに帰ってくるんだよ。王都の邸には専属の侍女たちも連れて行きなさい。」
「はい。ありがとうございます、お父様。私がんばります。」
私は推薦状を胸に抱いて、学院生活に思いを馳せた。
「お父様、お仕事あまり無理しないでくださいね。」
「うん。ありがとうリル。お母様にはきちんとリルから話しなさい。」
お父様に頭を下げて部屋を出た。
今よりもっと魔法が学べる。
嬉しすぎて部屋まで走ってしまったのは仕方がないと思う。
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