下剋上を始めます。これは私の復讐のお話

ハルイロ

文字の大きさ
8 / 308

1ー7

しおりを挟む
 アリアの治療が一段落し、医務室にはシスターとライを残して、私たちは教会の応接室へと移動した。部屋を出る前、ライには何度もお礼を言われた。ライが家族を失わずにすんで本当に良かった。


 応接室にはラナとネルがお茶の準備をしてくれていた。リングドン家の従者が同行してこちらまで案内してくれたそうだ。

「リングドン家の皆様には本当に感謝申し上げます。何か皆様にはお返し出来ればよろしいのですが。」
 応接室のソファに座り一息ついた私は、もう一度改めて感謝を伝える。リングドン様がいなければ、私はアリアを助けてあげられなかった。


「では、僕とお友達になってくれませんか?僕のことはウィルと呼んでくれると嬉しいです。アルト嬢のことはお名前でお呼びしてもいいですか?」
 私の向かいに座ったリングドン様が照れたように、でも少し強引に提案してくる。


 お友達。私に初めてのお友達が出来る。嬉しくて飛び跳ねてしまいそうだった。

「ぜひ!私のことはリルと。みんな私のことはリルと呼ぶんです。だからお友達にもリルと呼んで欲しいです。」
 今すごく恥ずかしい。私の顔は真っ赤だろうけれど、初めてのお友達が出来たのだ。今ぐらい淑女じゃなくても許してもらおう。

私達はお互いを愛称で呼び合うことになり、敬語をやめることも約束した。

「うん。じゃあこれからよろしくねリル。」
 砕けた口調になるとウィルもやっぱり年相応の男の子で、どこかあどけなく可愛い。

「こちらこそよろしくね。ウィル。」
まだ慣れないけれど、愛称で呼び合えるのが嬉しい。

 ウィルとはこれから手紙のやり取りをすることを約束した。しかもリングドン家のお邸にも招待してくれるらしい。これからの王都生活の楽しみがまた1つ増えた。


 ウィルとの話が落ち着くとすぐにリーン先生の質問が始まった。長身のリーン先生がこちらに迫る勢いで話してくるので少し怖い。
どうやら先生は、私が使った解析魔法がお気に召したらしい。確かに適切に薬を処方できる解析魔法は、薬師にとって喉から手が出るほど欲しいだろう。ただ先生は魔法士になれるほどの魔力はなく、私のように混合魔法は使えない。なるべく早くお父様の商会で魔道具化することを約束した。

「あのさ。俺に魔法教えてくれないかな?」

 デルが躊躇いながらも私に話しかけてきた。
 
 彼の名前は、ディレイル・ルード。漆黒の艶やかな髪に、同じ色の瞳を持つ落ち着いた雰囲気の美少年、年は15歳だそうだ。
彼は、ルード騎士爵家の1人息子で、ルード家は代々魔法騎士を輩出してきた。魔法騎士は多忙で、1年のほとんどを地方で過ごすことになる。
元々体の弱かったディレイルの母親は、ディレイルを出産後、ますます体を壊し、ベッドでの生活を余儀なくされた。しかし、魔法騎士であることを何より誇りにしていた父親は、妻を見舞うことも幼い息子を気遣うことも殆どしなかった。久しぶりに父親が帰ってきたのは、ディレイルが一人で母親の葬儀を終えた後だった。
そんな父親に反発し、彼は母方の親族であったリーン先生に弟子入りした。母親を助けたくて医学書や薬学書を読んでいたディレイルは、最年少で国家薬学試験に合格し、リングドン家に認められて薬草園で働いている。自分のような絶望感を味わう人を1人でも減らしたいのだそうだ。


そんな話を聞いたらダメなんて言えない。


「ルード様。私の大好きなことが誰かの役に立つなんて嬉しいです。私にも先生がいるんですけど、ルード様さえよければ、先生の元で一緒に学びませんか?」

 ルード様の家系が魔法騎士を出してきたなら彼にも高い魔法の素質があるはずだ。
私も一緒に学べたら嬉しい。


「デル。素晴らしい出会いに感謝しよう。」
リーン先生はルード様を優しい眼差しで見ていた。

「はい、先生。」

ルード様は私の方を向くともう一度改まって頭を下げる。

「あの、アルト嬢よろしくお願いします。」


私は了承の意味を込めて笑顔で返した。




「僕もお願いしようかな。」
私の向かいに座っていたウィルが徐ろに立ち上がり、私の隣に座る。

「え?」

「なんだか楽しそうだしね。それにこれから僕とリルは同級生になるんだよ。」

ウィルが同級生?

「え?ウィルもアルグリア学院に行くの?」

「うん。同じ魔法科だよ。魔法科はクラスが1つしかないから同じクラスだね。これからよろしく。」


初めて出来たお友達と同じ学校に通えるなんて!ますますアルグリア学院に通うのが楽しみになった。

私はこれから始まる毎日に自然と笑みが溢れた。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】領主の妻になりました

青波鳩子
恋愛
「私が君を愛することは無い」 司祭しかいない小さな教会で、夫になったばかりのクライブにフォスティーヌはそう告げられた。 =============================================== オルティス王の側室を母に持つ第三王子クライブと、バーネット侯爵家フォスティーヌは婚約していた。 挙式を半年後に控えたある日、王宮にて事件が勃発した。 クライブの異母兄である王太子ジェイラスが、国王陛下とクライブの実母である側室を暗殺。 新たに王の座に就いたジェイラスは、異母弟である第二王子マーヴィンを公金横領の疑いで捕縛、第三王子クライブにオールブライト辺境領を治める沙汰を下した。 マーヴィンの婚約者だったブリジットは共犯の疑いがあったが確たる証拠が見つからない。 ブリジットが王都にいてはマーヴィンの子飼いと接触、画策の恐れから、ジェイラスはクライブにオールブライト領でブリジットの隔離監視を命じる。 捜査中に大怪我を負い、生涯歩けなくなったブリジットをクライブは密かに想っていた。 長兄からの「ブリジットの隔離監視」を都合よく解釈したクライブは、オールブライト辺境伯の館のうち豪華な別邸でブリジットを囲った。 新王である長兄の命令に逆らえずフォスティーヌと結婚したクライブは、本邸にフォスティーヌを置き、自分はブリジットと別邸で暮らした。 フォスティーヌに「別邸には近づくことを許可しない」と告げて。 フォスティーヌは「お飾りの領主の妻」としてオールブライトで生きていく。 ブリジットの大きな嘘をクライブが知り、そこからクライブとフォスティーヌの関係性が変わり始める。 ======================================== *荒唐無稽の世界観の中、ふんわりと書いていますのでふんわりとお読みください *約10万字で最終話を含めて全29話です *他のサイトでも公開します *10月16日より、1日2話ずつ、7時と19時にアップします *誤字、脱字、衍字、誤用、素早く脳内変換してお読みいただけるとありがたいです

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

「美しい女性(ヒト)、貴女は一体、誰なのですか?」・・・って、オメエの嫁だよ

猫枕
恋愛
家の事情で12才でウェスペル家に嫁いだイリス。 当時20才だった旦那ラドヤードは子供のイリスをまったく相手にせず、田舎の領地に閉じ込めてしまった。 それから4年、イリスの実家ルーチェンス家はウェスペル家への借金を返済し、負い目のなくなったイリスは婚姻の無効を訴える準備を着々と整えていた。 そんなある日、領地に視察にやってきた形だけの夫ラドヤードとばったり出くわしてしまう。 美しく成長した妻を目にしたラドヤードは一目でイリスに恋をする。 「美しいひとよ、貴女は一体誰なのですか?」 『・・・・オメエの嫁だよ』 執着されたらかなわんと、逃げるイリスの運命は?

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

転生してもオタクはなおりません。

しゃもん
恋愛
 活字中毒者である山田花子は不幸なことに前世とは違いあまり裕福ではない母子家庭の子供に生まれた。お陰で前世とは違い本は彼女の家庭では贅沢品でありとてもホイホイと買えるようなものではなかった。とは言え、読みたいものは読みたいのだ。なんとか前世の知識を魔法に使って少ないお金を浮かしては本を買っていたがそれでも限界があった。溢れるほどの本に囲まれたい。そんな願望を抱いている時に、信じられないことに彼女の母が死んだと知らせが入り、いきなり自分の前に大金持ちの異母兄と実父が現れた。これ幸いに彼等に本が溢れていそうな学校に入れてもらうことになったのだがそこからが大変だった。モブな花子が自分の願望を叶えて、無事幸せを握り締めるまでの物語です。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

処理中です...