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アリアの治療が一段落し、医務室にはシスターとライを残して、私たちは教会の応接室へと移動した。部屋を出る前、ライには何度もお礼を言われた。ライが家族を失わずにすんで本当に良かった。
応接室にはラナとネルがお茶の準備をしてくれていた。リングドン家の従者が同行してこちらまで案内してくれたそうだ。
「リングドン家の皆様には本当に感謝申し上げます。何か皆様にはお返し出来ればよろしいのですが。」
応接室のソファに座り一息ついた私は、もう一度改めて感謝を伝える。リングドン様がいなければ、私はアリアを助けてあげられなかった。
「では、僕とお友達になってくれませんか?僕のことはウィルと呼んでくれると嬉しいです。アルト嬢のことはお名前でお呼びしてもいいですか?」
私の向かいに座ったリングドン様が照れたように、でも少し強引に提案してくる。
お友達。私に初めてのお友達が出来る。嬉しくて飛び跳ねてしまいそうだった。
「ぜひ!私のことはリルと。みんな私のことはリルと呼ぶんです。だからお友達にもリルと呼んで欲しいです。」
今すごく恥ずかしい。私の顔は真っ赤だろうけれど、初めてのお友達が出来たのだ。今ぐらい淑女じゃなくても許してもらおう。
私達はお互いを愛称で呼び合うことになり、敬語をやめることも約束した。
「うん。じゃあこれからよろしくねリル。」
砕けた口調になるとウィルもやっぱり年相応の男の子で、どこかあどけなく可愛い。
「こちらこそよろしくね。ウィル。」
まだ慣れないけれど、愛称で呼び合えるのが嬉しい。
ウィルとはこれから手紙のやり取りをすることを約束した。しかもリングドン家のお邸にも招待してくれるらしい。これからの王都生活の楽しみがまた1つ増えた。
ウィルとの話が落ち着くとすぐにリーン先生の質問が始まった。長身のリーン先生がこちらに迫る勢いで話してくるので少し怖い。
どうやら先生は、私が使った解析魔法がお気に召したらしい。確かに適切に薬を処方できる解析魔法は、薬師にとって喉から手が出るほど欲しいだろう。ただ先生は魔法士になれるほどの魔力はなく、私のように混合魔法は使えない。なるべく早くお父様の商会で魔道具化することを約束した。
「あのさ。俺に魔法教えてくれないかな?」
デルが躊躇いながらも私に話しかけてきた。
彼の名前は、ディレイル・ルード。漆黒の艶やかな髪に、同じ色の瞳を持つ落ち着いた雰囲気の美少年、年は15歳だそうだ。
彼は、ルード騎士爵家の1人息子で、ルード家は代々魔法騎士を輩出してきた。魔法騎士は多忙で、1年のほとんどを地方で過ごすことになる。
元々体の弱かったディレイルの母親は、ディレイルを出産後、ますます体を壊し、ベッドでの生活を余儀なくされた。しかし、魔法騎士であることを何より誇りにしていた父親は、妻を見舞うことも幼い息子を気遣うことも殆どしなかった。久しぶりに父親が帰ってきたのは、ディレイルが一人で母親の葬儀を終えた後だった。
そんな父親に反発し、彼は母方の親族であったリーン先生に弟子入りした。母親を助けたくて医学書や薬学書を読んでいたディレイルは、最年少で国家薬学試験に合格し、リングドン家に認められて薬草園で働いている。自分のような絶望感を味わう人を1人でも減らしたいのだそうだ。
そんな話を聞いたらダメなんて言えない。
「ルード様。私の大好きなことが誰かの役に立つなんて嬉しいです。私にも先生がいるんですけど、ルード様さえよければ、先生の元で一緒に学びませんか?」
ルード様の家系が魔法騎士を出してきたなら彼にも高い魔法の素質があるはずだ。
私も一緒に学べたら嬉しい。
「デル。素晴らしい出会いに感謝しよう。」
リーン先生はルード様を優しい眼差しで見ていた。
「はい、先生。」
ルード様は私の方を向くともう一度改まって頭を下げる。
「あの、アルト嬢よろしくお願いします。」
私は了承の意味を込めて笑顔で返した。
「僕もお願いしようかな。」
私の向かいに座っていたウィルが徐ろに立ち上がり、私の隣に座る。
「え?」
「なんだか楽しそうだしね。それにこれから僕とリルは同級生になるんだよ。」
ウィルが同級生?
「え?ウィルもアルグリア学院に行くの?」
「うん。同じ魔法科だよ。魔法科はクラスが1つしかないから同じクラスだね。これからよろしく。」
初めて出来たお友達と同じ学校に通えるなんて!ますますアルグリア学院に通うのが楽しみになった。
私はこれから始まる毎日に自然と笑みが溢れた。
応接室にはラナとネルがお茶の準備をしてくれていた。リングドン家の従者が同行してこちらまで案内してくれたそうだ。
「リングドン家の皆様には本当に感謝申し上げます。何か皆様にはお返し出来ればよろしいのですが。」
応接室のソファに座り一息ついた私は、もう一度改めて感謝を伝える。リングドン様がいなければ、私はアリアを助けてあげられなかった。
「では、僕とお友達になってくれませんか?僕のことはウィルと呼んでくれると嬉しいです。アルト嬢のことはお名前でお呼びしてもいいですか?」
私の向かいに座ったリングドン様が照れたように、でも少し強引に提案してくる。
お友達。私に初めてのお友達が出来る。嬉しくて飛び跳ねてしまいそうだった。
「ぜひ!私のことはリルと。みんな私のことはリルと呼ぶんです。だからお友達にもリルと呼んで欲しいです。」
今すごく恥ずかしい。私の顔は真っ赤だろうけれど、初めてのお友達が出来たのだ。今ぐらい淑女じゃなくても許してもらおう。
私達はお互いを愛称で呼び合うことになり、敬語をやめることも約束した。
「うん。じゃあこれからよろしくねリル。」
砕けた口調になるとウィルもやっぱり年相応の男の子で、どこかあどけなく可愛い。
「こちらこそよろしくね。ウィル。」
まだ慣れないけれど、愛称で呼び合えるのが嬉しい。
ウィルとはこれから手紙のやり取りをすることを約束した。しかもリングドン家のお邸にも招待してくれるらしい。これからの王都生活の楽しみがまた1つ増えた。
ウィルとの話が落ち着くとすぐにリーン先生の質問が始まった。長身のリーン先生がこちらに迫る勢いで話してくるので少し怖い。
どうやら先生は、私が使った解析魔法がお気に召したらしい。確かに適切に薬を処方できる解析魔法は、薬師にとって喉から手が出るほど欲しいだろう。ただ先生は魔法士になれるほどの魔力はなく、私のように混合魔法は使えない。なるべく早くお父様の商会で魔道具化することを約束した。
「あのさ。俺に魔法教えてくれないかな?」
デルが躊躇いながらも私に話しかけてきた。
彼の名前は、ディレイル・ルード。漆黒の艶やかな髪に、同じ色の瞳を持つ落ち着いた雰囲気の美少年、年は15歳だそうだ。
彼は、ルード騎士爵家の1人息子で、ルード家は代々魔法騎士を輩出してきた。魔法騎士は多忙で、1年のほとんどを地方で過ごすことになる。
元々体の弱かったディレイルの母親は、ディレイルを出産後、ますます体を壊し、ベッドでの生活を余儀なくされた。しかし、魔法騎士であることを何より誇りにしていた父親は、妻を見舞うことも幼い息子を気遣うことも殆どしなかった。久しぶりに父親が帰ってきたのは、ディレイルが一人で母親の葬儀を終えた後だった。
そんな父親に反発し、彼は母方の親族であったリーン先生に弟子入りした。母親を助けたくて医学書や薬学書を読んでいたディレイルは、最年少で国家薬学試験に合格し、リングドン家に認められて薬草園で働いている。自分のような絶望感を味わう人を1人でも減らしたいのだそうだ。
そんな話を聞いたらダメなんて言えない。
「ルード様。私の大好きなことが誰かの役に立つなんて嬉しいです。私にも先生がいるんですけど、ルード様さえよければ、先生の元で一緒に学びませんか?」
ルード様の家系が魔法騎士を出してきたなら彼にも高い魔法の素質があるはずだ。
私も一緒に学べたら嬉しい。
「デル。素晴らしい出会いに感謝しよう。」
リーン先生はルード様を優しい眼差しで見ていた。
「はい、先生。」
ルード様は私の方を向くともう一度改まって頭を下げる。
「あの、アルト嬢よろしくお願いします。」
私は了承の意味を込めて笑顔で返した。
「僕もお願いしようかな。」
私の向かいに座っていたウィルが徐ろに立ち上がり、私の隣に座る。
「え?」
「なんだか楽しそうだしね。それにこれから僕とリルは同級生になるんだよ。」
ウィルが同級生?
「え?ウィルもアルグリア学院に行くの?」
「うん。同じ魔法科だよ。魔法科はクラスが1つしかないから同じクラスだね。これからよろしく。」
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私はこれから始まる毎日に自然と笑みが溢れた。
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