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*ウィルフレイ視点 1
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ちょっとした反抗心だった。僕は貴族の生活はあまり好きではない。本音を隠して笑顔を浮かべる兄達を見ていると特に思う。
だから兄達が通う貴族専用のレベルス学園ではなく、身分を問わない実力主義のアルグリア学院を受験した。
父は初めの内は難色を示していたが、合格通知が届くと、諦めたのか最後は入学を認めてくれた。
ある日、父に頼まれた仕事の帰り、ふと路地に目を向けると真紅の目が特徴的な孤児が暗い表情で立っていた。あの目の色ではこの国で生きにくいだろうと少し同情したが、興味もすぐ失せ、馬車へと向かった。
そんな僕の目の前を、銀色に輝く髪を靡かせた少女が横切った。
その少女は真っ直ぐにあの孤児の元に行き、あろうことか手を握った。
赤い瞳は悪魔の証。教会によって否定はされたが、それでも赤い瞳はこの国では忌避される。
我がアーレント王国では大人も子どもも知っているお話がある。ある日赤い目をした悪魔が王都の水源である湖に毒を放った。その水に触れた人々は病に蝕まれ、あっという間に死んでいったという実話を元にしたお話だ。
彼女はこの話を知らないのだろうか。
僕はどこか彼女が気になり、馬車をそのままにしてゆっくりと近づいていった。どうやら彼女は赤い目の孤児の後ろにいる病人を助けたいようだ。
「私の馬車を使ってください。」
興味本位で彼女の手助けを名乗り出る。
驚いたように彼女が振り返ると銀の髪が風を孕み光が踊る。でも僕が最も目を奪われたのは、夜空の色に金冠を抱く美しい彼女の瞳だった。
僕は従者に教会への連絡と我が家の専属薬師への依頼を頼んだ。先程仕事で会っていた2人ならまだ店にいるだろう。
彼女の侍女たちにも気を配るよう指示を出しておく。
その場に残った全員を馬車へと促し、彼女を直接エスコートする。少し照れた表情が可愛らしいと思った。
馬車が走り出すと僕たちは自己紹介をした。驚いたことに彼女は、あのアルト家のご令嬢だった。アルト家は爵位こそ子爵の下位爵位だが、国内一の大商会を持つ資産家だ。その商会も最近は魔道具開発で他国にまでその名が響き渡っている。薬草の一大産地である我が領地でも、商会が開発した温風機のおかげで今まで栽培できなかった熱帯地方の薬草も栽培可能となった。
そんな革新的な魔道具をここ数年発表し続けているアルト子爵家は社交界でも注目の的だった。しかもアルト子爵も夫人もその見目が麗しい。特に夫人はその人を惑わすほどの美しさから妖精姫と呼ばれていた。
そんなある時、誰が言い出したのか、アルト子爵家の一人娘が魔道具開発に関わっている天才だと噂されるようになった。
アルト家のご令嬢はまだ一度も公の場に姿を表してはいない。アルト子爵家が大事に大事にしまい込んでいる宝石。いつしかアルトの宝石姫と言われるようになった。
僕はこの噂を特に信じていなかった。僕と同じ歳の子が人々の生活を変えるようなことを出来るはずがないと。
しかし、この噂を裏付けるように彼女のアルグリア学院入学が決まった。主席宮廷魔法士の推薦を受けて。
僕の目の前に座る女の子がまさか噂の宝石姫だとは。
これは、退屈な毎日に飽き飽きしていた僕の運命を変える出会いなのだろうか。
そんな毎日が少しづつ変わっていくかもしれないと期待を込めて、僕は彼女に笑いかけた。
だから兄達が通う貴族専用のレベルス学園ではなく、身分を問わない実力主義のアルグリア学院を受験した。
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ある日、父に頼まれた仕事の帰り、ふと路地に目を向けると真紅の目が特徴的な孤児が暗い表情で立っていた。あの目の色ではこの国で生きにくいだろうと少し同情したが、興味もすぐ失せ、馬車へと向かった。
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僕はどこか彼女が気になり、馬車をそのままにしてゆっくりと近づいていった。どうやら彼女は赤い目の孤児の後ろにいる病人を助けたいようだ。
「私の馬車を使ってください。」
興味本位で彼女の手助けを名乗り出る。
驚いたように彼女が振り返ると銀の髪が風を孕み光が踊る。でも僕が最も目を奪われたのは、夜空の色に金冠を抱く美しい彼女の瞳だった。
僕は従者に教会への連絡と我が家の専属薬師への依頼を頼んだ。先程仕事で会っていた2人ならまだ店にいるだろう。
彼女の侍女たちにも気を配るよう指示を出しておく。
その場に残った全員を馬車へと促し、彼女を直接エスコートする。少し照れた表情が可愛らしいと思った。
馬車が走り出すと僕たちは自己紹介をした。驚いたことに彼女は、あのアルト家のご令嬢だった。アルト家は爵位こそ子爵の下位爵位だが、国内一の大商会を持つ資産家だ。その商会も最近は魔道具開発で他国にまでその名が響き渡っている。薬草の一大産地である我が領地でも、商会が開発した温風機のおかげで今まで栽培できなかった熱帯地方の薬草も栽培可能となった。
そんな革新的な魔道具をここ数年発表し続けているアルト子爵家は社交界でも注目の的だった。しかもアルト子爵も夫人もその見目が麗しい。特に夫人はその人を惑わすほどの美しさから妖精姫と呼ばれていた。
そんなある時、誰が言い出したのか、アルト子爵家の一人娘が魔道具開発に関わっている天才だと噂されるようになった。
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僕はこの噂を特に信じていなかった。僕と同じ歳の子が人々の生活を変えるようなことを出来るはずがないと。
しかし、この噂を裏付けるように彼女のアルグリア学院入学が決まった。主席宮廷魔法士の推薦を受けて。
僕の目の前に座る女の子がまさか噂の宝石姫だとは。
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