下剋上を始めます。これは私の復讐のお話

ハルイロ

文字の大きさ
226 / 308

*ベイルリーン公女視点

しおりを挟む
「こんな不味いお茶をわたくしに飲めというの!?」
お茶を持ってきた気弱そうな侍女に、思い切りカップを投げつける。床に蹲る不様な侍女の姿を見ても、わたくしの心は晴れない。

それもこれも、アーレント国王があのバカ女を聖女だなんて言ったせいよ!バカ女も調子に乗って、聖女を偽るなんて!


お父様が聖女と特別な関係を築くよう、命を出したのが、全ての始まりだったわ。わたくしとお兄様は、立場の弱いお母様のために頑張ったのよ。
でもまさか、こんな事になるなんて!
聖女がダリアじゃなくて、リルメリアの方だなんて、わたくしに分かるわけないでしょ!


そしてその結果、リルメリアを誘拐しようとしたバレント公族は捕らえられ、お父様とお母様はニセン王国の鉱山で強制労働、お兄様は国外追放となった。
わたくしは何とか逃げ出して、アズバンド王国に匿われているけれど、このわたくしがコソコソ隠れていなければいけないなんて!


「赦さないわ!絶対に赦さない!」
強く噛みすぎた爪から血の味がする。ボロボロになったわたくしの美しいはずの爪を見て、更なる怒りが沸いた。




「貴女、とっても惨めね。せっかく私が助けてあげたのに。」
ノックもせず、堂々とやってきたアマンディア様は、わたくしに見せつけるように最高級のドレスに身を包んでいた。


「アマンディア様、これは、その...。」

アマンディア様は、わたくしの横を通り過ぎ、蹲る侍女の傍に膝をついた。


「大丈夫?酷い事をされたわね。」
アマンディア様が、火傷で赤くなった侍女の頬に手を当てる。すると見る見るうちに綺麗な肌に戻った。

アマンディア様の見事な治癒魔法。
でも、この方が魔法を使う度に香る、甘ったるい匂いは苦手なのよね。
わたくしは、さり気なく袖で鼻を塞ぐ。


「王女様、ありがとうございます!ああ、本当に感謝致します。」
涙を流す侍女に、アマンディア様は聖母のような目を向けていた。

なんて気持ち悪い茶番。
わたくしは窓際の椅子に座って、溜息を吐いた。




「いい加減にしないと、追い出すわよ?お義母様が貴女を欲しがったから連れて来たけれど、今の貴女が本当に役に立つのかしら。」

悔しさからスカートを強く握りしめると、縫い目が嫌な音を立ててほつれた。
当て付けのように、わたくしにこんな安物のドレスを着せるなんて!


「役立たずはその内、ニセンに売られちゃうんじゃないかしら?」

「オーレリー王妃様は、わたくしに素晴らしい役割を下さるとおっしゃっていましたわ!」

「あはは、王妃とはいえ、所詮は元平民よ?しかも子供も産めないし。お父様は利用価値が無くなれば捨てるわよ。貴女も覚悟しておきなさいな。」



アマンディア様が出て行ったドアに、近くにあった花瓶を投げつける。

何なのよ、あの女!
あれが心優しいアズバンドの聖女ですって!?
あの女は自分以外の人間なんて、ゴミ程度にしか思ってないわよ!
ああ、腹が立つ!

全ての元凶の、ダリア、リルメリアも!ああ、憎い憎い!



目につく物をひたすら壊すと、少しだけ心が落ち着いた。
王妃を利用して、わたくしは必ず返り咲くの!その時は、絶対に復讐してやるわ!


落ち着くために、王妃から貰ったお茶をわたくし自ら淹れる。
この甘ったるい香りは、アマンディア王女を思い出すから好きではないのよね。でも、飲むと心も体も癒されるの。



大嫌いな甘い香りに包まれて、わたくしはゆっくりと瞳を閉じた。








名前変更しました
ベイリーグ→オーレリー


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

なぜ、私に関係あるのかしら?

シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」 彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。 そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。 「…レオンハルト・トレヴァントだ」 非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。 そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。 「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」 この判断によって、どうなるかなども考えずに… ※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。 ※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、 ※ 画像はAIにて作成しております

なんでそんなに婚約者が嫌いなのかと問われた殿下が、婚約者である私にわざわざ理由を聞きに来たんですけど。

下菊みこと
恋愛
侍従くんの一言でさくっと全部解決に向かうお話。 ご都合主義のハッピーエンド。 小説家になろう様でも投稿しています。

「おまえを愛することはない。名目上の妻、使用人として仕えろ」と言われましたが、あなたは誰ですか!?

kieiku
恋愛
いったい何が起こっているのでしょうか。式の当日、現れた男にめちゃくちゃなことを言われました。わたくし、この男と結婚するのですか……?

婚約破棄した令嬢の帰還を望む

基本二度寝
恋愛
王太子が発案したとされる事業は、始まる前から暗礁に乗り上げている。 実際の発案者は、王太子の元婚約者。 見た目の美しい令嬢と婚約したいがために、婚約を破棄したが、彼女がいなくなり有能と言われた王太子は、無能に転落した。 彼女のサポートなしではなにもできない男だった。 どうにか彼女を再び取り戻すため、王太子は妙案を思いつく。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

谷 優
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。 お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。 ただ、愛されたいと願った。 そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。 ◆恋愛要素は前半はありませんが、後半になるにつれて発展していきますのでご了承ください。

貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後

空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。 魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。 そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。 すると、キースの態度が豹変して……?

処理中です...