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傾く方へ。
涙でグチャグチャになった顔。
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「背中いたい…。」
私の上で荒い呼吸を整えている木内さんの肩越しに天井を見上げる。
キッチンの天井なんて初めて見た。
そりゃそうか。
こんな所で寝っ転がるのが初めてなんだから。
最中の自分を振り返る。
今日も今日とてとんでもない乱れっぷりだった気がする。
それは隣人が何度か壁を叩き、最終的には外へ出て行ってしまったくらいに激しいものだった。
隣室の扉が開く音がした瞬間は怒鳴り込んで来るのではないかと身構えたけれど、怒っている様な荒い足音が遠ざかって行った事で直ぐにどうでも良くなってしまった。
今となって見れば隣人は完全に被害者だ。
私は意図しないとはいえ、誰に対してもどんどんと加害者になっていく。
でももうどうでも良い。
木内さんと居られる時間が一瞬でもあるのなら、その時周囲からどう思われたって構わない。
大きく息を吸って長く吐く。
まだ速い心音がそれぞれの身体から響いている。
呼吸によって膨らむお腹と、速くてばらばらの鼓動が変則的で複雑なリズムを奏でていて。
それなのに何故かピッタリはまった時みたいにしっくりきて。
私は幸せに浸っていた。
「っ…あー。」
「んっんー。」
お風呂に浸かる時の様な幸福そうな声を出して木内さんは私の体内から抜け出した。
その微妙な刺激に私も唸ってしまう。
「まったりしてんなよ。」
彼は起き上がると私の手を引き立ち上がらせ、そのままベッドの方へと投げ飛ばした。
今日はいつになく乱暴だ。
何にそんな気が立っているのか。
ベッドに倒れ込んでいる私を見下ろし「全然治まんねぇ。」と呟いている。
それは性欲の事なのかそれとも怒りの事なのか…。
木内さんは上を向いたままのモノから雑にゴムを外すと適当にゴミ箱に投げ、新しいゴムの袋を破り捨てながらこちらへ向かって来た。
さっきはあれだけ幸福感に包まれ満足したと思っていたのに、興奮の覚めていない木内さんの姿を見ていたらまた欲しくなってきて気が逸る。
なにも隔てる事無く裸で抱き合いたい。
身体を起こし目の前まで来た木内さんのTシャツを脱がせると…。
全裸になった木内さんの左胸の先端のすぐ横。
そこにある痕が目に飛び込んできた。
小さな歯型。
グッと喉が閉まり鼻がツンと痛む。
「…凛さん…?」
理解した瞬間視界がぼやけ。
意識するより先に涙がボタボタと零れ出した。
当たり前だけれど、やっぱり凛さんとしてたんだ。
一昨日私を一人にして凛さんを抱いたんだ。
昨日もしたのかもしれない。
分かっていた。
はじめから私のものにならないって諦めている。
それでもこうやって目の当たりにしたら耐えられないんだと思い知らされる。
「うぅ…ぐっ…ず。」
「は?…なに泣いてんの?」
嗚咽を漏らして泣く私を冷たく突き放す声。
「自分だって…。」
そう吐き捨てて木内さんがまた私を突き飛ばした。
破く勢いでTシャツまで剥ぐと跨りのしかかる。
そして首の先程噛み付いていた辺りを物凄い力で摘んでギュッと抓り上げた。
「いっ…ああっ。」
「これ岡田くん?それとも違う男?」
「いたいよぉ、きうちさん。」
「嘘つけ、感じてる癖に。またエロい声出してさ。」
痛みでなのか、悲しくてなのか分からないまま涙が流れる。
「そいつは知ってんの?ユリが乱暴なのが好きだって。昨日はちゃんと虐めてもらえた。」
「ちがう…。いちやとは、してな、い!」
「やっぱ岡田君だったか。」
首から指が離れる。
「やっと消えた…。」
ふっと痛みが和らいでいく。
咄嗟に患部に手を充てると手首を捕まれ引き離された。
グッと顔が近付き噛み跡を今度は優しく舐めながら囁やかれる。
「やってないならこんなとこマーキングさせんな。」
もう頭の中はグチャグチャになっていた。
自分は凛さんと離れられない癖に。
自分だって凛さんとしている癖に。
どうして私に独占欲を持つの?
私なんか忘れて凛さんが戻ってきた事をもっと喜べば良い。
どうして私に会いに来たの?
言葉にならない想いが噴出する様に涙が溢れ続ける。
私は懇親の力で起き上がると逆に木内さんをベッドへ押し倒した。
上に跨り入口に先を充てがう。
「木内さんの好きにはさせないから!」
涙でグチャグチャになった顔で睨み付ける。
私の宣言を嘲笑うように木内さんは微笑んでいた。
私の上で荒い呼吸を整えている木内さんの肩越しに天井を見上げる。
キッチンの天井なんて初めて見た。
そりゃそうか。
こんな所で寝っ転がるのが初めてなんだから。
最中の自分を振り返る。
今日も今日とてとんでもない乱れっぷりだった気がする。
それは隣人が何度か壁を叩き、最終的には外へ出て行ってしまったくらいに激しいものだった。
隣室の扉が開く音がした瞬間は怒鳴り込んで来るのではないかと身構えたけれど、怒っている様な荒い足音が遠ざかって行った事で直ぐにどうでも良くなってしまった。
今となって見れば隣人は完全に被害者だ。
私は意図しないとはいえ、誰に対してもどんどんと加害者になっていく。
でももうどうでも良い。
木内さんと居られる時間が一瞬でもあるのなら、その時周囲からどう思われたって構わない。
大きく息を吸って長く吐く。
まだ速い心音がそれぞれの身体から響いている。
呼吸によって膨らむお腹と、速くてばらばらの鼓動が変則的で複雑なリズムを奏でていて。
それなのに何故かピッタリはまった時みたいにしっくりきて。
私は幸せに浸っていた。
「っ…あー。」
「んっんー。」
お風呂に浸かる時の様な幸福そうな声を出して木内さんは私の体内から抜け出した。
その微妙な刺激に私も唸ってしまう。
「まったりしてんなよ。」
彼は起き上がると私の手を引き立ち上がらせ、そのままベッドの方へと投げ飛ばした。
今日はいつになく乱暴だ。
何にそんな気が立っているのか。
ベッドに倒れ込んでいる私を見下ろし「全然治まんねぇ。」と呟いている。
それは性欲の事なのかそれとも怒りの事なのか…。
木内さんは上を向いたままのモノから雑にゴムを外すと適当にゴミ箱に投げ、新しいゴムの袋を破り捨てながらこちらへ向かって来た。
さっきはあれだけ幸福感に包まれ満足したと思っていたのに、興奮の覚めていない木内さんの姿を見ていたらまた欲しくなってきて気が逸る。
なにも隔てる事無く裸で抱き合いたい。
身体を起こし目の前まで来た木内さんのTシャツを脱がせると…。
全裸になった木内さんの左胸の先端のすぐ横。
そこにある痕が目に飛び込んできた。
小さな歯型。
グッと喉が閉まり鼻がツンと痛む。
「…凛さん…?」
理解した瞬間視界がぼやけ。
意識するより先に涙がボタボタと零れ出した。
当たり前だけれど、やっぱり凛さんとしてたんだ。
一昨日私を一人にして凛さんを抱いたんだ。
昨日もしたのかもしれない。
分かっていた。
はじめから私のものにならないって諦めている。
それでもこうやって目の当たりにしたら耐えられないんだと思い知らされる。
「うぅ…ぐっ…ず。」
「は?…なに泣いてんの?」
嗚咽を漏らして泣く私を冷たく突き放す声。
「自分だって…。」
そう吐き捨てて木内さんがまた私を突き飛ばした。
破く勢いでTシャツまで剥ぐと跨りのしかかる。
そして首の先程噛み付いていた辺りを物凄い力で摘んでギュッと抓り上げた。
「いっ…ああっ。」
「これ岡田くん?それとも違う男?」
「いたいよぉ、きうちさん。」
「嘘つけ、感じてる癖に。またエロい声出してさ。」
痛みでなのか、悲しくてなのか分からないまま涙が流れる。
「そいつは知ってんの?ユリが乱暴なのが好きだって。昨日はちゃんと虐めてもらえた。」
「ちがう…。いちやとは、してな、い!」
「やっぱ岡田君だったか。」
首から指が離れる。
「やっと消えた…。」
ふっと痛みが和らいでいく。
咄嗟に患部に手を充てると手首を捕まれ引き離された。
グッと顔が近付き噛み跡を今度は優しく舐めながら囁やかれる。
「やってないならこんなとこマーキングさせんな。」
もう頭の中はグチャグチャになっていた。
自分は凛さんと離れられない癖に。
自分だって凛さんとしている癖に。
どうして私に独占欲を持つの?
私なんか忘れて凛さんが戻ってきた事をもっと喜べば良い。
どうして私に会いに来たの?
言葉にならない想いが噴出する様に涙が溢れ続ける。
私は懇親の力で起き上がると逆に木内さんをベッドへ押し倒した。
上に跨り入口に先を充てがう。
「木内さんの好きにはさせないから!」
涙でグチャグチャになった顔で睨み付ける。
私の宣言を嘲笑うように木内さんは微笑んでいた。
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