シリーズ朝日勝美(第一シリーズ)

増田朋美

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捨てられた女

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日曜の朝。勝美の家。勝美が、大好物の外郎を食べながらテレビを見て
いる。
島子「いつまでもごろごろしてないで、外へ散歩にでも出かけたらどう
なの?」
勝美「うるさいな。日ごろからストレスたまってるんだから、ごろごろ
しているのが体に一番良いんだ。」
島子「ほんとに、これで医者が務まるのかしらね。なるほど、嫁が来な
いわけだわ。」
と、固定電話が鳴る。
勝美「出てよ。」
島子「はいはい、(受話器を取り)はい、朝日でございます。あ、今呼び
ますね。勝美、川島さんから。」
勝美「龍一から?携帯を鳴らしてくれれば良いのに。」
島子「とにかく、出なさい。川島さん、気を悪くするわよ。」
勝美「はいよ。」
と、立ち上がり、受話器を取る。
勝美「もしもし、龍一?何で携帯にかけてくれないんだ。お陰で母ちゃ
んに叱られたよ。」
龍一の声「もう、五回以上かけたぞ。かばんの中をみてみろ。最後にか
けたら、もう、電池が切れてた。」
勝美「そんなことより、早く用事を言え。ああ、若い女性が自殺未遂?
そりゃ大変だ。凶器は包丁ね。手首を切ったのか。じゃあ、森病院は、
外科処置ができないから、日曜日だし、救命センターにいってからこっ
ちに来てもらうように連絡してくれ。」
龍一の声「そんなことはとっくに伝えたよ。六針縫ったそうだ。もう向
かっているだろうから、お前も早く来い。」
勝美「わかったよ。すぐ行く。」
と、電話を切る。
勝美「そういうわけで、母ちゃん。ちょっと行ってくるよ。」
島子「しっかりやって頂戴ね。あんたは医者なんだから。」
勝美「はいよ。」

森病院。日曜のため、面会に来ている家族の車しか置かれていなかった
ため、空いていた。病院の証明玄関に一番近いところに、一台の軽自動
車が置かれていた。
勝美は、駐車場を横切って、正面玄関から病院に入った。龍一が、患者
と、その家族の側に付き添っていた。
勝美「すみません、遅くなりました。」
龍一「このひとだ。」
と、女性に目配せした。
勝美「精神科医の朝日勝美です。とりあえず診察室へ参りましょうか。」
全員、診察室に入る。患者は若い女性で、特にけばけばしい格好をして
いるわけでもなく、変に地味すぎることもない。寧ろ、勝美が心配に思
ったのは、彼女の母親のほうだった。彼女の肩に手をかけて、ぼろぼろ
と涙をこぼしている。父親は、どうしていいかわからない、という表情
をしていた。
勝美「お名前をどうぞ。」
父親「はい、西崎菊子といいます。私は父親の西崎康、妻は西崎月子で
す。」
勝美「ご家族は、三人だけですか?」
康「いえ、あと一人娘がいます。菊子と六年はなれた姉で、名は西崎規
子です。」
勝美「お姉さんは、今日はご不在ですか?」
康「いえ、彼女は看護師として働いています。今日は丁度勤務にあたる
日でして。」
勝美「わかりました。確認のため、傷口を見せてもらってもいいですか。
あ、もし、支障があるのならやめますけど。」
康「菊子、先生に腕を出しなさい。」
菊子「はい!」
と、腕を診察台にドスン!と置く。まだ応急処置の段階なので、止血で
きただけの状態であった。生々しい傷だった。
勝美「あれ、これはなんだろう?」
と、ある物体を指差す。傷の近くに、変な形のこぶができていた。
菊子「単にぶつけただけです。」
勝美「へえ、どこに?ぶつかったなら、もっと硬いこぶができると思う
んだけどなあ。」
菊子「それだけです!」
康「菊子、先生をなんだと思ってる?偉い先生の言うことだ。間違って
はいないぞ。」
勝美「ちょっと、触って見ても良いかな?」
菊子「仕方ありませんね。」
勝美はそのこぶに触れてみる。それは全く硬くなく、ゴムのような、ブ
ニャとしているものだった。
康「どうですか、先生。」
勝美「すぐ性病科へ行って!他のところにはない?こういう感じの、」
菊子「腕に二つあるだけです。」
勝美「腕に二つでよかったねえ!他に広がったらえらいこっちゃ。」
月子「い、一体、何があったというのですか?性病科なんて、遊女じゃ
あるまいし、、、。」
龍一「僕は医者ではありませんが、それは梅毒というものじゃないかと。」
勝美「たしか、こういうこぶのことをゴム腫と言っていたような。あ、
そんなに悲観しなくても良いですよ。昔ではありませんから。」
龍一「まあ、これのせいで亡くなった人は、かつては多かったみたいで
すけど、今はそうじゃありません。今日は日曜だから、どこもやってい
ないけど、明日あたりに行ってみてください。」
菊子「嫌ですよ!そんな穢い科目なんて!それに、どうして私が自殺す
るのを認めてくれないんです?こんな穢い女なんてさっさと死ねばいい
んじゃないんですか?」
月子「何馬鹿なこと言ってるの!お母さんは、こんな病気にかかった娘
を放置することなんてとてもできないのよ!」
龍一「喧嘩は、お宅に帰ってからやってくださいね。梅毒って、ただの
性病とは訳が違うんだ。そんなに嫌なら、あした、うちのスタッフに迎
えに行かせますから、必ず受診してください。」
菊子「もう、、、。」
勝美「お年はおいくつですか?」
菊子「29です。」
勝美「へえ、若いねえ!それではなおさらだ。梅毒にもってかれちゃ、
これからの青春時代、全部なくしちゃいますよ。そのためにも、すぐに、
受診することです。」
康「わかりました。ありがとうございます。」
勝美「じゃあ、本日はここまでにしましょう。明日うちのスタッフが、
迎えに参りますので。」
月子「ありがとうございます、、、。」
勝美「じゃあ、明日。きっとですよ!」
菊子「はい!」
三人は診察室を出て、軽自動車に乗り込む。
勝美「今時、梅毒にかかるとは珍しい女だな。おそらく、ピンサロとか
ソープランドとか、そういう女だ。」
龍一「確かに職業病みたいなところはあるな。でも、そのような雰囲気
は何もなかったぞ。」
勝美「えっ、じゃあどうして?」
龍一「さあね。それはこれから調べていくことだろうよ。」
勝美「そうだな。」
と、大きなため息をついた。

翌日。朗がつきそって、菊子は性病科山口病院を受診した。
山口医師「これは明らかに梅毒ですね。しかも、これ、専門用語でゴム
腫というんだけど、これができたのだから、かなり進んでますね。第三
期に突入しているのかな。」
菊子「一体、これにかかると何が起こるんです?」
山口医師「梅毒というのはね、現在ですと性交渉や、キスで感染する物
なんですが、パートナーと付き合って何年になるんです?」
菊子「話さなきゃいけませんか?」
山口医師「元彼とかいたのかな?」
菊子「はい。でも、すぐに別れるの繰り返しでした。」
山口医師「じゃあ、全身に変なぶつぶつができたりしなかった?」
菊子「そういえば、熱が出てぶつぶつができたときがありましたけど、
一月くらいで消えてしまいましたから、単にインフルエンザとかそうい
うものなのかなと思い、放置していましたけど。」
山口医師「なるほど。そこで性病科を受診していれば、こうはならなかっ
たでしょうね。パートナーを連れて、もう一度来て頂戴。貴方は、医学的
にいったら、梅毒の第三期まで突入しかけていたところだったのよ。もし
そのまま放置して、第四期に突入すると、認知症のようになってきて、死
んでしまう可能性だってあるわ。そこまで、放置したパートナーにも責任
があると思うから。」
朗「じゃあ、もう治らないんですか?」
山口医師「いいえ、ペニシリンでちゃんと治るから大丈夫。第三期でも、
半年ぐらい飲んでいれば大丈夫よ。ゴム腫や発疹の跡は残るかもしれない
けど、命を奪われるよりは良いわ。」
朗「良かったね!菊子さん!」
菊子「何で、、、。何で私が楽になるきっかけを皆もっていくの!」
朗「持っていくって、、、。」
菊子「これ以上苦しみを与えないでよ!あんなに傷ついたのに、さらに罪
を押し付けるなんて!」
朗「傷ついたって何が?だって、認知症のようになったらどれだけ辛いか、」
菊子「いいえ、そんなことないわ!そのほうが、物忘れができるから、前
よりさらに楽になるんじゃないかしら!」
山口医師「菊子さん!」
菊子「もう、何でよ!何でよ!邪魔しないで死なせてよ!終わりにしてよ
!終わりにさせて頂戴よ!何でよ!何でみんな終わりにさせてくれないの
!自分の人生なんだから、自分で終わりにしても良いじゃない!子供じゃ
ないんだし!」
山口医師が、携帯電話をそっとダイヤルする。朗は泣き叫ぶ彼女を捕まえ、
足を蹴られるのに耐えながら、じっと泣いている。
数分後、救急車がやってくる。朗は、彼女をそれに乗せ、森病院に回して
くれと告げ、自分も乗り込む。救急車はけたたましい音を立てて走り出す。

森病院の保護室。菊子は麻酔薬で眠ってしまっている。廊下で、康と月子
が勝美と話している。
勝美「状態が落ち着くまで、医療保護入院とします。今回、僕もつきそえ
ば良かったんです。本当に大変なミスでした。もうしわけありません!」
と、一つしかない腕を床につけて謝罪する。
康「いえ、先生のお陰で、私たちは娘の真実を聞くことができました。私
たちも、しっかり娘と向き合って、再び楽しんで生きてくれるように、努
力致します。」
川口がやってくる。
川口「先生、西崎規子さんという方が、お見えになっているのですが。」
勝美「西崎規子?もしかして菊子さんの?」
月子「ああ、規子が来てくれたのね、、、。」
勝美「お姉さんですね。通してあげてください。」
川口「わかりました。どうぞ。先生もいいそうです。」
声「はい、、、。」
と、同時に中年の女性が入ってくる。
康「ああ、規子。来てくれたのか。」
と、言われた女性は、いかにも聡明で、真面目そうな顔つきだった。どこ
か幼さの残る、菊子とは違い、大人っぽい雰囲気だった。
月子「あんたは、正常でよかったわ。二人とも、異常だったら、私、この
世にはいられませんから。」
規子「お母さん、そんなことは言わなくて良いから、それより菊子はどう
なの?あの子が梅毒になったって言うから急いできたのよ。」
勝美「どこで働いているんですか?」
規子「町田市です。東京の。」
勝美「そんなに遠くですか!それは大変だ。こちらの方が申し訳ないです。」
月子「もう、明日で帰るの?」
規子「ううん、菊子がちゃんと良くなるまで、暫く富士にいるわ。有給も
いっぱい余ってるから、全部使用して来たわ。」
月子「よかった、、、。」
規子「お母さん、それより菊子は?」
康「ああ、性病科で間違いなく梅毒と診断されたそうだ。昔は怖い病気の
一つだったようだが、今はいい薬も沢山あるようだし、そんなに悲観する
必要はなさそうだよ。」
規子「でも、どうしてあの子が梅毒に?誰か質の悪い男と付き合っていた
のかしら。それとも売春とか。」
康「そこは私たちも良くわからないんだ。」
規子「夜遊びとかしてた?」
月子「規子、菊子のことはあとでゆっくり話すから、とりあえずはうちに
いておくれ。お母さんは、あんただけが頼りなのよ。」
勝美「お母さん、そんなこといってはだめですよ。菊子さんだって大事な
娘さんですから。規子さんだけが娘さんではありません。」
月子「そうなんですけど、私は、菊子がこんな汚らしい病気にかかかって
いたことが許せないんです!」
規子「お母さん、何てこと言うの!」
勝美「もう、喧嘩はあとでしてください!梅毒のことはちゃんと治ります
から心配はないですよ。でもね、彼女は自殺未遂までやらかしたわけです
から、医学的なことはできても、家族以上に効果のある薬は、心の病気の
場合、存在しませんから、しっかり話しあいをしてきてくださいね!」
康「もうしわけありません。朝日先生。じゃあ、一旦切り上げて、帰りま
す。規子、月子、帰るぞ。」
規子「ほら、お母さん、帰るわよ!」
と、母を支えながら、娘は保護室を出て行った。父もそれに続いた。
川口「はあ、どちらがお母さんで、どちらが娘なのか、わからないくらい
ですね。」
勝美「今多いよな。ああいう親子って。友達みたいなお母さんってのも、
悪いことではないけれど、立場が逆転している親子関係は、問題がある。」
川口「そうね。」
二人、大きなため息をつく。

翌日、家族療法のため、規子と月子が森病院にやってきた。
月子「主人は仕事のため、今日はこれないです。申し訳ありません。」
三千代「わかりました。お父様がいらっしゃると、よりよい結果が得られ
るのですが、それでは仕方ありません。じゃあ、私の方からいくつか質問
をします。わからないことは、わからないと答えてくだされば、それで構
わないので、正直に答えてくださいね。」
月子「はい、、、。」
規子「わかりました。」
三千代「では、最初の質問です。菊子さんはどんな職業についていました
か?」
月子「今は、製紙会社の事務員です。」
三千代「勤務態度はどうでしたか?」
月子「一度も、仕事を休んだことはないし、上司からもほめてもらってい
たそうです。」
三千代「どこの製紙会社ですか?」
月子「山協です。」
規子「あれ、大昭和じゃなかった?私には、大昭和で働いていると言って
いましたよ。時々、菊子とは、メールをやり取りしていたのですが、あの
子はそう言っていました。私も、あのくらいの大きな会社であれば、あの
子も採用してもらえたのかな、と、喜んでいましたけど。」
月子「違うのよ。大昭和製紙には、半年位務めて、やめたの。」
規子「えっ、そんなこと、聞いたことないわ。」
月子「大昭和をやめたあと、コンビニの店員をしたり、牛乳配達をしたり、
今までに転職を十二回しているわ。長くて半年しか続かない。一ヶ月もも
たなかった事もあったのよ。」
規子「そんなことがあったって、何で言ってくれなかったの?もし、菊子
が悩んでいたら、姉の私が相談に乗ったって良かったし、もし、住む場所
に困るようであれば、私のマンションに空き部屋があるから、そこを紹介
したってよかったわ。」
月子「でも、それはしないでって、菊子に言われていたから。」
規子「お母さんは、そういうところが、、、。」
三千代「なんだかすごくいさかいがあったようですね。で、きたない話に
なってしまいますが、菊子さんは、ピンクサロンとか、ソープランドで働
いたことは、、、。」
月子「いいえ、それは一回もありません!それだけは断言できます!」
三千代「どうしてです?」
月子「私たちは、規子にも、菊子にも同じような教育を受けさせてきたん
です。二人ともおなじ中学、高校を受験させたんですから!」
三千代「どこの学校ですか?」
月子「ええ、富士野中学校、高等学校です。」
三千代「ああ、あのお嬢様学校と呼ばれているところですか?」
月子「ええ、もちろんですよ!」
三千代「どうして二人とも同じにしたのですか?」
月子「二人とも、あそこへ通わせれば、幸せな人生を送れると思ったから
です。事実、規子はそこから有名な看護大学へ進みました。部活も充実し
ていたみたいで、規子は毎日がとても楽しそうでした。だから、菊子にも
同じ生活をさせてやりたくて、同じところを受験させたわけですよ。菊子
は、大学進学は望まず、働きたいと言い出したので、教師の先生の計らい
で、大昭和製紙に就職することができたんです!それなのに、仕事が続か
なくて、十二回も転職して!私たちのしてやったことをあの子は皆、棒に
ふったということになるわ!」
三千代「まあ、人それぞれですからね。きっと、菊子さんにも、いい仕事
が見つかるときは来ますよ。それまでの辛抱です。」
月子「はい、何年耐えれば良いのか、、、。」
規子「お母さん泣かないで。何も協力しなかった私も悪かったわ。菊子の
就職活動、私も手伝うから。自分を責めないでよ!」
三千代「ほんと、規子さんはいい御姉さんですね。なんだか、すごいな。」
規子「いいんです。母はいつもこうでしたから。だったら私がしっかりし
なきゃ。」
三千代「えらいですね。」

ナースステイション
勝美「へえ!すごいお姉さんがいたんだね。それに、十二回転職したけど、
今は、製紙会社で事務をやっているのか。」
慎一「勝美は、何をしていると思ったんだ?」
勝美「いや、梅毒にかかるとなれば、高級娼婦や、花柳界の人かと。」
慎一「そうではないと、母親が宣言しているんだから、それは違うんじゃ
ないの?」
勝美「でもさ、何で第三期まで放置したんだ?それ以前に症状がでて、辛
くなかったのかなあ。」
慎一「だから、性病科で話した通り、風邪と勘違いしたんだよ。それだけ
だよ。」
勝美「うーん、風邪っていえるのかなあ。」
慎一「お前は医者だから、病名沢山知っているから、それをいえるんだよ。
でも、一般の人たちには、それはわからないのが普通さ。」
龍一「御姉さんが原因って事もないわけではないと思うよ。」
勝美「へ?どういうこと?」
龍一「お姉さんの存在から逃げたかったのかも知れないよ。確かに表の顔
では、製紙会社の社員だったかもしれないが、今の風俗店は結構早くから
営業しているらしいから。」
勝美「そうなのか?」
龍一「まあ、そうらしいよ。確証がほしいなら、紘一君に調べてもらおう。」
と、スマートフォンを取り出して、メールを打つ。

翌日。富士警察署。
電話が鳴っている。
受付「はい、刑事課です。はい、わかりました。すぐ参ります。」
久保「どうしたんですか?」
受付「ええ、男性の撲殺死体が発見されたそうです。」
久保「すぐ行きます!」

現場。桜の木の下で、男性が倒れていた。凶器の金属バットもすぐ側に落
ちていた。
三田「今回は早く犯人がつかまりそうですね。凶器がこんな近くにあるん
ですから。ねえ、警視。」
久保「それよりも、被害者の名前を聞かなくてはなりません。」
刑事「はい、杉田清。年は四十六です。死因は、後頭部を強打されたこと
による脳挫傷。それ以外にも全身のいたるところに殴られたあざがありま
す。」
久保「職業はなんですか?」
刑事「はい、この近くの通信販売会社で、営業をしていたそうです。」
久保「現金を取られたとかはありますか?」
刑事「はい、それが財布には手を出されておりません。現金も名刺も全部
のこっています。なので、それが目的の犯行じゃありませんね。しかし、
このような残酷な殺し方ですと、相当うらみのある者の犯行じゃないかな。」
三田「こんなところで立ち話しても時間の無駄です。早く、犯人を捜しま
しょう。物取りでもないし、凶器だってすぐあるんですから、すぐに解決
させてしまいましょうね。警視。」
久保「いや、簡単であっても。きちんと捜査しなければなりませんよ。」
三田「はいはい。これだからキャリアってのはいやなんだ。」

森病院。待合室。テレビが付いている。
アナウンス「今日、静岡県富士市にて、男性の遺体が見つかりました。死
亡したのは、会社員の杉田清さんと断定されています。財布などが荒され
ていないことから、現金目的の犯行ではないと思われますが、二十五箇所
に殴られた跡があり、警察では殺人事件として捜査しています、、、。」
患者「へえ、金が目的ではないのに、二十五箇所を叩かれるとは、よっぽ
どうらんだ犯行だったんだろうな。」
患者「何か別れ話のもつれとかかな。」
患者「そうだなあ。今時そういう事件は多いからな。」

久保と三田は、あるビルの一室に入る。布団を通信販売している小規模な
企業である。
社長の案内で二人は応接室に。
社長「えっ!やはり杉田さんは殺されてしまったのですか!何かの間違い
であってほしいという思いがどうしても抜けませんでしたが、、、。」
と、めがねを取って男泣きに泣く。
三田「社長さん、泣かれては困ります。これから証言してもらうんですか
ら、泣かないで下さい。」
社長「いや、、、あんな有能な社員を亡くすとは、これからどうしたら良
いのでしょう。私は独身ですので、後継者にしようと思っていたくらいで
すよ。」
三田「勤務態度なんかに、問題はありませんでしたか?」
社長「いや、全然ありません。今時、あんなに真面目な社員はおりません
でした。時間も守り、服装もきちんとしていたし、営業成績もよかったし。
ほかの社員は、偉いなってほめてました。」
三田「契約先でトラブルになったことはありませんでしたか?」
社長「それはありません。苦情が来たことは一回もないですから。」
三田「私生活では?」
社長「いや、恋愛をしたことは一切ないそうです。」
三田「へえ、そんな真面目な人であれば、だれか女性が寄ってくるもんで
すけどね。」
久保「三田君、個人的な価値観を持ち出してはいけません。」
三田「はいはい、わかりましたよ!で、」
久保「他の社員からの評価はどんな感じでしたか?」
三田「誰か、妬んでいる人もいたでしょうな。清水に魚すまずっていいま
すし。」
社長「いや、うちは従業員が五人しかいませんし、最年少は彼でしたから、
彼のことは皆、ほめていましたね。今時の若者には珍しいって。」
三田「今時の若者ね。年寄りばかりの企業なんですか。お宅。」
社長「はい。再就職で使う人が多いのです。」
三田「そんな処に、何で彼が就職したんだろう。若者は年寄りを嫌うもの
ですよ。」
久保「三田君、少しいいすぎですよ。慎みなさい。」
三田「警視がのんびり過ぎるんじゃありませんか?」
久保「これは命令です。」
三田「はい、、、。」
と、頭をかく。
久保の携帯電話が鳴る。
久保「はい、久保です。あ、あ、そうですか。わかりました。ではすぐ行
きますので。」
と、電話を切り、
久保「行きましょう。」
三田「どこへ行くんですか、警視。」
久保「杉田清のアパートです。」

清のアパート。ちいさなワンルームだが、綺麗なつくりになっている。す
でに家具類は処分されていて、部屋は空き家である。管理人に鍵を開けて
もらい、二人は中に入る。

森病院。談話室で、昼食を食べている勝美。
川口「先生、正面玄関に刑事さんが、又来ました。」
勝美「又かよ。今度は何かな。」
川口「はい、西崎菊子さんのことでお話があるそうです。」
勝美「西崎菊子!すぐ行きます!」
と、正面玄関に突っ走っていく。
勝美「西崎菊子がどうしたって?」
久保「ああ、先生。今日参りましたのは、ある事件を捜査するためです。」
勝美「それくらいわかってますよ。」
久保「実は、杉田清という男性が殺害されました。職業は会社員です。で、
今回僕たちが調べているのは、」
三田「警視、もったいぶらないでください。清のマンションから、西崎菊子
と写っている写真が見つかったんです。そして、清のスマートフォンを解析
したところですね、二人で性病科山口病院へ行っていることがわかりました。
だから、その事情を、西崎菊子が知っているのではないかと、思いまして。」
久保「三田君、事実に脚色してはいけません。性病科山口病院へは、予約を
とっただけで、実際に行ったかどうかはまだ不明ですよ!」
三田「行ってるんじゃないですか?」
勝美「構いませんよ、僕らが山口病院に聞けばいいんですから!それにして
も三田さん、うちの患者を勝手に容疑者にしないで貰いたいですね。何だか
今日は馬鹿に急いでいるように見えますよ!」
久保「ほら、片腕先生も言われているじゃないですか。」
三田「はいはい、あーあ、この事件ではついていないな、、、。」

富士野中学校、高等学校。名前からすると別のようだが、同じ敷地内に、二
つの建物が建っている。
龍之介「失礼いたします。」
と、校長室に入る。
校長「学校心理士さんね。本校の何を調べているのですか?」
龍之介「はい、西崎規子、その妹の菊子に対して調べているのです。」
校長「ああ、あの二人ですか。あの二人ほど本校で有名になったものはいま
せんね。」
龍之介「有名になった、とは?」
校長「はい、あの二人は、天と地の差、いや、貧富の差といわれるくらい性
格も成績も違っていたんですよ。ご存知の通り、本校は公立ではありません
から、教職員の異動等も殆どありません。だから姉の規子さんを誰もがしっ
ていたんです。妹の菊子さんが入学して来たとき、私たちは、その違いに驚
きを隠せませんでしたね。」
龍之介「姉妹といっても、能力のかなり違う例は沢山ありますよ。」
校長「そうですな。まあ、それもあるんでしょうが、」
龍之介「具体的にどう違っていたのです?」
校長「はい、規子さんは、常にトップクラスの成績を保持していて、全国模
試でも高得点を取っていました。彼女は、常に自慢の生徒でしたよ。生徒会
長なんかもしていましたしね。まあ、運動が少し苦手なようでしたが、本校
の名誉を上げるために、大活躍をしたといえますね。しかし、菊子さんのほ
うは、大変なおてんばでして、本当に規子さんの姉妹なのか、目を疑ったほ
どでした。他の教師たちも、規子さんのことを覚えていますから、何かにつ
けて、注意をしたんですが、菊子さんは結局治りませんでしたね。」
龍之介「これだから。学校は嫌なんだ。何でもそうやって成績で片付けるか
ら、そのせいで、どれだけの生徒が傷ついているとお思いですか?まあ、私
立学校だし、少子化の影響もあるとは思いますが、成績だけで何でも決めて
しまうのは、やめてもらいたいですね。本当に!」
校長「はあ、学校心理士さんは、学校の援助をする仕事ではないのですか?」
龍之介「違いますよ。まあ、一言で言えば、文句を言うことです。こんな資
格ができるなんて、日本の教育は腐敗を極めているということでしょう。僕
も、子供の頃は、学校なんて大嫌いでしたからね。」
校長「不思議な人ですな。」
龍之介「はい。でも、そう定義されております。僕からのお願いですが、大
人の事情に生徒を巻き込まないで貰いたいものです!失礼します!」
と、頭も下げずに校長室を出てしまう。

森病院談話室。
勝美「天と地の差?はあ、本当に酷い話だ。聞き込みをありがとう。」
慎一「規子さんが優秀すぎたのかなあ。」
勝美「それに比べられたら、妹さんも辛いよな。だって、姉妹だもん。鋏で
切ることだってできないんだしね。」
慎一「しかし、そんなに能力が違っていたのかな。一般的に言って、上の子
がおとなしくて、下の子が明るいってのは良くあることだと思うんだけど。」
龍之介「そうですね。確かに好きな食べ物でさえも、全然違いますしね。僕
は、思うんですけど、学校って、わざとおおっぴらに表現することがありま
すよね。生徒を統率させるにはそうしなければならないときもありますけど、
あんまり大きくさせてしまうと、かえって傷つくこともありますよ。」
勝美「学校での様子はわかったが、家ではどうだったんだろう。」
慎一「ああ、それも調べる必要あるかもな。仮屋薗さんに頼もうか?」
勝美「そうだな、他の人にも聞かなきゃだめだよ。」

一方。紘一は、清の職場を訪問していた。社長が言ったとおり、社員は高齢
者が占めていた。
紘一「お忙しいなか、のこのこ来てしまって申し訳ありません。どうしても、
清さんのことで、聞きたいことがあったんです。」
社員「あの、そのことなんですが、昨日もここへ刑事さんが来て、いろいろ
聞いていかれましたが、、、。」
紘一「いえ、僕は警察関係ではありません。森病院の者です。西崎菊子とい
う、女性の患者さんについて、調べているだけなんです。」
社員「西崎菊子!ああ、清さんをこの会社から盗った女ですね。」
紘一「盗った?どういうことですか?」
社員「刑事さんから聞きました。清さんと性的な関係を持ったばかりか、清
さんに、梅毒まで、移したって!」
紘一「えっ、そんなこと知りませんよ。あ、」
社員「いいえ、だって、清さんがその女に性病科に行こうと説明した翌日に
殺されていたって刑事さんが言っていましたよ。」
紘一「ああ、三田さんだな。あのですね、性病科に行こうと予約をしたのは、
間違いありません。でも、清さんは梅毒を移されたということは多分ないと
思いますよ。」
社員「まあ、若者だからね。一度くらいの恋愛はしているだろうし。それに、
彼はこの会社にわざわざ入るなんて、もしかしたら罪滅ぼしにしたかったの
かもしれないよ。」
社員「清さんがそんなことするはずがないじゃない!私は絶対そんなことは
ないと思う!」
社員「でもさ、今時の子は、バツ一だって当たり前だし、そのような女もた
くさんいるんだから、もしかしたら、二人はそういう関係だったのかもよ。」
社員「いいえ、そんなことないよ!それなら、絶対にこの会社には入ってこ
ないよ。」
社員「例えばだよ、遊郭にはまって、借金をしていたとか、あったんじゃな
いの?今時の若者はそういうことも、平気でやるからね。」
社員「社長も寝込んじゃったし、私たちが何とかしていくしかないよ。今の
若者は他人を平気で騙すし、罪の意識も薄い子が多いんだから。それなのに、
ちょっとしたことですぐ躓いて、それを私らのせいにする子がなんと多いこ
と!私ら年よりは、泣き寝入りするしかないんだから。人の意見も聞くよう
なことさえできない子が、何で社会生活ができるというのかねえ。」
紘一「もう!若者の悪口は言わないで下さい!もしもその言葉を聞かされた
だけで、爆弾でも仕掛けられたらどうするんです?そうしたら、今の若者は
だめだではなく、貴方たちの方が危なくなりますよ!」
社員「とにかく、あの杉田清のことは、社長に聞いてくださいね!社長の御
曹司見たいなものですからね!」
紘一「わかりました!かえります!」

森病院。会議室。カラーセラピーが行われている。
月子「私たちもこれを受けなきゃだめなんですか?」
正輝「はい、彼女がどのような育ち方をしたのか知りたいので、ご家族の方
にも、協力していただきたいです。」
規子「お母さん、文句言わないで先生に協力しましょう。そうすれば、菊子
も、少し楽になるわ。」
月子「まあ、あのこが暴れなくなるのなら。」
規子「それを言うと、菊子がかわいそうよ。協力してあげましょ。」
正輝「じゃあ、お母様のほうからやろうかな。この瓶の中で、一番綺麗なも
の選んでください。」
月子は、黙って一本の瓶を取る。
正輝「はい、ゴーハグアツリー。つまり自然とのふれあいが必要なときです
ね。暫く、郊外の森にでも行って、心を癒してきてください。これを出した
ということは、少し疲れているということですから。少し、日常生活を見直
す必要もありますね。」
月子「そうですとも。だって、娘が今こんな風になっているのに。幸い、も
う一人、頼りになるのがいてくれて、本当に良かったけど。」
正輝「それに、取り付かれすぎないで下さいね。では、規子さんにも、やっ
て頂きましょう。」
規子「どれもみんな綺麗な瓶ですから、一番綺麗を決めるのは難しいです。」
正輝「理論的な考えは必要ありませんよ。どれでも良いですから、直感で選
んで下さい。」
規子「じゃあ、私はこれにしようかな。丁度今着ている服装とあわせて。」
彼女は、青色の上着に黒いズボンを身に着けていた。年相応の服装ではあっ
た。
規子「はい、これが良いわ。」
と、取り出した瓶は、上の色が青で、下の色は黒だった。
正輝「こ、これですか!」
規子「ええ、私、落ち着いたほうが好きなの。」
規子の言葉に悪気はなさそうだ。しかし、正輝は思わず口にしてしまった。
規子「どうしたんですか、先生。私、本当に好きな色って言われたからこれ
にしたんですよ?」
正輝「そ、そうなんですけどね。あの、貴方の出した色が予測と違っていた
ものですから、ついおどろいてしまいました。すみません。」
正午を告げるチャイムが鳴る。
月子「もう、お昼ですね。午後から、別の用事がありますので、お暇させて
ください。」
正輝「わかりました。では、続きはまた後日にやりましょう。」
規子「謝礼は今払えば良いですか?」
正輝「ああ、受付に申し出て、そこで払ってくれればいいです。」
規子「わかりました。今私が出した瓶、着ているものにつなげただけですよ。
それだけですから、気にしないで下さいね。きっと次回は又別の服装できま
すから、もう青色は出さないと思いますから。」
正輝「そうなるといいですね。では、次回をお待ちしています。」
月子「規子、車のエンジン掛けといて。」
規子「わかりました。じゃあ、先生、ありがとうございました。行きましょ。」
二人、会議室を出る。

ナースステイション
勝美「えっ、規子さんがスピリチュアルレスキューを?」
正輝「そうなんですよ。」
慎一「確か、一番心の状態が悪いときに出すんですよね?」
正輝「はい、まさしくその通りです。僕自身もびっくりしてしまいました。
あんなにしっかりとした女性が、スピリチュアルレスキューなどを出すなん
て、正直予測していなかったので。」
勝美「でも、あんなに明るくて、正輝さんのいうようにしっかりしていて、
まさしく理想的な女性が、何でそんなものを出したんだろうね。」
慎一「勝美はそればかり言ってる。」
勝美「当たり前だ。逆を言えば、僕がそれを見抜かなければならなかったん
だから。」
慎一「深く考えるなよ。」
勝美「うるさい。お前こそもうちょっと自分の意見という物を持て。」
龍一「二人とも、話題からそれるなよ。僕も、セラピーをしてわかるんだけ
ど、そういうケースは、僕もよくあった。隠れ肥満ならぬ、隠れ鬱だ。まあ、
勝美はただ面会して薬だすだけだから、そういうことにたどり着くのは難し
いと思う。」
勝美「あーあ、何のための医者なんだろうな。精神科医って。」
龍一「そこで嘆くな。それより彼女がなぜスピリチュアルレスキューを出す
ほど苦しいのか、そして、二度とそれを出さないためにはどうしたらいいの
かを考えろ。」
勝美「わかったよ。」
ドアが開く音がして、
龍之介「ただいまかえりました。」
勝美「お帰り阿部さん。富士野高校での、二人の様子はどうだって?」
龍之介「はい、校長の話によりますと、二人は天と地の差があったそうです。
つまり、性格も成績も正反対で、お姉さんが優等生すぎて他の教師や生徒も
彼女の記憶が残っていたんでしょう。そこへおてんば娘の菊子さんが入学し
てきて、お姉さんと全然違うことに、大変驚いたらしいですよ。」
慎一「まあ、姉妹でも能力が違っていた、ということになりますね。」
龍之介「はい、菊子さんの同級生からも話を聞くことができました。彼女は、
とても明るくて、おしゃべりが大好きで、部活のバレーボールも得意中の得
意だったそうです。しかしですね、彼女は三年生になってから、急に変わっ
てしまったそうなんです。」
勝美「急に変わった、とは?」
龍之介「はい、だんだんに制服が乱れてきて、髪も染めて、不良みたいにな
ったそうです。」
勝美「退学処分には?」
龍之介「なりませんでした。彼女の両親が校長に懇願したらしいです。」
勝美「つまり、卒業はできたわけだね。そのあとの、彼女の進路は、」
龍之介「はい、大昭和製紙に就職した、で、終わっているようですね。校長
も、彼女を早く抹殺したかったらしく、それ以上のことはしらないとしかい
いませんでした。」
勝美「なるほどね。かわいそうだったな。人間はどうしても、くらべっこし
てしまうからな。で、阿部さん、お姉さんのほうは、優等生だったから、多
分他の教師も覚えてくれているとおもうんだけど、実はね、、、。」
龍之介「なんでしょう?」
勝美「うん、今正輝さんが規子さんにカラーセラピーを行った。すると、一
番悪い、スピリチュアルレスキューを出したんだ。規子さんが、これを出す
とは予測していなかったので、みんなびっくりしているんだけど、規子さん
が、学校でそれを出しそうになるエピソードはなかっただろうか?」
龍之介「いや、彼女を悪く言う教師はだれもいませんでした。」
勝美「そうか。それでは、余計にややこしくなるな。」
龍一「もしかすると、いちばん辛かったのは、菊子さんではなく、御姉さん
のほうだったのかもしれないね。子供の頃はよかったのかもしれないが、思
春期になると、ある程度からくりがわかってくるから。」
勝美「からくりね、、、。うーん、難しいなあ、、、。」

認知症病棟。美紀がある患者にカウンセリングをしている。
美紀「へえ、お孫さんがですか。」
患者「そうなんだよ。家を飛び出したとおもったら、性病科の医者に付き添
われて帰ってきた。」
美紀「なるほど。今は、性病も流行っていますからな。吉原遊郭はなくても、
その跡地はまだありますからな。」
患者「若いモンは、自分らしい生き方をしたいといって、そうやって家を飛
び出すが、人のためになる仕事をまったくやろうとしない。本当に必要な仕
事を嫌う傾向があるから非常に困る。そして、お金がなくなることを知らな
いから、そうやって、体を簡単に売ってしまうんだ。」
美紀「なるほど、その、体を売るという情報はどこからもらってくるんでし
ょうね。」
患者「携帯があるじゃないか。それ以外に、詐欺電話に加担したり、若いも
んは、本当に何の役にもたたん。わしらがしっかりしていかなければ。」
美紀「携帯っていったって、だれでも、必要なものだから、悪く言わないで
くださいよ。それに携帯の裏には人がいるんですから。」
患者「そう、人!人だよ!わしの孫は西崎菊子という女に見事にたぶらかさ
れてしまった。」
美紀「西崎菊子、ですか?」
患者「そうそう。あの女は悪女だ。うちの孫に金をやるからと言って呼び出
し、見事、風俗店に売り渡してしまった。しかも、富士野高校の出身だそう
で、それを知ったら、あのお嬢様学校も、一発でつぶれるんだろうな。」
美紀「はあ、なるほど、、、。」
患者「若者は困るよ。本当に。」
美紀「そうですね。まあ、過去にあったことですから、きっぱり忘れましょ
う。」
患者「そうだな、この年になってくると、それができるようになるよ。あと
何年生きられるか予測のつかない年になると、楽しければ良いと思えるから。」
美紀「はい、じゃあ、これからお昼ですから、楽しんで食べてくださいよ。」
と、食事を持ってきた看護師と入れ替わり、病棟を出て行く。

勝美「西崎菊子が?」
美紀「はい、そういうことなんですよ。まあ、認知症の年寄りのいうことで
すから、あまり信用するべきではないと思いますが。」
龍一「いや、その逆もありえるよ。古い記憶の方が年よりはよく覚えている
ものだから。」
美紀「そうですか?自分では何にもできないくせに、ですか?」
勝美「それは馬鹿にしていることにも繋がるよ。菅原さん。」
美紀「馬鹿になんかしてませんよ。大事な仕事だし。そうしないと生活でき
ないですから、ちゃんとやってます!」
勝美「だったら、そういう言い方はやめろ。患者さんにたいする侮辱はいけ
ない。」
美紀「先生こそ、よく耐えられるなと思いますよ。やっぱり片腕ですと、優
しくなれるものですかね。」
勝美「何!」
龍一「二人とも、しっかりしろ!」
二人、一瞬黙る。
勝美「ごめん。」
龍一「とりあえず、彼女が本当に売春に加担していたのかを調べるほうが先
だ!」
勝美「そうだよな。」
美紀「じゃあ、僕はお昼頂いてきます。」
と、言って部屋を出て行ってしまう。
勝美「今時の若者がだめだといわれるのは、悪かったとこれっぽっちも言わ
ないことじゃないのかな。」
龍一「そうかもしれないね。」

深夜の繁華街。紘一が通りを歩いていると、制服を着た女子高生にぶつかる。
紘一「君、こんな時間にどうしたの?」
女子高生「何でもないわよ。」
紘一「親御さんが心配していると思うよ。帰りなさい。」
女子高生「いやよ。あんなうるさい人たち、帰りたくなんかないわ。」
紘一「いやうるさいほうが良いんだよ。それは、愛情なんだから。君、その
制服は、富士野高校なのかな?」
女子高生「そうなの。でも、今の富士野はめちゃくちゃよ。嘘でもでっちあ
げなきゃ、通えないわよ。」
紘一「へえ、何でかな?」
女子高生「何年か前に、生徒の一人が梅毒と診断されて、問題になったけど、
そのまま卒業させたのよ。それが発覚する前にも富士野は何回か不祥事をし
ていたみたい。今は新学校の面影はどこにもないわ。ただ怒鳴るだけの教師
と、変な生徒しかいないの。皆予備校のほうがよっぽど信頼できるからって、
授業さえ聞かない人が殆どだから。」
紘一「なるほど。多かれ少なかれ、その傾向はあると思うけど、大変なんだ
ね。」
女子高生「私も、予備校からの帰りなの。でも、家に帰っても何もないから、
こうして歩いているんだけど。」
紘一「それはつらいだろうね。」
女子高生「ええ。私は、大人の付属品でしかないんだって思うことがあるわ。」
紘一「なるほど。確かに、そう感じてもおかしくない時代だよ。あのね、お
じさん、聞きたいことがあるんだけど。」
女子高生「何?」
紘一「さっき、梅毒にかかった生徒がいたっていってたよね。その生徒って、
名前を知ってる?」
女子高生「ええ、知ってるわよ。中山芳江っていってたかな。」
紘一「どこに住んでいるか知ってる?」
女子高生「彼女は、寮に入ってたわ。」
紘一「寮か。そういえば寮があったんだっけね。ずっと昔から。」
女子高生「私立だからね。確か実家は島田って聞いたわ。」
紘一「へえ、島田か。すごく遠いな。特待生とかだったのかな。」
女子高生「ええ。そうみたい。バレーボールで大活躍してたわよ。全国大会
も言ったし。まあ、教師によっては、部活に打ちこむとは何事だと怒鳴る人
もいたけれど、私は部活に一生懸命でも良いと思うわ。でなければ、何のた
めに、甲子園があるのかしら?」
紘一「良い事言うね。確かに、高校生は部活に打ち込む事も大切だよ。甲子
園がなくならないのも、そのことだからね。僕もそれはただしいと思います。
そこまで規制されちゃったら、本当に大人の道具になってしまうよね。それ
は嫌でしょう。」
女子高生「そうよね。おじさんは、顔は気持ち悪いけど優しいのね。おじさ
んのような人が教師であればよかった。もしかして、夜の仕事してるの?」
紘一「違うよ。ただ、xpがあって、それを生かすために夜のパトロールを
してるんだよ。」
女子高生「へえ、夜回り先生の真似?」
紘一「まあね。あんなに偉くはないれど。僕はただ、日に当たるのが大の苦
手で、夜にこうしてやっています。」
女子高生「xpって、映画にもなったわね。すごい大変なんでしょ?」
紘一「まあ、僕はあの女性ほど酷くはないので、日中でも活動はできるよ。
でも、この障害だからこそできる事もあると思って、この仕事を始めたん
だ。」
女子高生「すごいわね、おじさんは。ものすごいプラス思考だわ。あたしな
んて、親や教師から成績のことで怒鳴られるだけだし。なんで生きてなきゃ
いかないのかって良く泣いているもの。」
紘一「まあ、人の人生に文句をつけるつもりはないけど、日に当たれること
を、もう少し自慢してもいいじゃない。」
女子高生「でも、大人に利用されているばかりだし。」
紘一「いやいや、日にあたれるってのは一番の幸せさ。そこに一番大事な人
がいてくれるんだから。皆、君が動いてくれるのを待っているんじゃないか
なあ。」
女子高生「待つ?何を?」
紘一「君が、助けて、と言ってくれるのをさ。泣いても良いんだよ。君の人
生を学校なんかで台無しにしたら、本当に大変なことになるよ。今の時代は、
早くSOSを出すのが一番だから。」
女子高生「おじさんだけだわ。私の気持ち見抜けたの。」
紘一「おじさんは、夜の世界に来る子を何十人も相手にしていたから、すぐ
にわかるんだ。かえれば、ご両親も喜ばれるよ。」
女子高生「そうね。私、家に帰る。」
紘一「二度と、ここへは戻らないでね!」
女子高生「わかったわ!」
と、手を振って嬉しそうに去っていく。

翌日、紘一は島田行きの電車に乗る。女子高生が教えてくれた、中山芳江に
会うためだ。駅前の交番で、年をとったおまわりさんに、中山の住所を教え
てもらい、タクシーを捕まえて、中山家に着いた。
紘一「ごめんください。」
と、ドアが開く。中年の婦人が出てきた。
紘一「森病院の藤井です。芳江さんはいませんか。」
母親だったらしい。見る見る涙を流した。
紘一「あ、失礼、、、。実は西崎菊子さんという方について、お伺いしたか
ったものですから。」
母親「そんなものいりません!西崎菊子はうちの子を人身売買に連れ出した
子です!警察とか、記者とか、何べん同じことを言わなきゃならないんです
か!あの女がまだ生きていることでさえ、私は腹が立ってたまらないわ!出
てけ!」
と、ドアはピシャン!と閉められてしまった。
紘一は、顔を拭きながら、とぼとぼと帰っていった。

森病院ナースステイション
勝美「なるほど。人身売買があったのか。」
慎一「まあ、母親ってのは大げさにいいたがるものだけどな。」
朗「じゃあ、菊子さんは、中山さんを風俗に売りさばいていたということな
んですね。」
と、血相を変えて飛び込んでくる音。
勝美「どうしたの?」
川口「先生!大変ですよ!菊子さんが!」
勝美「菊子さんがどうしたって?」
川口「病棟にいらしてください!早く!」
全員、急いで立ち上がり、病棟に飛び込む。病棟では他の患者たちも何があ
ったんだと気ぜわしい雰囲気。
菊子の部屋に行ってみると、彼女のベッドシーツがはがされ、カーテンレー
ルに巻かれていた。
川口「今、急いでシーツは外したのですが、、、。」
勝美はそれも聞かず、いそいで彼女に人口呼吸をしたり、心臓マッサージを
したり、あらゆる手立てを試みたが、ついに彼女を生き返らせることはでき
なかった。
勝美「ご家族に知らせて。」
力がなかった。
朗がそっと、スマートフォンをとった。

数分後、月子と規子、康が駆け込んできた。
勝美「もうしわけありません!」
それしか出ない。
月子「菊子!しっかりして!もう一度、お母さんって言って!」
月子は、次女の遺体に手を着けて泣き出した。それは、4、5歳の幼児が、
駅で迷子になった時の泣き方にそっくりだった。
康「月子!お前が泣いてどうするんだ。」
規子「お母さん、泣かないでよ。私がいるじゃない。ね、大丈夫よ。私がい
るんだから。」
勝美「私がいる?規子さん、、、。」
康「そうだぞ、お前。規子の言うとおりにしろ。」
月子「貴方はそうかもしれないけど、菊子も規子も私の娘なんです!」
龍之介「こんなときに聞いてしまうのは、失礼なのかもしれませんが、貴方
は、菊子さんと規子さんと、どちらに愛情を傾けていましたか?」
月子「当たり前じゃないですか!ふたりどちらにも、平等に育ててきました。
二人を富士野高校に行かせたのが良い証拠じゃないですか!」
龍之介「待ってください。二人の能力がかなり違ってもですか?」
紘一「菊子さんが、学校でいかに辛かったか、お分かりになりませんでした
か?」
月子「まあ、成績が悪いのは知っていました。でも、敢えてそういう場所に
いさせるのも母親の愛情だったと思うんです。規子は成績が良くて、先生方
にも、励ましてもらったけど、菊子はそうじゃなかったから、敢えて厳しく
いたしました。」
龍之介「時代が違いますよ。」
月子「時代が違う?」
龍之介「今は、指導死という言葉だってあります。指導のせいで子供が死ぬ
ことです。菊子さんは自分にあっていない高校に行かされてほんとに辛かっ
たのでしょうな。」
と、そこへ看護師がやってくる。
看護師「先生。」
勝美「なんだよ。今いいところなのに!」
看護師「刑事さんが見えています。」
と、規子の顔が見る見る変わっていく。
勝美「今ね!大事な会議してるから、出て行けって言って!」
龍一「いや、勝美。」
勝美「どうしたの?」
龍一「通してやれ。事実はすぐにわかる。」
勝美「わかったよ。じゃあ、お通しして。」
と、言うよりはやく、久保と三田がすでにいた。
龍一「お待ちしておりました。もうしわけないのですが、暫くそこで、待機
してもらえますか?長くはかかりませんから。」
勝美「龍一、どうしたんだ?」
龍一「お前にも、すぐにわかるよ。」
川口が椅子を用意し、二人も座る。
龍一「規子さん。」
規子「もうしわけありません、、、。」
と、床に崩れ落ちる。
月子「規子、、、?」
康「どうしたんだ?」
月子「あんたが何かしたの?まさか、、、。」
規子「ずっと、本当のことを言おうと思っていたんですが、どうしても躊躇
してしまって、、、。」
月子「菊子が逝ってしまったと思ったら、規子まで、持っていかれてしまう
の!」
規子「お父さん、お母さんごめんなさい。私、清さんがてっきり菊子になに
かしでかしたのではないかと思ってしまって!」
三田「御姉さん、詳しく聞かせてもらえますか?」
規子「はい、、、。私、菊子が清さんと性病科に行ったというのを、聞いて
しまったんです。」
康「しかし、規子は東京で働いていたはずじゃ、、、。」
久保「インターネットという手があります。北海道の人が沖縄の人とはなし
ができる時代になっています。」
月子「そうなの?規子?」
規子「ええ。看護大学の同級生が山口病院で働いていて、彼女に聞きました。
すぐに行ってやれたらと思いましたが、私も忙しくて、こちらに来ることは
できませんでした。」
月子「もしかしたら、菊子が性病であったことも知っていたの?」
規子「ええ、それも彼女が教えてくれたんです。私はそのとき、姉として責
任を感じてしまって、、、。」
康「責任ってなんだ。規子は模範生だったんだ。それを誇りに思っていいん
だぞ。そんな責任なんて、、、。」
規子「だから、模範生であったことに責任があるのよ!菊子から、私何回も
苦情を聞いてきたわ!それを聞くたびに、あの子、私が富士野高校にいたか
ら苦しんでいるんだなって本当によくわかったの!だから私、責任を感じて
いたの。私は学校生活が本当に楽しかった。それは私自信もそう感じていた
から、初めの頃は、菊子はなんでこんなにつらそうなのか、わからなかった。
そのうちに、私が原因だってことがわかってきたから、私、もう、たまらな
かったわ!」
三田「ヒロインの話はもうよいですよ。なぜ、杉田清を殺害に至ったのか、
そこをしっかり話してください!」
規子「御免なさい。話します。山口病院に勤めていた同級生に手伝ってもら
って、私は新幹線で富士に来ました。そして杉田清さんの住所を調べ上げて、
杉田さんのアパートに押し入ったんです。」
三田「で、あの現場へどうやって連れて行った!」
規子「はい、清さんが、そこへ行こうと言ったからです。」

回想
清のマンションの玄関先。
清「どなたでしょう?あ、もしかしたら、ご姉妹ですか!」
規子「なぜわかるのです!」
清「はい、菊子さんとよく似ているからですよ。以前、児童館でボランティ
アをしていたこともありましたので、姉妹だってよくわかるのです。で、菊
子さんのお姉さまですね。あの、こんなところで話すのも、変に思われるの
も嫌なので、外へでませんか。」
規子「ええ、わかりました。」

勝美「そのとき、規子さんは、清さんのことをどう思っていたのですか?」
規子「はい、この人が、菊子をたぶらかしたんだと思いました。菊子は、
同年代としか付き合ったことはないし、付き合いたくもないってよく言って
いたからです。清さんはあきらかに中年でしたから、絶対ありえないと考え
ていました。」
勝美「でもねえ、、、。誰でも例外はありますよ。」
規子「そうですね、、、。私、それをわからなかったんです。」
勝美「まあ、忙しかったでしょうし。」
三田「早く続けてくださいよ。」
規子「私は、とりあえず公園に行きました。このときはまだ、殺意はなかっ
たのです。」

回想、公園。野球のバットが落ちている。
清「ああ、これはあそこの家の子供さんのものですね。きっと、持って帰る
のを忘れたんでしょう。ついでだから、届けてあげよう。」
規子「貴方って、そんなに優しいのに、なぜ妹を?」
清「ああ、妹さん、早く治療をしてあげないと、大変なことになる可能性も
あります。看護師である御姉さんがいてくれたら、安心して通えるではない
ですか。」
規子「私のことをなぜ?」
清「ええ、妹さんに聞きました。」
規子「そもそも、妹と知り合ったのは?」
清「ええ、インターネットです。今は、手段はいろいろあるでしょ。SNS
というものを知りませんか?それで結婚した人もいるそうですよ。」
規子「まあ、それも狙ってたの!」
清「違います。僕は、菊子さんを助けてあげたいんです。彼女の症状がこれ
以上悪化しないように、彼女を性病科につれて行きました。そうしたら、死
にたいと言い出し、半狂乱にまでなった。それを止めるのはやはり、家族で
なければ無理でしょう。他人では限界がありますし。どうか、彼女を助けて
上げてください。」
規子「貴方は、どうしてそんなにまで他人に優しいんです?私は理由がわか
りませんわ。」
清「ええ。僕は子供の頃に大病を経験しました。だから、困っている人に対
して、優しくしてやろうって誓いを立てたのです。絶対にその誓いを破るわ
けにはいきません。でもそれをするためには時には厳しくなければいけない
時だってあります。だから、」
規子「ちょっと待って!菊子は一体何にかかったんです?それをどうして貴
方が知っているんです!」
清「ええ、梅毒です。看護師さんならお分かりになると思いますが、既に第
三期に突入しているそうです。そうなると、どうなるか、お分かりになりま
すね。」
規子「そんなこと、絶対にありません。それに、そうなるには長い月、少な
くても、十年ちかくかかりますよ。それに、あの子がそのような症状を出し
たと、両親からも、本人からも、聞かされていませんでしたよ。」
清「聞いていないんですか?菊子さんは、富士野高校にいるのはどうしても
嫌だと、口に出していえなかったから、予備校に行くと言っておいて、ピン
サロでアルバイトをしていたそうなんです。」
規子「ピンサロ、ですか?」
清「ええ。卒業後はかなり大物になっていたようで、高校を中退した少女に
声をかけ、ピンサロに売り渡していたそうです。」
規子「妹が、そんなことを!」
清「御姉さん、何にも知らないんですか?なるほど、それはそれは。確かに、
お姉さんが、優等生で非常に困ると言っていたのがよくわかりました。彼女
のSOSになぜ気がついて上げられなかったのです?御姉さん、貴方は、き
っと優等生だったから、ご両親にもてはやされて、妹さんの存在をけなして
いたんですね。もう少し、周りの様子を見たほうがよかったのかもしれませ
んな。」
規子は、やり場のない怒りが生じて、思わず清が持っていたバットを取り上
げ、清の後頭部を叩く。一度叩くと止まらなくなり、彼女は立て続けに何度
も叩きつける。清が桜の木のしたで倒れると、バットを投げ捨て走り去って
しまう。

規子「これが全てです。」
久保「本当に、清さんがたぶらかしたとお思いですか?」
規子「わかりません。でも、私はあの時に、」
龍一「誰だって、完全な善にも悪にもなれはしません。おそらく、妹さんが
彼に相談を持ちかけていたのでしょう。もしかしたら、妹さんをとられるの
ではなく、自分が妹さんに対して優秀だっていう臆病な自尊心があって、そ
れを指摘されて殺害してしまったのではないのですか?」
規子「そうかもしれません。妹がおてんばすぎて叱られていたのに、私は、
そういうことは一切なかったから、知らず知らずに自分が妹より上でいたい
と思ったんでしょうね。父も母も、平等に育てようということをよく口にし
ていたけれど。」
勝美「つまり、人間は平等だって、大間違いなんですよ!それよりも、二人
ができないこと同士を補えばよかったんだ。全く、本当に腹が立ちますね。」
龍一「まあ、腹が立つというか、時代が変わってきたということだな。一番
の被害者は誰か、それを考えないと、大変なことになるんだよ。」
規子「お父さん、お母さん、こんなだめな娘ですみませんでした。」
と、てをついて謝罪する。
月子「規子!規子、、、!」
康「良いんだ、お前が帰ってくるのをずっと待ってやるから、行って来い。
月子、規子も菊子も、私たちの大切な娘なんだから。待ってやろう。もう、
これ以上、苦しめるのはやめにしないか。私たちも失敗を認めなければ。」
三田「ある意味良かったんじゃないですか。こんな事件をおこすほど、娘さ
んは苦しんでいたということがわかったでしょ。」
久保「三田君!」
三田「なんですか警視!」
久保「そんなことを言ってはいけません!」
三田「はい、わかりましたよ!あーあ、すぐ逮捕できるかと思ったのにな。」
久保「三田君!」
三田「はい。」
久保「じゃあ、規子さん、行きましょう。」
規子は立ち上がって久保の前に行く。久保が、彼女に手錠をかける。
規子「じゃあ、行ってきます。」
と、久保と三田についていく。
勝美「強くなってね!」
と、泣きながらいう。
龍一「お前が泣く場所じゃないじゃないか。」
と、ためいきをつく。

森病院談話室。
慎一「おい、いつまでも泣いているな。」
勝美「だってさ、一番綺麗な人が犯罪をするとはおもわなかったよ。」
慎一「そうだけど、しょうがないものは、しょうがない。」
龍一「まあ、慎一みたいに割りきって考えられたら、もう少し勝美も楽に
なれたのかな。」
慎一「可哀相な勝美に乾杯だ!ほら、食べろ。」
勝美「お、ありがとう!」
と、差し出された箱に入っている菓子を一つ取り、袋をはがしてかぶりつく。
勝美「あーこれ食べると楽になるわ!よし、明日も元気に働くぞ!そんなわ
けなので、先に帰る!」
と、立ち上がって頭をかじりながら、談話室を出て行く。
龍一「単純な男だな。やっぱり。」
と、箱の蓋をみると、そこには「ういろう」の四文字が。
慎一と龍一は、互いに顔を見合わせた。





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