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楽しげに去ったカップルを見送って、だんだんと羨ましくなった。俺たちもああいう種類の甘さを経験したいからだ。黒崎には別の甘さがあるが、一度ぐらいはいいだろう?
「黒崎さーん。俺達も踊ろうよ~」
「無駄な願い事はやめておけ」
「え~っ。いいじゃん~。誕生日だからさ~」
「俺の誕生日だ。36歳はやらない。32歳の裕理は別だ」
「うへへ。その代わりにさ~」
「エロガキ」
「ふん。いいよ。紅茶を買おうっと」
アツアツのステップが繰り広げた自販機の前に立ち、ラインナップを眺めた。有名なメーカーの自販機だから、定番商品が並んでいる。たくさんあるから、どれを買おうか迷った。
「紅茶がいいね。黒崎さんは何がいい?お茶なら飲めるだろー?」
カタン……。ペットボトルが落ちる音がした。取り出し口へ手を突っ込んで、お茶を手に取った。さらに紅茶を取ろうとすると、中で引っかかっていた。斜め向いているものを持ち上げた。苦戦していると黒崎がそばに来た。
「うーーん」
「代わりにやってやる」
「もう少しで取れそうだよ」
「取れたぞ。ほら……」
「ありがとう~」
ガタン!ペットボトルが落っこちた。それを取り出していると黒崎が後ろに立った。
「んん?」
「コンクリート壁の汚れが付いている。帰ってからブラシをかけろ」
「うへへ。さっきのだね……」
「汚れたついでにどうだ?」
「え?」
触れている手が離れたと思ったら、背後から優しく抱きしめられた。耳元には温かい息遣いを感じている。黒崎の方からやられると弱い。こういうモードになると、一気に色気を醸し出してくるからだ。黒崎の目こそ閉じてほしい。彫りの深い二重の目が、熱っぽくないのに誘ってきている。控えめの誘惑でこのレベルだ。背中がぎゅうっと痛くなった。
「怖いよ……」
「この間から口にしているぞ。俺に変わりはない」
「そうだけど。あんまりベッタリしてなかったから?耐性が弱くなっているのかな」
「どうしてだろうな……」
「ん……っ」
耳元で低い声で囁かれた。それもいつもの声だからよけいにタチが悪い。こっちは翻弄されているというのに。大人扱いの余韻が残っているからだろうか。
「デビューするまでは独占欲を抑えていた。今はそうしない。それだけの話だ」
「んん……」
「怖くない。俺のものだ。好きにさせてみろ」
抑えめだった独占欲。束縛は心配だからという種類に変化していた。落ち着いたかと思えば違うのか。大学入学後から、少しずつ束縛が解けていた。寂しいような、ホッとしたような心地だった。それだけ寂しさが和らいだということだ。どこにも行かないと安心してもらえた。
「黒崎さーん。寂しくなったのかよ?これからベッタリしようよ。大好きだよ。ほら、機嫌を直してよ~」
チュッと音を立てて唇にキスをした。そして、ここにいるよと気持ちを込めて、黒崎の体に抱きついた。抱き返されたからホッとしていると、耳元で起きた感触に震えた。
「夏樹。こっちを向け。独占する。家の中ではそうさせろ」
「んん……。噛みつくなよ……っ」
「どこにも行かないのは分かっている。そういう不安からじゃない」
「それならよかった……」
最優先ともいえることだ。黒崎のそばから離れない。どこにいても光線を差してやると、ステージ上で宣言した。光線効果を使ってだ。それを話すと黒崎が笑った。
「ちゃんと受け取った。それとこれとは別だ」
「こらこら~っ。どこに手を入れているんだよ!」
「誰もいなくなった」
コンクリート壁には7階へお進み下さいという表示板が出ている。ガランとした殺風景な通路だ。小さな声でも反響するのは、本当に誰もいないからだ。仕方ないから付き合ってあげよう。
軽いキスをしていると、すぐに中断することとなった。黒崎の肩越しに、悠人たちが通り過ぎて行ったからだ。トイレの洗面所に手袋を忘れてきたからだという。
アツアツのステップを披露したくせに、俺たちのことを目撃して、顔が真っ赤になっていた。俺の方からさっきのステップのことを口にすると、悠人から、ひいいいっと悲鳴を上げられた。それはこっちのセリフだ。
デートの邪魔になるといけないから、サウスルートに変更するよ。そう言って、元気いっぱいに手を振っている悠人たち見送った。
「黒崎さーん。俺達も踊ろうよ~」
「無駄な願い事はやめておけ」
「え~っ。いいじゃん~。誕生日だからさ~」
「俺の誕生日だ。36歳はやらない。32歳の裕理は別だ」
「うへへ。その代わりにさ~」
「エロガキ」
「ふん。いいよ。紅茶を買おうっと」
アツアツのステップが繰り広げた自販機の前に立ち、ラインナップを眺めた。有名なメーカーの自販機だから、定番商品が並んでいる。たくさんあるから、どれを買おうか迷った。
「紅茶がいいね。黒崎さんは何がいい?お茶なら飲めるだろー?」
カタン……。ペットボトルが落ちる音がした。取り出し口へ手を突っ込んで、お茶を手に取った。さらに紅茶を取ろうとすると、中で引っかかっていた。斜め向いているものを持ち上げた。苦戦していると黒崎がそばに来た。
「うーーん」
「代わりにやってやる」
「もう少しで取れそうだよ」
「取れたぞ。ほら……」
「ありがとう~」
ガタン!ペットボトルが落っこちた。それを取り出していると黒崎が後ろに立った。
「んん?」
「コンクリート壁の汚れが付いている。帰ってからブラシをかけろ」
「うへへ。さっきのだね……」
「汚れたついでにどうだ?」
「え?」
触れている手が離れたと思ったら、背後から優しく抱きしめられた。耳元には温かい息遣いを感じている。黒崎の方からやられると弱い。こういうモードになると、一気に色気を醸し出してくるからだ。黒崎の目こそ閉じてほしい。彫りの深い二重の目が、熱っぽくないのに誘ってきている。控えめの誘惑でこのレベルだ。背中がぎゅうっと痛くなった。
「怖いよ……」
「この間から口にしているぞ。俺に変わりはない」
「そうだけど。あんまりベッタリしてなかったから?耐性が弱くなっているのかな」
「どうしてだろうな……」
「ん……っ」
耳元で低い声で囁かれた。それもいつもの声だからよけいにタチが悪い。こっちは翻弄されているというのに。大人扱いの余韻が残っているからだろうか。
「デビューするまでは独占欲を抑えていた。今はそうしない。それだけの話だ」
「んん……」
「怖くない。俺のものだ。好きにさせてみろ」
抑えめだった独占欲。束縛は心配だからという種類に変化していた。落ち着いたかと思えば違うのか。大学入学後から、少しずつ束縛が解けていた。寂しいような、ホッとしたような心地だった。それだけ寂しさが和らいだということだ。どこにも行かないと安心してもらえた。
「黒崎さーん。寂しくなったのかよ?これからベッタリしようよ。大好きだよ。ほら、機嫌を直してよ~」
チュッと音を立てて唇にキスをした。そして、ここにいるよと気持ちを込めて、黒崎の体に抱きついた。抱き返されたからホッとしていると、耳元で起きた感触に震えた。
「夏樹。こっちを向け。独占する。家の中ではそうさせろ」
「んん……。噛みつくなよ……っ」
「どこにも行かないのは分かっている。そういう不安からじゃない」
「それならよかった……」
最優先ともいえることだ。黒崎のそばから離れない。どこにいても光線を差してやると、ステージ上で宣言した。光線効果を使ってだ。それを話すと黒崎が笑った。
「ちゃんと受け取った。それとこれとは別だ」
「こらこら~っ。どこに手を入れているんだよ!」
「誰もいなくなった」
コンクリート壁には7階へお進み下さいという表示板が出ている。ガランとした殺風景な通路だ。小さな声でも反響するのは、本当に誰もいないからだ。仕方ないから付き合ってあげよう。
軽いキスをしていると、すぐに中断することとなった。黒崎の肩越しに、悠人たちが通り過ぎて行ったからだ。トイレの洗面所に手袋を忘れてきたからだという。
アツアツのステップを披露したくせに、俺たちのことを目撃して、顔が真っ赤になっていた。俺の方からさっきのステップのことを口にすると、悠人から、ひいいいっと悲鳴を上げられた。それはこっちのセリフだ。
デートの邪魔になるといけないから、サウスルートに変更するよ。そう言って、元気いっぱいに手を振っている悠人たち見送った。
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