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18時半。
今夜の食事の支度が着々と進んでいる。佐久弥がローストビーフをカットして、綺麗に盛り付けをやってくれた。トマトの輪切りも並べたら、一気に華やかな皿に変わった。
蔵之介さんと悠人が、リビングに広いテーブルをセットした。黒崎と早瀬さんは仕事が終わり次第、一緒に帰ってくる。それまでに4人で準備を進めた。
「なつきー、これに添えるマッシュポテトはどうする?別の皿に入れるか?」
「そうするよー。6人で食べるもんね」
「これはこうこうこう……。これはこっち……」
「手際がいいよねえ。実家でもやってたんだよね?」
「好きだからなー。おおー、これってレース編みだろ?夏樹の作品か?」
「そうだよ。たまに編んでいるよ」
「手先を動かすのはいいことだ。脳の活性化にもなる」
「黒崎さんにもやらそうかな?物忘れがひどいんだよ。都合の悪いこと限定だけど」
「オジサンになると誰もがなー……」
「うんうん……」
佐久弥とは趣味のことで話が合う。健康オタクであり、家庭菜園や料理にも詳しい。俺の方も情報がもらえて助かっている。音楽の面では大先輩だ。
今日は一貴さんが訪ねて来たから驚いた。最初に会った時は意地悪そのものの人であり、苦手意識が強かった。しかし、そうでもないことが分かってきた。今日、悠人と話している時は気さくな人に見えた。実際はそうなのだろう。そうでなければ、黒崎が付き合いをするわけがない。ましてや、俺に関わらせるわけがない。すると、悠人が言った。
「なつきーー。島川さんがカタログ送ってくれたら、先に君に報告するからね」
「うん。俺の方からもお礼を言うよ」
「苦手なお兄さんだって言っていたけど、今日はそうでもなさそうに見えたよーー?」
「うん。だんだん分かってきたんだ。気さくな人だって。俺もプラセルの服を買おうかな?」
「おおーー、夏樹も大人になったな!自分のところの服を選んでもらうのは嬉しいことだ」
「そうかなーー?それなら一緒にカタログから選ばせてもらうよ。……そろそろ2人が帰ってくるかなー?」
リビングのセッティングを終えた頃、ビーフシチューの温め直しをやった。悠人が鼻をピクピクさせてやって来た。この子の好物だ。マッシュポテトと唐揚げも見つめている。早瀬さんが料理の作り甲斐があると言うのが納得いく。
「クンクン。いい匂いだなあ。これは何かなー?」
「ビーフシチューだよ。もうすぐで食べれるから、我慢しろよー」
「味見したい!スプーンはどこー?」
「ゆうとー、これで食べろよ」
「げええええ。キミの指は舐めたくない!」
佐久弥がビーフシチューを指先ですくう仕草をやった。悠人が抵抗しながら逃げて行った。それを追いかけているうちに、すっかり鍋が温まった。
ポーーン、ポーーン。
取り皿やフォークを用意していると、インターフォンが鳴った。晴海さんからの荷物が届いたのかもしれない。モニター画面を見ると、宅配の人が立っていた。すぐに玄関へ出て行き、門のそばで大きな箱を受け取った。冷たくなっているから、それだけ外の気温が下がっていることが分かった。
「ありがとうございましたーー」
「はーい。ありがとうございました」
ガタン。ガーーーー。
宅配トラックが走り去った後、坂道を上がって来た車のライトが差し込んできた。眩しくて目を細めた後、タクシーのランプが目に入った。二人が帰ってきたようだ。そのまま待っていると、我が家の門の前で停車した。
「黒崎さーん。おかえりなさい」
「ただいま」
いつもの習慣で抱きついたものの、早瀬さんがそばに立っていた。一気に顔が熱くなり、寒さを感じなくなった。今更ながら早瀬さんに隠しても仕方がない。出会いから現在までを見ている人だ。
「はははー。嫌みを言う高校生だったのにねー」
「早瀬さーん。笑わないでよ」
「羨ましくて見ているんだよ。ほっこりする。圭一さんのデレデレした顔もね」
「おい……。俺はそんな顔をしていない」
「そうか?レインボーブリッジの遊歩道の時はね……」
「人違いだろう」
「ははははーー」
「早瀬さんこそ。アツアツのステップを踏んでいたじゃん」
「悠人が甘えてくれるのが嬉しい。可愛い可愛い。さあ、イジメるか……」
「わあああ……」
恥ずかしがるだろうと思ったのに、嬉しそうに笑っている。ここまでオープンな人だったのか。以前よりもデレデレ度が増している。
早瀬さんの目はマジだった。恐ろしいものを感じて言葉に詰まった時、悠人と佐久弥が言い合いをしている声がして、慌てて家の中に入った。
今夜の食事の支度が着々と進んでいる。佐久弥がローストビーフをカットして、綺麗に盛り付けをやってくれた。トマトの輪切りも並べたら、一気に華やかな皿に変わった。
蔵之介さんと悠人が、リビングに広いテーブルをセットした。黒崎と早瀬さんは仕事が終わり次第、一緒に帰ってくる。それまでに4人で準備を進めた。
「なつきー、これに添えるマッシュポテトはどうする?別の皿に入れるか?」
「そうするよー。6人で食べるもんね」
「これはこうこうこう……。これはこっち……」
「手際がいいよねえ。実家でもやってたんだよね?」
「好きだからなー。おおー、これってレース編みだろ?夏樹の作品か?」
「そうだよ。たまに編んでいるよ」
「手先を動かすのはいいことだ。脳の活性化にもなる」
「黒崎さんにもやらそうかな?物忘れがひどいんだよ。都合の悪いこと限定だけど」
「オジサンになると誰もがなー……」
「うんうん……」
佐久弥とは趣味のことで話が合う。健康オタクであり、家庭菜園や料理にも詳しい。俺の方も情報がもらえて助かっている。音楽の面では大先輩だ。
今日は一貴さんが訪ねて来たから驚いた。最初に会った時は意地悪そのものの人であり、苦手意識が強かった。しかし、そうでもないことが分かってきた。今日、悠人と話している時は気さくな人に見えた。実際はそうなのだろう。そうでなければ、黒崎が付き合いをするわけがない。ましてや、俺に関わらせるわけがない。すると、悠人が言った。
「なつきーー。島川さんがカタログ送ってくれたら、先に君に報告するからね」
「うん。俺の方からもお礼を言うよ」
「苦手なお兄さんだって言っていたけど、今日はそうでもなさそうに見えたよーー?」
「うん。だんだん分かってきたんだ。気さくな人だって。俺もプラセルの服を買おうかな?」
「おおーー、夏樹も大人になったな!自分のところの服を選んでもらうのは嬉しいことだ」
「そうかなーー?それなら一緒にカタログから選ばせてもらうよ。……そろそろ2人が帰ってくるかなー?」
リビングのセッティングを終えた頃、ビーフシチューの温め直しをやった。悠人が鼻をピクピクさせてやって来た。この子の好物だ。マッシュポテトと唐揚げも見つめている。早瀬さんが料理の作り甲斐があると言うのが納得いく。
「クンクン。いい匂いだなあ。これは何かなー?」
「ビーフシチューだよ。もうすぐで食べれるから、我慢しろよー」
「味見したい!スプーンはどこー?」
「ゆうとー、これで食べろよ」
「げええええ。キミの指は舐めたくない!」
佐久弥がビーフシチューを指先ですくう仕草をやった。悠人が抵抗しながら逃げて行った。それを追いかけているうちに、すっかり鍋が温まった。
ポーーン、ポーーン。
取り皿やフォークを用意していると、インターフォンが鳴った。晴海さんからの荷物が届いたのかもしれない。モニター画面を見ると、宅配の人が立っていた。すぐに玄関へ出て行き、門のそばで大きな箱を受け取った。冷たくなっているから、それだけ外の気温が下がっていることが分かった。
「ありがとうございましたーー」
「はーい。ありがとうございました」
ガタン。ガーーーー。
宅配トラックが走り去った後、坂道を上がって来た車のライトが差し込んできた。眩しくて目を細めた後、タクシーのランプが目に入った。二人が帰ってきたようだ。そのまま待っていると、我が家の門の前で停車した。
「黒崎さーん。おかえりなさい」
「ただいま」
いつもの習慣で抱きついたものの、早瀬さんがそばに立っていた。一気に顔が熱くなり、寒さを感じなくなった。今更ながら早瀬さんに隠しても仕方がない。出会いから現在までを見ている人だ。
「はははー。嫌みを言う高校生だったのにねー」
「早瀬さーん。笑わないでよ」
「羨ましくて見ているんだよ。ほっこりする。圭一さんのデレデレした顔もね」
「おい……。俺はそんな顔をしていない」
「そうか?レインボーブリッジの遊歩道の時はね……」
「人違いだろう」
「ははははーー」
「早瀬さんこそ。アツアツのステップを踏んでいたじゃん」
「悠人が甘えてくれるのが嬉しい。可愛い可愛い。さあ、イジメるか……」
「わあああ……」
恥ずかしがるだろうと思ったのに、嬉しそうに笑っている。ここまでオープンな人だったのか。以前よりもデレデレ度が増している。
早瀬さんの目はマジだった。恐ろしいものを感じて言葉に詰まった時、悠人と佐久弥が言い合いをしている声がして、慌てて家の中に入った。
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