白い雫の天使~親愛なる人への旋律

夏目奈緖

文字の大きさ
56 / 265

6-4

しおりを挟む
 ここは黒崎に任せるほうがベストだ。それが分かっていながらも、モヤモヤしているのはどうしてだろう?会話が遠くの方から聞こえている感覚がある。ジンジンと体が痺れて感覚がない。進んで行くにつれて、黒崎の表情が落ち着いたものになった。

「……よろしく願いします。……夏樹君。聞いていた?念のための対応だからね。社長宅にいるほうが、余計な誤解を生まなくて済むの。それは手慣れたものよ。大丈夫だからねーー」
「はい。悠人に連絡を取ってもいい?」
「もっと後にしてほしいの。連絡が行き違いになるから。悠人君達は遊園地に出かけているの。一時間後には到着するから。私から、あなたに電話をするわ」
「はい!」

 ここは指示に従おう。アタフタしたところで始まらない。すると、キャッチが画面に表示された。悠人からの着信だ。すぐに出たい。

「悠人からキャッチが入ったんだ。出ててもいい?」
「分かったわ。後でかけ直してね。佐久弥さんとの調整後に連絡を入れるからね。じゃあね!」
「はい。……もしもし、悠人?長谷部さんから聞いたんだ。大丈夫?」
「なつきー。ごめんね……」
「ゆうとー……」

 その声は元気のないものだ。当たり前のことだ。関係ないことで巻き込まれる可能性が出てきたことを知った。まさか悠人まで疑われるのか?それを食い止めるための対応策なのか。

「なつきー。ごめんね。お母さんから、会社の横領事件は聞いていたんだ。麻薬まであるって知らなくて。IKU側には相談していたんだ。言わなくてごめん。余計な心配をさせたくなかったんだ……」
「謝るなよ。悠人のことは分かっているからさ。ご近所さんになるね。収録に行く時に便利になったじゃん。いっぺんに行けるから……」
「……へへへ。リクとも遊べるし!」
「俺達、今から帰ろうかって思っているんだ。黒崎さんも同じ意見だよ。今から遠藤さんの家に行くんだろ?」
「……いいってばー。明日になったら帰るだろ?そうだ。お土産のリクエストがあるんだよー。ジャコ天が売っているんだ。真空パックの。美味しいって聞いたんだーー」
「うんうん。買っていくよ。この旅館で注文できるんだよ」
「ふむふむ……。観光地ですねー」
「そうだー。そっちで何に乗ろうとしたんだよー?」
「月夜のレンジャー、ゴーゴーマシンZだよ。言ってたやつ。迎えが来るから、また今度になったよ」
「一番の目的じゃん。並んでいただろ?」
「そうだよーー。もうーー」
「うちで早瀬さんに泊まってもらおうか?遠藤さん家より気を使わないから」
「いいよー。毎日会いに来てくれるから。長くても一週間だよ。そこまで報道陣は暇じゃないそうだよー」
「うん……」
「……ごめんね。思い出した?」
「大丈夫だよ。それはそれだからさ」

 気を遣わせてしまった。だったら俺もやることがある。週刊誌系には嫌な記憶がある。子供時代のトラウマだ。万理の事件で俺達は週刊誌の記者から写真を撮られた。カメラ嫌いはクリアしても、許せない思いは残っている。開明高校の礼拝堂で教わった言葉があるのに、まだクリアできないでいる。

 黒崎製菓グループは、スポンサーとして報道系との繋がりがある。何もかもではないが、報道をストップさせることが出来る。黒崎からそう聞いたことがある。圧力というものだ。悠人の事を記事にされたくない。こんな事で注目されたくない。物事を円滑に進める ”姑息な手段” が存在する。伊吹からの教えだ。お義父さんに頭を下げて、頼み込もう。それしか方法がない。

 電話が終わった後、黒崎のそばへ行った。まだ電話で誰かと話している最中だ。とりあえず落ち着こうと、座椅子に腰かけてお茶を飲んでいたら、ニュースが終わっていた。

(遠藤さんかな?お義父さんと話しているのか……)

 それはそうだろう。長谷部さんとの話では、お義父さんに話を通しておくと言っていた。この後でかわってもらおう。ニュースアプリを開くと、すでに記事が載っていた。

「……『株主総会後に逮捕に踏み切るなど……配慮も……。役員の逮捕を受け、新たな課題に直面している』……」

 逮捕されたということは、事件の解決に繋がる。しかし、こんな気分では、何を見てもマイナスに受け取ってしまう。今の自分に出来ることは何だろう?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

病弱の花

雨水林檎
BL
痩せた身体の病弱な青年遠野空音は資産家の男、藤篠清月に望まれて単身東京に向かうことになる。清月は彼をぜひ跡継ぎにしたいのだと言う。明らかに怪しい話に乗ったのは空音が引き取られた遠縁の家に住んでいたからだった。できそこないとも言えるほど、寝込んでばかりいる空音を彼らは厄介払いしたのだ。そして空音は清月の家で同居生活を始めることになる。そんな空音の願いは一つ、誰よりも痩せていることだった。誰もが眉をひそめるようなそんな願いを、清月は何故か肯定する……。

借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます

なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。 そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。 「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」 脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……! 高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!? 借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。 冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!? 短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。

発情期のタイムリミット

なの
BL
期末試験を目前に控えた高校2年のΩ・陸。 抑制剤の効きが弱い体質のせいで、発情期が試験と重なりそうになり大パニック! 「絶対に赤点は取れない!」 「発情期なんて気合で乗り越える!」 そう強がる陸を、幼なじみでクラスメイトのα・大輝が心配する。 だが、勉強に必死な陸の周りには、ほんのり漂う甘いフェロモン……。 「俺に頼れって言ってんのに」 「頼ったら……勉強どころじゃなくなるから!」 試験か、発情期か。 ギリギリのタイムリミットの中で、二人の関係は一気に動き出していく――! ドタバタと胸きゅんが交錯する、青春オメガバース・ラブコメディ。 *一般的なオメガバースは、発情期中はアルファとオメガを隔離したり、抑制剤や隔離部屋が管理されていたりしていますが、この物語は、日常ラブコメにオメガバース要素を混ぜた世界観になってます。

死ぬほど嫌いな上司と付き合いました【完結】

三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。 皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。 涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥ 上司×部下BL

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

追放されたおまけの聖女♂は冷徹王太子の腕の中から離してもらえない〜今さら戻れと言われても、もうこの人の魔力しか受け付けません!〜

たら昆布
BL
聖女のおまけで召喚されたと思われて追放された不憫受けが拾われて愛される話

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

処理中です...