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23時半。
旅館から数キロ歩いた場所で、カウントダウンイベントをやっている。それに参加するためにやって来た。風邪を引くからと最初は止められたものの、どうしても行きたいのだと我儘を言った。その結果、黒崎が保護者のようになった。あれやこれやと世話を焼かれて、マフラーを二重に巻くなどの防寒対策をした。顔はマスクで覆っている。
「ふひょひゃきひゃん。ひょひょひぇーー」
「そうか。珈琲が飲みたいのか……」
近くのカフェが開いていたから、さっそくテイクアウトしてきた。持っている珈琲を受け取った。マスクを外して飲んでいると、大きなカメラを抱えた人がやって来た。中継をしているようだ。
「そっか。年越しだもんねえ」
「こっちへ来るぞ?どうする?」
「俺たちー?」
その通りの展開になった。黒崎がレポーターさんから撮影の打診を受けている。俺は自由に映ることができない。
「せっかくですが。この子は撮影が出来ませんので……」
「そうでしたか。それは失礼いたしました。……あら?ヴィジブルレイのボーカルさんじゃないですか?もちろん映しませんので……」
「は、はい……」
とっさに本人だと答えてしまった。一瞬だけ身構えた後、胸を張って向き直った。ここでモジモジするのは失礼だ。それでも相手に伝わったようだ。小さなモニターで映像を見せてくれた。そこには俺の姿が映っていない。
「デビューステージの動画を拝見しました。佐久弥さんが水をかぶったのを見て、家族で大笑いしました。もうすぐですよね。ライブがあるでしょう?」
「は、はい!5月です」
「チケットをゲットしました。6列目の左サイドです。手を振ってくださいねー」
「もちろんです!」
その後、少しだけ会話をした。さっそく次のインタビュー候補者を探していた。その姿を見つめて、視野が狭くなっていたことを知った。
「黒崎さん……」
「善意の人もいる。週刊誌記者の中にも、仕事として我慢してやっている人もいる。ゴシップネタは売れるからな。無くなるのは難しいだろう。それを利用していこう。感じよく接することだ。相手も同じ人間だ。分かってもらえる」
「うん……っ」
今日は泣いてばかりの日だ。いいことで泣いた。ステージの方から、カウントダウンの合図が出された。それに合わせて、参加者たちが声を揃えた。
「……3……2……1……ゼローー!」
パン!パン!パン!
夜空にあがった3発の花火が、大きな花を咲かせた。
「水仙とダリアが咲いたね。最後はヒマワリだったよ~」
「綺麗だったな。前もこうして眺めたな」
「俺が高校3年の時だね。ケンカして走って迷子になったね。黒崎さんが探しに来てくれてさ~。え?あ……」
本当のことだろうか?こんなに人目がある場所で、温かい唇が押し当てられた。ほんの軽いものでも、心拍数があがった。離れた後も、至近距離で見つめられた。
「聞き逃すな……」
「うん……え?え?」
「……」
「ヒョーーーーーッ」
「うるさい」
耳元で囁かれたのは、なかなか言ってもらえない6文字言葉だった。
--あいしている。
新年早々、普段の発声練習の成果を披露した。もちろん、黒崎から引きずられるようにして会場を後にした。
旅館から数キロ歩いた場所で、カウントダウンイベントをやっている。それに参加するためにやって来た。風邪を引くからと最初は止められたものの、どうしても行きたいのだと我儘を言った。その結果、黒崎が保護者のようになった。あれやこれやと世話を焼かれて、マフラーを二重に巻くなどの防寒対策をした。顔はマスクで覆っている。
「ふひょひゃきひゃん。ひょひょひぇーー」
「そうか。珈琲が飲みたいのか……」
近くのカフェが開いていたから、さっそくテイクアウトしてきた。持っている珈琲を受け取った。マスクを外して飲んでいると、大きなカメラを抱えた人がやって来た。中継をしているようだ。
「そっか。年越しだもんねえ」
「こっちへ来るぞ?どうする?」
「俺たちー?」
その通りの展開になった。黒崎がレポーターさんから撮影の打診を受けている。俺は自由に映ることができない。
「せっかくですが。この子は撮影が出来ませんので……」
「そうでしたか。それは失礼いたしました。……あら?ヴィジブルレイのボーカルさんじゃないですか?もちろん映しませんので……」
「は、はい……」
とっさに本人だと答えてしまった。一瞬だけ身構えた後、胸を張って向き直った。ここでモジモジするのは失礼だ。それでも相手に伝わったようだ。小さなモニターで映像を見せてくれた。そこには俺の姿が映っていない。
「デビューステージの動画を拝見しました。佐久弥さんが水をかぶったのを見て、家族で大笑いしました。もうすぐですよね。ライブがあるでしょう?」
「は、はい!5月です」
「チケットをゲットしました。6列目の左サイドです。手を振ってくださいねー」
「もちろんです!」
その後、少しだけ会話をした。さっそく次のインタビュー候補者を探していた。その姿を見つめて、視野が狭くなっていたことを知った。
「黒崎さん……」
「善意の人もいる。週刊誌記者の中にも、仕事として我慢してやっている人もいる。ゴシップネタは売れるからな。無くなるのは難しいだろう。それを利用していこう。感じよく接することだ。相手も同じ人間だ。分かってもらえる」
「うん……っ」
今日は泣いてばかりの日だ。いいことで泣いた。ステージの方から、カウントダウンの合図が出された。それに合わせて、参加者たちが声を揃えた。
「……3……2……1……ゼローー!」
パン!パン!パン!
夜空にあがった3発の花火が、大きな花を咲かせた。
「水仙とダリアが咲いたね。最後はヒマワリだったよ~」
「綺麗だったな。前もこうして眺めたな」
「俺が高校3年の時だね。ケンカして走って迷子になったね。黒崎さんが探しに来てくれてさ~。え?あ……」
本当のことだろうか?こんなに人目がある場所で、温かい唇が押し当てられた。ほんの軽いものでも、心拍数があがった。離れた後も、至近距離で見つめられた。
「聞き逃すな……」
「うん……え?え?」
「……」
「ヒョーーーーーッ」
「うるさい」
耳元で囁かれたのは、なかなか言ってもらえない6文字言葉だった。
--あいしている。
新年早々、普段の発声練習の成果を披露した。もちろん、黒崎から引きずられるようにして会場を後にした。
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