白い雫の天使~親愛なる人への旋律

夏目奈緖

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 伊吹からは、その後で本題に入った。俺が嫌っている外見のことだ。伊吹は俺と瓜二つぐらいに似ているのに、通りがかりに因縁をつけられることも、正門まで変な男が追いかけてくる目にも遭っていない。それの理由をストレートに聞いたのを覚えている。”そうか。気づいていないのか”と、えらく驚かれた。 

(夏樹はなーー。笑うと可愛いぞ。いっぱい人が寄ってくる)
(痴漢しか寄ってこないよ……)
(今のおまえはなー。負のオーラを漂わせている。だから妙な奴が寄ってくる。……開明高校を受験しろ。問題児でも受け入れてもらえるから、お前にピッタリだ。同じような子がいるぞ?話を聞いてもらえ。当事者にしか分からないことがある。お兄ちゃんでも分からない。バカヤロウだから)
(うん!)
(いいか?俺からのアドバイスは一つ。……お前は笑顔で勝負だ!)

 優等生の笑顔をしていたから、黒崎から興味を持たれたのだろか。本人は否定したようでそうでない。ここで向かい合って座っている人は、心を閉ざした男性ではない。過去に住んでいる。

「何か食べないか?外は寒いからデザートを頼もうか」
「あのさ……」
「どうした?」
「優等生のふりをしていたから、俺のことが気になったんだろ?それがなかったら、病室では ”お大事に。ご迷惑をおかけしました” って言って帰っていたかも?」
「そうかもしれない。俺も同じだぞ。黒崎家に留まっていれば出会っていない。だが、同じようにデートに誘っていたとは思う。子供に還ってもいいぞ。ただし 、”20歳の夏樹”が子供に還るんだぞ?大泣きしろ。それこそ慣れている。ノウハウが確立されている」
「なんだよ……。ガラにもなく笑わすなよ……」
 
 これは18歳当時の俺の言い方だ。久しぶりに出た。黒崎も同じ事を思ったようで、吹き出して笑った。

「今でも変わっていない。ステージの後、わあわあ泣いていただろうが」
「うん……っ」
「悠人君のことは心配ない。裕理の親父さんの早瀬孝則さんが既に動いた。悠人君の親父さんも守っている。黒崎製菓グループを使おうとしただろう?」
「うん。姑息な手段を使おうとしていたよ……」
「必要になれば俺が動かす。これでも姑息なことをやって来た。その発想が出来るようになった分、成長した証だ。今までのお前は正論でやって来た。ズルいこともやれ。……今回の記事を止めたところで、困る奴はいない。ゴシップだ。ネタはどこでもある」

 返事は出来なかった。悠人は今頃どうしているだろう?なんて自分は力が足りないのか。胸の奥から込み上げてくるものを、言葉にして吐き出している間、黒崎が寄り添ってくれていた。
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