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8-1 黒崎家の集まり
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1月10日、土曜日。午前6時。
今日は休日だ。のんびりと朝ご飯の支度をやっている。うちわをマイク代わりにして歌った。今朝から喉の調子がいい。それには理由がある。長谷部さんからの電話の内容だ。
デビュー曲が11月17日に発売されて、チャートのジャンル別で5位になった。音楽番組の挿入歌で使ってもらったおかげで、バンドのことが広まった。興味を持ってくれたようだ。また売り上げ枚数が増えた。
5月には2日間のライブを行う。2200人が入れる規模のホールで、チケットがソールドアウトになった。昨日の電話で知らされたことだ。この報告が入った時、悠人の顔色が明るくなった。
(悠人を守る。いいニュースになってよかった……)
大晦日から約一週間、悠人が遠藤さんの家で泊まった。その間、遠藤さんの家の周りに記者たちが待機して、悠人と佳代子さんのことを強引に取り囲む事件が起きた。俺はいてもたってもいられなくて外に出て、記者の中に割って入った結果、悠人から抱きしめられて、カメラから守ってくれた。あの時、自分勝手な振る舞いでも人が傷つくことを痛感した。
その日は早瀬さんが会社を早退し、遠藤さんの家に来る途中だった。悠人と俺達のことを助け出してくれた後、すぐに父と警察が駆け付けた。
父が都内のホテルに滞在し、検察庁に挨拶に出向いて、世間話をして情報収集を進めていた。そういうことができるのかと驚いて父に聞くと、妙に向こうが嫌がっていたと言っていた。
(悠人には一切影響がなかった。久田さんが泣いてた……)
全てを中山君に任せている状況だと言って泣いていた。父が久田さんの背中をさすっていた。俺も何かしたいと願った。
「黒崎さーん。朝ごはんが出来たよ~」
「ああ」
返事をした後、黒崎がキッチンまでやって来た。今日は洋食系だから、トーストにバターを塗ってもらう。毎回、進んでやるようになった。前進している。
「はいはい。ここにバターがあるよ」
「ああ」
「それは梅干しの容器だよ。色が違うだろ?」
「そうか。こっちか……」
「うん。そうだよ。それはねえ。フォークだよ?」
「そうかこっちか」
「ひゃひゃひゃ」
毎度のことながら恐れ入る。透明の容器には、漬物や梅干しが入っている。グリーンをしていても、バター容器だと間違える。けっこう可愛い。手早く塗った後、テーブルに運んでくれた。
向かい合って座り、朝ごはんを食べ始めた。普段通りの光景だ。一時期はこういう時間がなくなった。今では元に戻っている。ミュージシャンとしての活動に慣れてきたからだろう。手間取っていたことがスムーズに運びだした。
今日はお昼過ぎから法事があり、黒崎家の人たちが集まる。場所はお寺を借りた。お義父さんの家でやった時、グダグダと文句を言い出す人がいて帰らなかったそうだ。だから3年前からそうしている。
せっかちな黒崎親子に怯むことがないのか。その話を聞いたときは笑いを堪えた。その反応に、お義父さんが大笑いをしていた。黒崎は眉間に皺を寄せていた。俺がやせ我慢をしていると思ったからだった。
「今日は音楽活動の話題が出るはずだ。腹の立つ言い方をされても受け流せ。苛立つだろうが……」
「分かっているよ。納得の上で出席するんだから」
黒崎は俺を出席させたがっていない。この先も拒み続けるわけにはいかない。何年も経った後で出席するなら、今から出た方がいいに決まっている。
今日は休日だ。のんびりと朝ご飯の支度をやっている。うちわをマイク代わりにして歌った。今朝から喉の調子がいい。それには理由がある。長谷部さんからの電話の内容だ。
デビュー曲が11月17日に発売されて、チャートのジャンル別で5位になった。音楽番組の挿入歌で使ってもらったおかげで、バンドのことが広まった。興味を持ってくれたようだ。また売り上げ枚数が増えた。
5月には2日間のライブを行う。2200人が入れる規模のホールで、チケットがソールドアウトになった。昨日の電話で知らされたことだ。この報告が入った時、悠人の顔色が明るくなった。
(悠人を守る。いいニュースになってよかった……)
大晦日から約一週間、悠人が遠藤さんの家で泊まった。その間、遠藤さんの家の周りに記者たちが待機して、悠人と佳代子さんのことを強引に取り囲む事件が起きた。俺はいてもたってもいられなくて外に出て、記者の中に割って入った結果、悠人から抱きしめられて、カメラから守ってくれた。あの時、自分勝手な振る舞いでも人が傷つくことを痛感した。
その日は早瀬さんが会社を早退し、遠藤さんの家に来る途中だった。悠人と俺達のことを助け出してくれた後、すぐに父と警察が駆け付けた。
父が都内のホテルに滞在し、検察庁に挨拶に出向いて、世間話をして情報収集を進めていた。そういうことができるのかと驚いて父に聞くと、妙に向こうが嫌がっていたと言っていた。
(悠人には一切影響がなかった。久田さんが泣いてた……)
全てを中山君に任せている状況だと言って泣いていた。父が久田さんの背中をさすっていた。俺も何かしたいと願った。
「黒崎さーん。朝ごはんが出来たよ~」
「ああ」
返事をした後、黒崎がキッチンまでやって来た。今日は洋食系だから、トーストにバターを塗ってもらう。毎回、進んでやるようになった。前進している。
「はいはい。ここにバターがあるよ」
「ああ」
「それは梅干しの容器だよ。色が違うだろ?」
「そうか。こっちか……」
「うん。そうだよ。それはねえ。フォークだよ?」
「そうかこっちか」
「ひゃひゃひゃ」
毎度のことながら恐れ入る。透明の容器には、漬物や梅干しが入っている。グリーンをしていても、バター容器だと間違える。けっこう可愛い。手早く塗った後、テーブルに運んでくれた。
向かい合って座り、朝ごはんを食べ始めた。普段通りの光景だ。一時期はこういう時間がなくなった。今では元に戻っている。ミュージシャンとしての活動に慣れてきたからだろう。手間取っていたことがスムーズに運びだした。
今日はお昼過ぎから法事があり、黒崎家の人たちが集まる。場所はお寺を借りた。お義父さんの家でやった時、グダグダと文句を言い出す人がいて帰らなかったそうだ。だから3年前からそうしている。
せっかちな黒崎親子に怯むことがないのか。その話を聞いたときは笑いを堪えた。その反応に、お義父さんが大笑いをしていた。黒崎は眉間に皺を寄せていた。俺がやせ我慢をしていると思ったからだった。
「今日は音楽活動の話題が出るはずだ。腹の立つ言い方をされても受け流せ。苛立つだろうが……」
「分かっているよ。納得の上で出席するんだから」
黒崎は俺を出席させたがっていない。この先も拒み続けるわけにはいかない。何年も経った後で出席するなら、今から出た方がいいに決まっている。
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