白い雫の天使~親愛なる人への旋律

夏目奈緖

文字の大きさ
68 / 265

8-2

しおりを挟む
 今回の法事での、向こうの振る舞い方は予想している。あからさまに嫌悪されるのだろう。もう慣れたと言ってもいい。

「平気だよー。これでも喧嘩三昧だったんだよ?中学生のときだけど。相手は大人だし厄介な人たちでも、根本は同じだよ。呼び出して複数人でやってくるんだ。一対一のタイマンで出来ない相手は、マジな相手じゃないよ。黒崎さんがそう教えてくれたんだよ?」
「俺のそばから離れるな。何か話しかけられても答えなくていい。すべて俺が答える。優等生のふりをするつもりで頼む」
「懐かしいな~。しばらくやっていないよ」
「そばから離れるとしたら、お互いに話しかけられるケースだ。一貴が、お前のフォローをする」
「りょーかい。晴海さんもそばに居てくれるんだ」

 晴海さんがイギリスから帰ってきた。旅行に行けるぐらいには回復したから、今年は出席すると聞いた。それを黒崎が知らなくて、驚いた顔をした。

「晴海兄さんが?」
「うん。昨日の電話で聞いたよ」
「どんな話をしたんだ?」

 キョトンとした顔になった。そんなに驚くことだろうか?たしかに前に意地悪なことを言われたが、黒崎家への恨みのようなものを捨てたそうだ。比べられて育ち、劣等感の塊になった記憶が思い出に変わった。晴海さんはこう言っていた。

「晴海さんはね。心の中に子供が住んでいたんだって。問題を起こすことで視線を向けてもらう子だよ。。……自分で物事を考えなくなってしまうって。裏表の激しい人にもなるんだ。親の前では“いい子”を演じ続けるんだ。お義父さんから謝られたそうだよ」
「そうか……」
「今は46歳の晴海さんになったんだ。うちのお父さんの方が近い年齢でも、俺の目線で話してくれる。思いやる人だと思った。少し話したらどうかな?これからは協力していこうよ。晴海さんも同じ気持ちだよ。拓海さんから可愛がってもらったそうだよ」
「何も知らなかった……」
「仕方ないよ。お義父さんの命令に従っていたんだろ?そういう子はね、周りが見えづらくなるんだ。親から認めてもらうことが、自分自身の価値なんだ。お義父さんが悪いなって思っていたそうだよ」
「親父がか……」
「うん。だから晴海さんには自由にして欲しくて、お飾りの役員に就かせたって、お義父さんが言っていたよ。ゆっくり出来るもん。良いか悪いかは別として、好きなことが出来るから」

 黒崎から返事がない。失われた時間を取り戻せるといい。お義父さんも晴海さんも、一貴さんも。もしかすると、同じ気持ちのお兄さんが居るのかもしれない。

「他にもいるかもしれないよ。同じ気持ちのお兄さんが。今日はいい機会だと思ってるんだ。楽しそうに話していたら、向こうから来てくれる気がする。つまりはキッカケだよ。拓海さんの次に期待されていたんだろ?黒崎さんが折れるっていうか……、打ち解けてあげてよ。心が広いんだからさ。意地悪を言われても平気だよ。一緒にいるから。晴海さんも一貴さんも。あんたの味方だと断言したんだよ!」

 黒崎はぼんやりしたままだ。そっと抱きしめてあげた。今度は黒崎から背中をポンポンと叩かれた。今度は頭を撫でられて、こめかみにキスをされた。俺の方が慰めているのに、どうしてだろう?言葉をかけることが出来ない。

(言葉にならないはずだ。俺の方が泣きそうだもん。どうしてかな?)

 黒崎のことを励まし続けた。それが自分にとっての癒しと勇気になり、ちゃんと前を向いて歩いて来たのだと実感できた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

病弱の花

雨水林檎
BL
痩せた身体の病弱な青年遠野空音は資産家の男、藤篠清月に望まれて単身東京に向かうことになる。清月は彼をぜひ跡継ぎにしたいのだと言う。明らかに怪しい話に乗ったのは空音が引き取られた遠縁の家に住んでいたからだった。できそこないとも言えるほど、寝込んでばかりいる空音を彼らは厄介払いしたのだ。そして空音は清月の家で同居生活を始めることになる。そんな空音の願いは一つ、誰よりも痩せていることだった。誰もが眉をひそめるようなそんな願いを、清月は何故か肯定する……。

借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます

なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。 そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。 「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」 脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……! 高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!? 借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。 冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!? 短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。

発情期のタイムリミット

なの
BL
期末試験を目前に控えた高校2年のΩ・陸。 抑制剤の効きが弱い体質のせいで、発情期が試験と重なりそうになり大パニック! 「絶対に赤点は取れない!」 「発情期なんて気合で乗り越える!」 そう強がる陸を、幼なじみでクラスメイトのα・大輝が心配する。 だが、勉強に必死な陸の周りには、ほんのり漂う甘いフェロモン……。 「俺に頼れって言ってんのに」 「頼ったら……勉強どころじゃなくなるから!」 試験か、発情期か。 ギリギリのタイムリミットの中で、二人の関係は一気に動き出していく――! ドタバタと胸きゅんが交錯する、青春オメガバース・ラブコメディ。 *一般的なオメガバースは、発情期中はアルファとオメガを隔離したり、抑制剤や隔離部屋が管理されていたりしていますが、この物語は、日常ラブコメにオメガバース要素を混ぜた世界観になってます。

死ぬほど嫌いな上司と付き合いました【完結】

三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。 皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。 涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥ 上司×部下BL

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

追放されたおまけの聖女♂は冷徹王太子の腕の中から離してもらえない〜今さら戻れと言われても、もうこの人の魔力しか受け付けません!〜

たら昆布
BL
聖女のおまけで召喚されたと思われて追放された不憫受けが拾われて愛される話

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

処理中です...