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会食が終了した。暗い色のスーツ姿の団体が、ぞくぞくとタクシーに乗り込んでいる姿を眺めた。さっき見送りを済ませたところだ。
お義父さんはお寺へ出向き、お坊さんと話した後で帰宅する。俺と黒崎には先に帰るように言われた。ごく自然に、晴海さんと一貴さん、黒崎との4人が集まった。こういう時間が持てたことが嬉しい。
「去年とは比べ物にならないね~。俺が笑っているもん」
「ははははー。何もかもはっきりという子だ。圭一と上手くいくはずだ。パートナーが出来ないと思っていたぐらいだ」
「やっぱりねえ。優しいけどね。最初は本当にキツい人だったからさ~」
「おい……」
黒崎のことは放っておいて、晴海さんと出かける約束をしよう。イギリス旅行では、いくつかのドールハウス展へ行ったそうだ。来月都内でも開かれる。
行ったことがないから興味がある。せっかくだから一緒に行きたい。もちろんだと、OKしてくれた。優しいし話が合う。黒崎には興味がないと言い切られたのに。
「黒崎さんはねえ。絵本の原画展には付き合ってくれるんだよ。絵の関係なら興味あるからって。ドールハウスは興味ないって」
「俺と行けばいい。一貴君もどうだ?」
「いやー、俺も興味がない。飲みに行かないか?3人で……いや、夏樹君は20歳だな。4人で行こう」
その言葉を待っていた。とっくに成人しているのに、飲みにつれて行ってもらえないし、禁止されている。
「ぜひ行きたいよ。そういうお店に行ったことがないから」
「だめだ。夏樹は酒の席には出さない」
「俺たちと飲む。プライベートだぞ?」
「酒がメインの店には連れて行かない」
予想した通りに、黒崎から横やりが入った。もう20歳になっているし、社会人にもなったのに。三者三様の反応だ。晴海さんがあきれ返っている。まるでお義父さんのようだと。
「そういう部分は似なくていい」
「夏樹君は……。俺たちが居るから……」
「家で飲むなら構わないぞ」
「仕方ないなあ……」
一貴さんが呆れながらも頷いた。すると、早瀬さんと悠人も呼んでほしいと言い出した。すでに顔を合わせているが、もっと話したいそうだ。
「OKだと思うよ。黒崎さんみたいなことを言わないから。保護者丸出しは同じでも。うひゃひゃー」
「一貴。悠人君に会いたい理由はなんだ?」
「悠人君が、うちの服を着てくれたそうだ。新しい広告のモデルに起用したい。まだIKUワイズへ話を持って行っていない」
IKUワイズは俺達が入っている芸能事務所だ。これから話を持って行く予定だという。国内で展開するMIDSHIPの新ラインだという。悠人が喜ぶだろう。
「悠人なら喜ぶと思うよ。一貴さんに会いたがっていたから。雑誌のインタビューを読んで、カッコいいから憧れるって言っていたよ」
「それは嬉しいなあ。圭一、頼んだぞ」
「……承知しました。お兄様」
黒崎がスマホを取り出した。きっと早瀬さんへ電話をかけているのだろう。保護者同士のやり取りというものだ。
待っている間、離れた位置で3人で話し始めた。黒崎の子供時代とお義父さんのことがネタになった。晴海さんが住んでいる家のことも。
晴海さんが久しぶりに黒崎家を訪ねてきた時、敷地全体が明るくなったと驚いいていた。一貴さんは一年以上は来ていないから、どんな感じなのは知らない。クリスマスの日は、我が家の門のそばで話しただけで帰ってしまった。
「一貴君も驚くはずだ。手入れをしているのに薄暗かっただろう?花が増えた。美味い匂いが漂っている。焼き菓子の匂いだ。そうだ、夏樹君……」
「どうしたの?」
「本当に圭一の味方をする。もちろん君のことも。信用しきれないだろう?理由を話す」
「いいよ。聞かなくても信じているから」
そう返したが、晴海さんとしては話しておきたいと言われた。静かに言葉を待った。胸が痛くなり、熱くもなった。
来年からの法事の施主は、黒崎に決まった。お義父さんは晴海さんを指名したそうだ。そして、黒崎家の”当主”の役目も。黒崎には黒崎製菓グループを任されるから、兄弟で役割分担させたい考えだ。晴海さんが、黒崎グループから一線を引いた口実にもなる。
晴海さんは役不足だと断ったそうだ。また比較されることを嫌い、黒崎家の一員から出て行きたいとまで思っていた。さすがにそれは口には出さなかった。この件を聞いた黒崎が、お義父さんにこう話したという。本人が欲しがったのか?と。
「圭一がお父さんに持ち掛けた話がある。……晴海兄さんのことを、黒崎家から出してやってくれ。その上で不利な条件も出すな。俺がこの家を引き受けると言ったそうだ。お父さんから聞いた。だから俺は約束した。”当主にならない代わりに、圭一のサポート役をやる” と。圭一には話していない」
「そうだったんだ……」
「俺がいないとな。夏樹君にも重荷がかかるだろう。圭一だけが理由じゃないぞ」
「うひゃひゃー。ありがとうございます」
あとは言葉にならなかった。黒崎の電話が終わるまでに、涙を引っ込めることに成功した。これでよし。そう思ったのは甘かった。どっちが俺のことを泣かせたのか?と、黒崎が怖い顔をしていた。
それを慌てて否定した結果、さっきの内緒話を暴露してしまった。その結果、黒崎が目を逸らしてしまった。照れくさいのだろう。それを俺たち3人で囃し立てながら、会館を後にした。
お義父さんはお寺へ出向き、お坊さんと話した後で帰宅する。俺と黒崎には先に帰るように言われた。ごく自然に、晴海さんと一貴さん、黒崎との4人が集まった。こういう時間が持てたことが嬉しい。
「去年とは比べ物にならないね~。俺が笑っているもん」
「ははははー。何もかもはっきりという子だ。圭一と上手くいくはずだ。パートナーが出来ないと思っていたぐらいだ」
「やっぱりねえ。優しいけどね。最初は本当にキツい人だったからさ~」
「おい……」
黒崎のことは放っておいて、晴海さんと出かける約束をしよう。イギリス旅行では、いくつかのドールハウス展へ行ったそうだ。来月都内でも開かれる。
行ったことがないから興味がある。せっかくだから一緒に行きたい。もちろんだと、OKしてくれた。優しいし話が合う。黒崎には興味がないと言い切られたのに。
「黒崎さんはねえ。絵本の原画展には付き合ってくれるんだよ。絵の関係なら興味あるからって。ドールハウスは興味ないって」
「俺と行けばいい。一貴君もどうだ?」
「いやー、俺も興味がない。飲みに行かないか?3人で……いや、夏樹君は20歳だな。4人で行こう」
その言葉を待っていた。とっくに成人しているのに、飲みにつれて行ってもらえないし、禁止されている。
「ぜひ行きたいよ。そういうお店に行ったことがないから」
「だめだ。夏樹は酒の席には出さない」
「俺たちと飲む。プライベートだぞ?」
「酒がメインの店には連れて行かない」
予想した通りに、黒崎から横やりが入った。もう20歳になっているし、社会人にもなったのに。三者三様の反応だ。晴海さんがあきれ返っている。まるでお義父さんのようだと。
「そういう部分は似なくていい」
「夏樹君は……。俺たちが居るから……」
「家で飲むなら構わないぞ」
「仕方ないなあ……」
一貴さんが呆れながらも頷いた。すると、早瀬さんと悠人も呼んでほしいと言い出した。すでに顔を合わせているが、もっと話したいそうだ。
「OKだと思うよ。黒崎さんみたいなことを言わないから。保護者丸出しは同じでも。うひゃひゃー」
「一貴。悠人君に会いたい理由はなんだ?」
「悠人君が、うちの服を着てくれたそうだ。新しい広告のモデルに起用したい。まだIKUワイズへ話を持って行っていない」
IKUワイズは俺達が入っている芸能事務所だ。これから話を持って行く予定だという。国内で展開するMIDSHIPの新ラインだという。悠人が喜ぶだろう。
「悠人なら喜ぶと思うよ。一貴さんに会いたがっていたから。雑誌のインタビューを読んで、カッコいいから憧れるって言っていたよ」
「それは嬉しいなあ。圭一、頼んだぞ」
「……承知しました。お兄様」
黒崎がスマホを取り出した。きっと早瀬さんへ電話をかけているのだろう。保護者同士のやり取りというものだ。
待っている間、離れた位置で3人で話し始めた。黒崎の子供時代とお義父さんのことがネタになった。晴海さんが住んでいる家のことも。
晴海さんが久しぶりに黒崎家を訪ねてきた時、敷地全体が明るくなったと驚いいていた。一貴さんは一年以上は来ていないから、どんな感じなのは知らない。クリスマスの日は、我が家の門のそばで話しただけで帰ってしまった。
「一貴君も驚くはずだ。手入れをしているのに薄暗かっただろう?花が増えた。美味い匂いが漂っている。焼き菓子の匂いだ。そうだ、夏樹君……」
「どうしたの?」
「本当に圭一の味方をする。もちろん君のことも。信用しきれないだろう?理由を話す」
「いいよ。聞かなくても信じているから」
そう返したが、晴海さんとしては話しておきたいと言われた。静かに言葉を待った。胸が痛くなり、熱くもなった。
来年からの法事の施主は、黒崎に決まった。お義父さんは晴海さんを指名したそうだ。そして、黒崎家の”当主”の役目も。黒崎には黒崎製菓グループを任されるから、兄弟で役割分担させたい考えだ。晴海さんが、黒崎グループから一線を引いた口実にもなる。
晴海さんは役不足だと断ったそうだ。また比較されることを嫌い、黒崎家の一員から出て行きたいとまで思っていた。さすがにそれは口には出さなかった。この件を聞いた黒崎が、お義父さんにこう話したという。本人が欲しがったのか?と。
「圭一がお父さんに持ち掛けた話がある。……晴海兄さんのことを、黒崎家から出してやってくれ。その上で不利な条件も出すな。俺がこの家を引き受けると言ったそうだ。お父さんから聞いた。だから俺は約束した。”当主にならない代わりに、圭一のサポート役をやる” と。圭一には話していない」
「そうだったんだ……」
「俺がいないとな。夏樹君にも重荷がかかるだろう。圭一だけが理由じゃないぞ」
「うひゃひゃー。ありがとうございます」
あとは言葉にならなかった。黒崎の電話が終わるまでに、涙を引っ込めることに成功した。これでよし。そう思ったのは甘かった。どっちが俺のことを泣かせたのか?と、黒崎が怖い顔をしていた。
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