白い雫の天使~親愛なる人への旋律

夏目奈緖

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 駐車場に到着した。ここでお開きすることになった。我が家で食事をすることになったから、あとは日を決めるだけだ。でも、俺も一緒に行くことを黒崎が拒んでいる。追いすがっても聞いてもらえない。家の中であっても、酒の席には出したくないということだ。一貴さんが快活に笑った。晴海さんは呆れ顔だ。

「定期試験があるだろう?それが終わってからにしろ」
「えーー。ライブの打ち合わせが始まるから、今月がいいよ。一日ぐらいいじゃん」
「追い込まれると無理をするだろうが」
「でも……」
「だめだ。先に俺たちで飲みに行く。夜は冷える。風邪を引く」
「黒崎さーーんっ」
「だめだ。先に車に乗っておけ。体が冷える。マスクをしておけ」
「うぇ……ひっく……」
「泣くな……」

 せっかくの集まりなのに。人見知りと引っ込み思案が和らいできた。また新しい足がかりが出来たのに。家の中なら風邪は引かない。温かくしているし、加湿器もつける。買い物はネットスーパーを使う。庭しか出ないようにするから。いろいろと持ちかけた結果、やっとOKが出た。

 スケジュールを確認し合っていると、今度は一貴さんが黒崎のことをイジりはじめた。ここまで亭主関白なのか、束縛男だったのか?と。本気で眉をひそめていた。黒崎は軽く頷き、何も可笑しくないぞと言い返した。

「夏樹はまだ大学生だ。新人ミュージシャンだ。何かあるといけない」
「そうやって囲い込むから、引っ込み思案のままだ。本人は前進したがっている。IKUさんのサポートがあるだろう?家の中ぐらいは自由にさせてやれ。他者との交流によって、音楽活動の次の機会を生む」
「今のままでいい……」

 強引に肩を抱かれて、黒崎の背後に押しやられた。これはマジで言っている証拠だ。どこまでも大人げない。

「あれやこれやと交流しなくていい。しがらみが増える」
「それは理解できる。どの世界でも同じだ。ただし、その場に慣れることも必要だ。人を見極める力をつけさせろ」
「俺が見極める。もちろんIKUの方にも頼んである。遠藤社長にもだ」
「夏樹君を応援しているのか邪魔しているのか、どっちかにしろ」
「応援している。その上での判断だ」
「晴海君も何か言ってやれ。兄貴として……」
「……面倒くさい。そのうち解決する」

 晴海さんがせせら笑った。本気の発言だ。俺たちの言葉を待つわけでもなく、さっさと車に乗り込んで行った。もちろん、都合のいいスケジュールを教えてもらった後だ。

(自由になった感じだな……)

 ガーーー。

 晴海さんが車で駐車場を出て行く時、俺たちに手を振ってくれた。その横顔は穏やかなもので、本当の晴海さんの姿だと思った。

 黒崎も同じ気持ちかもしれない。無言のまま笑っていたからだ。今夜連絡する。承知しました。こういう冗談半分のやり取りを一貴さんと交わした後、俺たちも帰り道を急いだ。
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