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14-8(夏樹視点)
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16時半。
量子力学の授業を終えた。黒崎から連絡が入り、これから迎えに来てくれる。休みが取れて、早めに会社を出てくるという。この理学部1号棟の前が待ち合わせ場所だ。一人で待つなと言われたから、悠人と森本が一緒に待ってくれている。小学生のようだ。
「黒崎さん。心配症なんだよ~。大学内も一人で出歩けなくなったよ」
「ふむふむ。今日だけだよー」
「だといいけど……」
ふうっと、ため息をついた。新しいキャンパスだからと、心配している様子だ。おまけに緊急通報装置まで付けてある。これに気づいた日下がビックリしていた。詳しいことを話していないから、ただもう言葉を無くしていた。
「うっうっ。変な誤解をされた気がするよ~」
「みんな慣れるって。俺でも、一ヶ月で何とも思わなくなったし。黒崎さんは、夏樹のことが大好きだもん」
大好き。その言葉を聞いて、先週のことを思い出した。黒崎が遅くに帰って来た夜だ。ソファーでうたた寝をした時に、頭を撫でてくれていた。寝たふりをしていると、耳元で囁かれた。
(……いつもすまない。愛している)
思い出すだけでも心が蕩けそうだ。その後で首筋にキスをされた。赤く跡が付くほどに。そして、抱き上げてベッドまで連れて行かれた。起きている時からは考えられない優しさに触れた。
「なつきーー。ニヤつくかお茶を飲むか、どっちかにしろよ」
「選べないよ。だってさ~。……待っていたのか。いつもすまない。風邪を引くぞって。ひゃひゃひゃーー」
「ふむふむ……」
「愛しているって。……いたた!」
バシバシと何かを叩いた。それは森本の竹刀袋であり、中身が入っているから痛かった。悠人から手をさすられて呻いていると、もう一人の待ち合わせの相手がやって来た。藤沢だ。
仕事の移動中に寄ると言っていた。ジュエリーブランドに起用されて以来、さらに忙しそうに過ごしている。今も急いでいる様子だ。すぐに絵本の入ったバッグを渡した。
「藤沢。久しぶりだね。はい、これだよ」
「ありがとう。後で連絡するよ。ゆっくり会おうね。じゃあね!」
「うん。気をつけてねー」
3人で手を振って見送ると、何かを思い出した顔をして戻ってきた。こんな写真があったよと言いながら、スマホを差し出してきた。和風ファッションをした人が写っている。自分好みだと思った。
「どこのサイト?ショッピングサイト?」
「芸能人をメインにしたファッション特集。夏樹が出ているよ」
「ふむふむ。確かに夏樹だねー」
「あ、ホントだ。なにこれ?」
たしか、IKUの本社ビル前で撮ったものだ。雑誌のインタビューに掲載された。ここにも載ったのか。さらに見出しを見てビックリした。”前衛的なファッションが流行の兆し”と、書いてある。
「前衛的?古典柄なのに?昔からあるじゃん……」
「なつきー。流行は帰ってくるんだよ。今は新しいんじゃないの?」
「ああ、そういうことか~」
「ははは。相変わらずだね。今日はプラセルの仕事だよ。……さっき、黒崎さんと正門のそばで会ったよ。もうすぐ来るんじゃないかな。女の子から悲鳴を上げられていたから、時間がかかるかも」
「なんだよ~。迎えに行く。一緒に行くよ」
「夏樹はここで待たないと。じゃあね!」
藤沢が早足に去って行った。新しいキャンパスだから、黒崎を見慣れていない子が多い。あの迫力では、どんな人でも近寄れないから安心している。
そわそわ待っていると、背後から肩を叩かれた。振り向きざまに見上げると、黒崎が立っていた。正門は真っ直ぐ向こうなのに。どこを通って来たのだろう?彼がいる方向には、保健センターや学生相談所、教務課がある建物が並んでいる。
「おまたせ」
「おつかれさま。藤沢と正門で会ったんだよね?どこを通ってきたんだよ?」
「向こうの道からだ。教務課へ出向いてきた」
「まさか俺のことで話してきたの?」
「大学側がセミナーを開く。講師を依頼された。引き受けるから話を聞いてきた」
「マジで?そんな時間があったけ?」
「全くない」
この人の行動パターンには、今でも驚かされることがある。いつの間にかそばにいたと思ったら、いくつもの用事を抱えて帰ってきている人だ。
量子力学の授業を終えた。黒崎から連絡が入り、これから迎えに来てくれる。休みが取れて、早めに会社を出てくるという。この理学部1号棟の前が待ち合わせ場所だ。一人で待つなと言われたから、悠人と森本が一緒に待ってくれている。小学生のようだ。
「黒崎さん。心配症なんだよ~。大学内も一人で出歩けなくなったよ」
「ふむふむ。今日だけだよー」
「だといいけど……」
ふうっと、ため息をついた。新しいキャンパスだからと、心配している様子だ。おまけに緊急通報装置まで付けてある。これに気づいた日下がビックリしていた。詳しいことを話していないから、ただもう言葉を無くしていた。
「うっうっ。変な誤解をされた気がするよ~」
「みんな慣れるって。俺でも、一ヶ月で何とも思わなくなったし。黒崎さんは、夏樹のことが大好きだもん」
大好き。その言葉を聞いて、先週のことを思い出した。黒崎が遅くに帰って来た夜だ。ソファーでうたた寝をした時に、頭を撫でてくれていた。寝たふりをしていると、耳元で囁かれた。
(……いつもすまない。愛している)
思い出すだけでも心が蕩けそうだ。その後で首筋にキスをされた。赤く跡が付くほどに。そして、抱き上げてベッドまで連れて行かれた。起きている時からは考えられない優しさに触れた。
「なつきーー。ニヤつくかお茶を飲むか、どっちかにしろよ」
「選べないよ。だってさ~。……待っていたのか。いつもすまない。風邪を引くぞって。ひゃひゃひゃーー」
「ふむふむ……」
「愛しているって。……いたた!」
バシバシと何かを叩いた。それは森本の竹刀袋であり、中身が入っているから痛かった。悠人から手をさすられて呻いていると、もう一人の待ち合わせの相手がやって来た。藤沢だ。
仕事の移動中に寄ると言っていた。ジュエリーブランドに起用されて以来、さらに忙しそうに過ごしている。今も急いでいる様子だ。すぐに絵本の入ったバッグを渡した。
「藤沢。久しぶりだね。はい、これだよ」
「ありがとう。後で連絡するよ。ゆっくり会おうね。じゃあね!」
「うん。気をつけてねー」
3人で手を振って見送ると、何かを思い出した顔をして戻ってきた。こんな写真があったよと言いながら、スマホを差し出してきた。和風ファッションをした人が写っている。自分好みだと思った。
「どこのサイト?ショッピングサイト?」
「芸能人をメインにしたファッション特集。夏樹が出ているよ」
「ふむふむ。確かに夏樹だねー」
「あ、ホントだ。なにこれ?」
たしか、IKUの本社ビル前で撮ったものだ。雑誌のインタビューに掲載された。ここにも載ったのか。さらに見出しを見てビックリした。”前衛的なファッションが流行の兆し”と、書いてある。
「前衛的?古典柄なのに?昔からあるじゃん……」
「なつきー。流行は帰ってくるんだよ。今は新しいんじゃないの?」
「ああ、そういうことか~」
「ははは。相変わらずだね。今日はプラセルの仕事だよ。……さっき、黒崎さんと正門のそばで会ったよ。もうすぐ来るんじゃないかな。女の子から悲鳴を上げられていたから、時間がかかるかも」
「なんだよ~。迎えに行く。一緒に行くよ」
「夏樹はここで待たないと。じゃあね!」
藤沢が早足に去って行った。新しいキャンパスだから、黒崎を見慣れていない子が多い。あの迫力では、どんな人でも近寄れないから安心している。
そわそわ待っていると、背後から肩を叩かれた。振り向きざまに見上げると、黒崎が立っていた。正門は真っ直ぐ向こうなのに。どこを通って来たのだろう?彼がいる方向には、保健センターや学生相談所、教務課がある建物が並んでいる。
「おまたせ」
「おつかれさま。藤沢と正門で会ったんだよね?どこを通ってきたんだよ?」
「向こうの道からだ。教務課へ出向いてきた」
「まさか俺のことで話してきたの?」
「大学側がセミナーを開く。講師を依頼された。引き受けるから話を聞いてきた」
「マジで?そんな時間があったけ?」
「全くない」
この人の行動パターンには、今でも驚かされることがある。いつの間にかそばにいたと思ったら、いくつもの用事を抱えて帰ってきている人だ。
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