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どちらにしろ、心の準備は出来ているだろう。現実のものになったから驚いているのかな?また厄介な役回りだと思ったのかな?どれも違うと思った。
いつでも先読みしている人だ。厄介事だと思わずに引き受けている事も多い。仕事中の姿は詳しくは分からないから、早瀬さんや深川さんが教えてくれた。100%嫌なものだと、”何が何でもNO” と言い切るから困っているという話も聞いた。
「何か怖いの?」
「ん?どういう意味だ?」
「周りの人からの話と、普段のあんたを見てのことだよ。副社長の話は出ていたんだ。実際に話をされて驚いても、嫌だってレベルじゃないだろ?……”決まったか。はいはい、先に進もう”って。それがパターンだもん。それはそれ、これはこれって。それが黒崎さんだもん。……49歳までは踏ん張るんだろ?それも嫌になった?……俺としては、いつでも辞めてOK。変わりないよ?」
「やりたいからやる。その褒美にピアノ三昧の日々を過ごす。まずは、やることをやってからだ」
「だから好きなことを後回しにしているよ~。今からもやっていいよ。小さい頃から頑張ってきたんだ。何かクリアしないと、楽しいことをしたらダメなの?誰が決めたんだよ?」
「俺がそう決めた」
「もう~。最初から無理だなんて思うなよ。気の持ちようで違うよ?いつでも出来るけど、今週は忙しいからなーって思ったらどうかな?気づいたら49歳になった。それでどう?」
抱きついたままで見上げると、肩を揺らして笑い出した。もっと笑わせたいから、頬をつねったり、耳の下をくすぐったりした。ちょうどいいフレーズがある。自分達のバンドの楽曲”ray of light”の歌詞だ。
「黒崎さーん。……you life will pass……キミの人生が通り過ぎていく!」
「何かが通り過ぎていた状況は避けたい」
「だったら早くやれよ~。せっかち常務!」
「もう言い返せない。降参だ」
両耳を引っ張っては、くすぐってやった。身をよじっても続けてやった。しつこくやり過ぎたから、とうとう手首を掴まれて阻まれた。お互いに笑いながら言い合いをした。結局はどんな理由で引っかかっているのかと聞くと、黒崎からの答えは笑い声のみだった。
(気になるんだけどなあ……)
いつか教えてくれるだろう。ぎゅっと抱き返すと、目元にキスをされて、さらに顎を持ち上げられて見つめ合った。そして、黒崎の唇がスローモーションのように動いた。
「怖いからだ。それが理由だ」
「え?」
「失敗するのが怖い」
「黒崎さん……」
急に目頭が熱くなってきた。何でも出来る子として育ち、今でもその思いを抱えているのか?周りの人たちは、黒崎のことを強い人だと思っている。だからこそ失敗できないのか?がっかりさせたくないから、”やるしかない”と、進んできたのか?
さらに教えてもらった。かじ取りをした結果、大きな失敗になり、人の将来を左右するかもしれない。そのことが怖いという理由も。
「本音を吐いてすっきりした。すまない」
「謝るなよ。聞けて嬉しいよ。お義父さん以外にいる?深川さんもだよね?その中の一人になれたもん……」
まだ入り口とはいえ、歌手として歩き始めた分だけ、大人として認めてもらえた証だろうか?黒崎が本音をこぼす相手になれたことが嬉しい。全くかなわない人だと思っていたのに。
「どうしてお前が泣くんだ?」
「あんたが泣いているからだよ……」
「俺は泣いていない」
「黒崎さんが泣けないからだよ。二人分だよ」
「そのストレートさに助けられている。拭いてやる……」
黒崎がハンカチで目元を押さえてくれた。次々と溢れてくるから困ったなと呟いた声が聞こえた後、目元を舐め取られた。そして、塩辛いと言いながら笑われた。
いつでも先読みしている人だ。厄介事だと思わずに引き受けている事も多い。仕事中の姿は詳しくは分からないから、早瀬さんや深川さんが教えてくれた。100%嫌なものだと、”何が何でもNO” と言い切るから困っているという話も聞いた。
「何か怖いの?」
「ん?どういう意味だ?」
「周りの人からの話と、普段のあんたを見てのことだよ。副社長の話は出ていたんだ。実際に話をされて驚いても、嫌だってレベルじゃないだろ?……”決まったか。はいはい、先に進もう”って。それがパターンだもん。それはそれ、これはこれって。それが黒崎さんだもん。……49歳までは踏ん張るんだろ?それも嫌になった?……俺としては、いつでも辞めてOK。変わりないよ?」
「やりたいからやる。その褒美にピアノ三昧の日々を過ごす。まずは、やることをやってからだ」
「だから好きなことを後回しにしているよ~。今からもやっていいよ。小さい頃から頑張ってきたんだ。何かクリアしないと、楽しいことをしたらダメなの?誰が決めたんだよ?」
「俺がそう決めた」
「もう~。最初から無理だなんて思うなよ。気の持ちようで違うよ?いつでも出来るけど、今週は忙しいからなーって思ったらどうかな?気づいたら49歳になった。それでどう?」
抱きついたままで見上げると、肩を揺らして笑い出した。もっと笑わせたいから、頬をつねったり、耳の下をくすぐったりした。ちょうどいいフレーズがある。自分達のバンドの楽曲”ray of light”の歌詞だ。
「黒崎さーん。……you life will pass……キミの人生が通り過ぎていく!」
「何かが通り過ぎていた状況は避けたい」
「だったら早くやれよ~。せっかち常務!」
「もう言い返せない。降参だ」
両耳を引っ張っては、くすぐってやった。身をよじっても続けてやった。しつこくやり過ぎたから、とうとう手首を掴まれて阻まれた。お互いに笑いながら言い合いをした。結局はどんな理由で引っかかっているのかと聞くと、黒崎からの答えは笑い声のみだった。
(気になるんだけどなあ……)
いつか教えてくれるだろう。ぎゅっと抱き返すと、目元にキスをされて、さらに顎を持ち上げられて見つめ合った。そして、黒崎の唇がスローモーションのように動いた。
「怖いからだ。それが理由だ」
「え?」
「失敗するのが怖い」
「黒崎さん……」
急に目頭が熱くなってきた。何でも出来る子として育ち、今でもその思いを抱えているのか?周りの人たちは、黒崎のことを強い人だと思っている。だからこそ失敗できないのか?がっかりさせたくないから、”やるしかない”と、進んできたのか?
さらに教えてもらった。かじ取りをした結果、大きな失敗になり、人の将来を左右するかもしれない。そのことが怖いという理由も。
「本音を吐いてすっきりした。すまない」
「謝るなよ。聞けて嬉しいよ。お義父さん以外にいる?深川さんもだよね?その中の一人になれたもん……」
まだ入り口とはいえ、歌手として歩き始めた分だけ、大人として認めてもらえた証だろうか?黒崎が本音をこぼす相手になれたことが嬉しい。全くかなわない人だと思っていたのに。
「どうしてお前が泣くんだ?」
「あんたが泣いているからだよ……」
「俺は泣いていない」
「黒崎さんが泣けないからだよ。二人分だよ」
「そのストレートさに助けられている。拭いてやる……」
黒崎がハンカチで目元を押さえてくれた。次々と溢れてくるから困ったなと呟いた声が聞こえた後、目元を舐め取られた。そして、塩辛いと言いながら笑われた。
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