白い雫の天使~親愛なる人への旋律

夏目奈緖

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 ガサ……。

 玄関を出て小道を進むと、春の花壇が広がった。チューリップが満開になっている。夏樹が世話をしている。先週は晴海兄さんも一緒にやっていた。花が好きらしい。自分の家でも育てたいと話していたそうだ。

(兄弟の会話がなかったからな。一貴は何が好きだろう。そろそろ始めよう……)

 今月の予定を思い出した。月に一度、夏樹の両親に連絡を入れている。心臓の検診結果、レポート課題、成績表、音楽活動のスケジュールなどだ。変わったことがなくても報告している。

(仕上げておこう。夏樹に見つかないうちに……)

 電話のみではなく、“夏樹の報告書”としてメールで送っている。夏樹は知らない。世間話ぐらいに思っているはずだ。

 考え事を続けているうちに、父の家に到着した。玄関の扉を開いてすぐに目が留まったのが、階段の踊り場だった。そこには、新しい花が活けられていた。馴染みのフラワーショップのイメージとは異なる。それらを眺めていると、山崎さんから声を掛けられた。

「圭一さん。おはようございます」
「おはようございます。一貴は部屋ですか?」
「いえ、リビングにいらっしゃいます」

 料理の入った籠を渡した時、リビングから一貴の方から出てきた。松葉づえなしで立っている。見ているだけで危なっかしい。

「無理をするな。危ないぞ」
「こっちの方が体力を消耗しない。もう足が着ける。朝からめずらしいな?」
「夏樹からの差し入れだ。仕事中の軽食に……。それはなんだ?」
「ん?これか?」

 一貴が持っていたものに目が留まった。遊園地のキャラクターの ”ウサギー” のぬいぐるみだ。夏樹なら違和感がないが、一貴には似合わない。

「友達が見舞いで送ってきた」
「次期の計画で何かあるのか?」
「さすがだなあ。商品のコラボを考えている。他の企業のマスコットキャラをプリントしたものだ。黒崎製菓、千尋製菓にも声をかける。夏樹君はウサギーが好きだろう?ニット帽子がそうだった」
「あれは……」

 俺が購入したものだ。本人は嫌がっていたが、使っているうちに気に入った様子だ。雑誌の取材時にも被っていたぐらいだ。伏せておくこともない。

「圭一が選んだものか?」
「そのとおりだ。似合っている」
「ははは。俺もそう思うよ。夏樹君は着物ラインでお願いしたいが、Tシャツのイメージキャラクターにもならないか?悠人君とのコンビだ」
「どうしても、夏樹を起用したいのか?」
「ああ、そうしたい。いい波に乗っているじゃないか。拘束時間は長くない。写真撮影、イベントの出席に1回のみ。併せてIKUへ話を持っていく」
「その話は今度だ。親父は出たのか?」
「一時間前だった。バタついているようだね」
「そうか。夏樹が夕方に様子を見に来る。何か面白い話をしてやってくれ」
「ああ。沢山ある。じゃあ……」

 この時間は話が出来ない。一貴をリビングに促した後、父の家を出た。
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