白い雫の天使~親愛なる人への旋律

夏目奈緖

文字の大きさ
121 / 265

15-3

しおりを挟む
 午前7時。

 朝食を終えた後、リビングで、お互いの日課を始めた。俺の方は仕事の資料を読むことで、夏樹は大学のノート整理だ。今朝は"夏樹の報告書”を作成した。本人が隣に座っているが、覗き込むようなことはしてこない。夏樹の横顔を見つめると、普段通りに顔色がいい。一年前は青白い日が多かった。今では食事量が増えて、熱を出す回数も減った。 

「熱を出さなくなったな。自分でも気づいていたか?」
「うん。何となく違うなあって。食べてるからだよね?……仕事の穴を開けられないから、自覚したんだと思う。冷やさないようにしてるし。分かっているなら、早くやれって思うだろー?」
「いいや、それが成長だ。これから進んで行けばいい。急いで大人になるな」
「なんだよー?ガキだって言ってるくせに」
「憎まれ口を叩くからだ」

 夏樹の頬をつまんで引っ張ってやった。そして、くすぐったそうに身動いだタイミングで抱き寄せた。こめかみへ唇を押し当てると、照れくさそうに顔を赤くした。そして、何度かキスを繰り返すと、諦めたと言いながら、もたれ掛かってきた。向かい合った顔は赤いままだ。

 もうすぐで誕生日を迎える。特別に欲しいものはないと言われた。それでは気が収まらない。何か思いつかないのか?そう聞くたびに、首を横に振られている。

「誕生日プレゼントのことを聞きたい。何がいい?花の苗セット以外だ」
「それが欲しい物だよ。夏の花壇用に欲しいもん。あとは思いつかない。普段から買ってくれるからさー。黒崎さんだって、同じことを言ったのに。プレゼントは要らないって」
「それはそれだ。お前は遠慮をする。もっと我満を言え」
「言っているよー?スイーツも買ってもらっているし」
「それじゃ足りない」

 会社の部長連中から聞いた話では、会食や飲み会で遅くなる日が続くと、家族から文句を言われるそうだ。この子の場合は異なる。フローラル系の匂いが付いていれば機嫌を悪くするが、遅くなることには文句を言わない。自分としては寂しくもある。もっと家に居ろと言われたい。

 何か言うまでやめないぞ。頬を撫でてはキスをしていると、耳たぶをつまんで仕返しをされた。赤い頬のままで唇を尖らせている。

「黒崎さん。甘やかすなよ~」
「それのどこが悪い?誰にも迷惑をかけていない。俺の楽しみの一つだ。もっと協力してくれ」
「散歩とか家事とか、そういうのを楽しみにしろよ」
「遅く帰って来てもいいのか?今度は2時過ぎに帰宅する」
「それは、嫌だよ……」

 今度は頬を膨らませた。何か心当たりがあるようだ。思いめぐらせた結果、あることに行き当たった。俺としては遠慮をしたことだ。寝ているところを起こしたくなかった。

「拗ねているのか?」
「何のことだよーー?」
「当たりか。先週から抱いていないことか?寝かせたいからだった」

 顎に手を添えて見上げさせた。照れくさそうに笑っている顔を見ているうちに、ある悪戯心が芽生えた。出勤まで少々の時間がある。軽く機嫌を取りたい。

「夏樹。少しキスをしよう」
「やだよ~~」

 夏樹の身体をソファーに押し倒すと、即座に文句がかえってきた。適当にするならやめろと唇を尖らされた。先週のことが引きずっているらしい。お詫びに心を込めると言い返して、さらに起き上がろうとした体を押し倒した。そして、微笑み合ってキスをした。そうしているうちに出勤の時間になり、仕方なくやめた。今夜に取っておく。そう言うと、夏樹が顔を赤くして、可愛らしいと思った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

竜人息子の溺愛!

神谷レイン
BL
コールソン書店の店主レイ(三十七歳)は、十八歳になったばかりの育て子である超美形の竜人騎士であるルークに結婚を迫られていた。 勿論レイは必死に断るがルークは全然諦めてくれず……。 だが、そんな中で竜国から使者がやってくる。 そしてルークはある事実を知らされ、レイはそれに巻き込まれてしまうのだが……。 超美形竜人息子×自称おじさん

不夜島の少年~兵士と高級男娼の七日間~

四葉 翠花
BL
外界から隔離された巨大な高級娼館、不夜島。 ごく平凡な一介の兵士に与えられた褒賞はその島への通行手形だった。そこで毒花のような美しい少年と出会う。 高級男娼である少年に何故か拉致されてしまい、次第に惹かれていくが……。 ※以前ムーンライトノベルズにて掲載していた作品を手直ししたものです(ムーンライトノベルズ削除済み) ■ミゼアスの過去編『きみを待つ』が別にあります(下にリンクがあります)

【完結】君の手を取り、紡ぐ言葉は

綾瀬
BL
図書委員の佐倉遥希は、クラスの人気者である葉山綾に密かに想いを寄せていた。しかし、イケメンでスポーツ万能な彼と、地味で取り柄のない自分は住む世界が違うと感じ、遠くから眺める日々を過ごしていた。 ある放課後、遥希は葉山が数学の課題に苦戦しているのを見かける。戸惑いながらも思い切って声をかけると、葉山は「気になる人にバカだと思われるのが恥ずかしい」と打ち明ける。「気になる人」その一言に胸を高鳴らせながら、二人の勉強会が始まることになった。 成績優秀な遥希と、勉強が苦手な葉山。正反対の二人だが、共に過ごす時間の中で少しずつ距離を縮めていく。 不器用な二人の淡くも甘酸っぱい恋の行方を描く、学園青春ラブストーリー。 【爽やか人気者溺愛攻め×勉強だけが取り柄の天然鈍感平凡受け】

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

逃げる銀狐に追う白竜~いいなずけ竜のアレがあんなに大きいなんて聞いてません!~

結城星乃
BL
【執着年下攻め🐲×逃げる年上受け🦊】  愚者の森に住む銀狐の一族には、ある掟がある。 ──群れの長となる者は必ず真竜を娶って子を成し、真竜の加護を得ること──  長となる証である紋様を持って生まれてきた皓(こう)は、成竜となった番(つがい)の真竜と、婚儀の相談の為に顔合わせをすることになった。  番の真竜とは、幼竜の時に幾度か会っている。丸い目が綺羅綺羅していて、とても愛らしい白竜だった。この子が将来自分のお嫁さんになるんだと、胸が高鳴ったことを思い出す。  どんな美人になっているんだろう。  だが相談の場に現れたのは、冷たい灰銀の目した、自分よりも体格の良い雄竜で……。  ──あ、これ、俺が……抱かれる方だ。  ──あんな体格いいやつのあれ、挿入したら絶対壊れる!  ──ごめんみんな、俺逃げる!  逃げる銀狐の行く末は……。  そして逃げる銀狐に竜は……。  白竜×銀狐の和風系異世界ファンタジー。

僕を惑わせるのは素直な君

秋元智也
BL
父と妹、そして兄の家族3人で暮らして来た。 なんの不自由もない。 5年前に病気で母親を亡くしてから家事一切は兄の歩夢が 全てやって居た。 そこへいきなり父親からも唐突なカミングアウト。 「俺、再婚しようと思うんだけど……」 この言葉に驚きと迷い、そして一縷の不安が過ぎる。 だが、好きになってしまったになら仕方がない。 反対する事なく母親になる人と会う事に……。 そこには兄になる青年がついていて…。 いきなりの兄の存在に戸惑いながらも興味もあった。 だが、兄の心の声がどうにもおかしくて。 自然と聞こえて来てしまう本音に戸惑うながら惹かれて いってしまうが……。 それは兄弟で、そして家族で……同性な訳で……。 何もかも不幸にする恋愛などお互い苦しみしかなく……。

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

処理中です...