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15-10(黒崎視点)
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23時。
夏樹を寝室へ戻らせた後も、一貴との通話を続けた。今回の件とは関係のない雑談を続けた。高ぶった気持ちのままでは、腹をわった話ができない。そして、本題に戻ろうとした。悠人への気持ちが恋愛感情がどうかだ。それを聞きたい。一貴は相手への想いを収集するだけで、相手に何かをしようとはしない男だった。だが、悠人も夏樹も怖がっているなら、今回は違うのかも知れない。さっき、早瀬から叱られたと言っていた。悠人への誘いが多かったからだろう。ますます放っておけない。
「……一貴。そろそろ本音を話さないか?大ごとにはなっていない。本当にそうなりかねないぞ?お前はそんな男じゃないはずだ。……今夜はやめておくか」
ひと晩置こう。一旦通話を終えた後、早瀬へ電話を掛けようとして手を止めた。悠人と話している頃だろう。明日にした方がいい。
なぜ悠人に執着したのか?いい子ではある。礼儀正しく心優しい。父も俺も可愛がっている。パートナーである早瀬の存在を知った後も誘い続けたことには、違和感しかない。
一貴が想いを寄せる対象は、一人ではない。同時に複数を想うことができる。抱くことも触れることも出来なくてもだ。まるで、コレクターケースに保存するかのように。
椅子から立ちあがると、一貴から再び着信が入った。今度こそ正直に話すと言っている。普段通りの声色だが、話し方が変わった。先ほどは子供っぽかったが、今の声は普段通りの兄貴の一貴のものだ。
「話す気になったか。何時になっても構わない」
「悠人君に執着したのは、早瀬君の母親のことが理由だ。実母が居ることは知っているか?」
「知っている。ここで話題が出るとは予想外だ」
「お父さんから聞いたことはあるか?君のお母さん……、真琴さんと再婚する前だ。銀座のクラブで働いていた女性の面倒を見ていた話だ」
「ここに戻った後で話を聞いた。歌手だろう?早瀬の実母のことだな」
早瀬の実母の名前は早瀬菜々子さんという。22歳当時に早瀬家を嫌って家を出た後、銀座のクラブで働き始めた。ある男との間に子供ができたが、その相手が出て行った。子供は認知されなかった。未婚のままで出産した。その子供が早瀬だ。
出産後にクラブに復帰した後、早瀬が肺炎を罹った。その店の常連である父のことを、彼女が担当していた。それがきっかけで、彼女と裕理の面倒をみるようになった。父親に近い立場での相談役としての関係だ。経済面では自立しており、金銭的な援助は一切受けていなかったと聞いている。
「圭一が産まれた後、お父さんが俺とおふくろの家に訪ねてくる機会が増えたそうだ。俺のことが気に入ったからだ。おふくろが言っていることだ、本当かどうかは分からない。……せっかくこちらに視線が向いたのに、菜々子さんが現れたことで、また足が遠のいたそうだ。奪われたと話していた」
「筋違いだ。お前は理解しているだろう?」
「もちろん理解している。子供時代は恨んでいた。しかないだろう?刷り込みのようなものだ。母親の話が全てだった。……お父さんが、菜々子さんの息子が優秀だと話していたそうだ。ぽろっと口から出た程度だろう。いずれは黒崎家に迎えたいと言ったそうだ。早瀬家の姉夫婦の養子になった後もだ」
「それも親父から聞いてある。菜々子さんが亡くなった後、何度か早瀬家を訪ねて行ったそうだ。姉夫婦に引き取られた後のことが気になったそうだ。近所の子と走り回っている姿を見て、うちの養子にするのを諦めたと話していたぞ……」
「お父さんが訪ねてくるように、必死で勉強した。黒崎家の集まりで話題が出るように。おふくろから、そう言い聞かされ続けた。……プラセルを大きくさせたのは、おふくろに認めてもらいたかったからだ」
見返したかったのか?その問いには否定が返ってきた。寂しかったからだとストレートに答えが返ってきた。
「大きくなった企業を動かしていった。でも、虚しい思いだけが残った。多忙さから私生活が崩れて、俺の周りには誰も居ないことに気づいた……。ここにはみんながいるから、寂しさが和らいだ」
「悠人君には繋がらない話だ。早瀬への思いがあるのか?それとも、早瀬から奪い取りたいのか?悠人君のことを」
「いいや違う。初めて会った時は、普通に可愛いと思った。モデル起用の件は話題性があるからだ。……2回目に会った時、俺と似ている子だと思った。次に話した時は、昔の俺が居るみたいだった。……この子を輝かせたいと思った。手を出したいとは、最初から思っていない。傷つけるつもりもない。見ているだけでいい」
「接し方を間違えているぞ。普通に話をしろ。友人としてだ」
「傷つけるつもりはない……」
「心の方には見えない傷ができる」
一貴はそれを理解しているはずだが、良かれと判断して衝動的に行動に移す。これまでの会話の端々で感じたことだ。夏樹との初対面の際に、彼の考え方を試す目的で嫌味を投げかけたように。
「お父さんも同じだと思わないか?気に入った相手を、手元におきたい人だ。何人の相手がいた?自分からは縁を切らずにいる。援助も続けている」
「半分は当たっている。全て同じとはいえない」
「どこがだ?俺と同じく収集癖がある。圭一も同じだろう」
「俺のことはいい。今はお前の話だ」
「虚しい。何も残らなかった……」
一貴は疲れ切っている。ここまで気持ちを乱す男ではない。直接話に行ける距離に住んでいる。今から出向こうか。一人にさせておくべきか。励ませば逆効果だ。雑談はできても、踏み込んだことが言えない。
夏樹を寝室へ戻らせた後も、一貴との通話を続けた。今回の件とは関係のない雑談を続けた。高ぶった気持ちのままでは、腹をわった話ができない。そして、本題に戻ろうとした。悠人への気持ちが恋愛感情がどうかだ。それを聞きたい。一貴は相手への想いを収集するだけで、相手に何かをしようとはしない男だった。だが、悠人も夏樹も怖がっているなら、今回は違うのかも知れない。さっき、早瀬から叱られたと言っていた。悠人への誘いが多かったからだろう。ますます放っておけない。
「……一貴。そろそろ本音を話さないか?大ごとにはなっていない。本当にそうなりかねないぞ?お前はそんな男じゃないはずだ。……今夜はやめておくか」
ひと晩置こう。一旦通話を終えた後、早瀬へ電話を掛けようとして手を止めた。悠人と話している頃だろう。明日にした方がいい。
なぜ悠人に執着したのか?いい子ではある。礼儀正しく心優しい。父も俺も可愛がっている。パートナーである早瀬の存在を知った後も誘い続けたことには、違和感しかない。
一貴が想いを寄せる対象は、一人ではない。同時に複数を想うことができる。抱くことも触れることも出来なくてもだ。まるで、コレクターケースに保存するかのように。
椅子から立ちあがると、一貴から再び着信が入った。今度こそ正直に話すと言っている。普段通りの声色だが、話し方が変わった。先ほどは子供っぽかったが、今の声は普段通りの兄貴の一貴のものだ。
「話す気になったか。何時になっても構わない」
「悠人君に執着したのは、早瀬君の母親のことが理由だ。実母が居ることは知っているか?」
「知っている。ここで話題が出るとは予想外だ」
「お父さんから聞いたことはあるか?君のお母さん……、真琴さんと再婚する前だ。銀座のクラブで働いていた女性の面倒を見ていた話だ」
「ここに戻った後で話を聞いた。歌手だろう?早瀬の実母のことだな」
早瀬の実母の名前は早瀬菜々子さんという。22歳当時に早瀬家を嫌って家を出た後、銀座のクラブで働き始めた。ある男との間に子供ができたが、その相手が出て行った。子供は認知されなかった。未婚のままで出産した。その子供が早瀬だ。
出産後にクラブに復帰した後、早瀬が肺炎を罹った。その店の常連である父のことを、彼女が担当していた。それがきっかけで、彼女と裕理の面倒をみるようになった。父親に近い立場での相談役としての関係だ。経済面では自立しており、金銭的な援助は一切受けていなかったと聞いている。
「圭一が産まれた後、お父さんが俺とおふくろの家に訪ねてくる機会が増えたそうだ。俺のことが気に入ったからだ。おふくろが言っていることだ、本当かどうかは分からない。……せっかくこちらに視線が向いたのに、菜々子さんが現れたことで、また足が遠のいたそうだ。奪われたと話していた」
「筋違いだ。お前は理解しているだろう?」
「もちろん理解している。子供時代は恨んでいた。しかないだろう?刷り込みのようなものだ。母親の話が全てだった。……お父さんが、菜々子さんの息子が優秀だと話していたそうだ。ぽろっと口から出た程度だろう。いずれは黒崎家に迎えたいと言ったそうだ。早瀬家の姉夫婦の養子になった後もだ」
「それも親父から聞いてある。菜々子さんが亡くなった後、何度か早瀬家を訪ねて行ったそうだ。姉夫婦に引き取られた後のことが気になったそうだ。近所の子と走り回っている姿を見て、うちの養子にするのを諦めたと話していたぞ……」
「お父さんが訪ねてくるように、必死で勉強した。黒崎家の集まりで話題が出るように。おふくろから、そう言い聞かされ続けた。……プラセルを大きくさせたのは、おふくろに認めてもらいたかったからだ」
見返したかったのか?その問いには否定が返ってきた。寂しかったからだとストレートに答えが返ってきた。
「大きくなった企業を動かしていった。でも、虚しい思いだけが残った。多忙さから私生活が崩れて、俺の周りには誰も居ないことに気づいた……。ここにはみんながいるから、寂しさが和らいだ」
「悠人君には繋がらない話だ。早瀬への思いがあるのか?それとも、早瀬から奪い取りたいのか?悠人君のことを」
「いいや違う。初めて会った時は、普通に可愛いと思った。モデル起用の件は話題性があるからだ。……2回目に会った時、俺と似ている子だと思った。次に話した時は、昔の俺が居るみたいだった。……この子を輝かせたいと思った。手を出したいとは、最初から思っていない。傷つけるつもりもない。見ているだけでいい」
「接し方を間違えているぞ。普通に話をしろ。友人としてだ」
「傷つけるつもりはない……」
「心の方には見えない傷ができる」
一貴はそれを理解しているはずだが、良かれと判断して衝動的に行動に移す。これまでの会話の端々で感じたことだ。夏樹との初対面の際に、彼の考え方を試す目的で嫌味を投げかけたように。
「お父さんも同じだと思わないか?気に入った相手を、手元におきたい人だ。何人の相手がいた?自分からは縁を切らずにいる。援助も続けている」
「半分は当たっている。全て同じとはいえない」
「どこがだ?俺と同じく収集癖がある。圭一も同じだろう」
「俺のことはいい。今はお前の話だ」
「虚しい。何も残らなかった……」
一貴は疲れ切っている。ここまで気持ちを乱す男ではない。直接話に行ける距離に住んでいる。今から出向こうか。一人にさせておくべきか。励ませば逆効果だ。雑談はできても、踏み込んだことが言えない。
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