白い雫の天使~親愛なる人への旋律

夏目奈緖

文字の大きさ
197 / 265

24-3

しおりを挟む
 外に出ると空は快晴だった。薄雲が掛かっているぐらいだ。ホテルの本館から中庭へ進み、外の通りに出た。紅葉の時期は綺麗だろうねと話ながら、のんびりと歩いている。向こうの方にはプールがある。日差しの下でも涼しそうだ。この辺りはひんやりしている。

「羽織るものが欲しいぐらいだよ。道へ出たら暑くなりそうだけど」
「急ぐか。ああ、すまない。歩けないか」
「はっきり言うなよ~。恥じらいがないわけ?」
「恥ずかしくない。俺たちしかいない。抱き上げてやろうか?」
「いいってば。サクサク歩こうね……」

 さっきのイチャつきのおかげで、腰がフラついてる。それでも出かけたいのは、絵本作家のグッズを売っている店があるからだ。お菓子の家の模型もある。黒崎には内緒だ。興味がないと言われるからだ。

(待っているから、さっさと見て来いって言いそうだなあ……)

 通りに出ると、人だかりが出来ていた。近くに商店街がある。ぞろぞろと歩いている人たちの後ろへつき、俺たちも仲間入りした。そして、どこへ行っても同じ状況なのか、黒崎へ熱い視線が向けられた。何度も通っている店や、オフィス周辺では珍しがられない。たまに”キャー”と、反応がある程度だ。ここでは、女性の視線と足が止まっている。

「どうした?」
「うん。腕を組もうよ。ふふん……」
「ああ、お前のことを見ているぞ」

 視線の先には、大学生風のグループがいた。バンドのロゴの付いたTシャツを着ている。ディアドロップ、ガーネリウスだ。ヴィジブルレイもあった。コンサート会場以外で見かけたのは初めてだ。じんわりと胸が熱くなった。

 すると、向こうから声をかけてきた。さっそく握手を始めた。写真撮影は丁寧に断った後、男の子が近くの店からマジックを借りてきた。俺のサインが欲しいという。喜んでと答えた。

「このTシャツに?いいの?」
「もちろんです!サインを下さい」
「ありがとう。俺、字が汚いから、ごめんね~」

 サインの練習をした結果、デザイン文字は難しいと思い知った。無理をせずに ”Natsuki” と書いている。

「ほらね。汚いだろ?」
「感激です!歌が上手いのに、字がすごいですね!」
「うひゃひゃ。テストの答案は困ったよ。判読不能でさ……。一緒に居る人がパートナーだよ。イケメンだろ?」

 黒崎のことはオープンにしている。表立っては非難されたことがない。堂々としているのが良いようだ。それよりも、黒崎の外見が注目されている。俺達のことは吹き飛ぶぐらいだった。テレビ関係者が驚いていたから、相当だろう。 

「あれ?パートナーさんが居ないよ?」
「本当だ。黒崎さーん!どこー?」

 男の子たちと一緒に辺りを見回した。すると、女性グループの中に発見した。背か高いから、すぐに分かる。俳優さんですか?と、話しかけられている。黒崎はこっちに戻りたそうだ。

 さりげなくアピールをしよう。俺のことを。黒崎のことを呼びかけて、小首を傾げて微笑んだ。すると、彼の表情が柔らかくなり、こっちへ来た。周りに会釈をしつつ、腕を絡ませた。そして、男の子達に紹介した後、彼らと手を振って別れた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

病弱の花

雨水林檎
BL
痩せた身体の病弱な青年遠野空音は資産家の男、藤篠清月に望まれて単身東京に向かうことになる。清月は彼をぜひ跡継ぎにしたいのだと言う。明らかに怪しい話に乗ったのは空音が引き取られた遠縁の家に住んでいたからだった。できそこないとも言えるほど、寝込んでばかりいる空音を彼らは厄介払いしたのだ。そして空音は清月の家で同居生活を始めることになる。そんな空音の願いは一つ、誰よりも痩せていることだった。誰もが眉をひそめるようなそんな願いを、清月は何故か肯定する……。

借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます

なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。 そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。 「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」 脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……! 高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!? 借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。 冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!? 短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。

発情期のタイムリミット

なの
BL
期末試験を目前に控えた高校2年のΩ・陸。 抑制剤の効きが弱い体質のせいで、発情期が試験と重なりそうになり大パニック! 「絶対に赤点は取れない!」 「発情期なんて気合で乗り越える!」 そう強がる陸を、幼なじみでクラスメイトのα・大輝が心配する。 だが、勉強に必死な陸の周りには、ほんのり漂う甘いフェロモン……。 「俺に頼れって言ってんのに」 「頼ったら……勉強どころじゃなくなるから!」 試験か、発情期か。 ギリギリのタイムリミットの中で、二人の関係は一気に動き出していく――! ドタバタと胸きゅんが交錯する、青春オメガバース・ラブコメディ。 *一般的なオメガバースは、発情期中はアルファとオメガを隔離したり、抑制剤や隔離部屋が管理されていたりしていますが、この物語は、日常ラブコメにオメガバース要素を混ぜた世界観になってます。

死ぬほど嫌いな上司と付き合いました【完結】

三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。 皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。 涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥ 上司×部下BL

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

追放されたおまけの聖女♂は冷徹王太子の腕の中から離してもらえない〜今さら戻れと言われても、もうこの人の魔力しか受け付けません!〜

たら昆布
BL
聖女のおまけで召喚されたと思われて追放された不憫受けが拾われて愛される話

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

処理中です...