白い雫の天使~親愛なる人への旋律

夏目奈緖

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 さあ、黒崎のことを絵本グッズの店へ連れて行こう。商店街のマップを見ていると、黒崎から、絵本の関係の店に行きたいんだろう?と聞かれた。強引に腕を引いて歩いているから、目的地がバレていた。お店の位置と、ジャンルを暗記しているそうだ。沢山あるのに、何て便利な人なのか。

「いつ覚えたんだよ?家じゃ見てなかっただろ?美術館ぐらいしか……」
「お前が寝ている間だ。お前が好きな店は11箇所ある。まずはこの通りからだ。カフェは……、5軒ぐらいだ。ほら、行くぞ」
「絵本の店へ行きたいんだよ~」
「もっと先の方だ。ルートを考えてある」
「楽しみにしてたんだ。先に行ってから戻ってこようよ。ホテルに帰るんだし……」
「遠回りになる。人混みも避けられる。来い」

 黒崎がいつも通りになった。さっさと来いと言い、肩を抱かれて歩き出した。ここで文句を口にすると喧嘩になる。ぐっと我慢した。

 人が多くて、店先が見えない場所もあった。観光スポットで、みんなゆっくり歩いているからだ。その人波を避けて、スイスイと歩いて行く。たまに立ち止まり、帰りに寄るか?と聞かれた。見事に好みの店ばかりだ。

 いくつかピックアップしながら歩き、人が少ない場所へ到着した。ちょうど人波が引いた後のようだ。タイミングが良すぎるから怖い。通って来た道を眺めると、楽々で歩いて来られたのが不思議だ。

「黒崎さん。大魔王の力を使ったのかよ?」
「使っていない。人の動きは同じようなものだ。ソフトクリームがあるぞ」
「ええ?牧場の直送ミルクを使用か~。さっそく」

 しばらく食べていなかった。高校時代は、週に1回は食べていた。今の家に住みはじめた後は、寄り道をしないから遠のいた。デビューまでが忙しく、家の周りに不審者もいた。体調のこともあるから、ぶらぶらしていない。

(そういえば。最近は見かけなくなったな?)

 黒崎が留守の時に、門の辺りに不審者がいた。住居侵入はない。でも、続くから警戒していた。すると、ふとした思いふけりなのに、黒崎に気づかれた。どうしたんだ?と、視線を向けられた。俺がため息をつくこと、一瞬だけ視線を落とすこと。全て気がつくと言われた。背中を向けていても分かるのだという。隠し事をするなという意味だ。今夜の献立のことでも同じだ。ものすごい言い様だ。

「最近、家の門の辺りの不審者を見かけていないよ。気づかないだけかな?」
「減ったはずだ。俺もそう思っている」
「そうだったんだ?よかった~。別の人が来ているよね?背の高さが違うから……」
「悠人君が見かけた二人連れは、不審者じゃないぞ」
「誰だったの?」
「一貴の母親だ。もう一人は、親族の誰かだ」
「はあ……」

 お義父さんが亡くなった後のことを想像しては、囁きあっている人達がいる。黒崎家の当主には、黒崎が就くだろうと知っているのに。黒崎を誘惑しても無駄だから、俺に焦点が合わされた。誘拐に近いことも想定済みだという。

 だから、護身術を元にした体術を習った。一瞬の隙を狙われた時に使うものだ。今ではこなすことが出来るようになった。これだけはと覚えさせられた。それだけ切羽詰まったことだと理解した。

 何が目的で門の外を歩いていたのか。俺が養子になった頃から、庭以外には出るなと言いつけられた。しかし、今は旅行中だ。ここでは考えるのをやめておこう。

「せっかくの旅行だよね。ごめんね。楽しむよ。ソフトクリーム、どれにしようかな?」
「……食べきれるのか?」
「平気だよ~」

 選んだものは、半分サイズの3種類だ。お店のテーブルで、グラスに盛られたソフトクリームを食べた。トッピングには、アーモンド、クッキー、蜂蜜を乗せた。黒崎の目が泳いでいる。好き放題にしろと言ったくせに、気持ち悪いと言い出した。

「トッピングの方が多いぞ。埋もれている」
「なかなか出来ないオーダーだもん。ひと口どうぞ」
「要らない。溶けるぞ」
「うひゃひゃひゃ、えーーい」
「こら……」

 スプーンで掬ったクリームを、黒崎の口へ放り込んでやった。甘いと文句を言いながら、アイスコーヒーを飲んでいる。何度か繰り返していると、手首を掴まれて阻止された。だったら左手がある。さらに悪戯しようとすると、黒崎の表情が和らいだ。

「楽しいか?年末も旅行へ連れて行く」
「庭でピクニックでもいいよ。来年は忙しくなるよね?」
「昨日、親父の引退の時期が決まった。来月から準備に入る。来年5月に新体制に変わる予定だ」
「そっか。とうとうだね……」

 どうなったのかは聞かずにいた。お義父さんと黒崎の意見が合わず、話し合いが続いていた。就任する役職と、時期についてだ。
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