白い雫の天使~親愛なる人への旋律

夏目奈緖

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 パチパチパチ!

 職員室へ入ると拍手をもらった。問題児が帰ってきたぞと先生達が言った。生徒全員が当てはまるから、誰のことを指しているのか分からない。そう言い返すと、変わっていないと頷かれた。相手が誰であろうと、はっきり物を言う子だと。変わってほしくない部分でもあったと言われた。今、英語の先生と話している。いくつになったのか聞かれた。

「21歳です。今ですか?遠慮して話していますよ。さすがに20歳を超えると……」
「年を取ったのが分かるわ~。言わないでよ」

 これでも遠慮している。年のことを聞いてきたのはあんたの方だろう。なぜか、高校生の時の自分が帰ってきて、ぐっと堪えていると、黒崎から苦笑された。ここでは子供還りをするのかと。その通りだと思う。

 俺たちの様子を見て、先生達がほお……とため息をついた。黒崎を見てのことだと思ったが、俺の雰囲気が変わったことが理由だった。すると、田中先生が言った。

「黒崎さんの背中に隠されていたからだ。今は並んでいるね」
「俺が図々しくなったからだよ。……ね?」

 本当は今でも隠したいのが本音のはずだ。ここでは言い返してこなかった。知り合いである、教頭先生と話し始めた。照れくさいのかな?

 時間が巻き戻り、安心できる人に囲まれている。こんな環境で過ごせていたのかと、当時の俺は分かっていなかった。そんな自分が恥ずかしい。

 18歳の生徒が21歳になり、音楽の仕事を始めている。テレビやネットで見かけるようになり、先生達は不思議な心地だそうだ。本当にあの時の子かな?と。

 すると、俺には色紙が3枚用意されていた。1枚目には“3年A組中山夏樹”と書き、2枚目には“黒崎夏樹 visible ray”と書いた。

「3枚目は……”To dear drops。親愛なる雫たちへ”。来年からのバンド名を入れました」
「変えたのか?……アレンジしてくれたのか」

 本当はDear Dropsだが、あえてこう書きたかった。今日は不思議な日だから、流れに身を任せた結果だ。それを言うと、大人になったねと、田中先生からイジられた。デパートのエスカレーターを逆らって上がり、説教を受けたことがあるくせにと、昔の失敗話を持ち出された。

「うっうっ。ごめんなさい」
「面白いよ。ご両親はお元気にしているのか?」
「はい。母が狭心症を患っているけど……」
「礼拝堂へ行くといい。懐かしいね。永遠の誓いをしたね」

 卒業式の日、俺たちの結婚式のような儀式をやった。黒崎が決まり悪そうにしている。喧嘩になりそうだからイジるのをやめた。

「今度の帰省はいつだい?」
「11月に考えています」
「その時には礼拝堂で歌ってくれ」
「もちろん喜んで!」

 パチパチパチ!

 俺が引き受けると、拍手が送られた。しばらく先生達と話した後、ぬいぐるみを抱いて礼拝堂へ向かった。田中先生が手を振り続けてくれていた。
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