240 / 265
28-3
しおりを挟む
悠人がソロ活動をするのかな?あの子は歌も上手だから、佐久弥のような活動が可能だ。その時には俺の歌詞を使うと話していたから、急に元気が出てきた。こういう形もアリだ。一緒に活動できる。
電話が終わった後、聞きたいか?と頬をつねられた。えらく喜んでいる。
「DDの権利を諦めるそうだ。方針転換して『To Dear Drops』の名前を提案した。開明高校で色紙にサインをしただろう。何となく書いた名前だ」
「それならOKってこと?」
「進めないと分からない。IKU側へは伝えてもらう。……もっといい話がある」
黒崎が微笑んでいる。優しくて見惚れたら、下唇を引っ張られた。
「悠人君の件だが、ソロ活動じゃない。新しいバンドでは、ボーカルとギターを担当する。お前が途中加入しても構わない。ボーカルのNatsukiとしてだ。……ステージで具合が悪くて歌えない時には、悠人君が歌う。どちらを選択しても叶うように、彼から提案されたそうだ」
「まじで?そんなのOKなのかよ?聞いたことないよ?」
「IKU側が、今日検討を始めた。まとまり次第、お前に話が来る。前例を作っておけ」
嬉しいに決まっているのに、現実味がない。いろんな制約があるのだと知り、意外と窮屈だと思っている。その中で打ち破ろうとしているのか。しかも検討中なら、100%不可能ではない。
黒崎は俺がボーカルを続けることを反対しているのに喜んでいるのは、どうしてだろう?こうなれば断る理由がないのに。呆然としている俺の顔を見て苦笑した。
「悠人君の気持ちが嬉しいからだ。ギタリストが二人いるから出来ることだと、IKUに直談判したそうだ。……俺には止めることが出来ない。それでも続けてほしくない気持ちがある。迷わせるのを分かっているが、俺も納得して答えを受け入れたい」
いろんなことを考える余裕がない。頭が痺れた感覚が起きて、唇にまで広がった。黒崎の顔が霞んで見えるのは、涙のせいではない。まだ流れていない。驚きすぎている。声が震えて出てこない。
「やりたい!悠人と話すよ」
「悠人君がボーカルレッスンを始めた。昨日からだ。ツインボーカルが可能になる分、楽曲とステージの幅が広がる。夏樹にはそう説明しておけと話していたそうだ。お前もそのつもりでいろ」
「ちゃんと話す。すぐに分かることじゃん」
「泣き止んでからにしろ」
「無理だよ……、嬉しいもん……、黒崎さ……ん」
「いつでもステージから下ろすことが出来る。穴をあけなくて済む。悠人君には負担がかかるはずだ」
「それでもいいからやりたい!迷惑でもいい」
「迷惑なら最初から提案しない。拭いてやるから大人しくしろ」
人通りのある場所で嗚咽を漏らした。黒崎が笑い声を立てた。俺のせいだと思われてもいいと言った。そして、タオルハンカチを取り出して、顔を拭いてくれた。さらに鼻水が出たと笑い、ティッシュでふき取られた。汚くないと言い続けてくれた。
早く悠人へ電話をしたい。声を聞きたい。話をしたい。きっと知らぬふりをして、コーラス部分の練習のためだよと、言い返してくるだろう。
照れくささからではなく、俺への思いやりのためだ。気負うことなく、迷惑だろうと思うことがないようにだ。すぐにバレるのに。いくら鈍い俺でも。
「どうしよう?気づかないふりで電話を……、かけようかな?」
「そうしろ。そろそろいいな。泣き止めた」
「どうしよう?緊張してきたよ。バレるかも……」
「”どうしよう?”か。悠人君の口ぐせが移ったな。だったら大丈夫だ。言わなくても伝わる」
黒崎が何かを考えた後、店の方を向いた。悠人君が好きそうな物を買って持って行くか?と。全く発想がなかった。今日は休日だから、家に居るだろう。肩を抱かれて頭を撫でられた後、店の方へ歩きだした。
電話が終わった後、聞きたいか?と頬をつねられた。えらく喜んでいる。
「DDの権利を諦めるそうだ。方針転換して『To Dear Drops』の名前を提案した。開明高校で色紙にサインをしただろう。何となく書いた名前だ」
「それならOKってこと?」
「進めないと分からない。IKU側へは伝えてもらう。……もっといい話がある」
黒崎が微笑んでいる。優しくて見惚れたら、下唇を引っ張られた。
「悠人君の件だが、ソロ活動じゃない。新しいバンドでは、ボーカルとギターを担当する。お前が途中加入しても構わない。ボーカルのNatsukiとしてだ。……ステージで具合が悪くて歌えない時には、悠人君が歌う。どちらを選択しても叶うように、彼から提案されたそうだ」
「まじで?そんなのOKなのかよ?聞いたことないよ?」
「IKU側が、今日検討を始めた。まとまり次第、お前に話が来る。前例を作っておけ」
嬉しいに決まっているのに、現実味がない。いろんな制約があるのだと知り、意外と窮屈だと思っている。その中で打ち破ろうとしているのか。しかも検討中なら、100%不可能ではない。
黒崎は俺がボーカルを続けることを反対しているのに喜んでいるのは、どうしてだろう?こうなれば断る理由がないのに。呆然としている俺の顔を見て苦笑した。
「悠人君の気持ちが嬉しいからだ。ギタリストが二人いるから出来ることだと、IKUに直談判したそうだ。……俺には止めることが出来ない。それでも続けてほしくない気持ちがある。迷わせるのを分かっているが、俺も納得して答えを受け入れたい」
いろんなことを考える余裕がない。頭が痺れた感覚が起きて、唇にまで広がった。黒崎の顔が霞んで見えるのは、涙のせいではない。まだ流れていない。驚きすぎている。声が震えて出てこない。
「やりたい!悠人と話すよ」
「悠人君がボーカルレッスンを始めた。昨日からだ。ツインボーカルが可能になる分、楽曲とステージの幅が広がる。夏樹にはそう説明しておけと話していたそうだ。お前もそのつもりでいろ」
「ちゃんと話す。すぐに分かることじゃん」
「泣き止んでからにしろ」
「無理だよ……、嬉しいもん……、黒崎さ……ん」
「いつでもステージから下ろすことが出来る。穴をあけなくて済む。悠人君には負担がかかるはずだ」
「それでもいいからやりたい!迷惑でもいい」
「迷惑なら最初から提案しない。拭いてやるから大人しくしろ」
人通りのある場所で嗚咽を漏らした。黒崎が笑い声を立てた。俺のせいだと思われてもいいと言った。そして、タオルハンカチを取り出して、顔を拭いてくれた。さらに鼻水が出たと笑い、ティッシュでふき取られた。汚くないと言い続けてくれた。
早く悠人へ電話をしたい。声を聞きたい。話をしたい。きっと知らぬふりをして、コーラス部分の練習のためだよと、言い返してくるだろう。
照れくささからではなく、俺への思いやりのためだ。気負うことなく、迷惑だろうと思うことがないようにだ。すぐにバレるのに。いくら鈍い俺でも。
「どうしよう?気づかないふりで電話を……、かけようかな?」
「そうしろ。そろそろいいな。泣き止めた」
「どうしよう?緊張してきたよ。バレるかも……」
「”どうしよう?”か。悠人君の口ぐせが移ったな。だったら大丈夫だ。言わなくても伝わる」
黒崎が何かを考えた後、店の方を向いた。悠人君が好きそうな物を買って持って行くか?と。全く発想がなかった。今日は休日だから、家に居るだろう。肩を抱かれて頭を撫でられた後、店の方へ歩きだした。
0
あなたにおすすめの小説
病弱の花
雨水林檎
BL
痩せた身体の病弱な青年遠野空音は資産家の男、藤篠清月に望まれて単身東京に向かうことになる。清月は彼をぜひ跡継ぎにしたいのだと言う。明らかに怪しい話に乗ったのは空音が引き取られた遠縁の家に住んでいたからだった。できそこないとも言えるほど、寝込んでばかりいる空音を彼らは厄介払いしたのだ。そして空音は清月の家で同居生活を始めることになる。そんな空音の願いは一つ、誰よりも痩せていることだった。誰もが眉をひそめるようなそんな願いを、清月は何故か肯定する……。
借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます
なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。
そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。
「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」
脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……!
高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!?
借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。
冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!?
短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。
発情期のタイムリミット
なの
BL
期末試験を目前に控えた高校2年のΩ・陸。
抑制剤の効きが弱い体質のせいで、発情期が試験と重なりそうになり大パニック!
「絶対に赤点は取れない!」
「発情期なんて気合で乗り越える!」
そう強がる陸を、幼なじみでクラスメイトのα・大輝が心配する。
だが、勉強に必死な陸の周りには、ほんのり漂う甘いフェロモン……。
「俺に頼れって言ってんのに」
「頼ったら……勉強どころじゃなくなるから!」
試験か、発情期か。
ギリギリのタイムリミットの中で、二人の関係は一気に動き出していく――!
ドタバタと胸きゅんが交錯する、青春オメガバース・ラブコメディ。
*一般的なオメガバースは、発情期中はアルファとオメガを隔離したり、抑制剤や隔離部屋が管理されていたりしていますが、この物語は、日常ラブコメにオメガバース要素を混ぜた世界観になってます。
死ぬほど嫌いな上司と付き合いました【完結】
三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。
皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。
涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥
上司×部下BL
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
追放されたおまけの聖女♂は冷徹王太子の腕の中から離してもらえない〜今さら戻れと言われても、もうこの人の魔力しか受け付けません!〜
たら昆布
BL
聖女のおまけで召喚されたと思われて追放された不憫受けが拾われて愛される話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる