251 / 265
30-2(黒崎視点)
しおりを挟む
15時。
役員室のデスクにてミーティングを行っている。新体制へ向けての情報共有、営業企画部内の人事についてだ。役職者への内示は済ませてある。
「……常務。いかがいたしましょうか?」
「……進めてくれ」
「……では終了します。次回は11月5日です」
滞りなく終了した。新体制への移行では、何ら支障が起きていない。これまでの経過をみると、気味が悪いぐらいだ。派閥争いに負けたメンバーがいるというのに。数年後、早瀬がR&Wの役職へ就く際には、罠を仕掛けてくるだろう。
早瀬が俺に声をかけた後、待機していた二葉を連れて行った。行き先は副社長室かと思えば、ここの秘書室だった。彼女の顔が一瞬だけ強張った。上手くいっていないのか。
(俺の時は気にならなかったが……。男女の差なのか……)
見えない壁が存在している。俺の時は人が寄って来たが、二葉は拒まれている。男性社員が寄って来ても、下心を持っている。しかし、大半が若い女性としての扱いではない。ライバル視されるのは喜ぶべきことだが、人付き合いの苦手さがネックになっている。
その中に夏樹が飛び込んでくる。自らの意思で。あの子は環境に左右される。穏やかな場所では優しく、競争の中では、激しい気性が姿を現す。競争の海では泳がせたくない。
デスクに戻り、中山の義父へ報告書を送信した。その数分後に折り返し連絡が入った。対応の早さには慣れたが、スピードに負けそうだ。
「こんにちは。ありがとうございます」
「……報告書を読みました。体調と学業は問題なし。黒崎家の方とも良好。地位が欲しいと言い出したのか。圭一君の意見は?」
「僕は反対です。断言しました」
「ありがとう。僕も反対だ。穏やかな人生を送ってもらいたい。僕の方から説得する」
「僕が説得します。コントロールする方法を取ります。長くかかるでしょうが……。いざとなった時にお願いします」
「お任せします。伊吹が急な海外出張が入った。コンサートを観に行けない。家内の体調が不安だから、僕だけで観に行く。どうしても行きたい」
「夏樹には黙っておきますか?……そのように。失礼します」
電話を終えた後、社長室へ掛けた。夏樹から出た話のことで、ストレートに意見を聞くためだ。返って来た答えは、俺とは反対意見だった。本人が求める理由が真っ当だから賛成することと、自然とステージから遠ざかるきっかけになるだろうと言われた。
それなら俺もその意見に賛同できる。そう思ううちに、夏樹への後ろめたさが出てきた。協力すると言いながらも、こうして裏で動いていることを。
ヴィジブルレイのラストライブの告知ページを開いた。別人のような夏樹と悠人の画像がある。佐久弥がプライベートと変わりなく見えるのは、表に出る仕事に馴染んでいるからだろう。
ラストライブは10月29日からの2日間で行われる。5月は2500人の会場だったが、今回は7500人だ。当初は 5000人のホールを予定していたが、規模を大きくした。もう家の中だけの夏樹ではないのだろう。
俺はただ夏樹と歩きたいだけだ。大学生であり、いずれは黒崎製菓の社員となる子と。同じ家に帰り食事をして、一緒に眠る。しかし、そのルートは外れた。ステージに立とうとも、同じ生活ができる。しかし、それでは足りないと思いがある。
(俺のエゴだ。全てがあの子のためじゃない……)
肩を回して物思いを振り払い、業務に取りかかった。
役員室のデスクにてミーティングを行っている。新体制へ向けての情報共有、営業企画部内の人事についてだ。役職者への内示は済ませてある。
「……常務。いかがいたしましょうか?」
「……進めてくれ」
「……では終了します。次回は11月5日です」
滞りなく終了した。新体制への移行では、何ら支障が起きていない。これまでの経過をみると、気味が悪いぐらいだ。派閥争いに負けたメンバーがいるというのに。数年後、早瀬がR&Wの役職へ就く際には、罠を仕掛けてくるだろう。
早瀬が俺に声をかけた後、待機していた二葉を連れて行った。行き先は副社長室かと思えば、ここの秘書室だった。彼女の顔が一瞬だけ強張った。上手くいっていないのか。
(俺の時は気にならなかったが……。男女の差なのか……)
見えない壁が存在している。俺の時は人が寄って来たが、二葉は拒まれている。男性社員が寄って来ても、下心を持っている。しかし、大半が若い女性としての扱いではない。ライバル視されるのは喜ぶべきことだが、人付き合いの苦手さがネックになっている。
その中に夏樹が飛び込んでくる。自らの意思で。あの子は環境に左右される。穏やかな場所では優しく、競争の中では、激しい気性が姿を現す。競争の海では泳がせたくない。
デスクに戻り、中山の義父へ報告書を送信した。その数分後に折り返し連絡が入った。対応の早さには慣れたが、スピードに負けそうだ。
「こんにちは。ありがとうございます」
「……報告書を読みました。体調と学業は問題なし。黒崎家の方とも良好。地位が欲しいと言い出したのか。圭一君の意見は?」
「僕は反対です。断言しました」
「ありがとう。僕も反対だ。穏やかな人生を送ってもらいたい。僕の方から説得する」
「僕が説得します。コントロールする方法を取ります。長くかかるでしょうが……。いざとなった時にお願いします」
「お任せします。伊吹が急な海外出張が入った。コンサートを観に行けない。家内の体調が不安だから、僕だけで観に行く。どうしても行きたい」
「夏樹には黙っておきますか?……そのように。失礼します」
電話を終えた後、社長室へ掛けた。夏樹から出た話のことで、ストレートに意見を聞くためだ。返って来た答えは、俺とは反対意見だった。本人が求める理由が真っ当だから賛成することと、自然とステージから遠ざかるきっかけになるだろうと言われた。
それなら俺もその意見に賛同できる。そう思ううちに、夏樹への後ろめたさが出てきた。協力すると言いながらも、こうして裏で動いていることを。
ヴィジブルレイのラストライブの告知ページを開いた。別人のような夏樹と悠人の画像がある。佐久弥がプライベートと変わりなく見えるのは、表に出る仕事に馴染んでいるからだろう。
ラストライブは10月29日からの2日間で行われる。5月は2500人の会場だったが、今回は7500人だ。当初は 5000人のホールを予定していたが、規模を大きくした。もう家の中だけの夏樹ではないのだろう。
俺はただ夏樹と歩きたいだけだ。大学生であり、いずれは黒崎製菓の社員となる子と。同じ家に帰り食事をして、一緒に眠る。しかし、そのルートは外れた。ステージに立とうとも、同じ生活ができる。しかし、それでは足りないと思いがある。
(俺のエゴだ。全てがあの子のためじゃない……)
肩を回して物思いを振り払い、業務に取りかかった。
0
あなたにおすすめの小説
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
不夜島の少年~兵士と高級男娼の七日間~
四葉 翠花
BL
外界から隔離された巨大な高級娼館、不夜島。
ごく平凡な一介の兵士に与えられた褒賞はその島への通行手形だった。そこで毒花のような美しい少年と出会う。
高級男娼である少年に何故か拉致されてしまい、次第に惹かれていくが……。
※以前ムーンライトノベルズにて掲載していた作品を手直ししたものです(ムーンライトノベルズ削除済み)
■ミゼアスの過去編『きみを待つ』が別にあります(下にリンクがあります)
病弱の花
雨水林檎
BL
痩せた身体の病弱な青年遠野空音は資産家の男、藤篠清月に望まれて単身東京に向かうことになる。清月は彼をぜひ跡継ぎにしたいのだと言う。明らかに怪しい話に乗ったのは空音が引き取られた遠縁の家に住んでいたからだった。できそこないとも言えるほど、寝込んでばかりいる空音を彼らは厄介払いしたのだ。そして空音は清月の家で同居生活を始めることになる。そんな空音の願いは一つ、誰よりも痩せていることだった。誰もが眉をひそめるようなそんな願いを、清月は何故か肯定する……。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
デコボコな僕ら
天渡清華
BL
スター文具入社2年目の宮本樹は、小柄・顔に自信がない・交際経験なしでコンプレックスだらけ。高身長・イケメン・実家がセレブ(?)でその上優しい同期の大沼清文に内定式で一目惚れしたが、コンプレックスゆえに仲のいい同期以上になれずにいた。
そんな2人がグズグズしながらもくっつくまでのお話です。
恋人はメリーゴーランド少年だった~永遠の誓い編
夏目奈緖
BL
「恋人はメリーゴーランド少年だった」続編です。溺愛ドS社長×高校生。恋人同士になった二人の同棲物語。束縛と独占欲。。夏樹と黒崎は恋人同士。夏樹は友人からストーカー行為を受け、車へ押し込まれようとした際に怪我を負った。夏樹のことを守れずに悔やんだ黒崎は、二度と傷つけさせないと決心し、夏樹と同棲を始める。その結果、束縛と独占欲を向けるようになった。黒崎家という古い体質の家に生まれ、愛情を感じずに育った黒崎。結びつきの強い家庭環境で育った夏樹。お互いの価値観のすれ違いを経験し、お互いのトラウマを解消するストーリー。
青い月の天使~あの日の約束の旋律
夏目奈緖
BL
溺愛ドS×天然系男子 俺様副社長から愛される。古い家柄の養子に入った主人公の愛情あふれる日常を綴っています。心臓に疾患を抱えながら、ロックバンドのボーカルとしてステージに立つ夏樹。彼を溺愛するのは、年上で俺様な副社長・黒崎圭一。夏樹は養子として名家に迎えられ、音楽と経営、二つの人生の狭間で揺れていた。それでも黒崎は、束縛と独占欲を隠すことなく、夏樹のすべてを受け止めようとする。ステージを降りる日が近づくかもしれない中、家族の問題、過去の傷、そして未来への不安が静かに忍び寄る。繋いだ手を、決して離さないと誓った二人の、溺愛と再生の物語。※本作からでもお読みいただけます。
黒崎家には黒崎の兄弟達が住んでいる。黒崎の4番目の兄の一貴に親子鑑定を受けて、正式に親子にならないかと、父の隆から申し出があり、一貴の心が揺れる。そして、親子鑑定に恐れを持ち、精神的に落ち込み、愛情を一身に求める子供の人格が現われる。自身も母親から愛されなかった記憶を持つ黒崎は心を痛める。黒崎家に起こることと、黒崎に寄り添う夏樹。
作品時系列:「恋人はメリーゴーランド少年だった。」→「恋人はメリーゴーランド少年だった~永遠の誓い編」→「アイアンエンジェル~あの日の旋律」→「夏椿の天使~あの日に出会った旋律」→「白い雫の天使~親愛なる人への旋律」→「上弦の月の天使~結ばれた約束の夜」→本作「青い月の天使~あの日の約束の旋律」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる