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夏樹の部屋へ入った。そして、目の前の光景に驚いて声を上げた。男子大学生の部屋に見えなかったからだ。大きな本棚には、沢山の絵本が片付けられていた。ネコやウサギ、ユニコーンのぬいぐるみも置かれている。床に敷かれたラグは、ショートケーキの形をしている。後から来た夏樹が笑っていた。
「夏樹の部屋だよね?」
「そうだよ。机と絵本以外は、黒崎さんの物を置いてあるんだよ」
「ええ!?」
「ファンシーグッズを愛する人なんだ。お義父さんから聞いたんだけど、小さい時にヌイグルミを買ってあげなかったそうだよ。男の子だから恥ずかしいだろうって。黒崎さん、好きだからね。今、子供から大人へ成長しているところなんだよ」
「そっか……」
何だか自分と似ているから、黒崎さんのことが身近に思えてきた。大きな会社でやってきた人なのに、こういう部分があったのか。夏樹には安心してさらけ出せるのだろう。
「ごゆっくり。準備が出来たら呼びにくるよ」
「ありがとう」
「まだここに居てよー」
「あー、黒崎さんに言い忘れたことがあったよ~」
夏樹が何かを思い出した仕草をして階段を降りて行った。残されたのは早瀬と沈黙だ。しかし、緊張しているのは俺だけだった。早瀬は平然として絵本を広げている。そばへ行って覗き込むと、立体になった家が飛び出してきた。窓の向こうも見ることが出来た。仕掛け絵本だ。
「悠人君。凝っているから見てごらん」
「わあー、面白いね」
「夏樹君のコレクションは充実しているよ。海外のものも多い。日本で扱っていない本もある」
「裕理さんも絵本が好きなんだ?」
「詳しくならざるを得なかった。圭一さんが夏樹君と付き合う前に、会話の糸口が欲しくて、絵本を買っていたんだよ。そのリサーチを手伝っていた」
「すごいねー。夏樹のことが大好きなんだね」
「好きな子の気を引きたくて必死なのが、可愛らしかったよ」
「今日は意外な事ばかり起きているよ」
「魔法使いの家に遊びに来たからだよ」
「そうだね。あれー、これは何だろう?」
そばの机の上には、文書が印刷されたコピー用紙が置いてあった。夏樹の手書きも付け加えてある。
「……むかしむかしあるところに、顔が怖い青年が住んでいました。本当はピア二ストになりたかったのに、ピアノを取り上げられてしまいました……。これって、夏樹が書いたやつかな?」
「顔が怖い青年か。間違いなく、夏樹君が書いたものだよ」
早瀬が笑い声を立てた。そんなに怖い顔をしているだろうか? さらに読み進めていくうちに、黒崎さんがピアニストになる夢を諦めたのではないだろうかと思い始めた。
「……青年は家の仕事を手伝っていました。一人ぼっちでご飯を食べていたので、レストランを作りたくなりました。そのお店では、お客さんも働いている人も笑っています。遠くから人が集まるようになり、お店が増えていきました。それなのに、青年は家の中で一人で食事をしています。ピアノを弾くことが出来るようになり、青年の楽しみは、その一つだけでした……」
これ以上読むのが悲しくなってきた。だから読むのをやめると、早瀬が首を振って笑った。
「夏樹の部屋だよね?」
「そうだよ。机と絵本以外は、黒崎さんの物を置いてあるんだよ」
「ええ!?」
「ファンシーグッズを愛する人なんだ。お義父さんから聞いたんだけど、小さい時にヌイグルミを買ってあげなかったそうだよ。男の子だから恥ずかしいだろうって。黒崎さん、好きだからね。今、子供から大人へ成長しているところなんだよ」
「そっか……」
何だか自分と似ているから、黒崎さんのことが身近に思えてきた。大きな会社でやってきた人なのに、こういう部分があったのか。夏樹には安心してさらけ出せるのだろう。
「ごゆっくり。準備が出来たら呼びにくるよ」
「ありがとう」
「まだここに居てよー」
「あー、黒崎さんに言い忘れたことがあったよ~」
夏樹が何かを思い出した仕草をして階段を降りて行った。残されたのは早瀬と沈黙だ。しかし、緊張しているのは俺だけだった。早瀬は平然として絵本を広げている。そばへ行って覗き込むと、立体になった家が飛び出してきた。窓の向こうも見ることが出来た。仕掛け絵本だ。
「悠人君。凝っているから見てごらん」
「わあー、面白いね」
「夏樹君のコレクションは充実しているよ。海外のものも多い。日本で扱っていない本もある」
「裕理さんも絵本が好きなんだ?」
「詳しくならざるを得なかった。圭一さんが夏樹君と付き合う前に、会話の糸口が欲しくて、絵本を買っていたんだよ。そのリサーチを手伝っていた」
「すごいねー。夏樹のことが大好きなんだね」
「好きな子の気を引きたくて必死なのが、可愛らしかったよ」
「今日は意外な事ばかり起きているよ」
「魔法使いの家に遊びに来たからだよ」
「そうだね。あれー、これは何だろう?」
そばの机の上には、文書が印刷されたコピー用紙が置いてあった。夏樹の手書きも付け加えてある。
「……むかしむかしあるところに、顔が怖い青年が住んでいました。本当はピア二ストになりたかったのに、ピアノを取り上げられてしまいました……。これって、夏樹が書いたやつかな?」
「顔が怖い青年か。間違いなく、夏樹君が書いたものだよ」
早瀬が笑い声を立てた。そんなに怖い顔をしているだろうか? さらに読み進めていくうちに、黒崎さんがピアニストになる夢を諦めたのではないだろうかと思い始めた。
「……青年は家の仕事を手伝っていました。一人ぼっちでご飯を食べていたので、レストランを作りたくなりました。そのお店では、お客さんも働いている人も笑っています。遠くから人が集まるようになり、お店が増えていきました。それなのに、青年は家の中で一人で食事をしています。ピアノを弾くことが出来るようになり、青年の楽しみは、その一つだけでした……」
これ以上読むのが悲しくなってきた。だから読むのをやめると、早瀬が首を振って笑った。
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